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★NDSゲームレビュー★

遊び心をくすぐる新機軸が満載? なんとも味のある展開がキモ
きみのためなら死ねる

  • ジャンル:タッチアクション
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:5,040円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(12月2日)



 「きみのためなら死ねる(以下、「きみしね」)」とは、とても奇抜なタイトルだが、多くの人が何らかの対象に持ち得る感情、あるいは持ち得た記憶を掘り起こす言葉ではないだろうか……。

 主人公は、街を歩いているときに偶然すれ違った“彼女”に一目惚れしてしまう。運命の出会いの直後、金魚を飲み込んだ男の胃袋から金魚を救い出すのだが、このとき野次馬に紛れて彼女も注目してくれていたということがわかった主人公は、彼女の気をひくためには目立つパフォーマンスをすればいい、という結論に達する。そしてパフォーマンス集団「ラブラビッツ」の一員に加わり、より過激なパフォーマンスを繰り返していくことになるのだが、彼を待ち受けていたのは次々に起こるピンチの連続なのだった……。


■ 彼女の気を引き振り向かせろ!

  「きみしね」は、前述の状況で主人公が彼女を振り向かせるべく頑張るエピソードがいくつも展開していくのだが、そのゲームのシチュエーションがいちいちありえないものばかりで、まず笑いを誘う。最初に、その状況が発生した理由が4コマまんがのように表示されて、それからゲームがスタートする。操作はすべて下画面のタッチスクリーンのみを使用して、こすったり、なぞったり、タッチしたり、マイクに向かって叫んだり、DSの機能をここぞとばかり使いまくることになる。

 内容は、例えば金魚を飲み込んだ男の胃袋から金魚を助け出すというものでは、下画面に胃袋の断面図が表示され、胃袋を泳いでいる金魚を擦るようにして上に押し上げなければならない。ゲームには1~5のレベルがあって、レベル1をクリアすると金魚が増えていき、下に向かって水流が起こって引っ張られるなど、難易度が上昇し、レベル5まで達成してクリアとなる。

 パラシュートで複数人が落ちてくるシーンでは、表示されたコードナンバーを入力しないとパラシュートが開かない。ここでは、上画面で飛行機から人が落ちてきて、下画面には電卓が表示される。パラシュートのそばに表示されたナンバーを見て、下の電卓をタッチして正解ならパラシュートが見事開くが、ミスした場合は最初から。レベルが上がっていくと桁数がどんどん増えていく。

 このゲームでは下画面がメインで展開するが、上画面をしっかり確認しながら下画面で操作するゲームも多い。パラシュートのゲームはまさにそれで、慣れないうちはどちらかの画面を凝視してしまいがちだが、少し遊んでいれば2画面でのプレイにも慣れてくるだろう。

 また、「きみしね」ならではの面白いゲームとして挙げられるのは、彼女に向かって愛を叫ぶゲーム。「え? これ、電車の中で遊ぶことを考えてないよね?」という考えがまず頭をよぎった。上画面の遠くに立っている彼女に、「きみは太陽だ」など、指定された言葉を叫ぶのだが、1人で遊んでいてもこっぱずかしくなるような愛の言葉のオンパレード。おまけに、レベルが上がると彼女のそばで楽器の演奏が始まり、ジャマするようになってくる。この場合、上画面をよく見て楽器の演奏がやんだスキを見計らって、愛の言葉を叫ぶことになる。

【キンギョ】



■ 彼女との距離を縮めていく流れ

 全体の流れは、1ステージにいくつかのゲームが用意されていて、1つのゲームをクリアするごとにハートのゲージが上昇し、ゲージが100%になるとボスバトルへと突入。ボスバトルをクリアすればご褒美とも言える、“彼女とより親しくなれるゲーム”をプレイした後、次のステージに進める。

 この仕組みのおかげで、普段ゲームに慣れ親しんでいない人でも先へ進めるように配慮されていて、1ステージに用意された全ゲームをクリアする必要はない。苦手なゲームがあればそれを避けて、得意なゲームだけ選んでクリアし、ハートのゲージを100%にすればボスバトルに進めるようになっている。

 基本のゲームではミスは3回まで許されていて、1度ゲームオーバーになるとせっかく貯めたハートのゲージは大幅に減少してしまう。ただしボスバトルはその限りではない。

 1ステージ目のボス、暴れ牛との闘いは、なぜか街中を暴走し始めた暴れ牛から彼女を守るというもの。その数、何と100匹。画面をタッチすると、「アチョー」という声が聞こえるのも爽快で、正面から迫り来る暴れ牛をどんどんタッチして倒していく。

 通常の牛は1回のタッチで倒せるが、耐久力の高い牛には数字が表示されており、その数だけ連打すればOK。また、途中には街中でスキーを履いている人が現れるのだが、これはうっかり誤ってタッチするとミスとなる危険な罠。そして最後の1匹は、100発分の耐久力を持つ暴れ牛で、ひたすら連打してようやくクリアとなる。このバトルでは、1回のミスでもゲームオーバーとなってしまうのだが、これは「ここは彼女に男を見せるところ」だから、1回の失敗も許されないということらしい。

 どのゲームもビビットな色使いとノリノリのサウンドで遊ばせてくれるので、ついついゲームを遊ぶ熱も入りがち、といった具合だ。

 ボスとのバトルをクリアした後、暴れ牛騒動で汚れた彼女の体を拭いてあげるというゲームになる。彼女と彼女の顔や腕などにいくつか汚れた箇所があって、しばらく擦り拭き続けると“キラーン”と光るエフェクトが入って綺麗になれば成功。ただ擦ればいいという訳ではなく、同じ部分ばかり擦り続けると彼女が痛がるので、彼女が痛そうな声を出したときは擦る手をゆるめたり、別の汚れを擦ったりしながら彼女を磨き上げていく。彼女とのラブシーンは、ハートのゲージが表示され、磨いていくとゲージが満たされていき、満タンになればクリアとなる。

 こんな風に、ボスとの闘いの後は彼女とのラブラブなシーンがゲームとして挟まれ、彼女を拭いてあげるゲームが彼女との初めての接触となり、その後もより親密になっていく様子が描かれれていく。ここで流れる音楽も、「チュッチュルッチュー」というスキャットが頭に残る、明るくノリのいい曲だ。

 途中まで順調に彼女に近づいていく主人公だが、ある時ライバルが現れて、彼女を奪い合うことになる。ライバルは、これまたいかにも悪いヤツが記号化されたようなキャラクタだが、その丸い風体と髪型、そして主人公に意地悪するそのストレートなやり方のせいか、何だか憎めないキャラに見えてくる。彼女を巡ってストーリーがどんな決着を見るのかは、是非実際にプレイしてもらいたい。

【アバレウシ】
【ボス後のラブラブシーン】



■ 記号化されているがゆえの彼女のリアルさ

 彼女も主人公も、登場人物全員の体がシルエットで描かれ、記号化された服を着ていて、顔が描かれていない。そのため、最初に視覚で好き嫌いと判断する前に、直接ゲームの中でタッチしたり、こすったりしていく操作と相まって、彼女のリアクションなどに感情移入していくという不思議な感覚が味わえる。

 ビジュアルが'70年代テイストの色調で、こういったとてもおしゃれな感じが好みの人なら、画面の雰囲気だけでもグッと心を掴まれるのではないかと思う。そうでない人も、静止画でなく実際にアクションしている彼女を見たり、触って反応する様子を味わってもらいたい。

 彼女の動きは何とも言えず艶めかしくていい動きをするのと、くすぐったい時などに入る「うふふふっ」という笑い声が可愛い。5レベルあるゲームの、3レベルと4レベルの間にブレイクタイムが入るが、そこでのちょっとした動きや、少しツンとすました感じで歩いている様子、ちょっと手を挙げたりする挙動がかわいらしく、いかにも「女の子」という動きを記号化してある。嫌みなく、それでいてタップリかわいらしい要素が詰めてあるところがいい。個人的には、背中に群がるサソリを落とすのを失敗すると、すごく痛そうなチクっという感じのエフェクトが入って、怒って振り向く動きが気に入っている。怒り方まで可愛いのだ。

 逆に、表情が見てとれないことや、彼女に直接何かをするシチュエーションのゲームが少ないためか、彼女との距離がジリジリ近づいていくような感覚はうす味な感じがする。これは、全体のボリュームが関係していると思う。初っぱなからテーマとなる音楽がアレだったり、一発目が金魚を吐かせるゲームだったり、謎のパフォーマンス集団ラブラビッツの登場など、インパクトが強いものが目白押しだから、「これからどんどん振り回してくれるんだろう」、と期待してプレイしていると、ぐーっと盛り上がる山をまだまだ上っていきたい途中で終わってしまう感じ。こんなに面白いキャラやシチュエーションなど、下地がしっかりそろっているのに、これはもったいない。もっと彼女にあっちこっち引っ張り回されたいし、連れ回したい、だから食い足りない感じがしてしまう。

 全体を通した感想では、ラストでは泣ける上(本当にちょっと涙ぐんだ)、とても得心がいく。「きみのためなら死ねる」と言えてしまうほど、青春ド真ん中だった遠い昔の記憶のかけらを、少し引いたところから見ている感じが心地良かった。個人の妄想が入り込む余地の多いキャラクタは個人的に気に入ってるし、一生懸命バカなところも大変好ましい。惜しむらくは、最後の感動に結びつく全体の山がもう少しあっても良かったのに、と感じることだ。

【キャラクタ】



■ 追加要素、おまけ要素いろいろ

 分量はそれほど多いものではないので、ゲームに慣れている人ならクリアまで早いかもしれない。クリアすると、より難度の高いモードが追加される。ちなみに最初の少しだけ遊んだが、かなり難しくなっているので面食らった。これはやり込みがいがありそうだ。

 そこまでやり込み派ではない、という人も、遊び込むことで彼女の着せ替えのおまけ要素が集まっていくので、繰り返しプレイしてぽちぽち集めていくのも1つの楽しみ方だろう。このように、繰り返し遊んでもらおうというきっかけは用意されている。

 集めるといえば、ソニックチームがリリースしてきたこれまでのGBAタイトルを同時に挿してプレイすると、「スペースチャンネル5」の主人公“うらら”の衣装が手に入るなどの追加要素もあって、「スペチャン」ファンならニヤリとできるはず。

 条件を満たすと、全編の音楽を選んで聞けるモードが追加されるのも嬉しい。濃厚な「きみしね」ワールドへの入口とも言えるようなメインテーマが公式サイトでも聞けるが、これ以外にもノリのいい楽曲がいろいろと聞ける。メインテーマはオープニング以外にも、ゲームを進めていく中でもりもり聞けるので、より一層激しく頭の中でループするだろう。

 NDSを購入する際には本作もそろえて購入して、まずはセットで友達に自慢したい。そんなタイトルだ。

【マニアック】


(C)SEGA,2004

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「きみのためなら死ねる」のページ
http://kimishine.sega.jp/
□関連情報
【11月22日】セガ、NDS「きみのためなら死ねる」
光吉氏ら登場の発売記念ライブイベントを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041122/kimi.htm

(2004年12月2日)

[Reported by 河本茉澄]


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