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Game Developers Conference 2005現地レポート

IGDA日本の新氏ら、日本におけるシリアスゲームの動向を発表
「Game=Evil」の意識を払拭する意欲的な取り組みを実施

3月7日~11日(現地時間) 開催

会場:Moscone West Convention Center

 サンフランシスコで開催されているGame Developers Conference(GDC)の2日目となる3月8日、「Serious Game Summit(シリアスゲームサミット)」にて、日本のシリアスゲームの動向を発表するセッションが行なわれた。登壇したのは、東京大学大学院助教授の馬場章氏、IGDA日本コーディネーターの新清士氏、シリアスゲームジャパンコーディネーターの藤本徹氏の3氏。

 「シリアスゲーム」というのは、教育や医療、経営、政治など、社会問題に対応するゲームのこと。ゲームの持つ面白さを生かしながら、娯楽としてだけでなく、さらに多方面へのポジティブな効果をもたらそうというのが、研究の主題となっている。世界的に研究が進められており、今回のGDCでも、2日間にわたって「Serious Game Summit」という大枠が取られており、その中に約30のセッションが設けられている。今回行なわれた3氏のセッションも、その中の1つとなる。

シリアスゲームジャパンコーディネーターの藤本徹氏
 まず最初に登壇した藤本氏は、日本のシリアスゲームについて触れる前に、学習漫画を紹介した。漫画はゲームよりも古い歴史を持つ娯楽だが、歴史や経済など、さまざまな内容の学習を目的とした漫画が、日本には多数存在する。これを聞けば多くの日本人は、「娯楽と学習は両立しない」という発想を捨てざるを得ないし、既にそれが受け入れられている土壌が存在することも理解できるだろう。

 続けて藤本氏は、日本で発売されているゲームの例として、日本各地を旅することで、地理や文化を知ることができるハドソンの「桃太郎電鉄」や、ドラムセットを実際に叩くというコナミの音楽シミュレーション「drummania」などを挙げた。これらはシリアスゲームとしての可能性を秘めてはいるが、シリアスゲームとして完成しているものではないという。その後も藤本氏は、シミュレーションゲームの「電車でGO!(タイトー)」、歴史シミュレーションの「信長の野望(コーエー)」、ことば遊びゲームの「ことばのパズル もじぴったん(ナムコ)」、音声入力対応の「シーマン(ビバリウム)」など、複数のタイトルをジャンル別に紹介した。

 さらに注目タイトルとして、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「蚊」を挙げ、リラックスポイントを突いて人間を落ち着かせるというプレイ内容から、「指圧が学べる」といって笑いを取ったりもした。しかしこれは、「楽しみながら学べる」という、シリアスゲームの重要なポイントを実にわかりやすく表現しているといえる。

 最後に藤本氏は、日本のゲーム会社のシリアスゲームの取り組みを発表。ナムコのリハビリテーションマシンとしての「太鼓の達人」や、コナミのフィットネスクラブに設置されているエクササイズバイク「EZBIKE-sp2」などを紹介した。

 全体としては、日本におけるシリアスゲームの現状をおさらいするといった内容で、特に真新しいデータはない。今回の藤本氏の発表において重要なポイントは、日本には教育を中心としたシリアスゲームが今後伸びていく土台と、可能性を持ったタイトルが数多く存在するということを明確に示したことにある。シリアスゲームはその名前ほど、堅苦しいものでないことはわかっていただけるだろう。

藤本氏が「シリアスゲームとして魅力的」としたタイトルたち。シリアスゲームの方向性がよくわかる 例として挙げられた「蚊」。お笑いネタではあるが、楽しく学ぶというコンセプトが伝わってくる 日本のゲーム会社によるシリアスゲームを発表。写真はナムコのリハビリマシン「太鼓の達人」


IGDA日本コーディネーターの新清士氏
 次に登壇した新氏は、IDGA日本の取り組みと、日本が抱えているゲームに関する問題を紹介した。IGDA日本の取り組みについては、先日行なわれた「アジア オンラインゲームカンファレンス(AOGC)2005」や、2004年9月に行なわれた「CEDEC2004」などの発表が主な内容となっていた。

 ゲームに関する問題としては、まず「ゲーム脳」に触れた新氏。「ゲーム脳」とは、森昭雄氏が「ゲーム脳の恐怖」という本で書いた「テレビゲームをすると脳の働きが鈍くなる」というもので、当時は新聞やテレビでも取り上げられるほど大きな話題となった。だが新氏はこれを「Stupid theory(馬鹿げた理論)」と一蹴している。

 「ゲーム脳の恐怖」の発表後、他の論文やCESAによるレポートなどで、反論も多くあがっている。真っ赤な嘘とは言わないまでも、研究データが不十分である点、またネガティブな要素にしか目を向けていないなど、その完成度の低さを指摘する声は多い。しかし、「ゲーム脳」のインパクトは強く、現在に至ってもその影響が強く残っている。特に一般には、「子供がゲームに夢中になって勉強をしない」といった親の不満を強くあおる形となり、「Game=Evil(ゲームは悪)」という図式が強固に成り立ってしまっているという。

 シリアスゲームは、ゲームを使ってポジティブに問題を解決しようとするものであり、「ゲーム脳」とは対極にある発想といえる。それゆえに新氏は、「ゲーム脳」がシリアスゲームの普及・浸透に大きな障壁となって立ちはだかっている、と指摘している。

 またゲームをめぐる問題として、続けて「ひきこもり問題」を挙げた。「ひきこもり」とは、他者との接触を避け、外出せず閉じこもってしまうこと。この原因として、オンラインゲームに夢中になったため、とする報道が最近よく見られる。これも原因をオンラインゲームだけに押し付けるのは強引であると思うが、社会的にゲームのイメージを悪いものにしていることは確かだろう。

 新氏はこれらの問題を挙げるだけでなく、MMORPGを教育方面に生かす研究など、現在進められている取り組みについてや、CEDEC2005でシリアスゲームセッションを計画していることなどを発表した。日本向けの発表となるCEDECでは、より具体的な話も聞けることと思うので、興味のある人はそちらにも期待していただきたい。

「ゲーム脳」や「ひきこもり」など、ゲームが原因とされる問題を取り上げた新氏。シリアスゲームを普及させるためにも、一般層の意識改革が必要だと訴えた


東京大学大学院助教授の馬場章氏
MMORPGで歴史を学ぶという新たなアプローチも発表
 最後に壇上にのぼった馬場氏は、東京大学ゲーム研究プロジェクトの研究成果から、シリアスゲームに関する内容を発表した。

 発表内容は、先日行なわれたAOGCのものと近い内容で、新しいリハビリテーションゲームの研究を行なっていることや、今後「信長の野望 Online」を用いた歴史教育の研究を始めることが発表された。

 全体を通して、世界に向けて日本の現状を伝えるという構成になっている。シリアスゲームはなかなかの難題ではあるが、いくつかのアプローチで研究が進められていることが発表されたという格好だ。



 ちなみにこのほかのシリアスゲームのセッションでは、米国を中心とした話題が取り上げられていた。ゲームにマイナスイメージを抱く人が多いという問題は、日本ほどではないにせよ確かに存在するようで、それらを払拭しようという狙いのセッションも見られた。またシリアスゲームは、一般の娯楽用ゲームと比べてメディアの注目度が低いため、一般層の認知度も低くなりがちだ、といった話題を取り上げるセッションもあるなど、なかなかバラエティに富んだ内容が見られた。

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□シリアスゲームジャパンのホームページ
http://anotherway.jp/seriousgamesjapan/
□関連情報
【3月1日】アジア オンラインゲームカンファレンス2005 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050301/aogclink.htm

(2005年3月9日)

[Reported by 石田賀津男]


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