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★Xboxゲームレビュー★
だが、希望の灯は残されていた。 第47代アメリカ合衆国大統領「マイケル・ウィルソン」は、秘密裏に開発していた“特殊機動重装甲(パワードスーツ)”を装着し、合衆国の自由を取り戻すべく、秘書の「ジョディ・クロフォード」とともに敢然と戦いを挑む。孤独な戦いだが、マイケルの信念が揺らぐことはない。なぜなら……彼は“アメリカ合衆国大統領”なのだから! ……という、実に破天荒なストーリーで展開する「メタルウルフカオス」。従来の同社作品ではあまり見られないハリウッドのアクション映画的な“はっちゃけた”ノリでファンの意表をつく一方、肝心のアクションパートは“これぞフロム・ソフトウェア!”といわんばかりの丁寧な作りが光る逸品となっている。
徹頭徹尾“重くて暗い”SFメカ物じゃないとダメという人はさておき、アクションゲームが好きな人なら、迷わずチェックしていただきたい本作。むしろ「四の五のいわず買うべし。Believe Your Justice!!」と言い切りたいところだが、肝心のゲーム内容を知らない人のために、まずは本作の魅力を端的ながら語らせていただくとしよう。
■ 100種類以上の武器が登場 ~戦い方はお好み次第~
操作するパワードスーツは1種類で、マップ上に落ちている“エネルギーポット”を一定数回収すれば耐久力ゲージなどは強化されるが、同社の「アーマード・コア」シリーズなどと異なりボディパーツのカスタマイズ要素はない。こう書くとコアなファンには物足りないように思われるかもしれないが、キモの部分は“多彩な攻撃=武器”にあるため、むしろ“余計なことを考えず破壊活動にいそしめる”点で、とても良い方向に作用している。
武器は、両手にそれぞれ1丁ずつマウント可能。左手の武器を発射するときは左トリガ、右手なら右トリガと、直感的に操作できるのがいい。武器は背後にある左右のバックパックに4種類ずつ格納でき、持ち替えるときはBボタンを使用する。Bボタンで武器を格納するバックパックを開いたら、左右トリガで武器をチェンジ。このとき、どちらか一方が「スナイパーライフル」など両手持ちの武器だった場合は、両手持ちの武器が優先される。ちなみに、ゲームを始めたばかりのときは、左右どちらに何を格納しているのか忘れてしまうことが多々ある。そんなときは、右手はハンドガンやマシンガンなどの銃弾系、左手はバズーカやミサイルなどの炸裂弾系などと大まかにわけておくといいだろう。
登場する武器のカテゴリは「ハンドガン」、「ショットガン」、「マシンガン」、「アサルトライフル」、「バズーカ」、「ミサイル」、「グレネード」、「スナイパーキャノン」、「レールガン」、「マルチミサイル」、「フレイムランチャー」の計11種類。スタート直後は各カテゴリごとに1種類の武器しかリストに表示されていないが、ミッションクリア後に与えられる所持金を武器開発に投資すれば、開発レベルに応じた新しい武器が登場する。リストに掲載された武器は、一定の金額と、これまたミッションクリア後に獲得できる“レアメタル(材料のようなもの)”を支払えば生産が可能になる。ミッション中にアイテムとして落ちている武器もあるが、主力となる武器の大半は開発および生産で入手することになる。 各武器の使い勝手は、ひとことで言えばピンキリ。個人の好みもあるので一概にはいえないが、ゲームを円滑に進めたいなら好きなカテゴリに一点集中で開発投資したほうがいい。というのも、本作には一部アクションゲームによく見られる「この敵には、この武器しか効かない」といった縛りがなく、威力の大小を抜きにすれば、敵や破壊できるオブジェクトのいずれにも効果があるからだ。エネルギーや物理攻撃に高い抵抗力を有する敵も一部に存在するが、決して効果がないわけではない。 高い開発レベルで生産できる武器は、総じて威力が大きく汎用性に富んでいる。なかには残弾数が少ない、ターゲットカーソルが小さいなどクセの強いものもあるが、各カテゴリには必ず「コレ!」といった決定的なものが含まれているため、それほど神経質になる必要はない。ごく一部、あまりにも使い勝手が良すぎてゲームバランスを崩しかけているものもあるが、これはアクションゲームに不慣れな人向けの救済措置か、あるいはネットランキングでハイスコアを叩き出したい人向けの武器ではないかと推察される。
ゲームバランスに直接関わる“武器開発”がプレーヤーにゆだねられているため、本作の攻略はとても自由度が高い。「お好きな武器で、気持ちよく戦ってください」という開発者のメッセージが込められているようにも感じられるほどで、なんとも小気味いい。広く浅く開発投資をしていると、プレーヤーのスキルによってはドツボにハマる可能性もあるが、一度クリアしたミッションは何度でも再チャレンジできるため、資金的に行き詰まることはない。
筆者が個人的に気に入っているのは、銃火器だけでなくジャンプからの“踏みつけ攻撃”や、ブーストダッシュによる巻き込みといった攻撃手段が用意されている点。各武器には残弾数が設定されているため、派手に弾をばら撒いていると、装備によっては手持ち武器の弾倉がすべてカラッポになることも考えられる。マップ上には残弾が増えるアイテムが所々に落ちているため、トリガーを引きっぱなしにでもしない限りそうそう発生しない状況ではあるが、それでも不安を感じるというプレーヤーは、ジャンプ攻撃からの踏みつけでオブジェクトを破壊したり、ブーストダッシュでザコ敵の兵士を蹴散らせば残弾が節約できる。
開発投資を自分なりに調節するだけで、コアなプレーヤーからアクションゲームに不慣れな人まで、幅広く楽しむことができる。プレーヤー各々が“一番気持ちいい”と感じられるツボを探すことが可能なのも、基幹たるアクションパートの土台(この場合は3Dエンジン)がしっかりと作りこまれているからだろう。
■ ただ操作しているだけで気持ちいい! ~珠玉のアクション感覚~
ゲーム開始直後こそ淡白に思えるかもしれないが、その後に登場するミッションを1~2つクリアする頃には、優れた操作性に裏打ちされた快感が、じわっと身体全体に染み渡っていることに気付かされるはず。ただ操作しているだけで楽しい、気持ちいいという感覚は、アクションゲームにとって“もっとも大切な要素”ではないかと筆者は考える。隠し要素を出すためだけに“やらされている”のとは、ワケが違う。そんなものがなくても、コントローラーを握った人を“その気にさせてくれる”根源的な面白さが「メタルウルフカオス」には最初から備わっているのだ。 ゲーム中に登場するミッションも、ホワイトハウス、シカゴ、グランドキャニオン、ニューヨークと、バラエティに富んでいる。谷底や河川に落ちただけでゲームオーバーになるのは同社らしい“ご愛嬌”といった感じのシビアさだが、これも適度な緊張感を与えてくれる重要なエッセンス。ただクリアするだけなら執着する必要のない“パワーポット”や“捕虜の救出”も、コンプリートを目指すとなれば話は別。ちょっとアタマをひねったくらいでは考えつかないような場所に隠された捕虜を発見したときは、思わずガッツポーズで叫びたくなるほどのカタルシスを与えてくれる。
捕虜の救出も、ただ発見しただけで終わらないのがミソ。捕虜は鉄格子つきの檻(コンテナ)に閉じ込められているため、ハンドガンやマシンガンなどの“軽火器”で破壊しなければならない。当然、バズーカなどの重火器はご法度で、踏みつけ攻撃などもってのほか。捕虜を閉じ込めている檻も、近づくと黄色いランプが点燈して時限爆弾のスイッチが入るというアクション映画でたまに見かける“いやらしい”仕掛けが施されているものもあり、一筋縄ではいかない。アイテムが収納されているコンテナや敵と一緒に吹き飛ばしてしまったり、不意に時限爆弾のスイッチが入ってしまったときの“してやられた感”には、悔しいながらも“もう一丁!”と、ついつい挑戦意欲を掻き立てられてしまう。
ネタバレになってしまうので詳細は伏せるが、クリア後に登場する隠し要素も、前述のとおり“やらされている感”はまったくない。むしろ「足りないよ! もっとガンガンくれ! “大統領”を続けさせて欲しいんだ!! 頼むよ!!!」と飢餓感を覚えてしまうほど。ミッションによってはそこそこ長丁場になるため、それなりのボリュームを実感してはいるのだが、なにせ通常のアクションパートが気持ちいいから“やり足りない”感にさいなまれてしまうのだ。人間の欲求とは恐ろしいもので、こうなるともう1~2時間はアッという間に過ぎてしまう。「完全にサル化しているなぁ」と我ながら呆れてしまうが、完膚なきまでにやり尽くして飽きるまで、自室のゲームラックから「メタルウルフカオス」のパッケージが姿を消すことはないだろう。現時点では“飽きる日がくる”ことが、まったく想像できないのだが……。 ■ アクションゲーマーはマストバイ ~もってなきゃ本体ごと Let's Party !~
洋画「エアフォース・ワン」を彷彿とさせる登場人物のやりとりも、愛のあるパロディといった印象でイヤミなどはまったく感じられない(ただ、ある意味“9・11以降のアメリカ”を象徴しているような気がしなくもないが……)。こうした演出を「ベタ」とか「ダサイ」などと蔑む人もいるかもしれないが、それはエンターテインメントの多様性を理解できない狭量な人物くらいのものだろう。 ここまでベタ誉めすると「提灯記事」といった謗りを受けるかもしれないが、プラットフォームの普及台数を考えると「メタルウルフカオス」は“隠れた名作”になってしまう可能性があるため、あえて心の赴くままキーボードを叩いてみた。強いて欠点をあげるなら、オンラインプレイに対応していない、敵キャラクタのバリエーションがそれほど多くないといった程度。まぁ、このあたりは続編が出たときのお楽しみ……といいたいところなのだ、が! 肝心の「メタルウルフカオス」が売れてくれないことには、いくら卓越したクオリティを誇る作品でも、続編は望み薄となってしまう。 これほどまでにクオリティの高いアクションゲームが売れないとすれば、それはもはや犯罪とさえいえる。さらにつけ加えるならば、その罪は因果応報よろしくユーザーに跳ね返る。とりあえず筆者は困る。本当に困る。なぜなら、私がアメリカ合衆国大統領……じゃなくて「メタルウルフカオス」の続編を期待してやまないからだ。「こいつ、鼻薬でも嗅がされてるんじゃねぇのか」と思われるなら、それで結構。そんな穿った見方しかできない人に「メタルウルフカオス」が面白いなどと喧伝された日には、それこそ真実が伝わりにくくなるだけの話でしかない。 Believe Your Justice! ~迷わず遊べよ、遊べばわかるさ~
Xbox本体を所有している既存ユーザーはもちろん、所有していない人でも「三度のメシよりアクションゲームが好き」であれば、「メタルウルフカオス」は本体とセットで購入するだけの価値があると筆者は思っている。“隠れた名作”で終わらせないためにも「なるべく多くのゲームファンの目に止まればいいな」と願ってやまない。
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□フロム・ソフトウェアのホームページ (2005年1月13日) [Reported by 豊臣和孝]
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