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★PS2ゲームレビュー★
テクモが'80年代にアーケード用として発売した作品を集めたオムニバスソフト。収録タイトルは「プレアデス」、「センジョウ」、「スターフォース」、「ボンジャック」、「テクモカップ」、「ピンボールアクション」、「ソロモンの鍵」の全7タイトルで、オールドファンには実に懐かしい顔ぶれがズラリと揃っている。「ソロモンの鍵」を除く各タイトルは発売当時はテーカンという社名だったため、タイトル画面にはTECMOではなくTEHKANというコピーライト表記がされている。
それでは、各タイトルが発売された当時からゲームセンターで遊んでいた筆者なりに、それぞれの見どころや気になった点などを紹介していこう。 ■ ストーリー性を重視したステージ構成に脱帽! 「プレアデス」'81年 テクモのビデオゲームデビュー作。スペースシップを操作して、宇宙から地球基地へと攻め込んでくるエイリアンをビーム砲で倒していくというシューティングゲームだ。全部で4つのPATTERN(ステージ)があり、地球基地でエイリアンを迎撃→宇宙でモンスターと交戦→宇宙戦艦と対決→地球基地へ帰還するという構成になっている。 ファーストステージの見どころは、地球基地に備え付けられている2基のレーダー。プレーヤーが操作することはできないが、エイリアン出現時に警報を鳴らして危険を知らせ、しかも援護射撃までしてくれるという、当時としては斬新なアイデアだった。 次のステージでは高速で体当たりを仕掛けてくるモンスターの動きに注目。スペースシップの移動速度をはるかに上回るため、降下中に急加速して突っ込んでくる場面はスリル満点。 宇宙戦艦と戦うステージでは、この場面だけビーム砲の連射性能がアップする。大型の敵に思い切り弾を撃ち込む爽快感を楽しんでもらおうという配慮がきちんとなされているのがとても嬉しい。 戦闘を終えたあとは地球の基地へと帰還する。着陸の際には外壁や他のスペースシップにぶつからないように操作するのだが、スペースシップには慣性が働いているため、正確にコントロールするのはけっして簡単なことではない。戦艦相手にビーム砲を連射しまくった直後にシビアな操作を要求し、プレーヤーのミスを誘おうというこのステージ構成は憎たらしいまでに見事だ! なお、着陸に成功すると花火が打ち鳴らされてプレーヤーを祝福してくれる。
画面上の敵を全て倒すとまた同じ敵が出現して以後、難易度が上がるだけというパターンのゲームが当時は非常に多かった。だが「プレアデス」においては、ただ敵を撃つだけではなく、エイリアン打倒のために宇宙へ旅立ち、地球に帰還するというストーリーをしっかりと創り上げていたことは注目に値する。今となっては携帯電話よりもはるかに劣るコンピュータで作られた、シンプルながらも味わいの深いこの世界観をぜひとも堪能してほしい。 ■ FPSの先駆け的存在 「センジョウ」'83年 砲台を操作して、敵に照準を合わせツインレーザーを発射し、敵を破壊していく3D視点のシューティングゲーム。今では当たり前となっているが、3DCGを描くにあたりポリゴンを使用した描画のできない時代の作品なので、当然ながらすべてドット絵で遠近感を表現している。 レーダーを見ながら敵のスペースタンクを探し出し、全部で32台破壊するとラウンドクリア。スペースタンクを4台破壊するごとに“ディテクター”というキャラクタが空中に出現し、これを破壊するとそれ以後の敵を破壊したときの得点が2倍、3倍、4倍、5倍と徐々にアップしていく。 まずは画面下中央にある「レーダーサーチ」に注目したい。写真ではわかりにくいが、赤い点でスペースタンクの位置が表示される。方角はもちろん、ツインレーザー砲との距離も把握できるスグレモノだ。特に至近距離まで迫ってきたスペースタンクは弾を連発してくるので、ピンチを未然に防ぐために重宝するのだ。 右下にある四角いマス目はスペースタンクを破壊した数を表している。全部で32マスあり、破壊した数だけ色が青から赤に変わる。分数などの数字で表現してもよさそうなところだが、視覚的に敵の残数を見せようという意図がとても面白い。 そして左下の表示された4つの長方形は、破壊したスペースタンクの数を4の倍数で表すためのものだ。つまり、あと何機後にディテクターが出現するのかを知らせるという意味がある。なお、ブーメラン状に尖ったマークは、クリアしたラウンド数を示すものである(「ラウンドキャラクタ」と言う)。
一人称視点(今で言えばFPS)でよりリアルな3D表現を目指すとともに、シミュレーション性の高いレーダーサーチなどのアイデアを積極的に採り入れた意欲作である。 ■ レスポンスの遅さにがっかり…… 「スターフォース」'84年 スピード感抜群の敵キャラクタや、さまざまな隠し技などで大人気を博したシューティングゲームの名作。翌年の'85年にはハドソンからファミコン用のソフトが発売されたこともあり、アーケード版は知らなくてもファミコンでなら遊んだことがあるよ、というオールドゲームファンも少なくないだろう。 筆者が本タイトルにおいて最も評価したいのは、家庭用のテレビでもアーケード版と同じ縦画面比率でプレイできることである。元々縦画面だったものを家庭用のテレビに合わせて横画面にリサイズしたため、完成度を下げてしまった移植ソフトが過去にいくつも見受けられたからだ。また、画面表示を90度回転させて、モニターを縦にしてプレイできるようにする機能が本タイトルには付いていない。縦置き対応のモニターを使用しているユーザーには物足りないだろうが、筆者としては普通の家庭用テレビで遊べるようにしたことで十分ではないかと思う。 ただ残念だったのは、自機のレスポンスがあまり良くないこと。あくまで筆者の感覚であるが、方向キー(またはアナログスティック)を入力してから実際に動き出すまでに、ほんの少しだが時間差が生じているようだ。このほんのわずかな時間差のために、必要以上にゲームが難しくなっているのだ。序盤のエリアから敵がどんどん弾を撃ってくるゲームだけに、思うように操作できないもどかしさで、筆者は楽しむどころかプレーするたびにストレスが溜まるばかりだった。 さらに気になったのは、アーケード版よりも敵編隊の出現間隔がやや短くなっていること。このために本来あり得ないはずの複合攻撃が随所で見られ、難易度の上昇にさらなる拍車をかけているのだ。オリジナル版とは程遠い出来栄えで、筆者は正直がっかりしてしまった。 誤解のないように申し上げておくが、筆者は20年前のゲームシステムに今さら文句をつけるつもりは一切ない。最新のハードを使っているにもかかわらず、違和感なくキャラクタを操作できる状態にすらなっていないのはどうしてなのか、ということを言いたいのだ。なぜ開発途中の段階でレスポンス、あるいは敵の出現間隔のズレを調整することができなかったのだろうか。 これでは移植のクオリティに敏感なオールドファンなら間違いなく不満に思うだろうし、初めてプレイする人にも「こんなに難しいゲームなんだ」などとネガティブな印象を与えてしまい、本当の面白さに気付いてもらえないまま飽きられてしまう可能性も大いにあり得るだろう。
せっかくの名作タイトルの移植なのに、ほんのちょっとしたことでブランドイメージの低下を招いてしまってはあまりにももったいない。筆者自身が思い入れの深いタイトルであることを差し引いても、このバランス調整がなされていないことに対しては歯がゆい思いでいっぱいである。
■ 空中制御も自由自在! 独得の操作方法が楽しいアクションゲーム 「ボンジャック」'84年 主人公「ジャック」を操作して、敵に捕まらないように爆弾を回収していくアクションゲーム。操作は4方向キーとジャンプボタン1個だけだが、空中でもジャックを自由自在に制御できる独得の操作感覚が面白い。 基本的には爆弾を取るだけのゲームだが、時々出現するパワーボールを取ると、敵が一定時間金貨に変わるという逆転イベントが発生する。グズグズしていると敵がどんどん増えて難しくなるが、ジャンプの高さや着地点などを微妙にコントロールして、複数の敵をヒラリとかわしていくのがとにかく楽しいゲーム。また、点火された爆弾を一定数以上連続して取ると、クリア後に最高で5万点のボーナスがもらえるテクニックもある。成功させるのは難しいが、ボーナスを獲得したときの達成感は格別だ。 残念ながら、諸般の事情によりメインのBGMがなくなってしまったのは実に惜しまれる。とてもノリがよく、聴いていて実に心地がよい曲なのだが、本ソフトにおいては「効果音だけ」になってしまったため、爽快感が大きく減退してしまったことは否めない。 それにしても、本来のBGMが使えないのであれば、なぜ代わりのものを用意しなかったのであろうか。例えばファミコン版で使用した曲を転用するとか、然るべき対策はあったはずだ。オリジナル版のものが使用不可能だからと言って、何もない状態で製品化したことに誰も疑問を持たなかったのだろうか? 筆者としては理解に苦しむ。とりあえずプレイできる状態になったから、あとはもうOKだよというスタンスで作ったようにも思えてしまい、開発サイドからの「古い作品だけどこのゲームは面白いよ!」という愛着が全く感じられないのが本当に残念だった。
なおプレーする際には、方向キーよりもレスポンスが若干優れた(※これも筆者の体感による)アナログスティックの使用をおすすめする。返す返すもBGMがないのは残念だが、このゲームならではの「空中散歩」の妙味をぜひ味わってほしい。 ■ トラックボールは無いけれど……、白熱の対戦プレーが楽しめるサッカーゲーム 「テクモカップ」'85年 オールドファンには、「テーカンワールドカップ」とタイトルを書いたほうがピンとくる人が多いかもしれない。専用筐体を使用し、選手の移動にはトラックボールを用いたあの名作サッカーゲームだ。トラックボールを速く転がせる人ほど有利になるので、ゲーム終了後は汗だくになり、気が付くと手のひらの皮がボロボロにむけていた、などという思い出がある人も少なくないだろう。 PS2版においては、トラックボールの代わりにアナログスティックを使用してプレーする。スティックを倒した角度がトラックボールの回転数に対応しているので、目一杯スティックを倒す動作を繰り返すことで選手の移動速度がアップするようになっている。そのため、スティックをずっと同じ方向に入れっ放しにしたままでいると、選手は徐々に減速してしまうので注意したい。 筆者おすすめの遊び方は、一切のパスを封印し、ひたすらドリブルで相手を抜き去り、ボタンを押すのはシュートを撃つときだけ、という戦術(?)だ。普通のサッカーゲームであればドリブルよりもパスを多用したほうが速く攻められるのだが、こと本タイトルに関しては全く逆である。むしろパスをしないほうが、ドリブルで何人の相手を抜けるかというスリルを味わうことができるので、自分がマ○ドーナになったつもりでとことんドリブル練習をしながら楽しんでほしい。 試合になかなか勝てずに困ってしまったら、ひとまずスティックの使用をやめて、代わりに方向キーを使って操作してみよう。方向キーで選手を動かすと、常にトラックボールの回転数が最大になった状態と同じスピードで動けるので、CPUが相手ならばほとんど負けなくなるハズだ。無論、得点パターンなどの研究にも大いに活用できる。
まずは初期設定の「ハードモード」のままで、アナログスティックを使ってプレイすることをおすすめしたい。よりオリジナルの操作に近く、勝つためには何度もスティックを倒し続け、汗をかかなければならないことを体感できるからだ。また、慣れてきたら友人との対戦プレイもぜひ試してほしい。さらに白熱した勝負が楽しめることは間違いない。
■ 瞬時に盤面が変化するからこそ面白い 「ピンボールアクション」'85年 当時のゲームセンターではよく見かけたピンボールをビデオゲーム化した作品。通常のピンボール筐体において、ゲーム内容を変更するためには盤面ごと部品を交換する必要があるのだが、モニターに映し出される画面を瞬時に切り替えて、異なる盤面を同時に楽しめるところにこのゲームの醍醐味がある。 操作方法はいたってシンプルで、左右のパドルで好みのギミックに向かってボールを打っていくだけだ。盤面が豊富な分ギミックも満載なので、いろいろな所にボールを打ちまくり、それぞれの演出を見ているだけでも十分に面白い。また、ボールが狙ったところから外れそうになった場合、ボタンを押せばいつでもシェイク(筐体を揺らすこと)を発生させることができるので、うまく軌道を調整して得点をどんどん稼いでしまおう。 ステージはメインステージと3色のスペシャルステージ(映像出力のRGBの頭文字を取ったものと思われる)との盤面を合わせた4種類もあるのが実に画期的! スペシャルステージでは、Rのステージがスロット、Gはボーリング、Bはポーカーの要素を採り入れたフィーチャーが存在し、それぞれ戦略性の異なったゲームが堪能できる。
最近は携帯電話のアプリコンテンツでも手軽に遊べるようになったピンボールだが、ビデオゲーム化された初期の作品であってもいまだに色あせることのなく面白さを保っていることを再認識させてくれるゲームである。
■ ハマリ度は極めて高し! アクションパズルゲームの傑作 「ソロモンの鍵」'86年 魔法使い「ダーナ」を操作し、ブロックを消したり出現させたりして足場を作り、鍵を取って出口へたどり着けばルーム(ステージ)クリアとなるアクションパズルゲーム。家庭用ではファミコン用ソフトとして'86年に発売されているが、アーケード版とはステージ構成や敵キャラクタ、アイテム数などが一部異なっている。 アーケード版と寸分違わぬ移植の出来は文句なし。良い意味で非常に中毒性が高く、後半になると高難易度のステージが続出するにもかかわらず、クリアするまで時間を忘れて何度でも挑戦したくなってしまう面白さは健在だ。そんなプレーヤーに配慮したのか(?)、ゲームオーバーになったステージから再開できるコンティニュー機能が付いている点も大いに好感が持てる(※ただし、9-1以降はコンティニュー不可)ところだ。 ある場面では敵を倒しながら進むというアクション性を重視したり、また別の所では純粋なパズルになっていたりと、攻略のバリエーションが多数存在することが本タイトルの最大の特徴。ブロックを出したり消したりするだけのシンプルな操作でありながら、これほどまでに奥の深いゲームを完成させたことは今なお驚きに値する。
反射神経に自信がなかったり、パズルに苦手意識を持っている人も、食わず嫌いにならずにぜひ一度プレイしていただきたい。自由自在にブロックを作り出せる爽快感や、出口への道のりを探し出す探究心などが自然に芽生え、いつの間にかこのゲームが持つ魅力の虜になってしまう。
■ テクモ珠玉の作品群は今でもプレイする価値あり、なのだが…… 各タイトルとも難易度設定を自由に変更できるのは嬉しい。自分のレベルに合った難易度に変えてプレイするのはもちろん、かつて自分がプレイしていたゲームセンターではどんな設定で稼動していたのか、これを利用して調べれてみるのも面白いだろう。 ただ不満な点もある。アーケードゲームの場合、基板に付いている「ディップスイッチ」を動かして設定を変更するのだが、本作品では単純に「NORMAL」とか「HARD」とかの画面表示をするだけなので、いかにも基板をいじっているという気分になれないところが少々物足りない。また初期設定がどんな状態になっているのかが一切表示されない点も不親切に思えた。 さらに筐体に貼り付けるインストカード(遊び方やプレー料金などを書いた紙)のスキャニング画像を「ギャラリーモード」で見ることができるのだが、こちらもいまひとつの内容。原寸大で表示するのは構わないのだが、拡大表示機能が付いていないため、書いてある文字をほとんど読むことができないのが大いに不満だった。わざわざ貴重な海外版のものまで用意したのに、ほとんど「読解不能」のまま放置されてしまったのは本当に残念だった。 さらに欲を言えば、添付のマニュアルにももうひと工夫が欲しかった。各タイトルとも最低限の操作方法しか書かれていないので、読んでいて面白味が全く感じられないのだ。例えばアーケード版の開発者インタビューや当時の販促グッズの写真を載せるなど、往年のテーカンおよびテクモファンを楽しませる要素・付加価値がもっとあってもよかったのではないだろうか。 他にも「スターフォース」の隠しボーナスの取り方を紹介したり、「ソロモンの鍵」に登場するアイテムの効果を解説したページを追加するなど、よりゲームを楽しんでもらうための配慮をしてもよかっただろう。今さら裏技や攻略上のポイントの公表を避けたところで、ビジネス面で特にデメリットとなる要素はまったくないと思うのだが……。 また、オープニング画面で流れるテーマ曲は「THE-SECT」というパンクバンドの手によって作ったものだが、そもそも彼らにテーマ曲を依頼する理由はどこにあったのだろうか。彼らが長年のテクモゲームファンであったとか、かつてハイスコアラーとして一世を風靡したとか、ユーザーに対して何も説明がないのでその意図は全くもってわからない。 当然ながらプロのアーティストに曲の制作を依頼した以上、ギャラすなわち開発コストがかかっている。ゲームの世界観を演出しているとは到底思えないテーマ曲にコストをかけるぐらいなら、その分の費用を移植や操作性の向上にあてるとか、浮いた分だけソフトの定価を安くするとかしたほうがユーザーに対してずっと親切であろう。定価が6,090円だから、単純に7で割れば1タイトルあたり870円になるが、今や300円ほど出せば携帯電話でオールドゲームの移植タイトルが遊べてしまう時代だけに、お買い得な価格設定とは正直言い難い。 近年はアクションRPGなどのジャンルに代表されるように、一定のノルマを達成したり、データをセーブするポイントへたどり着くまでに多くの時間がかかるゲームが多い昨今、ちょっとした空き時間でもすぐに楽しめる本作のような存在はたいへん貴重だ。過去の名作をいつでもプレイできるよう、現在のトレンド機種に移植して再現させるという資料的価値もけっして少なくはない。それだけに、移植の出来栄えや付加価値などにおいて物足りなさが残ったのは非常に惜しまれる。
余談になるが、「センジョウ」、「ピンボールアクション」、「スターフォース」、「ボンジャック」、「ソロモンの鍵」の各タイトルにおいては、ゲームオーバー後のネームエントリー画面で流れるBGMにもぜひ注目してほしい。よく聴いてみると、1位になった時と2位以下の場合とでは、それぞれ曲が異なっていることに気が付くはずだ。近年はほとんど見かけなくなったが、当時のアーケードゲームではよく使われていたこのさり気ない演出も、プレイする際にはぜひ堪能してほしい。
(C)TECMO,LTD.2004
□テクモのホームページ (2005年1月17日) [Reported by 鴫原盛之]
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