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開催日時:4月8日~14日 11時~20時 (最終日は17時閉館) 会場:ラフォーレミュージアム原宿
【NDS用「エレクトロプランクトン」】
「エレクトロプランクトン」は、ジャンルを“メディアアート”としているとおり、ゲーム的な要素は少ないが、タッチペンで画面をさわることで変化する動きと光、そして奏でられる音が楽しいこれまでにないソフトに仕上がっている。タッチペンで画面をなぞるとなんらかの変化が画面に現われ、同時に音の変化に繋がるため、「エレクトロプランクトン」の世界との一体感を感じることができる。大人にも不思議な魅力を感じることができる作品だが、子供にとってはなんとなく画面をさわっているだけで次々と変化が起こるので、面白いと感じることができる作品だろう。 同作にはたくさんのプランクトンが登場する。それらはそれぞれ違った特性を持っていて、遊び方も全く違う。例えば「ルミナリア」。矢印に沿って動く4匹のプランクトン。音を奏でながら動き回るので、矢印を変えることで動く軌跡を変えながら気持ちのいい音の流れを探っていく。また、わっかの形をした「ヒカリノワ」はタッチしてクルクルと回してやると、音を奏でながらリングを出す。リングは3つまで出るが、1オクターブづつ高くなっていく。そのリングがほかのリングと重なり合うことでも音が変化していく。
言葉だけで説明してもわかりづらいが、 (画面を) さわって得られるその気持ちよさは一級品だ。単純なようでいて色々な仕掛けが用意されていて、それらは分厚い説明書を読みながら試してみても良いし、なんとなく画面をさわりながらボタンを押したりして、“どんな変化が起こるのか”探しながら長く楽しむという手もあるだろう。価格は4,800円。 会場には中央に「エレクトロプランクトン」がセットされたニンテンドーDSが出展され、ヘッドフォンをして来場者がプレイできるようになっていた。岩井氏は「さわることができることの重要性」を語っており、それを端的に表わした展示内容だ。 それを囲むような形で多様な出展物が並ぶ。「エレクトロプランクトン」に登場するプランクトンがどのように描かれ、どのように動くようになったのかを段階毎にグラフィックをニンテンドーDSに表示して見せる展示や、設定資料、凝りに凝ったパッケージデザインについての制作過程の資料、「エレクトロプランクトン」仕様にデザインされたニンテンドーDSといったゲームに直結する出展内容はもちろんのこと、同氏がこれまでに手掛けてきたメディアアート作品、「ウゴウゴルーガ」といったテレビ作品なども資料が展示されている。 それだけではない。同士が手掛けたソフト「オトッキー」、そして任天堂からついに発売されることがなかった幻の作品「サウンドファンタジー」など、資料価値として高いものも並んでいる。また、同士のプライベートに関する展示内容も目立つ。大阪万博の写真から、同士が昔ハマッたという顕微鏡やラジカセ、キーボードや電子ブロックなど、同士の言う「エレクトロプランクトン」を制作するにあたって影響を受けた物が出展されている。
一見すると関係ないように見えるが、作家としての“岩井俊雄”氏を形作る内容を知ることができ面白い。また、そういったことを知ることで、「エレクトロプランクトン」の魅力の一端も垣間見ることができるだろう。 今回開催された関係者内覧会では岩井俊雄氏のライブパフォーマンスからスタート。会場中央付近に設置された舞台に登壇した岩井俊雄氏は、2台のニンテンドーDSを使いスーパープレイを披露。ふたつのニンテンドーDSから出る音をうまくリミックスして、普通のプレイではなかなか実現することのできない「エレクトロプランクトン」の世界を表現してみせた。 さらに途中からはバイオリニストの黒田琴子さんが演奏に加わった。岩井氏は「エレクトロプランクトン」の“ルミナリア”を使い、生の楽器の演奏とスーパープレイのコラボを披露してみせた。岩井氏によれば、「エレクトロプランクトン」の演奏をDVDに収め大阪に住む黒田さんに送り、それを元に今回初めて一緒にプレイしたのだという。同氏は「緊張していたこともあって、中央画面に映像を出力し忘れるなど失敗した」とコメントしたが、素晴らしいコラボレーションとなった。会場では、9日の15時と18時にも岩井氏のライブパフォーマンスがプレイされると言うことなので、アート好きは会場に足を運んでみて欲しい。 ライブパフォーマンスに続いてマイクをにぎった岩井氏は、任天堂の岩田聡代表取締役社長と宮本茂氏を招き入れた。開口一番「よくこんなわがまま聞いてくれたなと思いました」と岩井氏。一昨年の後半に、2画面搭載することやマイクを搭載するといったニンテンドーDSの基本仕様がかたまりはじめ、その時点で岩田氏と宮本氏の間で、岩井俊雄氏ならこのハードを使って面白い作品を作ってくれるのではと話題に上ったのだという。これまで任天堂は岩井氏とはつきあいがあったもののゲーム機とは接点がなく、ソフトウェアの商品化は実現しなかったが、「今回は絶好のチャンス (岩田氏) 」ということで、任天堂の方から岩井氏に打診したのだという。岩田氏はこの点について「ゲーム作りをしている人からは出てこない、岩井さんならではのニンテンドーDSの可能性を示してくれると思った」と表わしている。 そして話題は自然とゲーム作りへと向かった。岩井氏は宮本茂氏の「スーパーマリオブラザーズ」に影響を受けたと言い、「ジャンプしたときの気持ちよさ」はどこから来るのかを分析。逆に宮本氏は、その気持ちよさを追い求める感覚的な部分に岩井氏との接点を見いだしたと語った。 岩井氏は以前、スーパーファミコン用ソフト「サウンドファンタジー」を制作したが、残念ながら商品化に至らなかった経緯がある。岩井氏は「今回もお話しをいただき同じ事になったらイヤだなぁ」と頭をよぎったという。宮本氏はこの時のことを振り返り、「さわっているだけで楽しい作品なのに、途中から『もっとゲームじゃなければ売れないのでは』といった話が持ち上がり、どんどんゲームになっていくにつれて弱っていった。僕がプロデューサーになったらリベンジしてやろうと思っていた」とニンテンドーDSというハードを投入するにあたり、音の機能を豪華にするなど岩井氏にソフトウェアの制作をお願いする機会を狙っていたのだという。 岩井氏はゲームの作家性についても疑問を投げかけた。「ゲームのパッケージには制作者の名前が書いていない。情報としては誰が作ったかは流れてくるけど、パッケージには同じフォントでタイトルだけが書かれていて、味気ない。今回はわがままを言ってパッケージの大きさを変え、自分の名前を入れさせてもらった」とこだわりを示した。これに対して岩田氏は「ゲームの制作ツールがもっと簡単に扱えるようになり、ゲームの制作にあたって個人の目が行き届くようになれば、作家性がもっと取り上げられるようになるかも知れない」とコメント。岩井氏は「そういったことがあれば、ゲームの幅がちょっと広がると思う」と付け加えた。 岩井氏は「エレクトロプランクトン」の制作に当たって、「さわることで気持ちいい」作品を目指したというが、これが一般の人に受け入れられるかが不安だったようで、トークショウ中に何度も口にしていたが、宮本氏は「買わないのは世間が悪い」と一蹴。その一方で「作っているときはいつも不安。理念は理念で現実は現実で悩んでいる。でも昨年末に『エレクトロプランクトン』はこの気持ちよさだけで十分売れると自身ができた」とその出来に太鼓判を押した。一方、岩田氏は「さわる人の好奇心を試すソフト」と形容し、さわる人の好奇心でドンドン発見があり、楽しめるソフトだと説明した。 トークショウはまるでGDCのような話題でゲーム制作者の裏側を垣間見ることができる楽しいものだった。ある意味、ゲームという範疇で語ることは難しい作品だが、さわって気持ちのいいソフトウェアであることは間違いない。まずは展覧会まで足を運んでみてはいかがだろうか。
(C)2005 Toshio Iwai/Nintendo
□任天堂のホームページ (2005年4月8日) [Reported by 船津稔]
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