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Taipei Game Show 2005現地レポート

Soft-World本社取材レポート その1
Soft-Worldの事業戦略と「信長の野望 Online」の台湾展開について

会期:2月24日~28日(現地時間)

会場:Soft-World本社ビル

 「仙境伝説(ラグナロクオンライン)」の成功で一躍急成長を遂げたSoft-World。その勢いはGamaniaに勝るとも劣らず、関係者は「もうGamaniaは抜いた」と豪語する。

 日本では子会社のあるGamaniaの知名度が高い余り、台湾ではGamaniaが市場を掘り起こし、Soft-Worldが「ラグナロク」で猛追しているというイメージがあるが、実はまったく逆である。

 この台湾オンラインゲーム市場を牽引するライバル両社の関係は非常にユニークである。Soft-Worldの創業は古く、Gamaniaの'95年に対して、'86年に高尾で設立されている。もともとは正規パッケージビジネスを手がけるソフトウェアメーカーとしてスタートし、独自に開発、販売、出版、流通を開拓し、現在に至っている。

 Soft-Worldの強みは、歴史の長さと、自社流通網を駆使した圧倒的なマーケティング力にある。実は台湾のオンラインゲームメーカーで自社で流通網を確保しているのはSoft-Worldだけで、Gamaniaがオンラインゲーム市場で急成長を遂げる前は、Soft-Worldが流通を代行していたという。Soft-Worldの流通の強さは、台湾の大通りに乱立するコンビニに入ればすぐにわかるが、スターターキットやアクセサリーなどSoft-Worldの製品が必ず置かれている。

 こうした華々しい成果を裏付ける事実として、本社の地下には、自前の倉庫を持ち、出荷を待つパッケージソフトが山と積まれてある。その上階には営業部門があり、電話やラインプリンタのビービー音がけたたましく鳴り響いていた。海外のオンラインゲームメーカーの取材で、こうした“モーレツ”ぶりを確認できたのは初めてのことで、まだまだ伸びるメーカーであることを実感させられた。

「ラグナロクオンライン」台湾運営を引っ張ってきたSoft-World産品部副理の謝明娟氏。大のマンガ好きだという
 さて、Soft-Worldグループは、グループ全体の統括と、パッケージビジネスを担当するSoft-Worldと、主にライセンスタイトルの運営を担当するGame Flier、そして自社開発タイトルを扱うChinese Gamerの3つの会社で構成されている。

 Soft-Worldグループは、台北市の東端に位置する南港区にある。周囲には自動車工場やセメント工場などが点在する一方で、アーケード街には中心部では見られないビンロウ売りの店などもあり、どこか懐かしさも感じさせる工業地区となっている。

 Soft-Worldの本社は高尾のままだが、本社機能の大部分は台北支社に移っており、残る子会社はSoft-World台北支社を物理的に取り囲むように、合計3つのビルに分散して入居している。いずれも歩いて数分の距離だが、外部を経由するため、端から見ていてもセキュリティパスが面倒そうだった。しかし、台北支社のビルは購入したもので、流通用の倉庫の確保の問題もあるため、引っ越しするつもりはないという。

 今回は、この3社に対して個別に取材を行なってきた。まずはグループの頭脳であるSoft-Worldと、ビジネスの中核となっているGame-Flierのインタビューからお届けしたい。インタビューに応じて頂いたのはSoft-World産品部副理の謝明娟氏と、Game-Flierの企画部経理の李初陽氏、運営部プランナーの陳義欽氏の3名。産品部副理は、日本でいうマーケティング部副部長、経理は部長といった肩書きになる。

 謝氏については、2年前にも「ラグナロクオンライン」担当の宣伝課課長時代に一度インタビューしているので覚えている方もいるだろう。「ラグナロクオンライン」についてもたっぷり聞いてきたが、その結果相当長いインタビューになったので、こちらについては別稿にてお届けする。

セキュリティの問題で、ほとんどの場所が写真撮影禁止だった。許可されたものだけ掲載する。左から順に営業部、産品部商品課、宣伝課&公開課


■ 「信長の野望 Online」は今夏正式サービス予定

全タイトルのマーケティングを担当している謝氏。2年前に比べると、組織体制も整い、効率よく運営が行なえるようになったという
1月18日の現地での発表会に合わせてオープンした公式サイト。
編集部: まずSoft-Worldのビジネス内容を教えてください。

謝明娟氏: 親会社Soft-Worldと、Game FlierとChinese Gamerの2社の子会社で構成されており、Soft-Worldは、パッケージの流通販売、プロモーション、マーケティングなどを扱っています。Game Flierは海外タイトルの運営代理、Chinese Gamerは自社タイトルの開発運営が中心になっています。

 今年は、さらに新しい子会社を設立する方針です。これは新規タイトルの展開するための子会社になります。そのほかの動きとしては高尾本社の開発部門と、シンガポールのメーカーと提携して新しいビジネスを展開するつもりです。また、今後はゲーム以外のデジタルコンテンツをネットワークを使って配信する事業も行なっていきます。

編: ネットを使ったデジタルコンテンツ配信事業とは具体的に何を差しているのでしょう?

謝: 具体的な内容についてはまだ対外的に発表できる段階ではないので話すことはできません。台湾ではネットワークを利用しているユーザーのうち、ゲームをプレイしている数は1/5程度に留まっています。基本的には残る4/5に対するネットユーザーに対して新しいコンテンツを配信していくということです。

 他社ですと、GamaniaさんやWayiさんは純粋なゲームコンテンツ以外のビジネスも始めていますし(編注:博打ゲームのことを差していると思われる)、我々としても台湾や韓国でのビジネスのやり方を参考にしながら新しいコンテンツを手がけていきたいと考えております。

編: Soft-World全体の台湾における売り上げとだいたいのシェアを教えてください。

謝: 台湾では、人気タイトルの上位3番手までで、全体の7割を占めます。現在1位を独走しているのが「ラグナロクオンライン」です。現在同時接続者数35万人で、これだけで5割の市場シェアを占めています。

編: 2番手、3番手は何になるのですか?

謝: 2位が「リネージュ」で13万人、3位が「シールオンライン」で10万人ぐらいです。

編: Game-Flierのタイトルラインナップとユーザー数について教えてください

李初陽氏: まず「ラグナロクオンライン」は、2月14日のデータになりますが、平日で同時接続31万2,000人、休日で32万7,000人。そのほかにも「EI」(1万人)、「新絶代雙驕」(2万人)、「剣侠情縁」(1万8,000人)があります。そして現在準備しているのが、「RF Online」と「信長の野望 Online」の2タイトルです。

編: 「RF Online」と「信長の野望 Online」はどの程度のユーザーを見込んでいますか?

謝: 「RF Online」は同時接続4万人、「信長の野望 Online」は運営方法含めてまだ企画段階ですので、人数についてはまだ決まっていません。

編: 「信長の野望 Online」は、どのような方法で展開していくのでしょうか?

謝: マーケティング、運営の双方で現在企画を詰めている段階ですので、あまりお話しできることはありません。ただし、台湾では「信長の野望」シリーズは大変人気があり、知名度は抜群です。「信長の野望 Online」の対象年齢層は多少年齢層は高めになります。発売時期は夏頃を考えています。

 また、「信長の野望 Online」は、ゲームパッドのほうがプレイしやすいというハード面での特殊事情がありますから、ハードメーカーと提携してプロモーションを展開していこうと考えています。

編: テキスト以外はゲームの仕様は変わらないわけですか?

陳義欽氏: まだローカライズも完成していない段階ですのでなんとも言えないところがありますが、基本的にはテキスト以外は日本と同じ仕様になる予定です。ただし、社内テストや今後始まるβテストの結果によっては、日本側(コーエー)に相談し、仕様変更を求めることになるかもしれません。

 特にユーザーの意志は尊重するつもりですが、最低限守りたいのは、「信長の野望」が持つ世界観はそのまま残すということです。

編: 細かい話になりますが、「信長の野望 Online」は、「ドラゴンクエスト」シリーズのようなエンカウント式のバトルシステムを採用しています。これについてはどのように捉えていますか?

陳: 以前、戦闘システムについて、ユーザーに調査を行なったことがあります。一番好みのスタイルは、やはり直接マウスで操作するというものでしたが、それ以外にも「ファイナルファンジー」シリーズのようなエンカウントバトルを好むユーザーもいました。これはコンソールゲームで遊ぶユーザーが増えている結果だと思いますが、エンカウント式についてはそれほど深刻には考えていません。

編: なるほど、むしろエンカウント式のバトルシステムのゲームであることを積極的に利用して、新規開拓するといった感じですか?

陳: そのつもりです。これまでマウスクリックのMMORPGばっかりだったので、我々としても新しいシステムのゲームを探していたところでした。

李: 台湾ではコーエーのゲームは人気が高く、ブランド力も高いです。我々としてはコーエーのゲームであることを全面に出して、積極的にプロモーションしていきたいと考えています。


■ 海外展開は東南アジアビジネスが堅調

Game Flierの企画部部長を務める李初陽氏
Game Flier運営チームのリーダーを担当している陳義欽氏
編: Game-Flierは、台湾だけではなく、アジアを中心とした海外展開にも積極的です。海外ビジネスは現在どのような状況なのでしょうか?

李: 現在は、マレーシアと大陸(中国)に支社を置いてオンラインゲームを展開しています。マレーシアでは、「ラグナロクオンライン」とChinese Gamerの「呑食天地」の2タイトルを展開しており、現在「新絶代雙驕」の準備を進めている段階です。大陸は、「ラグナロクオンライン」と「新絶代雙驕」の2タイトルで、今後「三國群英伝」、「炎龍騎士団」を投入していく予定です。

編: ユーザー数はどのぐらいでしょうか?

謝: 両地域とも「ラグナロクオンライン」がメインですが、中国は同時接続19万人、マレーシアが4万人になります。マレーシアはまだ設立して1年ほどですが、すでに4万人を達成していますし、非常に期待できる市場だと考えております。今年1月にも大規模なオフラインイベントを行ないました。Game-Flierとしても力を入れている地域です。

編: 日本にはまだ支社がありませんが、日本進出の予定はないのでしょうか?

謝: 以前も総経理(社長)が日本進出を考えたことはあります。実際に、日本のメーカーと話し合いも行なって、日本進出の可能性を探りました。ただし、日本と台湾での市場性の違い、プロモーションに対する考え方に大きな違いがあることがわかりました。たとえば、Gamaniaさんの例で見ても、台湾式の派手なプロモーションをやったからといって、台湾と同じ効果は期待できません。そういった理由から、立ち消えになったという経緯があります。

 現在は日本市場に進出するのではなく、日本のメーカーの開発の下請けをしたり、あるいはChinese Gamerの開発タイトルをライセンスして日本で展開して貰うといったことを考えています。

 実は中国進出後の次の目標は日本だったのですが、先ほどの理由からマレーシアに矛先を転じました。このマレーシアとシンガポールはまだライバルも少ないですし、期待以上の成績を上げています。今後も引き続き東南アジア地域に力を入れていくことになると思います。

□Taipei Game Show 2005のホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
□Soft-Worldのホームページ
http://www.soft-world.com.tw

(2005年2月27日)

[Reported by 中村聖司]


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