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Taipei Game Show 2005現地レポート

Soft-World本社取材レポート その2
ユーザーのムーブメントを企画化する台湾独自のマーケティング手法に注目

会期:2月24日~28日(現地時間)

会場:Soft-World本社ビル

 2本目のインタビューでは、引き続き3名のスタッフに「ラグナロクオンライン」の台湾事情について話を伺った。

 先のインタビューでも触れたように、台湾では「ラグナロクオンライン」は、最大同時接続35万、サーバー数56という、世界最大規模の運営体制で展開されている。これは日本の約3倍、韓国の約10倍に相当する。

 インタビュー後に見せてもらった運営ルームには、真っ正面に56台のサーバーの状態を示すボードが掲げられ、その隣にはGM用のPCがずらりと並び、いずれのスタッフも忙しそうに業務を行なっていた。まさに圧巻の光景だった。

 今回のインタビューでは、台湾独自の運営スタイルとマーケティングを中心に話を伺った。韓国、日本とも異なる運営方針が多く、大変興味深い内容だった。


■ RWC上位独占やTGSブースに見る、ユーザーサービスのあり方について

しっかり自慢されてしまったRWC2004優勝フラッグ。2005年は未開催のようなので、このまま置かれ続けることになりそうだ
RWCではメーカーぐるみの活発な声援が印象的だったが、仕掛け人は李氏と謝氏のおふたりだという
常時何らかのイベントが開催されているSoft-Worldブース。今年はラスベガスをイメージしたという
編集部: 「ラグナロクオンライン」の台湾事情を伺いたいのですが、2004年に開催されたGravity主催の世界選手権「Ragnarok World Championship(RWC)」では、Game-Flierのサービス地域が上位を独占しました。この背景事情を教えてください。

李: RWCで世界各国が集う中で、我々Game-Flierが担当している国々が上位を占めたのは大変嬉しいことだと思っています。

謝: Game-Flierが上位を独占する結果になったのは、ひとつはGravityがRWCを開催するという情報を早くから入手し、それに対する対策を練る時間が十分にあったということが挙げられます。たとえば、クライアントは英語版だから、英語版で練習しようとかですね。

 それから台湾とマレーシアの代表同士で模擬試合を頻繁に行ないました。国内でもデパートの催事場を借りて模擬試合を行ないました。こうしたことによって選手達は、本番前から試合の雰囲気に慣れることができ、これが上位独占という結果に結びついたと考えています。

編: メーカーとしてはRWCに対して、力を入れていたわけですが、これはどういう理由からなのでしょう?

謝: いくつか理由があります。ひとつにはどうせやるならパブリッシャーとして一番になりたいと、もうひとつは、昨年は「ラグナロクオンライン」のユーザー数が急成長していた時期でしたので、ユーザーに対する話題作りのひとつとして積極的に活用していこうと。

 3つめは、PvPというのはそれまであまり重視されていなかった要素で、ユーザーもどちらかというとレベル上げやチャットのほうを好んでいました。そうした時期にRWCが発表されたので、PvPという新しい要素をプロモーションに活用していこうと考えました。ユーザーに対して、「ラグナロクオンライン」には、PvPというおもしろいコンテンツがありますよと働きかけたわけです。

李: 運営側の側面としては、Gravityさんは重要なパートナーですので、台湾のパブリッシャーとしてぜひ力を貸したいと考えました。また、「ラグナロクオンライン」は、各国でバージョンが異なるのですが、それがグローバルな環境で出会い、そして試合をするということに大きな共感を覚えました。

 RWC開催中は、各国のパブリッシャーと、オリジナルグッズや運営の面で情報交換も出来て、非常にメリットの大きいイベントでした。

編: 今年のTaipei Game Showでは、昨年と同様にステージイベントだけで試遊台をおいてませんでしたが、これはどういった理由からなのでしょうか?

謝: 台湾のゲームショウは、イベントステージでモノを投げたり、大音量でイベントをやったりといった出展スタイルが主流ですが、これは実はSoft-Worldが最初にやったことです。

 もともと台湾のゲームショウは、新作ゲームを売るだけの展示即売会でした。我々もそれに倣って販売するだけだったのですが、それだけじゃゲームショウとは言えないと思い、試遊台を設置しました。すると、他社も試遊台を置くようになりました。そこで今度は、試遊台をやめてステージイベントを主体にして、現在に至ります。

 ゲームショウにおけるステージイベントというのは、ユーザーに対するファンサービスだと考えています。ゲームのイメージキャラクタを呼んだり、グッズを配ったりといったイベントを行なって、可能な限りユーザーと近い距離で接していこうと考えています。ただ、またすべてのメーカーがステージイベントをやり出したので、そろそろまた別のことをやらないといけないとは考えています。


■ サブタイトル「あなたは今日、微笑みましたか?」に込められた願い

「ラグナロクオンライン」の公式サイト。上段に書かれているピンクの文字の日本語訳が「あなたは今日、微笑みましたか?」となる
花を配った女の子と物語の原作者の情報を公募するページ。ストーリーも全面転載されている
編: ショップで販売されているスターターキットは、毎回どれぐらいの数が出るのでしょうか?

謝: 2種類のパッケージがありますが、49元(約150円)で販売しているスターターキットは、30万本ぐらいです。特典を付けた特別キットは5万本ぐらい。合わせて35万本ぐらい出ます。

編: 49元というと大変安いですが、パッケージの販売で利益はあるのですか?

謝: パッケージを売る目的は、利益を出すことではなく、ユーザーに対する告知が一番大きな意味です。コスト的にはギリギリです。課金で初めて利益が出るという感じです。

編: ちなみに月額料金は?

謝: 台湾では350元(約1050円)です。中国やマレーシアもだいたい同じぐらいの設定です。

編: ちなみに最新パッケージのサブタイトル「追伸 あなたは今日、微笑みましたか?」にはびっくりしたのですけども(笑)、これはどういう意味が込められているのですか?

謝: 今までのデータディスクは、新要素の内容に即したタイトルを付けることが多かったのですが、今回は以前、ゲーム内で発生した実話の物語から取っています。

 この物語は、女性プレーヤーが、毎日プロンテア中央の噴水で花を配っていて、渡した相手に「あなたは今日、微笑みましたか?」と呼びかけたというもので、これを体験したユーザーがネットに書き込んだことから、感動的なストーリーとして大きく話題になりました。

 このサブタイトルには、もう一度この物語のように、日頃のイライラを忘れて、新鮮な心でゲームをプレイして貰いたいという願いを込めています。「ラグナロクオンライン」は35万人もの同時接続者がいますので、社会に対する影響も考えて付けました。また、ゲームそのものに対しても、人の心を温かくするようなイメージを持って貰いたいと思ってます。

李: 運営側としては、ネットワークゲームにもこういった人の心を温かくするエピソードがあることをより多くの人に知って貰いたいと思いました。タイの代理店からもぜひこのエピソードを使いたいという依頼が来ています。

謝: このエピソードがネット上に公開されたのは2003年10月頃なのですが、今回データディスクを発売するにあたって、花売りの女の子とネットで公開した原作者を公式サイト上で呼びかけました。花売りの女の子は見つからなかったのですが、原作者は見事見つかり、彼女には「ラグナロクオンライン」の永久会員になっていただきました。

編: 永久会員というのは、ずっと無料でプレイできると?

謝: そうです。

編: Game Flierは、ユーザーのムーブメントを吸い上げてそれを企画に活かすということが非常にうまいですね。日本ではちょっと考えられないスタイルの運営だと思います。

李: このキャッチフレーズは当然原作者の許可を取り、原稿料をお支払いした上で使用していますし、彼女にはプレス発表会にも参加して頂きました。

編: ここ最近のユーザーのトレンドとしてはどのようなものがありますか?

陳: 新しいデータディスクで追加された要素に神器というものがあります。現在、ユーザーの間ではこれを作るための方法について議論されています。

 運営側が主導するものとしては、毎週土曜に攻城戦を開催します。これは通常の攻城戦とは違うオリジナルイベントで、優勝すると賞金が出ます。賞金総額は300万元(900万円)です。

編: それは豪儀な企画ですね。

陳: 現在56のサーバーが存在しますが、各サーバーごとに、優勝ギルドに5,000元(1万5,000円)を出します。

編: この企画の意図は?

謝: ギルド内の団結を深めてもらう、これが一番の目的です。

編: 日本では2月15日にようやく転生システムが実装されました。台湾ではどのような反応でしたか?

陳: 台湾では2004年の8月に実装されていますが、当時の時点でレベル99に達しているユーザーが多かったため待望のアップデートということで、多くのユーザーに歓迎されました。

編: 日本では機能上の安定性、要するにバグのために実装が延期されたのですが、台湾ではこの不具合の影響はなかったのですか?

陳: 特になかったと思います。ユーザーからも好評でしたし、ユーザーの数も増えました。転生システムは、2段階に分けられていて、第1段階はシステムの実装、第2段階はグラフィックスの実装です。我々は分けて実装し、ガンホーさんは一緒にという判断ではないかと思います。

編: なるほど。日本ではBOTをはじめとした不正処理を行なうユーザーが後を絶ちません。台湾ではどのような状況でしょうか。

陳: 人気タイトルではBOTの問題は避けて通れません。Game Flierでも当然対策を行なっており、GMがBOTを捕まえたり、アカウントを永久凍結したりしています。また、BOTを使わないようにという告知も行なっています。

編: BOT以外の不正行為にはどのようなものがあるのでしょうか?

陳: いろいろありますが、代表的なものとしては装備やお金の複製ですね。


■ 今後の「ラグナロクオンライン」の展開について

ほとんど撮影禁止なのでGame Flierの写真はこの1点のみ。これは運営チームで主にパブリシティを担当している。女性が多いのが印象的
編: 運営側として現在力を入れていることは何でしょうか?

謝: まだ未発表なのですが、独占スクープとしてお伝えしますと、今年の夏から日本で制作された「ラグナロクオンライン」のアニメーションを放送します。アニメの層とゲームの層では重ならない部分もありますので、夏以降はアニメの層のユーザーも巻き込んでいければと考えています。

編: 「ラグナロクオンライン」は、いまや携帯コンテンツにもなっていますが、こちらへの興味はいかがでしょうか?

李: 携帯ゲームもいま数タイトル話をしている段階です。そのほかカードゲームの販売も検討をしています。ですが、今年は何と言ってもアニメの放送に力を入れていきます。

編: 2年前の話になりますが、謝さんのインタビュー記事を掲載した後、台湾の「ラグナロク」ファンから多くの反響があって驚いた記憶があります。この台湾人の行動力について、運営側としてどのように捉えていますか?

謝: それは批判的な内容だったのではないかと思いますが(笑)、正直に言って当時はまだ正式サービスを始めたばかりで、プログラムそのものも、自社タイトルに比べて非常に不安定で、ユーザーサポートよりも、安定性を向上させることにかかりっきりでした。運営面でも未熟な点が多かったので、当時を振り返ると、ある程度批判されても仕方がなかったと思います。ですが、現在は運営体制も整い、ユーザーの満足度も向上していると確信しています。

編: それでは今後の抱負を聞かせてください。

謝: 「ラグナロクオンライン」は、台湾国内でナンバー1のMMORPGですが、今後はよりサービスを充実させ、既存ユーザーと新規ユーザーをしっかり維持していくことが大事だと考えています。まず手始めにユーザー同士のコミュニティを深める工夫を考えていきたいですね。

李: 「ラグナロクオンライン」は、登録ユーザー数413万人、最大同時接続者数35万2,000人を達成しました。今後は、この数字に甘えずに引き続き成長を狙っていきたい。Game-Flierそのものも、2年前のサービス開始当初に比べ、会社組織としてしっかりしてきている。以前は、Soft-Worldと業務の差別化が明確ではなく、効率的ではないところも多かった。今年はアニメも放送するし、携帯コンテンツやカードゲームもやるかもしれない。今後は、ゲーム以外のコンテンツのユーザーも引き入れていきたいと考えています。

編: ありがとうございました。

□Taipei Game Show 2005のホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
□Soft-Worldのホームページ
http://www.soft-world.com.tw

(2005年2月27日)

[Reported by 中村聖司]


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