●今年の印象に残ったソフト/年末年始遊びこむ予定のソフトは?
・PC「Half-Life 2」(Valve Software)
これに関してはお勧めするという以前に、あらゆる意味で世界中のゲームプレスとゲームファンが丸2年に渡って振り回され続けたという点において、ゲーム史上に記憶されるべきタイトル。発売が確定し、手元にCD-ROMが届いたとき、ゲームがプレイできる喜びよりも、何故かホッとしたのを覚えている。ゲーム記者人生で今回を上回る“やきもき”体験は2度とないような気がする。
ゲームとして推す理由は、グラフィックスやシナリオの出来映え以前に、物理エンジンの優秀さが挙げられる。私は、PCゲーム担当のクセに3Dアクションゲームが下手なので、シビアなマウス操作が要求されるデザインのゲームはその時点で音を上げてしまうところがある。そもそも名誉や戦友愛といった形而上的なエレメントに後押しされなければ前に進む気が起きない既視感たっぷりのレベルデザインは、その時点でゲームとしてB級であって、3Dゲームであるなら、目の前の映像そのものに吸引力がなければダメだと思っている。
この点「Half-Life 2」は、基本的な映像表現や演出周りがずば抜けて良くできていて、常にどんどん先に行きたい欲求に駆られる。ゲームデザインも軽妙なマウス捌きでのみ進展するものばかりではなく、物理エンジンの特性を活かした謎解きや演出で、FPSが苦手なユーザーでも十分楽しさが味わえる余裕が残されている。あらゆる点でバランスの採れた優秀な3Dゲームだと思う。
・PC「Zoo Tycoon 2 日本語版」(マイクロソフト)
ふいにデジャビュを感じて調べてみたらやっぱり去年も紹介していたお気に入りのシリーズ最新作。この手の箱庭ゲームの根源的な楽しさというのは、自らが仕掛けをこしらえて、お客の反応を見られるところだと思う。別の角度から言うと、テーマパークや博物館で、自分が受けた驚きや感動に対して同意を求めるという本能的な行動を、数百人、数千人規模でできるというゲームならではの要素がおもしろくて仕方がない。
この部分がメキメキにパワーアップしているのが「Zoo Tycoon 2」で、自分の好きな動物を園内にめいっぱい詰め込んで、ひっきりなしにやってくるお客を喜ばせつつ、自分も楽しむことができる。動物たちの豊かなアニメーションも見所のひとつで、中でも親子のふれあいが見られるのがいい。ご家族で楽しめる教養ソフトです。
・PS2「ドラゴンクエスト V 天空の花嫁」(スクウェア・エニックス)
ストーリー、サウンド、システム、その他あらゆる点においてパーフェクトに近い出来映えの国民的RPG。今年リリースされたすべてのシングルプレイRPGは、ある意味不幸であり、相手が悪すぎるとしか言いようがない。この確信は、「ドラクエVIII」をプレイ後もまったく揺るがない。まさに次元の異なる孤高の地位を築き上げている感がある。発売日に購入して暇を見つけては少しずつ進め、そしてクリアするまでの2カ月間はまさに至福でした。ぐだぐだ言いません。未プレイの方はぜひどうぞ。
・GBA「ファイアーエムブレム 聖魔の光石」(任天堂)
「Half-Life 2」が正統派3Dゲームの極致だとするなら、こちらは正統派2Dゲームの極致。このシリーズはファミコン時代からプレイしているが、特にGBAシリーズは、昔ながらのドット絵グラフィックス、2Dアニメーション、ロールプレイ要素などなど、2Dゲームのおもしろさを最小公倍数で詰め込みましたという感じのゲームに仕上がっていて、個人的にお気に入りのシリーズである。
「聖魔の光石」に限って言うと、まったくの初心者から、コアなファンまでをカバーした欲張りな作りになっていて、経験を問わず楽しめる。ただ、登場キャラクタそのものが少なめで、またどのキャラクタもまんべんなく育つため、2周目以降の楽しみが薄くなっている。
シナリオに関しては、分岐システムを採用しているのはいいが、シナリオを進めるたびにランダムポップする雑魚モンスターとの遭遇戦が完全にルーティンワークに陥っているのが良くない。初心者には楽に経験値稼ぎができてありがたいかもしれないが、シリーズのファンにとっては「非常に面倒くさいけど、倒さないと損したような気分になって仕方がないから倒すか、でも面倒くさいな、でもひょっとしたらレアアイテムが……」というジレンマに終始悩まされ、精神衛生上良くないシステムである。
とかなんとか苦言を呈しつつも、主人公ふたりを始め、新規クラスのバトルアニメーションは相変わらず大満足の出来映え(個人的にはマージナイトがお気に入り)で、強いて点数を付けるとすれば、リミッター振り切りまくりの100点満点であって、私が大のFE好きを公言しつつ毎作レビューの執筆を固辞しているのはここに理由がある。
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