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Game Developers Conference 2005現地レポート

スクウェア・エニックス伊藤氏、GDC Mobileにて
「ファイナルファンタジー」シリーズのモバイル事業を紹介

3月7日〜11日開催(現地時間)

会場:Moscone West Convention Center

 GDC2日目となる3月8日は、前日に引き続き1日コースのチュートリアルセッションが実施された。7日よりも4コマ多い、全15コマの構成で、毎年恒例となっているスポンサーチュートリアルのひとつ「Microsoft Game Developers Day」では、期待された次世代機の話題には触れられず、翌9日のMicrosoft副社長J Allard氏の基調講演に望みを繋ぐ格好となった。本稿では、GDC 2005で最初の日本人の講演となったスクウェア・エニックス伊藤幸正氏の講演の模様をお伝えしたい。

流暢な英語で講演を行なったスクウェア・エニックスの伊藤伊藤幸正氏
「FF1 for Mobile」での問題例
「Before Crisis」は同社が推進するPolymorphic Contentの最初のケースと紹介
 GDC Mobileは、昨日のレポートでも触れたように、ワールドワイドレベルでのモバイルコンテンツの話題を扱ったチュートリアルセッション。数あるチュートリアルの中でも2日連続で実施されるのは、ゲームの学術利用をテーマにしたSerious Game Summitと、このGDC Mobileだけであり、それだけテーマとしてホットであると同時に、欧米のゲームビジネスにおけるちょっとしたトレンドになっていることが伺える。

 GDC Mobileは、午前と午後で取り扱う分野が異なっており、午前はモバイルゲーム市場全般の動向を扱ったゼネラルセッション、午後は実際の制作の実状に迫る開発者向けのセッションが実施されている。繰り返し触れているように、GDCはゲーム開発者を対象にしたカンファレンスのため、午後の方が参加者数が多くなりそうなものだが、実状はまったく逆で、午前中は超満席状態の参加者席が、午後は閑散とした状態となる。午前の参加者層も少しユニークで、あからさまに経営者然としたスーツ姿の参加者の姿が目立つ。

 これは、携帯向けエンターテインメントコンテンツのビジネスそのものが、経営者レベルで参入か否かを迷っている段階であり、いまだ実務レベルまで下りてきていないという実状を明確に示しているといっていい。こうした状況下で、GDC Mobile2日目の午前中の目玉セッションとなったのが、日本を代表するゲームパブリッシャーであるスクウェア・エニックスのモバイル戦略を紹介する「Networked Role Play Games for Mobile Final Fantasy Case Study」である。

 スピーカーは、米Square-Enixにおいてモバイル事業に携わる伊藤幸正氏。伊藤氏は、他社との売り上げの比較データや「ファイナルファンタジー」シリーズと「ドラゴンクエスト」シリーズの売り上げデータを引き合いに、スクウェア・エニックスが日本最大規模のゲームパブリッシャーであることを紹介。

 続いて「ファイナルファンタジー」シリーズの概要に触れつつ、モバイル向けの最初の移植タイトルとして「ファイナルファンタジー for Mobile」を2004年2月にリリース、次いで携帯オリジナル作品として、「ファイナルファンタジー VII」の世界観をベースにした「Before Crisis ファイナルファンタジー VII」を2004年9月にリリースしたことを紹介した。

 「Before Crisis」については、βテスト時に1日当たり160万件のアクセスを達成したことを報告し、これほどの人気を集めた理由として、第1に携帯向けの独占コンテンツであり、携帯電話の特性を活かしたユニークなファンクションを多数盛り込んだこと、第2にシリーズ通算で900万本を売り上げた「ファイナルファンタジー」のブランド力を挙げた。

 一方、「ファイナルファンタジー for Mobile」に関しては、容量や解像度、描画速度、サウンドなど、アーキテクチャがまったく異なるプラットフォーム間での移植の難しさを紹介しつつ、それでも最終的にうまくまとまったのは、キャリア(NTT Docomo)とハンドセットメーカー(Panasonic)との間で極めて円滑な協力体制が整えられたからだという。この話については、CEDEC 2004において、スクウェア・エニックスモバイル事業部部長の洞正浩氏が同様の講演を行なっているので記憶している人もいるだろう。

 伊藤氏は、さらにマーケティング戦略にも言及し、3社による大規模なプロモーションが功を奏したことを強調。これはうがった見方をすれば、北米市場における各ベンダーが独立独歩状態であることを揶揄した意見とも見て取れる。会場にはノキアやモトローラ、ソニー・エリクソンといったキャリア、ハンドセットメーカーの関係者も確実に来ていたはずだが、新参者にもかかわらず、圧倒的なコンテンツパワーを背景に、大胆な提言をしてみせるのは、いかにもスクウェア・エニックスらしいビジネスのやり方である。

 「Before Crisis」の紹介では、会場で実機を操作して、デジタルカメラ機能を使ったデモンストレーションも行なわれたが、正直なところあまりにシステム的に斬新過ぎて、参加者もあまりピンと来てない様子だった。同作では、デジカメで撮影した写真を使って“マテリア”を自作することができるのだが、これはデータの色情報によってバリエーションが変わり、装備することで自キャラの強化に役立つ。さらに、ネットワークを介してマテリアをユーザー同士で送り合うことで召喚魔法を使うことが可能になるというシステムである。

 個人的には、会場の反応の鈍さを見る限り、仮に欧米で展開したところで「早すぎて失敗する」典型例だと感じたが、後で伊藤氏に直接話を聞いてみたところ、スクウェア・エニックスとしてもそうした欧米の市場動向は十分認知しており、当面欧米で「Before Crisis」を展開することは考えてないという。これはユーザーの意識レベルだけでなく、やはりハンドセットのハードウェアレベルの問題もあるようだが、こうしたことから当面のうちは「Musashi Mobile Samurai」や「FF VII Snowboarding」など、誰が見ても即座に内容を理解できる単純明快なアクションゲームを中心にじっくり展開していくという。

 講演後は、GDC恒例の質疑応答の時間が設けられたが、珍しいことに誰も手を挙げなかった。しかし、伊藤氏が降壇するやいなや大勢の参加者に取り囲まれたのは特筆していい。つまり、欧米におけるモバイルゲーム市場は、まだパブリックインタレストには至らないものの、大きなビジネスチャンスが眠っている、というわけだろう。伊藤氏によれば、「自社タイトルにこだわらず、優秀なデベロッパーの作品をパブリッシュする選択肢はある」とコメントしていた。どうやら欧米の同社の事業では、今後、オンラインゲームに続いて、モバイルゲームが成長株になりそうな雰囲気だ。

伊藤氏が再三強調していたのがキャリアやハンドセットメーカーとのパートナーシップ。逆に言えば、日本の強みとは実はそうした部分にあるということだ

紹介するにはちょっと早すぎるかなと思われた「Before Crisis ファイナルファンタジー VII」。GDC Mobileでは、これからモバイルゲームのオンライン化や3Dグラフィックス化を探る段階で、カメラ機能と連動といった+α要素にはまだ至っていないのが実状である

□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□米スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/

(2005年3月9日)

[Reported by 中村聖司]


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