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やがて「KOF」シリーズは作を重ねるたびに独自の世界観を形成していき、現在では「餓狼伝説」や「龍虎の拳」シリーズをはるかに凌ぐ看板タイトルにまで成長。紆余曲折を経て、アーケードではプラットフォームを「ATOMISWAVE」に移した最新作「KOF NEOWAVE」が稼動している。もはや“お祭りゲー”的な華やかさはないが、そうしたポジションは2005年稼動予定の2D対戦格闘ゲーム「ネオジオ バトルコロシアム」が担ってゆくのだろう。 さて。かたやコンシューマ作品に目を向けると、現時点のシリーズ最新作は、10月にリリースされたPS2用「ザ・キング・オブ・ファイターズ2003」。そしてその前が8月の「KOF MAXIMUM IMPACT(KOF MI)」ということになる。グラフィックが3Dポリゴン化されているのが特徴で、主人公のタトゥーが大きく描かれたパッケージが与えるインパクトもあり、色々な意味で従来シリーズとは異なる雰囲気がちりばめられていた。SNK血統のポリゴン作品では「ハイパーネオジオ64」でリリースされた「サムライスピリッツ~侍魂~」、「餓狼伝説 WILD AMBITION」、隠れた名作「武力ONE」以来ということもあり、立て続けのマイナーチェンジに食傷気味のファンほど“がっつり”食いつくのではないか……と思われたのだが、ぶっちゃけ“話題沸騰!”とまではいかなかったような気がする。
10周年記念サイトまで開設される「KOF」シリーズの人気を考えると少々寂しい感すらあるが、実際「KOF MI」の内容は、そこまで地味な扱いを受ける程度の代物だったのだろうか? 「KOF」シリーズのさらなる発展を願いつつ、改めて「KOF MI」のご紹介をさせていただきたい。
■ 2Dテイストに3Dらしい動きがミックスされたプレイ感覚
ワンヒットで確実に相手をダウンさせる「ふっとばし攻撃」は、地上・空中ともに強攻撃ボタン同時押し(R2ボタン)。ふっとばし攻撃などでダウンした際の隙をなくすには、着地直前に弱攻撃ボタン同時押し(R1ボタン)。方向キーを前後に入れたまま弱攻撃ボタン同時押し(R1ボタン)で「緊急回避」。それぞれ前後転中は無敵だが、モーションの終了間際に隙が生じる。 投げ技は、相手の近くで方向キー前後+強攻撃ボタン。また一部のキャラクタは空中投げも可能。ジャンプモーションが速いため偶発的に起こることが大半だが、両者ジャンプ中で間合いが近ければ、方向キー真上以外+強攻撃で投げられる。投げは、相手につかまれた瞬間、方向キーの前後いずれかと“相手と同じ強攻撃ボタン”を押せば「投げ抜け」が成立してダメージを受けずに済む。 移動は、通常の前進・後退のほかに素早く前2回でダッシュ、素早く後ろ2回でバックステップ。ジャンプは上方向入力による通常ジャンプと、一瞬だけ上方向に入れると小ジャンプ、一瞬だけ下方向に入れてから、あるいはダッシュ中に素早く上方向で中ジャンプ、それよりも気持ち長めに上方向に入力すると大ジャンプ。「KOF」シリーズのファンにはおなじみのシステムだが、初めての人は混乱するはずなので、まずは「通常ジャンプのほかに小・中・大がある」とだけ覚えておくといいだろう。 これだけだと従来の2D作品と変わらないが、本作は3Dにつき、弱ボタン同時押し(R1ボタン)で画面の奥・手前にサイドステップ移動できる。画面奥に移動する場合は同時押し、手前に移動するときは方向キー下と同時押しになる。それぞれボタンを押し続けると「サークルモーション」となり、そのまま円を描くようにステップを踏みながら相手に接近する。
使い勝手としては、従来シリーズの「攻撃避け」と同じ感覚で使える同時押し単発(サイドステップ)のほうが上で、サークルモーションは「そういうこともできます」というだけの存在でしかないのが残念。拳法キャラのみサークルモーションから派生技があるといったフィーチャーがあれば、もっと生きたように思うのだが……このあたり、もし次回作があるならぜひとも検討していただきたいポイントだ。
本作では、攻撃をヒットさせたりダメージを受けたりするごとに、画面下にある「パワーゲージ」が増えていく。パワーゲージは、ガードキャンセルや超必殺技を使うたびに消費される。ゲージ自体は最大3本分までストックできる。 ガードキャンセルには「攻撃」と「回避」の2種類がある。「ガードキャンセル攻撃」は、相手の攻撃をガードした瞬間に強攻撃ボタン同時押し(R2ボタン)で、ガードモーションをキャンセルして即座にふっとばし攻撃で反撃できるというもの。便利な技だが、この攻撃で相手をKOすることはできない。「ガードキャンセル移動」は、ガード状態から方向キー前または後ろ+弱攻撃ボタン同時押し(R1ボタン)でガードモーションをキャンセルして緊急回避動作にうつる。このとき、方向キー前の前転では相手の背後に回りこめない。ガードキャンセルは、どちらも発動時にパワーゲージ1本を消費する。
攻撃は、前述の攻撃ボタンのほか、コマンド入力による必殺技、パワーゲージを消費するより強力な「超必殺技」が存在する。また、特定の順番とタイミングで攻撃ボタンを立て続けに入力することで「スタイリッシュアート」と呼ばれるコンボ攻撃が繰り出せる。また、各キャラクタには「ガードゲージ」と呼ばれるゲージが設定されており、これらは各種攻撃をガードするたびに減少し、ゼロになると“ガードクラッシュ”状態に突入。回復するまでゲージは赤く点燈し、この間は常に無防備となる。
キャラクタのモーションは、全体的にスピーディで機敏。登場キャラクタの大半が攻撃判定の発生が速い技を装備しており、必然的にコンボや派生技のタイミングも“見ながら使い分ける”といったふうではなく、一気に最後まで入力してしまうタイプがメイン。やや大味な印象を受けるかもしれないが、そのぶん爽快感はバツグン。強キャラと弱キャラの格差は目を覆いたくなるものがあるが、コンシューマ作品につき「対戦でハンデをつけるために存在するキャラ」とわりきって考えたほうがいいだろう。
■ キャラクタのモデリングは高水準
キャラクタの外観は、スタート直後だと1P・2Pに各2種類しかないが、前述の「ミッションモード」をクリアすれば、カラーバリエーションが6種類まで増える。ストーリーモードをクリアすれば、そのキャラクタのプロフィールが閲覧可能になり、「リギングモデル」と呼ばれるオリジナルアイテムを装備した状態でプレイできるようになる。アイテムはいずれもユニークなデザインばかりだが、キャラクタごとに各1種類しか用意されていないのが残念。遊び心に富んだアイテムをいくつか選んで装備できるようにしてくれていたら、ファンはもっと喜んでくれたのではないだろうか。
ここ数年、ゲームに登場する3Dポリゴンキャラクタのクオリティ向上は凄まじいものがあるが、近年発売された3D対戦格闘ゲームのなかでも「KOF MI」はかなりクオリティが高い部類に入ると思われる。「KOF」シリーズは、ゲーム本編よりも「キャラクタが好きなんです!」というファンが少なくない作品だけに、キャラクタの造作をないがしろにすると「……こんなの、俺が(私が)好きな○×じゃない!!」とソッポを向かれかねず、恐らくは制作サイドも相当気を配っただろうし、その労力はキチンと結果になって表れていると思う。 女性キャラクタは少々あざとい感もあるが、むしろ「ここまでやってくれてありがとう!」と感謝している男性ファンのほうが圧倒的に多いような気がするので、まぁいいのではないだろうか(筆者的にもOK。全然アリ)。ただ、こうした扇情的なコスチュームの類は、続編で一歩でも後退すると、期待していたファンから「ふざけんな!」とばかり大叩きにあう可能性が高い“諸刃の剣”ともいえる。
ただ……男性キャラクタに関しては、ご時世なのだろうが“お笑い担当”的なキャラクタがひとりもいないのが残念。男性ファンのなかには、筆者のように“カッコイイ”キャラを避けたがるマイナー志向が確実に存在する(僻みとか言わないように!)。古いたとえで恐縮だが、TVの特撮戦隊モノでいえば「秘密戦隊ゴレンジャー」で「アカレンジャー」に憧れず「キレンジャー」に親近感を覚えるといった具合。 ブレイク前のイケメン俳優ばかり起用する近年の戦隊シリーズよろしく、「KOF MI」の初登場キャラクタは、最近のアニメ、ギャルゲー、あるいはボーイズラブ的なキャラクタ造作の“ステレオタイプ”の範疇にあり、無難ではあるが、やや冒険心に乏しいように思える。筆者のフェイバリット対戦格闘ゲームのなかに、株式会社アトラスからリリースされた「豪血寺一族」シリーズがあるが、あそこまで世俗を超越していなくてもいいけど、それでも最低限のオリジナリティや意外性、いい意味での“裏切り”は追求して欲しいなぁと、ついつい思ってしまう。 多数のキャラクタが登場する「KOF」シリーズだけに、新作の話が出るたびに「誰が出るのかな」、「やっぱりあいつは外せないでしょ」などといった会話がファンの間でかわされる。だが、こういった傾向が主流になると「チン・シンザン」、「ジャック・ターナー」、「ミッキー・ロジャース」、「ジョン・クローリー」、「テムジン」、「風雲黙示録のほぼ全キャラ」などは、背景のオブジェクトを除きほとんど日の目を見る可能性がなくなってしまう。
「出したところで、誰も喜ばないでしょ」などということは、絶対にないハズなのだ。万が一テカテカのポリゴン防具とブーメランを装備したハヤテが登場しようものなら、筆者のようなタイプは喜びのあまり失禁してしまうだろう。まぁ失禁は冗談にしても、本気でチビるくらいインパクトを与えそうなキャラクタは必要不可欠。主役だけで舞台は成立しない。それは「KOF」シリーズにもいえることではないだろうか。
■ やや淡白なCPU戦・対戦は緊張感抜群
CPU戦の難易度は変更できるが、下げると攻撃の手数が減りガードが極端に甘くなり、上げると手数が増えて多少ガードするようになるといった程度の味付け。ロジックに差がないため、対CPU戦はやや淡白な攻防になりがち。クリアを優先するなら、まずはサイドステップで初弾をかわし、続くコンボのパターンにあわせて反撃あるいはガード継続を判断するだけ。あとは気持ちよくスタイリッシュアートでも何でも叩き込んでやればいいので、ストレス解消にはもってこいだ。 サイドステップは、対戦でも重要なポイント。すでに触れたとおり、どのキャラクタにも必ず「コレ」という初弾に最適な技がある。相手の空振りを誘えば、素早い初弾からスタイリッシュアート+キャンセル必殺技or超必殺技で体力をゴッソリ奪うことが可能。ただし、初弾からスタイリッシュアートへの派生も、初弾ヒットを確認してから入力したのでは遅く、一気に入力する必要がある。対戦するプレーヤーのスキルにもよるが、攻防の中心は“サイドステップ”と“スタイリッシュアート”が大半を占めることになる。
スタイリッシュアートを極めたプレーヤー同士の対戦は“一瞬の隙”が命取りになるため、緊張感にあふれたプレイが楽しめる。キャラクタによってはマニュアルに膨大な数のスタイリッシュアートが記載されているため、対戦格闘ゲームに不慣れな人は「こんなの覚えきれないよ!」となるかもしれないが、まず最初に「コレ!」といったカンタンなスタイリッシュアートを2~3つ覚えておけば、多少腕前に差があっても相応に立ち回れるようになるはずだ。
■ キャラクタゲームとしてはいい仕上り
NEOGEO版を除けば初のコンシューマ版となる「KOF'94リバウト」はもちろんだが、興味がある人は「KOF MI」にも注目していただきたい。今後、コンシューマ版のメインが2Dになるのか、あるいは「KOF MI」のように3Dで続くのかはわからないが、いずれにしても「KOF」シリーズのファンならチェックしておいて損はないはずだ。
(C)SNK PLAYMORE
□SNKプレイモアのホームページ (2004年12月27日) [Reported by 豊臣和孝]
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