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★ニンテンドーDSゲームレビュー★
ゴースト、孤島、洋館、13歳の少女……これらのキーワードはニンテンドーDS「アナザーコード 2つの記憶」の中に登場する人物や舞台となる場所だ。この情報を仕入れていたため、筆者はプレイするまでずっとこのゲームのジャンルを「ホラーアドベンチャー(ADV)」かと勘違いしていた。プレイした今では、このゲームのジャンルが「現代を舞台としたSF色の強いアドベンチャー」と大雑把にだがカテゴライズできる。本タイトルはDSの下画面のタッチスクリーンを操作することにより、いわゆる「見る→周囲→門を調べる」といった従来のアドベンチャーのコマンド入力から解放された画期的な作品だ。ノンストレスな操作感覚と、斬新な謎解きがウリの本作の魅力を紹介していこう。
■ アドベンチャーゲームを上下2画面でプレイ 「アナザーコード 2つの記憶」は、DSの上下にある2画面の役割が目まぐるしく変わるゲームだ。例えば、オープニングでは1つのシーンを2つのカメラから見たシーンという演出、実際のゲーム内では下画面がキャラクタの移動パネル、上画面が周りの風景を表示、という具合だ。この2画面表示のすべてが探索に有効に機能しているわけではないが、見た目の斬新さを与える効果は十二分にあるといえよう。
探索画面では、下画面をタッチすることで様々な情報が入手できる。ここでは、ADVではお約束ともいえる画面内の調査可能な場所をくまなく調べるという総当り的な作業を強いられることとなる。それほど意地悪な場所にアイテムは隠されていないのだが、画面上わずか数十ドットのポイントを探しだすのは中々骨の折れる作業だと感じた。アイテム探し自体も回数が多いので、忍耐力が求められるADVであることは間違いない。それゆえ、アイテムが見つかった時の喜びは大きいのだが……。
■ 触感が導入されたADV、タッチスクリーン機能の謎解き 「アナザーコード 2つの記憶」では提示された謎に挑み、それを解くことでストーリーが進行する。ズバリこのゲームの謎の大半は「館の扉を開く」や「次の部屋への入口を探す」といった移動のための謎解きパズル。情報をかき集めて推理から回答を捻り出すタイプではなく、画面情報を視認しての連想能力、ひらめきが重視されるタイプの謎と言える。解法を思いついた時は、ユースケ・サンタマリアさんが登場しているTVCMのごとく「そうか!」と叫び出したくなってしまうはずだ。 そして「触れる推理小説」という謳い文句の通り、基本的な謎解きは下画面(タッチスクリーン)を操作して行なう。基本はタッチスクリーン操作、タッチ(タッチペンなどでタッチスクリーンを軽く押す)と、スライド(タッチペンなどをタッチスクリーンに当てたまま、画面をなぞる)を組み合わせるだけだ。例えば、大岩が道を塞いでいる場面では、大岩の端にタッチして真横へスライドする。こうすることで、「大岩の端に手をかけて、岩をどかそうとしているシーン」が発生する。既存のADVでは表現が難しい「触感」を取り入れたことで、ADVでは一瞬で処理されがちなアイテム使用に対するレスポンスの表現が鮮明に表現されている。
また、タッチスクリーンを使用した謎解き以外にも、マイク、2画面などDSの新機能を駆使した謎解きが用意されている。ただし、タッチスクリーンによる謎解きとその他の機能の謎解きは9:1くらいの割合。非常に見落としやすいので注意が必要だ。
さて、「アナザーコード 2つの記憶」の謎解きの難易度はどうか? と問われれば、簡単~普通の中間と答えたい。ほとんどの謎は独立しており、攻略ルート通りにプレーヤーに投げかけられる。必要なアイテムを探し、タッチパネルで使用するだけなのだ。先ほども述べたが、このゲームの謎解きで最優先されるものは直感であり、それは良い意味で「見ればすぐわかる」レベルの物が多い。このような理由で、「謎解きの難易度は低く、年齢層に関わらず楽しめるレベル」と評価したい。 ■ ストーリーのボリュームは控えめな量。だが、それがいい
もちろん、「アナザーコード 2つの記憶」が情報の供給を後回しにすることで期待感を募らせるというADVと考えることはできる。情報が少ない分、後半で明かされる真実の価値は高まり、深い感動がプレーヤーにもたらされていると思う。だが、アイテム探索とタッチパズルが前半~中盤に多いことから、どうにもストーリー運びのテンポの悪さを感じてしまう。ネタバレになるので詳しくは書けないが、「その話をあと2章先に持ってくれば、もっとクライマックスが盛り上がったかも」と勝手に構成を考えてしまった。
1周クリアまでに掛かった時間は約6時間。本格的でSFタッチのストーリーなだけに、もうすこしボリュームが欲しいと思う方もいるだろう。だが、筆者はこの6時間というプレイ時間を妥当とみる。それは筆者が推理小説は一気に読破するタイプだからだ(個人的な理由ですみません)。6時間、もっと勘の良い人なら4、5時間で楽しめるくらいの尺が推理小説らしくはないだろうか? 推理小説を夜中読み始めたら朝まで止まらない、そのような中だるみしないストーリーのボリュームを「アナザーコード 2つの記憶」は目指したと思うのだ。 ■ 次回作には読み返し機能を頼みます! GAME Watch編集デスクの船津氏も「この娘いいですよね」と認める主人公の少女アシュレイ。13歳という多感な年齢の彼女の心の動きが、セリフ1つ1つに織り込まれている。大の大人がハッとするような鋭いテキストも多く、もう一度テキストを読みたいと思う時も多々あるのだ。だが、そういうときに限ってセリフを送ってしまう……。そして残念ながら、テキストの読み返し機能がないこのゲームでは、もう一度読みたいセリフを見つけ出すことが難しい。ぜひ、次回作にはバックログ機能を実装していただきたいところだ。
DSの歴史は始まったばかり、これからも数々のADVが生まれることだろう。それらの判断基準となり得るタイトルが「アナザーコード 2つの記憶」だと筆者は考える。DSの新機能を謎解きに採用したこのゲームの“触る面白さ”を認めた上で、DSならではの機能の必然性を考慮し、純粋に必要な物だけを抽出すれば、このジャンルのゲームは必ず次の段階へ辿り付ける。そんなADVの可能性の広がりを予見させるこのタイトル、ぜひ一度手に取ってユースケ・サンタマリアばりのリアクションをかましてほしい。
□任天堂のホームページ (2005年3月7日) [Reported by 福田柵太郎]
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