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★PS2ゲームレビュー★

タライから三角木馬まで多彩なトラップで敵を撃退
「影牢II -Dark illusion-」

  • ジャンル:トラップアクションゲーム
  • 発売元:テクモ株式会社
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(6月30日)



■ あのトラップバトルがボリュームアップして帰ってきた

 学校の階段を転がる巨岩が教師を跳ね飛ばすTVCMが話題を呼んだ「影牢II -Dark illusion-」が、テクモ株式会社より発売された。TVCMのイメージ通り「影牢II -Dark illusion-」はプレーヤーキャラクタが直接攻撃をするのではなく、「天井」、「壁」、「床」にトラップを仕掛けて間接的に敵を撃退するトラップアクションゲーム。

 PSで好評を博した3Dトラップバトル「刻命館」シリーズの四作目にあたる今作だが、実際には二作目の「影牢~刻命館 真章~」の正統進化系といえる。「刻命館」のようなモンスターの使役や館の増築といった要素はなく、「影牢II -Dark illusion-」はトラップバトルにスポットを当て、より洗練されたタイトルとなっている。

 主人公の王女アリシアは何者かの陰謀に巻き込まれ、王宮から逃れることを余儀なくされる。迷い込んだ森の館で「魔手」にとり憑かれたアリシアは、トラップを操る魔力を得る。その力でアリシアは襲い掛かる追っ手と対峙していくというのが大筋。プレーヤーはアリシアを操作し、各ミッションに登場する敵をすべて倒すことがゲームの主な目的だ。

拷問器具や処刑器具系のトラップが多いが、人体の部位が破壊されるといったエグい表現はないので安心してほしい



■ 陰謀と裏切りに満ちた背徳のストーリー

 ミッションクリア形式のストーリーモードでは、王女アリシアが自分を陥れた者たちを追って話が進行する。各ミッションの冒頭にはストーリーを補足するイベントデモが挿入。リアルタイムCGで進行するイベントデモは、ストーリーの重要なポイントとして大きな役割を果たしている。



 王女であるはずのアリシアが殺戮の道を歩んでいくというシナリオは、シリーズのダークな世界観にマッチしていると思う。残念なのは、デモシーンでのアリシアの心理描写が少々雑になっていること。そのせいで主人公に共感できず、シナリオにやや物足りなさを感じた(あくまで筆者の意見であるが)。

 逆に、敵である侵入者の設定が面白い。彼らには詳細なプロフィールが用意されているからだ。例えば、ある騎士のプロフィールは「仲間の一人と結婚し、二人で兵士になり安定した生活を送っている。毎朝早起きして妻の弁当を作っている愛妻家。卵料理が得意」とある。こんなエピソードを明かされては殺せない、と思いつつもトラップの岩で潰し、さらに彼の妻は少し前のミッションで焼殺している自分が居るのだが……。

 各ミッションには「ストーリーモード」と平行してプレイできる「サイドストーリーモード」がある。これは本編と同じ時間軸で進行するショートストーリーを体感できるというもの。てっきりストーリーモードを別の登場人物の視点でプレイするのかと構えていたら、サイドストーリーもアリシア操作で進む。こちらは新しいトラップを開発するために必要な「Warl」の稼ぎをメインとしたものになっているようだ。

 だが、館に強盗が押し込んできたり、勇者がアリシアを救出しようとするなど、意外性のあるショートストーリーが多く本編より面白い場面も多々ある。登場する敵も少なく、ちょっとしたハプニング集というところで気軽に楽しめるだろう。サイドストーリーのデモはフルボイスでないのは残念だ。


■ 鍛えられる思考力、トラップで脳の活性化を

 プレーヤーが設置できるトラップは「天井トラップ」、「床トラップ」、「壁トラップ」の3種類。トラップは西洋風の拷問道具や処刑器具のオンパレード。そんな凶悪トラップの中に、「刻命館」シリーズ伝統の「バナナノカワ」や「タライ」といったコメディの小道具が含まれているのが笑える。

【天井トラップ】 【床トラップ】 【壁トラップ】
上から物を落とす系統の罠。敵を圧殺する「アイアンボール」や「タライ」などがある 地面に設置するタイプの罠。「ベアトラップ」などで敵を足止めすることができる 壁面に設置するタイプの罠。壁がせり出す「スマッシュウォール」は敵を弾き飛ばす


 トラップバトルは敵を罠にハメる瞬間の爽快感も楽しいが、ミッション前のトラップ選択も面白い。敵をどんなトラップで料理するかという黒い計画を考案する醍醐味があるからだ。トラップをミッションに持ち込むには、トラップ装備画面で「天井」、「床」、「壁」から3種類ずつ最大9種類のトラップを装備する。

 ミッションに進むといよいよマップにトラップが設置できるようになる。ゲーム中に○ボタンを押すことで、いつでもトラップ設置画面に入ることができる。トラップ設置画面は俯瞰視点で見通しが良く、マップもマス目で区切られているので操作は快適。ポンポンと置いていく間隔で「天井」、「床」、「壁」に罠を仕掛けることができる。

 設置したトラップはそれぞれに対応したボタン「天井△ボタン」、「床×ボタン」、「壁□ボタン」で起動することができる。トラップには「チャージタイム」があり、チャージが完了しないと起動はできない。トラップ設置後、起動後はチャージタイムが発生するので、乱発はできないというわけだ。

 トラップの設置箇所にはマーカーが出現するので、侵入者とマーカーが重なった瞬間に起動するのが基本。侵入者は総じてアリシアの後を追うように動くので、トラップの場所へ誘導しやすい。同じ場所で何回も同じトラップに引っ掛かるため物足らなさを感じる部分もあるが、初心者から上級者までプレイすることを考慮に入れると適性な難度といえるだろう。

 注意したいのは一部の侵入者は罠に対するガード能力、そして耐性を持っているということ。「壁」の特殊能力を所持している敵は、壁から造り出すトラップを回避してしまう。これは「侵入者情報」で、どのトラップが通用するかを確認すれば特に問題はない。ちなみに、筆者お気に入りの罠はやはり「デルタホース」、ぶっちゃけ三角木馬である。

デルタホース開発後、アリシア姫を即攻でデルタホースに騎乗させる。トラップの威力を測っているだけでやましい気持ちは……ない
 このトラップバトルの真骨頂は、敵に連続でトラップをヒットさせる「トラップコンボ」にある。トラップコンボは、トラップにヒットした敵のライフゲージが赤いうちに次のトラップを当てることで成立。敵がトラップで何ブロック移動するかまでを計算してコンボを仕込む作業は楽しく、手順を考えているうちに最近流行りの脳活性ゲームばりに思考力が鍛えられた気がした。

床トラップのベアトラップ(カニバサミ)で敵の動きを止めているうちに天井からタライを落とし、壁からメイデンハッグを出して3コンボ


 新しいトラップを開発するために必要な「Warl」を稼ぐためにも、トラップコンボは狙う必要がある。トラップが敵にヒットすると「Ark」という得点のようなものが加算される。トラップを当てた時の獲得Ark数が多いほど、「Warl」の元となる「ソウルティア」が敵から多く出現する。トラップコンボを行なうと獲得Arkに倍率がかかり、結果的にWarlを稼ぐことができるという寸法だ。

 残酷なトラップの連鎖で倒される敵には本当に申し訳ないのだが、トラップコンボが仕込み通りに成立した時は、思わず口の端が「ニヤリ」と歪むほどのエクスタシーが脳髄に走る。ぜひ、このゲームでしか味わえないトラップコンボの愉悦を肌で感じてほしい。


■ 罠にかかる痛みの演出「Dark illusion」

 10数秒に渡り敵をいたぶる演出が流れるギミック、それが「Dark illusion」だ。このギミックは脱出不能でかかった敵に致死的な大ダメージを与える。体力のあるボス敵などに当てていきたい大技である。

 「Dark illusion」の演出はまさに拷問ジェットコースターと呼ぶにふさわしく、とにかくハードで痛々しい。流れる映像はリアルタイムのムービーで、犠牲者であるポリゴンキャラクタは思いもよらぬ方法で滅茶苦茶にされる。犠牲者の苦悶が文字通り痛切に伝わってくる身の毛もよだつ光景だ。

 だが凄惨な物ばかりではなく、発想と映像が滑稽で思わず笑ってしまう「Dark illusion」もある。串刺しと空中ブランコをミックスした「魔の空中ブランコ」はその最たる例と言えるだろう。

■■魔の空中ブランコ~説明~■■

・滑車を掴み、勢い良く空中を舞っていきます。このとき、炎の柱に触れることで、攻撃力が増加。
・電撃により動きが止められている人間に向かって蹴りを当てる。
・勢い良く蹴られた人間は、後ろに飛ばされて上から下りてきた壁針に串刺しとなる。

 「なぜ魔神の力を借りてまで空中ブランコなのか?」、「使い方がおかしくないか?」という至極当然の突っ込みを強引に突破したギミックだ。アリシアも妙に殺る気満々で空中ブランコをしている姿にも笑いが込み上げる。結果的には犠牲者が非業の最期を遂げる「Dark illusion」なのだが、その過程はちょっぴりユーモラスだ。

 この「Dark illusion」はプレーヤーが設置する通常のトラップと異なり、部屋に隠されている起動条件を探し出さなければならない。起動条件はノーヒントのため、「Dark illusion」を見つけるのは慣れないうちは困難を極めるだろう。ただ、巨大な像がある地点や血のベットリと付いた床など、「Dark illusion」が隠されているポイントはそれとなくわかるようになっている。

 基本的に、起動が面倒な「Dark illusion」を使わなくてもミッションクリアに支障はない。だが、通常のトラップの“罠をかける快感”とは逆に“罠にかかった痛み”を実感できるのが「Dark illusion」だと筆者は思う。ややボリュームは薄いものの、その濃密な映像の数々をすべて見ていただきたいと切に願いたい。


■ “痛さ”を支えるリアリティのあるグラフィック

アリシアたちのコケティッシュなコスチュームにも注目したい
 舞台となる中世の西洋を意識した館や古城のモデルは、部屋の細部に至るまで精巧に作り込まれている。壁や床にベットリと付着した血痕や、薄暗い室内が重々しいプレッシャーをプレーヤーに与える。

 主要キャラクタのグラフィックは丁寧に描き込まれていて魅力的。アリシアやレイチェルといった女性キャラクタは、特に精魂込めて作られているという気がする。さすがはテクモタイトルといったところだろうか。メインとなるバトルシーンでもキャラクタはリアルかつスムーズにアクション。違和感なく動かすことができるクオリティといえる。

 残念なのは、雑魚クラスの敵にフェイシャルアニメーションがほとんど適用されていないこと。口を動かさず台詞を話す敵キャラには違和感を感じるが、所詮やられ役だからそこまでこだわらなくてもいいとは思う。

 さらに映像表現に深みを与えているのが、凶悪なトラップのビジュアルとキャラクタのモーション。トラップの見た目からして「殺傷」を感じさせる造詣が素晴らしく、その質量感も確かなもの。「ブンッ」、と虚空を薙ぐペンデュラム(振り子の罠)は圧倒的な迫力を表現する。

 このゲームでは罠のタイプによって、ダメージのリアクションが異なる。落下物に潰されたポーズなどはプレーヤーに「うわ、痛そう」と思わせるだけのモーションを見せてくれ、これが罠に掛かった時の表現力を倍加させている。




マッチョな兄貴にデルタホース、フォー!
 音楽については、音質的にも雰囲気的にも良質な部類だと思う。バトルシーンでは緊張感のある音楽が、イベントシーンではシナリオに即した悲壮感の漂う音楽が演奏されてゲームをきちんと盛り上げる。

 音関係ではSEがこのゲームの“痛みの表現”の説得力を強める重要な要素として挙げられる。壁に叩きつけられる、肉がすり潰されるといった非日常の音が、“リアリティのある音”として聞こえるから不思議だ。それにしても、悲鳴関係の収録は「次はペンデュラムで頭を割られた時の悲鳴をお願いします」とか声優に注文するのだろうか。一度アフレコに立ち会ってみたいものである。

 やり込みに関しては、“所持トラップを100%にする”、“侵入者を皆殺しにしてキャラクタ名鑑を埋める”といったコンプリート要素がある。コンプリート要素だけなら3周もすれば達成できるが、やはりトラップコンボを追求することがこの作品のやりこみ要素といえなくもない。

 出てくる敵を倒し続けるサバイバルモードもあるが、ただ時間内に規定数の敵を倒していくという本編のバトルの延長戦上にあるモードなので、個人的には飽きが来るのが早いのではないか? と感じられた。本編を何度もやり直すというのも楽しいが、それとは別に熱中して遊べるモードが欲しかった気がするのは筆者だけだろうか。

 「影牢II -Dark illusion-」のマニュアルの「この背徳の魅力にどっぷりと浸かってください」という一文通り、“罠”というどこか後ろめたさを感じさせる手段で敵を倒すことは「刻命館」シリーズだけが持つ独特の世界。このインパクトを未体験の方はぜひ「影牢II -Dark illusion-」をプレイして、背徳の魅力に痺れていただきたいものである。

(C)TECMO,LTD.2005

□テクモのホームページ
http://www.tecmo.co.jp/
□「影牢II -Dark illusion-」のページ
http://www.tecmo.co.jp/product/kagero2/
□関連情報
【6月16日】テクモ、PS2「影牢II -Dark illusion-」
先行体験イベントを新宿・秋葉原で実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050616/kagero.htm
【5月21日】【E3 2005】テクモブースレポート
「DOA4」、「Ninja Gaiden Black」、「FatalFrameIII」、「Trapt」などを映像出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050521/t_ss.htm
【4月8日】テクモ、PS2「影牢II-Dark illusion-」プロモーションビデオ公開!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050408/k2.htm
【3月25日】テクモ、PS2「影牢II ~Dark illusion~」
予約特典は旧3作品の映像DVDと設定資料集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050325/kagero.htm
【3月11日】テクモ、PS2「影牢II -Dark illusion-」を6月30日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050311/k2.htm
【2月14日】テクモ、PS2「影牢II -Dark illusion-」
新たなトラップなどのスクリーンショットを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050214/kagero.htm
【2004年9月24日】TGS2004ブースレポート~テクモ編~
「DOAU」、「影牢II」で大盛況
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040924/tec.htm

(2005年8月9日)

[Reported by 福田柵太郎]



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