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★PS2ゲームレビュー★

テクモとのコラボレーションで開発された
パチスロを忠実に再現

「楽勝! パチスロ宣言2 デカダン・十字架」

  • ジャンル:パチスロシミュレーター
  • 発売元:テクモ株式会社
  • 価格:6,090円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(10月28日)



 現在のパチンコ・パチスロは、液晶画面を利用した高度な表示演出を持つ機種が主流となっている。しかも、そういった機種が採用している描画機能は、プレイステーションやドリームキャストなどのゲーム機をベースとしたチップで実現されており、家庭用ゲーム機同等の3D描画を駆使した映像を実現しているもがほとんどだ。ただ、パチンコやパチスロを開発しているメーカーにとって、高品質な映像演出の開発というのは、どちらかというと畑違いの分野。自社で映像関連の開発部隊を用意して開発しているメーカーもあるが、そういった余裕があるのは大手メーカーが中心で、映像演出部分を外注しているメーカーも少なくない。

 そして、それらパチンコ・パチスロの映像演出の開発を任されることが多いのがゲームメーカーだ。詳しく発表されることはほとんどないが、大手ゲームメーカーのほとんどがパチンコ・パチスロメーカーとの取引を行なっており、何らかの形で映像演出部分の開発に関わっている。パチンコ・パチスロメーカーにとって、映像演出部分の開発をゲーム機向けゲーム開発などで豊富なノウハウを持つゲームメーカーにまかせた方が、高度な映像演出を容易に実現できるというメリットがある。また、トータルで500万台近いパチンコ・パチスロ機の設置台数や、パチンコ・パチスロ機の設置寿命の短さ(3カ月以上継続して設置される機種はかなり少ない)などを考えると、ゲームメーカーにとってもかなり“おいしい”ビジネスなのだ。

 ところで最近のパチスロ業界で、ゲームメーカーの名前を前面に出すことでかなりの成功を上げている例がある。それは、パチスロメーカーの「ネット」と、ゲームメーカーの「テクモ」によるコラボレーション企画によって生まれたパチスロ機だ。もちろん、この2社のコラボレーション企画で開発されたパチスロ機はパチスロ業界での評価が高く、さらにプレーヤーにも非常に好評だ。

 今回取り上げるテクモの「楽勝! パチスロ宣言2 デカダン・十字架」(以下、楽勝2)は、そのネットとテクモのコラボレーション企画によって生まれたパチスロ機が2機種収録されたパチスロシミュレーションである。収録機種の実機に関する詳しい解説はネットの製品紹介ページを見てもらうとして、ここではゲームでの実機再現度や液晶演出部分の再現度を中心に見ていくことにしたい。


■ 最新機種「十字架」を実機登場とほぼ同時に収録

 「楽勝2」に収録されている機種は、「デカダン」と「十字架」という2機種のパチスロ機。デカダンは、ネットとテクモのコラボレーション企画第2弾として開発された「賞金首」というパチスロ機のイメージや映像演出を流用し、パチスロ機としてのゲーム性を進化させた機種だ。また十字架は、ネットとテクモのコラボレーション企画第4弾として、2004年10月に登場したばかりの最新機種。当然どちらも実際にパチンコ・パチスロホールに設置されている現役機種であり、特に十字架はパチンコ・パチスロホールへの設置とほぼ同時期にゲーム化された形である。

 ちなみに、以前にテクモより発売された「楽勝! パチスロ宣言」には、ネットとテクモのコラボレーション企画によって開発された機種のうち、第1弾の「MOGUMOGU風林火山」、第2弾の「賞金首」、第3弾の「スーパーブラックジャックS777」などが収録されており、今回取り上げる「楽勝2」も加えて、ネットとテクモのコラボレーション企画で開発されたパチスロ機のほとんどがゲーム化されたことになる。

 さて、話を「楽勝2」に戻そう。収録機種のデカダンと十字架のうち、やはり注目は十字架だろう。ホールへの登場から間もない機種のゲーム化という部分での注目度はもちろんだが、やはりその世界観というか、テクモのゲームに登場しそうな“萌え”度の高いキャラクタというか、そういった部分にも注目が集まっている。

 リール下の盤面左に描かれた、目を潤ませつつ祈るようなポーズでプレーヤーを見つめる囚われの姫「セーラ」、どことなく不安そうな表情のメイド「エミリ」、冷ややかな視線の謎の少女「ニーナ」が、リール上部のワイド液晶画面内で様々なアクションを繰り広げる。しかも、どのキャラもテクモのゲームに登場する女性キャラのような、独特の雰囲気を兼ね備えている。特にセーラ姫は、その体型や露出度の高いコスチュームも加え、テクモゲームの女性キャラクタファンのツボがしっかりと押られている。

収録されている基本の2機種。左がデカダン、右が十字架だ。どちらも実機をそのまま撮影したかのようなリアルさだ
十字架に登場する、セーラ、エミリ、ニーナ。どれもテクモのゲームに出てきそうな萌え要素を持つキャラばかりで、それまでのパチスロのイメージをいい意味で崩している


 ゲーム内容は、当然だが実機を忠実に再現したパチスロシミュレーションで、デカダンもしくは十字架を好きなだけプレイできる、というものだ。パチスロにつきものである6段階の内部設定を変更してプレイできるのは当然のこと、小役やボーナスを強制的に当選させたり、リールの回転速度を調節したりといった、実機ではできないような変更も可能。操作の自動化も可能なので、長時間プレイした場合の挙動を見るといったことももちろん可能となっている。

 操作性は、前作である「楽勝! パチスロ宣言」を踏襲。基本的なパチスロ操作に関しては、他社のパチスロシミュレーターとの違いもほとんどなく、パチスロシミュレーターをプレイしたことがあれば、操作に関して戸惑うことはないだろう。

 また、前作では、プレイ時に液晶画面部分を拡大できないという点がやや不評だったが、本作では画面の2/3ほどを占めるほどに液晶画面部分を拡大してプレイできるように改善されている。これによって、デカダンや十字架の最大の醍醐味である映像演出を心ゆくまで堪能できるようになった。この点はファンにとってかなり嬉しい改善点と言っていいだろう。

攻略プレイ時には、4段階に表示サイズを変更できる。中でも、液晶画面を画面に大きく表示できるようになった点はファンにとって嬉しい部分だろう


 もちろん、映像演出のみを楽しめるモードも用意されている。細かい条件を指定して、その場合の映像演出を楽しめる。とはいえ、実機では数千パターンの映像演出が用意されているため、演出をグループ分けしてその中からランダムに表示させるという方式になっている。ただ、その演出が出ればボーナス確定というようなプレミアム演出だけは、ランダムではなく直接指定して楽しみたかったところだ。

メインメニュー。プレイしたい機種を選択したり、おまけ要素である「Rioギャラリー」が選択できる 「攻略プレイ」で各機種を自由にプレイできる。また、プレイデータの検証や映像演出の閲覧などの機能も用意されている 攻略プレイ時には6段階の設定を自由に決められる。プレイ途中での設定変更も可能だ
攻略プレイ時には、プレイに役立つ情報表示の設定や、フラグを強制的に成立させたり、オートプレイなどの設定が可能 液晶部分を抜き出して、好きなサイズで画面内の好きな場所に配置できる このように、様々な情報を表示させつつプレイすることも可能だ
メダルの増減をグラフで表示させたり、ボーナスの成立確率、ボーナス間のプレイ数など、様々な情報が閲覧可能。実機をプレイする際の参考となる有益な情報が得られる
強制的にボーナスフラグや小役を成立させることで、プレイ状況を自由に制御可能 各機種の映像演出は、条件を指定して閲覧できるようになっている 実機ではなかなか見られないプレミアム演出も、もちろん閲覧可能



■ いくつかのおまけ要素を用意、オリジナル機種も収録

 「楽勝2」には、いくつかのおまけ要素が用意されている。まず1つは、「Rioギャラリー」。Rioとは、ネットとテクモのコラボレーション企画第3弾「スーパーブラックジャックS777」に登場するキャラクタで、パチスロ史上最高の“萌えキャラ”とも呼ばれている、非常に人気の高いキャラクタだ。Rioギャラリーでは、そのRioのオリジナル画像が閲覧可能となる。ただし、プレイ開始時には画像は見られないようになっており、十字架のプレイ内容によって順次見られるようになっていく。詳しい条件については未発表だが、液晶画面にRioが登場するというプレミアム演出を引けば順次見られるようになっていくようだ。オリジナル画像は全部で13枚用意されている。ただその多くが、このゲーム向けに描き下ろされたオリジナルではないという点はやや残念。

 また、デカダンには、「クリスバージョン」というデザイン違いの筐体を選択してプレイできる隠し要素が用意されている。こちらは、デカダンをプレイし、ある条件を満たすことで解放される。解放後は、機種選択画面でL1ボタンを押しつつデカダンを選択すれば、クリスバージョンでプレイ可能となる。

 さらに、Rioギャラリーの13枚の画像を全て見られるようにした状態で十字架をプレイし、「圧倒的な枚数のコイン」を獲得することで、「ドラキュラファイナル」という「楽勝2」オリジナルの架空スロット機がプレイ可能となる。圧倒的な枚数のコインとは、具体的に何枚とは発表されていないものの、数万枚(1万枚?)以上のコインを獲得すればプレイできるようだ。

 このドラキュラファイナルでは、ビッグボーナス1回あたりのコイン獲得枚数が平均600枚以上と十字架よりもかなり多くなり、さらにボーナスの1プレイ連チャンといった要素も加わって、かなり波の荒い機種に仕上がっている。映像演出は十字架のものをほぼそのまま流用しているが、ビッグボーナス中には十字架とは異なる演出が用意されている。実機ではないものの、これはこれで結構楽しくプレイができる。プレイする場合には、デカダンのクリスバージョン同様、機種選択画面でL1ボタンを押しながら十字架を選択すればよい。

 ちなみに、パチンコ・パチスロホールでは、12月6日を皮切りに、「十字架600式」という新機種が導入されているが、このドラキュラファイナルは十字架600式とは全く異なる機種である。個人的には、オリジナルの機種ではなく十字架600式を収録したほうがよかったのでは、と思うのだが、「楽勝2」発売時に十字架600式は未発表だったこともあり、収録不可能だったのだろう。十字架600式については、次回作での収録を期待しよう。

おまけ要素の1つ「Rioギャラリー」では、大人気「Rio」の画像が閲覧できる 十字架のプレイ内容によって、閲覧できる画像が増えていくようになっている ホームページで配布されていたり、カレンダーに収録されている画像が中心だが、オリジナル画像もいくつか用意されている
デカダンのプレイ内容によって解放されるデカダンの「クリスバージョン」。筐体デザインがかわいい こちらは完全オリジナル機種の「ドラキュラファイナル」。ビッグボーナス1回で平均600枚のメダルが獲得でき、さらに1P連チャンの要素もある波の荒い機種だ



■ 一部で挙動の異なる部分も感じられるが、再現度は悪くない

 気になる実機の再現度だが、パチスロとして最も重要な部分であるリール制御や液晶演出部分など、両機種ともほぼ満足できる出来だと言える。ただ、厳密に見ると、十字架には実機と違う挙動を示す部分がいくつか感じられた。

 通常パチスロは、コインを3枚投入し、レバーを倒してリールを回転させ、3つあるリールを左、中、右の順にリール下のボタンを押して止めていくのだが、この場合には、両機種とも実機と同等と言っていい挙動であった。それに対し、ボタンを押す順番を中や右からといったように変則順にした場合、十字架では実機とやや挙動が異なるように感じられる部分(実機では止まらない部分でリールが止まる、など)があった。

 こういった部分のためか、実際にプレイしていて、実機と比較しての違和感を感じてしまう。リール絵柄、筐体デザイン、映像演出、サウンドなどの完成度は非常に高く、こちらは実機そのままと言っても過言ではないだけに、やや残念だ。


 一部挙動に気になる点があるものの、全体的な完成度は十分に高い。もともと実機開発に関わっているテクモが発売するソフトだけあって、全体的な再現度は申し分ない。特に、映像演出部分がプレイ時に拡大表示できるように改善されたという点も合わせ、ファンも納得だろう。コアな実機プレーヤーなら挙動の違いが気になる人もいるだろうが、結局ゲームということで、実機の持つ機械的な部分を映像だけで100%再現することは不可能だし、ほとんどの人はこの完成度に十分満足できるはず。実機のファンはもちろん、実機はあまりプレイしないがキャラクタが好きというだけでも、買って損はないだろう。なんせゲームなら、ボーナス確定以降でなければまずお目にかかれないセーラ嬢を、たった6,090円で心ゆくまで堪能できるのだから。

(C)NET Co,.Ltd. (C)TECMO,LTD. 2004

□テクモのホームページ
http://www.tecmo.co.jp/
□ネットのホームページ
http://www.net-fun.co.jp/
□「楽勝! パチスロ宣言2 デカダン・十字架」のページ
http://www.tecmo.co.jp/product/rakupachi2/
□関連情報
【2004年9月14日】テクモ、ホール登場と同時期発売のパチスロ
PS2「楽勝! パチスロ宣言2 デカダン・十字架」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040914/pati.htm

(2005年2月9日)

[Reported by 平澤寿康]


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