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★Xboxゲームレビュー★
本作は、アメリカ陸軍歩兵部隊の“市街地戦闘の訓練用に開発されたシミュレータ”がベースになっている。訓練教本を忠実に再現した本格的なゲーム内容には、先行発売された北米でもミリタリーファンを中心に高い関心が寄せられていた。ただし、本格的とはいっても、コンシューマ向けということでグラフィックやストーリーにゲーム的な演出が施されているため“一見さんお断り”的な雰囲気はない。むしろ、シンプルなシステムと迫力ある戦闘シーンにより、“とっつきやすさ”の点で一般的なRTSよりも敷居が低いといえる。 演出といえば、本作は訓練用シミュレータがベースだけあって、装備から専門用語に至るまで、一部始終すべてが“リアル”に再現されているのも特徴のひとつ。語弊はあるかもしれないが、ある意味“ホンモノ”といっても差し支えないだろう。部下の兵士たちは、訓練教本に基づいてプログラミングされたAIにより、銃の構え方から立ち居振舞いに至るまで、実に“らしい”動きを見せてくれる。ミリタリーファンなら、これらをインタラクティヴに体験できるというだけでも購入する価値があるのではないだろうか。
なにはともあれ、まずはゲームの世界観と基本的なシステムから解説していくことにしよう。
■ 砂漠地帯の架空の小国“ジーキスタン”が舞台 東西冷戦の終結後、現代戦をテーマにした作品の多くが“テロリスト”を敵役として描いているが、「FSW」もその例にもれない。ゲームは、現在のアフガニスタン、パキスタン、中国などに囲まれているとされる架空の小国「ジーキスタン」が舞台となっている。 ジーキスタンの実権を握る独裁的指導者「アルアファド」は、かつてソビエトに支配されていた同国を解放すべくゲリラ戦を展開した「ジーキスタン解放戦線」で英雄と称された人物。ソビエト撤退後、10年におよぶ内戦を経て国内を掌握したアルアファドは、独自の原理主義に基づき外国人や少数民族を排斥。国中に蔓延する飢餓や貧困を尻目に、国際テロリストや過激な原理主義者との結束を強めていった。 それから数年後……。 中東におけるアメリカ主導の軍事行動は、元タリバンのメンバー、旧イラク政府支持者などを続々とジーキスタンに亡命させる結果となった。さらには、かつてアメリカがアフガニスタンで一掃したはずのテロリスト養成組織、収容所などの施設が、アルアファド政権の支援で再建されていたことが判明する。
頻発する、西側諸国あるいは関連施設をターゲットにしたテロ活動。アメリカ諜報機関は、熱心な調査の末にテロリストの本拠地がジーキスタンにあることを突き止めた。アメリカなどNATO7カ国は、テロリスト排除と民族浄化の阻止を目的としてジーキスタン侵攻を決議。空爆の後、ジーキスタン南部の空港に集結した部隊は、地上から侵攻を開始する。
■ 2部隊をリアルタイムで指揮 ~でも複雑な操作は不要~
ゲームオーバーの条件は、部下がふたり以上同時に負傷するか、死者を出すこと。そのため、RTSやボード系SLGでよく見られる力技「人海戦術」の対極ともいうべきマクロ的なオペレーションが要求される。まぁ、人海戦術以前に2チームあわせて8名しか戦力がないわけで……。とにもかくにも、部隊長たるプレーヤーは“部下の安全”を確保しつつ、目標達成に努めなければならないのだ。 操作系は、使用ボタンこそ多いが、操作それ自体はシンプルに系統だててまとめられている。まず、チームを移動させるときは左スティックを使用する。やりかたは、移動させたいポイントに移動カーソルを合わせてAボタンを押すだけ。移動カーソルを合わせた先にビルの曲がり角や放置されたトラックの側といった「地形」がある場合、画面右下のHUDに「隊列アイコン」が表示される。市街地戦闘は、遮へい物で身を守りながら移動するのが常道。遮へい物の大きさ、位置、高さなどにより攻撃に参加できる人数が変化するため、HUDで移動先の地形を確認するのは「FSW」における基本中の基本となっている。 なお、移動には「通常移動」と「警戒移動」の2種類がある。通常移動は、チームを素早く動かしたいときの命令。移動させたいポイントにカーソルをあわせてAボタンを押すが、移動中は敵の攻撃に対して無防備になる。移動を途中で止めたいときはBボタンでキャンセルできる。警戒移動は、不慮の事態を想定したコマンド。Aボタンを押し続けて「ターゲットサークル」を表示し、警戒したい方向を決める。あとは通常移動と同じようにAボタンで目標地点を指定する。指定方向を警戒しながら進むため移動速度は遅いが、その方向で敵と遭遇した場合、きちんと応射してくれる。
射撃は、Xボタンでターゲットサークルを出現させ、攻撃対象を枠内におさめてAボタンを押すだけ。ターゲットを拡大したいときは左トリガでズーム。中断したいときはBボタンを押す。移動同様、射撃にも「集中射撃」、「おとり射撃」、「グレネード」といった3種類のコマンドが用意されている。 集中射撃は、枠内に捉えたターゲットを徹底攻撃するコマンド。敵がいなくなるまで攻撃し続けるが、範囲外の敵から攻撃されても「命令されてますから」とばかり、兵士たちは身を守ろうとしないのが困りもの。もし攻撃中にターゲットカーソル外から攻撃されたときは、Bボタンでキャンセルした直後に行なわれる“威嚇射撃”で枠内の敵を威嚇し、すぐ安全なポジションに移動させたほうがいい。 おとり射撃は、攻撃範囲内にいるすべての敵に銃口を向けるコマンド。やりかたは、ターゲットサークルが表示されているときにAボタンを押し続ける。おとり射撃を命じた部隊の攻撃範囲内にいる敵は、射すくめられて身動きが一切取れなくなる。後述するが「FSW」は部隊の連携がすべての基本になるため、移動ルートの安全を確保するうえで、おとり射撃はとても役に立つ。
グレネードには、「M67」、「M203」、「スモーク」、「間接攻撃」の4種類がある。やりかたは、Xボタンを押し続けてグレネード選択パッドを出現させ、あとは方向キーの上下左右で種類を指定するだけ。M67は、平たくいえば“手榴弾”。手で投擲するため飛距離は短いが、目標まで山なりの軌道を描くため遮へい物の背後などが狙える。M203は、M16ライフルの銃身下部に装着されたグレネードランチャー。射程距離が長く、攻撃力も高い。「スモーク」は“煙幕”といったほうがわかりやすいだろうか。遮へい物がない場所や、敵の目前を安全に走り抜けたいときに有効。間接攻撃は、空軍や砲兵に支援攻撃を要請するというもの。使えるシチュエーションが限定されているため、実質的にはイベントコマンドに等しい。なお、銃火器による射撃はパーセントで、M67、M203、スモークは個数で、それぞれ残弾数が表示される。
■ 部隊同士の連携なくして勝利なし! ~懇切丁寧・完璧なチュートリアル~
これは、不意打ちで負傷者が発生したときのため。初プレイのミッションでは、ちょっとした操作ミスが不意打ちを招きやすい。負傷した兵士は、治療や弾薬の補給などが行なえる「CASEVAC」まで運ぶ必要があるが、敵の火線内で倒れた味方を抱きかかえて運ぶときは、味方の援護が絶対に必要。一方の部隊がおとり射撃でひきつけている間に、負傷者を抱えた部隊が安全な場所まで避難するというわけだ。敵の攻撃に曝されながら、援護もなしに負傷者を救出しようとすれば、たいていはミイラ取りがミイラになる。 遭遇した敵の大半は、遮へい物に身を隠しながら徹底抗戦してくる。遮へい物が木箱などの“やわらかい”オブジェクトなら、集中射撃すれば火力で圧殺することも可能だが、あまりにも効率が悪いため、基本的にはもう一方のチームが側面や背後を突くことになる。このとき、敵の火線を横切る必要があれば、片方のチームが「おとり射撃」で敵を引き付け、その間にもう一方のチームが「通常移動」で素早く移動する。「グレネード」を使わなければ切り抜けるのが難しい(あるいは不可能に近い)シチュエーションもあるが、いずれにしても部隊同士の連携がすべての基本となる。 この時点で、RTSやシミュレーションゲームに不慣れな人は、ルートを確保するためにいちいち連携を気にしなければならない点で「面倒だなぁ」と思われるかもしれないが、操作自体はシンプルなので、最初にプレイする「チュートリアル」をクリアしていくうちに、すぐ慣れてしまうはずだ。「FSW」のチュートリアルは、手取り足取り、とても懇切丁寧に作られた逸品。ゲームをクリアするために必要な知識や操作を、1時間弱で余すところなくプレーヤーに伝授してくれる。
ミリタリーゲームやRTSをプレイする人で「俺、マニュアルなんか目を通さないよ」というタイプはほとんどいないかと思われるが、万が一いたとしても「FSW」では特に問題ないだろう。基本操作から連携に至るまで、チュートリアルには「FSW」の基本がキッチリ詰め込まれている。よくありがちな「通り一辺倒、基本操作をなぞるだけの雑なチュートリアル」とは、天と地ほども差がある。もし「RTSは初めてなんだけど、自分にできるかなぁ」と不安を抱いている人がいたら「FSW」に関しては、それはないと断言してもいいほどだ。
■ スルメのように長く遊べるゲームではないが、ミリタリーファンにはマストアイテム
「FSW」は、シチュエーションが“市街地戦闘”に限定されていることもあり、リアルさを損なうことなくシンプルな操作を実現することに成功している。FPSやアクションシューティングが好きな人は、直接操作できないもどかしさを感じるかもしれないが、そのぶん誰にでも楽しめる秀逸な娯楽作品に仕上がっている。少なくとも、これまでにリリースされたミリタリー系のRTSで、ここまで戦争映画並の臨場感を味あわせてくれるゲームに出会った記憶はない。 ただ、ひとつ。これは指摘するだけ野暮なのかもしれないが……敵の配置が固定されているのが、本当に惜しい。なぜ惜しいかといえば、ミッションに失敗して最初からやり直すときなどに「そういえば、あそこに敵が隠れていたっけなぁ」など、いわゆる“ネタバレ”になってしまうからだ。 本作の醍醐味は部隊同士の連携にあり、敵の配置を想定しながら「詰め将棋」または「パズルゲーム」の要領で部隊を動かしていくのが、とても楽しい。慣れてくると、ただ遮へい物に張り付いているだけの敵を排除するときなどは一連のオペレーションが単調に感じられることもあるが、現時点ではそれほど気になるレベルではない。面倒ならCASEVACを拠点に、グレネードで片っ端から吹き飛ばすこともできる。ただし、それもこれも敵やCASEVACの出現ポイントがあらかじめ決められているから可能といえる。出現ポイントを知っているのといないのとでは、命からがらCASEVACにたどり着いたとしても、その有り難味には雲泥の差がある。 とはいえ、これがランダムだったら、どうなるのか。恐らくは、運が悪いと「ベトナムのジャングル戦」よろしくアンブッシュを食らいまくって屍累々といったケースも珍しくないだろう。要はバランス調整といった話になるのだろうが、ゲームオーバーの条件を考えると、配置固定がもっとも無難な落としどころなのだろう。理想をいえば固定とランダムを切り替えられたらいいのだが、それは(あるとしたら)次回作への楽しみとしてとっておきたいような気もする。固定といえば、Xbox Live対応が「協力プレイ」だけというのも勿体無い。ふたりで役割を分担しながら同じ任務に当たるというのは実に燃えるシチュエーションだが、逆もまたしかり。悪知恵の限りを尽くして、とことん対人戦を楽しみたいと考えてしまうのだが……。
最後にちょっとだけ不満を漏らしてしまったが、10月5日から配信が開始された有償の追加ミッションなど、発売から間もないにも関わらずゲームをやり尽くした人向けにのケアが行なわれるなど、実に好感が持てる。洋ゲーならではのお楽しみ要素“チートコード”も用意されており、こうした点をふまえても“ミリタリーファンなら絶対に見逃せない良作”といえるだろう。もちろん、ミリタリーファンではない人でも、興味があるならば是非ともオススメしたい。
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□Xboxのホームページ (2004年10月6日) [Reported by 豊臣和孝]
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