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★PS2ゲームレビュー★
現実のプロレスがそうであるように、プロレスをモチーフにしたゲームに対するユーザーのニーズも、近年は極めて多様化している。「ランブルローズ」の場合は「最も美しくて強いものが勝者となる究極のエンターテインメントプロレスリング“ランブルローズ”」という架空の大会が舞台。近年は女性の総合格闘技も盛んになってきているが、本作がいわゆる“女子プロレス”の範囲内でまとめられているのは、プロデュースを担当したコナミ内田氏の年齢によるところがあったのだろうか。 筆者もそうだが、この世代の女子プロレスに対するイメージは「ビューティペア」、「クラッシュギャルズ」そして「団体対抗戦」までの流れに大きく影響されているのが通例。男子でいえばUWFのように“ファンが本気(と書いてマジ)だった時代”であり、「ランブルローズ」は、こうした精神的土壌を背景に、'90年代後半から北米で高い人気を誇るレスリングエンターテインメントプログラム「WWE」の“華”ともいうべき女性タレント「DIVA(金髪美女)」、さらにはジャパニメーション的なストーリー演出といった各要素を適度にミックスして生み出された作品という印象が強い。
美人だけの女子プロレス。過去に同コンセプトのゲームは少なからず存在していたが、そうした作品群と「ランブルローズ」は、どう違うのか。まずは操作方法などの基本仕様からチェックしていこう。
■ 一般的な3D対戦アクションに近い操作性 ~プロレスに特化した味付けは希薄~
打撃ボタンは、連打すればコンボ攻撃になる(最大5ヒット)。方向キーを押しながらボタンを押せば、ニュートラルの状態とは異なる打撃技が繰り出される。相手をつかまえる(ゲーム中の用語では“グラップル”)には、接近した状態で方向キーと△ボタンを同時押し。相手と組んだ状態で方向キーの上下左右いずれかと△ボタンを同時押しすれば、4種類の技が使いわけられる。×ボタンでダッシュしながら□、△ボタンを押せば、それぞれダッシュ攻撃になる。一気に間合いを詰めて攻めたいときに便利だ。
このほか、特殊な攻撃として「関節技」、「キラームーブ(リーサルムーブ)」、「H(Humiliation)ムーブ」が存在する。関節技は、常に一定のダメージが与えられる投げや打撃と違い、振りほどかないとアッという間にギブアップを奪われてしまう。関節技が決まると、画面には振りほどくために必要なボタン入力の回数、ギブアップのカウントダウンに相当する関節技ゲージが表示される。ダメージは頭、腕、胴、脚の4つに大別されており、同じカ所ばかり狙われると非常に危険。対戦プレイでは「関節技のピンポイント攻撃はナシね」など、あらかじめレギュレーションを設定しておかないとゲームバランスを大きく崩しかねない強烈な威力を誇っている。
キラームーブとリーサルムーブは、ひらたくいえば“必殺技”にあたる存在。相手を攻撃するとキャラクタ名の横にある黄色い必殺技ゲージが増えていき、マックスになるとカウンターがひとつ増える。使える状態のときは、画面に大きく「L1」と表示されるので、素早くL1ボタンを押すだけでOK。リーサルムーブも出し方は同じだが、キラームーブと異なり「コーナーポストの上に立つ」など複数の条件を満たす必要がある。
Hムーブは、相手に女性的な屈辱を与える攻撃。特定の技が成功したときだけ画面に表示されるハートマークとゲージが最大になると、対戦相手が“屈辱状態”になる。このとき、必殺技ゲージがひとつ以上たまっていれば、画面に表示が出た瞬間にL2ボタンを押すだけで技が繰り出される。ただし、キラームーブと異なり屈辱状態は一定時間が過ぎると終了してしまう。ある程度ダメージを与えている部位ならば、決まればほぼ一撃でギブアップが奪えるだけに、ここは制限時間内にキッチリしとめたいところ。
攻防の基本は、打撃、打撃ガード、グラップルの読みあい。なぜ読みあいになるかというと、相手が攻撃を仕掛けてきたとき、打撃なら□、グラップルなら△、キラー(リーサル)ムーブならL1、HムーブならR1とL2をタイミングよく同時押し、それぞれタイミングよく“R1ボタンと同時押し”すれば、すべて返すことができるからだ。ゲーム内では“受け流し”と呼ばれるシステムで、ダウンしているとき、ロープに振られて返ってくるときにも有効。受け流しに成功すると、相手レスラーは短時間だが行動不能になる。いわゆる“絶好の反撃チャンス”というやつだ。
最初のうちはタイミングがわからずガチャプレイに陥りがちだが、慣れてくれば、打撃コンボの合間やロープに振られて返ってきたときなど、あらゆる場面で受け流しが狙えるようになる。それほど難しいテクニックではないので、相手レスラーの動きを見ながら積極的に狙っていきたい。
プロレスゲームに求められる要素のひとつとして“使える技の多彩さ”が挙げられると思うが、本作は操作がシンプルなぶん、この点で近年発売された多くのプロレスゲームに及ばない。普遍的な3D格闘アクションとしてプレイするなら話は別だが、“プロレス”の看板をかかげるなら、せめて同じ技でもレスラーごとに固有のモーションがあれば、コアなファンにもグッとくる作りになったのではないだろうか。
「プロレスを知らない人や初心者は、そこまでわからない」と考えたのかもしれないが、誰でもすぐ遊べるシンプルな操作性だからこそ“魅せる”部分の作りこみ、あるいは差別化が必要不可欠。労力のわりに報われない要素かもしれないが、こうした部分で違いがわかるユーザーこそが“一番いいお客さん”になってくれるというもの。筆者的には、正直「もう一息のところなのに、勿体ないなぁ」といった印象だ。
■ 潔く出し惜しみのないセクシーっぷり ~CERO18禁に恥じない大人のエンタメ~
ゲーム開始直後は、各モードで選択できるレスラーがロック(制限)されている。これは、ストーリーモードを中心にゲームを進めていくと順次アンロックされていく仕組み。各キャラクタには、ベビー(善玉)とヒール(悪役)といった属性が存在するが、それぞれ外見が大きく異なるほか、使える技が一部変更されているなど、ほとんど別人といった印象。実際、ストーリーモードでは各キャラクタごとにベビーとヒールで独立したストーリーが用意されている。
属性は、単に使えるキャラクタが増えるというだけではなく、後述のギャラリーモード内にある「PERSONAL」にもダイレクトに関係してくる。PERSONALを閲覧するには、見たいキャラクタがエキシビジョン内の対戦形式「タイトルマッチ」でチャンピオンに勝利する必要がある。ゲーム開始当初、PERSONALでイーブル・ローズだけが閲覧可能なのは、彼女がチャンピオンベルトを所持しているからだ。 チャンピオンに対する挑戦権は、誰にでも与えられるというものではない。挑戦権を得るためには「VOW SYSTEM(誓約システム)」で表示される属性ゲージを、ベビーまたはヒールのどちらか一方に振り切らせなければならない。属性を変化させるためには、エキシビジョンマッチが不可欠で、キャラクタ・ステージ決定後に表示される「VOW」で、「フォール1回で勝つ」、「R1を一度も使わない」などの“宣誓”を3つ設定し、それを満たしたぶんだけゲージが変化するといった仕組み。VOWは30種類あり、それぞれ内容が異なるほか、難易度が高いほどゲージが大きく変化。早くゲージを振り切らせるには、それなりのプレーヤースキルが必要ということになる。 ここで「PERSONALって、なんでそこまで手間がかかるの?」と不思議に思われる方も少なくなさそうだが……これは「プレーヤーによってはプロレスよりも重要なモードだから」としか言いようがない。 PERSONALは、選手の個人データ、VOICE、入場テーマ曲のほか、選手の“美しい肢体”が心ゆくまで堪能できるモード。さらに清々しいことに、コンシューマタイトルにありがちな“小賢しいカメラアングルや時間などの制限”が「ランブルローズ」には存在しない。正々堂々(?)とセクシーさを前面に押し立てる作りには、思わず「内田Pと制作チーム! オマエ(ら)は漢だ!!」と思えるほどの感動を覚える。人によっては「こんなゲーム買って、恥ずかしくないの?」と無粋な言葉を投げつけてくるかもしれないが、PERSONALにおけるキャラクタの仕草を眺めていれば、そうした雑音はもちろん、プロレス部分の作りの甘さなどは前頭葉から吹き飛んでしまう。もうこの際だからぶっちゃけてしまうと、プロレスゲームとして足りない点は、それこそ枚挙に暇がない。だが、「ランブルローズ」が、どこに重点を置いて作られているかは、もはや誰の目にも明らか。精魂込めて作られた“女性のモデリング”からは、制作者の情念みたいなモノがヒシヒシと伝わってくる。 包み隠さない潔い作りだけに「女子店員に笑われそうで、店頭で買えないとです……」というヒロシばりにシャイな人もいそうだが、恥ずかしがったところで、誰が得をするというのか。「こんなの買ってキモーイ」などとほざく輩は、どうせ人生において無関係な人々なのだから放っておけばいい。むしろ、買えずに悶々としている己の姿こそ情けなくはないか? 21世紀を生きる男子として、不健康極まりないとはいえまいか!?
繰り返しになってしまうが、ポリゴンモデルを見てグッとくるものがあれば、それだけで十分“買い”の1本。手をこまねいていた人は、この機会にぜひ。それが次回作へとつながっていくのだから……。
(C) 2005 Konami Computer Entertainment Tokyo
□コナミのホームページ (2005年3月14日) [Reported by 豊臣和孝]
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