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★ピックアップ アーケード★
メジャーバージョンアップ時はもちろん、マイナーバージョンアップでも選手の動きが大きく変化する「ワールドクラブ チャンピオンフットボール セリエA(以下WCCF)」シリーズ。その最新バージョンとなる「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」が、12月20日から全国のゲームセンターにて順次稼動を開始した。 当初はレアカードの追加だけでゲーム性に関してはほとんど修正されないという話だったため、「インタビューを掲載するには丁度いい区切りかな」との結論に達したのだが、稼動時期の推移、AI再調整の決定など諸事情が重なったため、予定どおりインタビュー記事が掲載できなかったことを、まずはお詫び申し上げたい(待っていてくださった読者の皆様、本当にすいません……)。インタビューに関しては、時期を見て改めて行なわせていただく予定だ。 なにはともあれ、紆余曲折を経て「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」が正式稼動の運びとなったわけだが……いざ蓋を開けてみると、やはりというか「微妙だけどキッツイなぁ」という変更点が随所に見受けられた。しかも、具体的にどのようなメリット・デメリットが生じるかは、チーム構成やフォーメーションで大きく異なるといった印象。よって、今回の連載についても、前バージョン同様に筆者が【SIDE-A(趣味)】、石井氏が【SIDE-B(ストロングスタイル)】と、それぞれ交代制で記事を担当することにした。それぞれプレーヤーの方々に楽しんでいただければ幸いである。 ※注 …… 本記事の内容は、あくまでも筆者自身がプレイして感じたことに基づいて記述しているものです。状況やカードなどさまざまな要因により、記事どおりにすべてが機能するわけではないことを、あらかじめお断りしておきます。
前述のとおり、マイナーバージョンアップにつきシステム面で大きな変更はない。ポイントは「ゲームバランスの再調整」と、レアカード「SERIE A LEGENDS」、「SERIE A ALL TIME LEGENDS」合計20枚追加の2点で、後者については石井氏が担当する【SIDE-B】にて詳しくご紹介する予定だ。
■ AIの再調整(その1) ~テクニックとスピードをフィーチャー~
「WCCF 2002-2003 Ver.2」は、前バージョンの「2002-2003」よりもテクニック面がフィーチャーされていた。しかし、全体的にパワー系の選手が有利であることに変わりはなく、それは「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」においても、ほぼ同様。強いていうなら「パワー一辺倒の単独突破が、ほんの少しだけやりにくくなった……かな?」といった程度。やや蔭りが見えたといっても、個の力で断続的に局面を打開して得点するといったパワープレイは相変わらず有効。トップクラスの選手だけで構成されているチームに限れば、ほぼ前作そのままのプレイスタイルが通用する。 テクニックのフィーチャーに関しては、より強く体感できる点がいくつかある。ひとつは、突出したテクニックを持つ選手のボールキープ力が高まっている点。前バージョンなら力任せにボールを奪い取られていた局面でも、テクニシャンタイプの選手なら、ボールを持ったままスルリとかわしていくシチュエーションが多々見受けられる。ペナルティエリア目前を想定するなら、パワータイプがDFの寄せをモノともしない突破を図るのに対し、テクニシャンタイプは左右どちらかに流れるようにかわしていくといった構図になる。 ただし、ひとくちにテクニシャンタイプといっても、AI再調整の恩恵を受けているのは“卓越したテクニックを持つ一部の選手”に限られているようだ。まだファーストインプレッション程度にしかプレイできていないため断言するには至らないのだが、同じテクニシャンタイプでも“平均的な能力パラメータのなかで、ほんの少しテクニックが高い”といった選手のパフォーマンスは、前作と大差ないか、あるいはボールキープ力が若干落ちているように感じられる。突出した能力がないにも関わらず、前バージョンよりも明らかにパフォーマンスが向上している選手も確認できたが、こちらはAIの再調整よりもブラインドデータに手が加えられた結果と考えたほうが自然だろう。
スピードに関しては、テクニックとは異なる形でフィーチャーされているように感じられる。“パワーがなくてもスピードで勝負できる”といった判りやすいものではないが、次に紹介するAIの再調整ポイントに目を通していただければ、おおむねご理解いただけるのではないだろうか。
■ AIの再調整(その2) ~オープンスペースを意識した展開~
さて、こうした変化が“スピードのフィーチャー”と、どう絡むのか。それは、選手の動きがアクティヴになったことで生じる“オープンスペース”と深く関係してくる。ボールにあわせて動き回るうち、相手陣内のあちこちに“予期せぬ空白地帯=オープンスペース”ができあがる。「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」では、こうしたオープンスペースを積極的に狙うようAIが再調整されているようだ。もちろん相手フォーメーションや味方の連携にもよるが、一定のスペースがあり、なおかつ近辺の味方選手が走りこむ余裕があれば、高い確率でボールを放り込んでくれる。 DFが最終ラインを積極的に押し上げるようになったのも、「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」における特徴のひとつ。必然的にDF裏のスペースが空くことから、前述のAI再調整と相まって従来シリーズでは考えられない頻度でスルーパスが繰り出される。サイド攻撃の際も、DF裏にスペースがあれば、戦術ボタンの指示ひとつで浅めの位置からスルーパスが出せるほどだ。これは、AIの戦術的な選択肢のなかで“パス”の比重が高まっているとが影響しているような気がする。チーム立ち上げ当初のパスワークが前作より目に見えて多いことから推察したにすぎないが、前述の傾向を踏まえ、ある意図をもってそのように調整されていることは間違いないと思う。 オープンスペースを突く攻撃は、当然“相手陣内”がメイン。特にフィニッシュにつながるボールの動きは、パサーの能力はもちろん、そこに詰めていく選手の“スピード”が欠かせない要素のひとつ。ここでいうスピードとは、表面的な能力値の高さだけではなく、恐らくはブラインドデータとして存在するであろう“ボールに対する反応の速さ”が、より重要視される。つまり、スピードがフィーチャーされたといっても、「セルジーニョ」などに代表されるスピードを武器に仕掛けていくタイプのアタッカーが優遇されたわけではないのだ。最終ラインを突破するには、スルーで出されたボールに素早く詰めるか、さもなくば従来のように最低1回はDFとのマッチアップをクリアしなければならない。 こうしたAIの調整で、試合展開はどのように変化するのか。フィジカル優位は変わらず、それにくわえてオープンスペースを突く攻撃が頻発。スルーで出されたボールに対し、目にもとまらぬ勢いで詰めてくるクリンスマン、アンリ、ロナウド、シェフチェンコ、トレゼゲなどの究極ストライカー軍団。答えは簡単で、特徴を理解していないプレーヤー同士の試合は、監督不在の点取り合戦になる可能性が高い。バレージ、アジャラ、デサイー、ベルゴミ、ブランなどの鉄壁DFをズラリと並べるなら多少は改善(?)されるが、平均的なDFで最終ラインを構築するなら、それなりの対応を施さない限り、究極ストライカー軍団に対して最低2失点は覚悟しなければならない。
こうした傾向を踏まえると「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」は攻撃偏重型のバージョンといえるかもしれない。前作はパワーを利した突破と守備に特化したチームのほうが安定した戦績を収められる傾向にあったため、もしかしたらその反動なのかもしれないが……いずれにしても極端というか、趣味チームでプレイしている人には前作を上回る“辛口”バージョンに仕上がっている。
実際にプレイするまでは「前もそうだったし、趣味チームでもある程度はアイデンティティや多様性を追求したプレイが可能だろう」と考えていたが、ICCで対戦したCPU強豪チームに、それなりの試合数をこなしてきたモデナが5-0、6-0となす術もなく立て続けに惨敗したときは、さすがに「これはヤバイ」と頭を抱えてしまった。CPUチームゆえのトップコンディションを差し引いても、同じような選手で構成されたプレーヤーチームは世間にゴマンと存在する(むしろ圧倒的多数派)。多少不利なら、まだいい。しかし、今回のAI再調整で恩恵を受けているのはレアカードクラスの選手が大半で、レギュラーカードで「これは!」と気付かされた選手の絶対数と比べれば雲泥の差がある。 最初から敗北を前提にコインを投入する奇特なプレーヤーなど、まずいないだろう。レアカード満載、さもなくばお決まりのメンバーで構成されたU-5チームばかり居並ぶなか、能力値などは抜きにして「好きな選手で、好きなようにプレイしたい」人たちも少なからず存在するはずだ。だが、今回のAI再調整は、そうした数少ないプレーヤーが雲散霧消してしまう危険性をはらんでいる。ただでさえ、新規参入プレーヤーが減っているように感じられるというのに……。
限られた時間のなかで試行錯誤してみた結果、プレイの多様性は若干スポイルされてしまうが、それでも「ケータイやマンガ片手にシュートボタン連打してるだけのお決まりチーム」に対抗できるポイントは、なんとか抽出できたような気がする。もし筆者のように頭を抱えた経験のある趣味チームの監督さんがいたら、ぜひとも以下のセンテンスを参考にしていただきたい。
■ 趣味チーム唯一のスルーパス対策? ~スイーパーを配した守備陣形
DF選手カードを横にピッチリ詰めて配置すれば対応できるように思われるかもしれないが、今作のDFは攻め上がるにつれて意図せずとも最終ラインを押し上げてしまう傾向が強いため、隙間や背後を狙ったパスを未然に防ぐまでには至らない。フラット気味に凹凸をつけた最終ラインも試してみたが、ファジィな動きのなかで守備側が想定しにくいスペースが狙われてしまったとき、取り返しがつかないケースがいくつか目に付いた。全体的には良い感じなのだが、安定感でやや微妙に思える部分がある。 さて……こうなるとアントニオ猪木の“風車の理論”ではないが、もはや逆転の発想しか残されていない。どうせボールを出されるならCBの配置でパスルートを限定し、最後方の“スイーパー”が先にボールを奪ってしまえばいいというわけだ。ドリブル単独突破だけを狙ってくるチームには効果が薄いが、2トップ以上で仕掛けてくるチームには、かなり有力な対抗策となっている。どれくらい安定感が違うかは、単純なフラットラインとスイーパーをそれぞれ数試合プレイして比較するだけでも、十分に実感していただけるのではないだろうか。
汎用性が高いのは、CB3人、カバーリングに長けたスイーパー1人を直後に配する守備フォーメーション。CB3人は等間隔に配置。あまり広すぎるとスルーパスへの対応がおざなりになってしまうが、さりとて狭すぎると左右奥のオープンスペースを突かれてしまう。起用するDF、相手の攻撃布陣などで微妙に異なるため、試合開始直後の相手フォーメーションは必ず確認しておきたい。スルーパスにばかり固執すると、相手がサイド攻撃に変更してきたときに対応しきれなくなるからだ。
■ サイド攻撃の有効性
「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」では、左右奥はもちろん、あらゆるポイントからのクロスに対してDFが“棒立ち”になるケースが目立つ印象がある。かつての「WCCF 2001-2002」を想起させるもので、トップクラスのストライカーにかかれば、ゆるいクロスでさえ余裕で叩き込まれてしまうほど。これは、テクニシャンタイプのボールキープ力が向上したため、そうした選手が前線でボールを持った際、タッチライン側に流れたほうが攻撃パターンが構築しやすいことに起因しているように思える。キープ力を生かせばサイドから攻撃する機会が増やせるぶん、プレーヤーに「サイド攻撃が強化された」という印象を強めているのかもしれないが、いずれにしても、左右サイドのオープンスペースを突かれるのは非常に痛い。サイド突破に対するケアは、前作以上に徹底したほうがいいだろう。
中盤は攻撃も絡むのでさまざまな工夫が必要だが、まずは攻撃よりも守備に長けた人材をSHとして起用するのが基本。突破された際に逆サイドのSHを下げて対応するのであれば、それなりの高さも必要になるだろう。さらには、CB中央がオーバーラップしないよう真上にDHを置き、CMF、OMFで最終ラインから最前線までの距離を調節しておきたいところ。このあたり、筆者もまだハッキリとは検証できていないため、一定の成果が確認できるまで若干のご猶予をいただきたい。
■ AI再調整のポイントを見極めよう! 「現代サッカーでスイーパーって、何の冗談?」と鼻先で笑われるかもしれないが、6月~7月にかけて開催されたUEFAヨーロッパ選手権(EURO2004)では、優勝国「ギリシャ」が、執拗なマンツーマンディフェンスとスイーパーによる堅い守備で強豪国「スペイン」の追撃を振り切っている。「WCCF」にはマンマークの概念がないので同じように再現することは不可能だが、攻守含め状況にあわせてシステムを変えてきたギリシャのスタイルは十分参考になる。先入観だけで判断せず、さまざまな方法を試してみるのが一番ではないだろうか。 今回は稼働日合わせということでやや駆け足の内容となってしまったが、今回ご紹介した項目以外にも「マッチングの傾向」、「やや雑になったカウンターパスの精度」、「ロビング、グラウンダーなどフィニッシュにつながるパスの多様化」、「シュートボタン・キーパーボタンの反応」、「パフォーマンスの上がった選手、下がった選手」など、見逃せないポイントがたくさんある。次回は、攻撃面を中心にAI再調整のポイントなどをご紹介する予定だ。
※次回「WCCF 2002-2003 Ver.2.1」SIDE-B:第1回は2005年1月上旬の掲載予定です。
(C)SEGA,2002,2004
□セガのホームページ (2004年12月20日) [Reported by 北村孝和]
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