|
米SOE社長John Smedley&日本語版プロデューサーSage Sundiインタビュー |
会場:幕張プリンスホテル
TGS2004のスクウェア・エニックスのプレスカンファレンスにて、各タイトルのプロデューサーが勢揃い。PCゲーム界にとって大きな一歩だ |
その興奮も醒めやらぬ中、北米から来日したSony Online Entertainmentの社長であるJohn Smedley氏、そして「EQ II」日本語版プロデューサーのSage Sundi氏にインタビューを敢行した。「EQ II」へ向けての意気込み、そして日本語版の展開について、ユーザーの気持ちを真正面からぶつけてきたつもりだ。かなり長い量になってしまったが、熱心なEQファンは隅々にまで目を通してほしい。
米Sony Online Entertainment社長のJohn Smedley氏。言葉の節々から、「EQ II」に対する圧倒的な自信がうかがえた |
John Smedley氏 もうじき終わる。11月中の発売へ向けて最後の調整段階だ。
編 これから発売までにかけて、βテストはどのような段階を経て進行しますか?
John Smedley氏 Closedβには全世界から約10万人が申し込んでおり、現在それらの中から3万人にアカウントキーを発行している。今後残りの中から少しづつ増やしてゆき、最終的にはNDAも外す予定だ。もしOpenβの受付を開始したら、2週間程度で10万人を超すと考えている。
編 「EQ II」は、ゲーム内のアイテムを予約特典に設けるなど、発売前からプレーヤーの獲得に熱心な印象を受けます。「Journeyman Boots Edition(これは通称。特典として移動速度が高まるブーツを貰える)」の他に、このようなキャンペーンは行ないますか?
John Smedley氏 もうじき予約受付を開始するコレクターズエディションでは、特典としてペットのドラゴンが付属する。ペットは最初は小さいが、発売後まもなく出す拡張版において成長が可能だ。ゆくゆくはキャラクタがドラゴンに騎乗したり、一緒に戦ったりできる。
編 予約特典がそこまで有用なアイテムだと、後から参加した通常版のプレーヤーが羨ましがるでしょう。彼等との格差についてはどう考えていますか?
John Smedley氏 例えば「Journeyman Boots Edition」に関しては、それ以外にも初期段階から使えるアビリティの“Sprint”等、移動速度を高める方法は何通りも用意されている。なので、「EverQuest」でのイメージほど「Journeyman Boots」の効果は決定的ではない。「Journeyman Boots Edition」と、そうでない人との間でプレイ感が極端に変わるということはないだろう。
編 「EQ II」のローカライズは現在、何カ国語版を予定していますか?
John Smedley氏 英語版と同時にドイツ語とフランス語版が発売される。続いて日本語、広東語、北京語が予定。その他のアジア地域についても現在検討中だ。
編 韓国についての具体的なスケジュールがないですね。
John Smedley氏 同様に現在検討中だ。
編 日本以外の言語バージョンでは、単なる翻訳に留まらない“カルチャライズ”を施すのでしょうか?
John Smedley氏 全てのバージョンがカルチャライズといえる。更に、例えば日本やドイツといった国々からヒントを得たクエストが、北米を含む全世界のバージョンに導入といったことも積極的に行なう予定だ。それらを総てひっくるめてグローバルな「EQ II」を形成させる。ここまでを我々は“カルチャライズ”だと考えている。
編 カルチャライズ作業を行なうに至った経緯について教えて下さい。単なるローカライズでは、競争が激しくなったMMORPG界で生き残れないということでしょうか?
John Smedley氏 例えば日本のユーザーは、比較的西洋のゲームに慣れ親しみやすいと認識している。しかし韓国や他のアジア諸国ではそうはいかない。現地に合った仕様変更を行なわないと、商業的に厳しいと最終的に判断した。そういった意味では、日本バージョンのカルチャライズは、他のアジア版と比べてやや薄いのかもしれない。
編 現在開発中のアジア向け「EQ II」、「EQ East(仮題)」は、まったく新たなキャラクタを追加するなど世界観に直接手を加えています。ここまでやらないとアジアでは受けないのでしょうか?
John Smedley氏 プレイスタイルを例に挙げよう。例えば韓国では、PC房(ネットカフェ)が流行っているが、そこでのプレイスタイルは“片手にマウス・片手に煙草”がごく一般的だ。そのため彼等に受け入れられるためには、片手でコントロールを行なえるように、根本的な面から仕様を考えねばならない。
編 見方を変えると、韓国市場を強く意識している「World of Warcraft」(以下、「WoW」)では、それができるんですか?
John Smedley氏 そうだ。Blizzard Entertainment内には韓国人スタッフもいて、その方面を専門に考える部署がある。
Sage Sundi氏 日本の場合はコントロールパッド操作が主流で、そういったことは勿論考えています。ですが今はまだ詳細まで公表できる段階ではありません。
John Smedley氏 私から逆に質問がある。日本語の吹き替え範囲について凄く知りたいのだが、いったいどこまで行なうべきだと思う?
編 個人的には字幕派ですね。でも、これから「EQ II」を始めるような人にとっては、チュートリアル程度は完全吹き替えの方が敷居は低いと思います。例えば、日本国内でテレビ放映される映画は吹き替えです。「EQ II」がマス層を狙うのならば、この選択肢もあるのかもしれません。
John Smedley氏 なるほど。「EQ II」の拡張版で、台詞吹き替えに対応することも技術的には不可能ではない。この辺りは、多くのユーザーの意見を採り入れて検討したいと思っている。
プレイを交えながら「EQ II」を解説するSmedley氏。ウィンドウ右側のスクロールバーから、その設定項目の多さが分かるだろう |
John Smedley氏 ここは、「EQ II」が前作ともっとも違う所だ。「EQ II」では人数を少し減らそうと考えていて、当面は最大でも20人位を想定してゲームデザインを進めている。また、プライベートダンジョン機能を充実させ、6人制のグループに縛られることなく、5人や7人でも手軽に冒険を行なえるようにする。
Sage Sundi氏 チュートリアルを終えたすぐ先のゾーンにおいて、7人といった人数でも冒険できる舞台が整えられています。
John Smedley氏 もちろんプレーヤーの選択肢としては、現在「EverQuest」で主流の40~50人といった人数でも挑戦は可能だ。しかし「EverQuest」のように、大規模のRaidが総てという形にするつもりはない。
編 「EQ II」の本編総ての中では、最大で何人向け位の舞台があるのですか?
John Smedley氏 22~3人程度だ。「EverQuest」のような大規模Raidも面白いのだが、今の段階ではそれを重視していない。ハイレベルのキャラクタが実際に40~50人揃うようになるまでは、ある程度の期間も必要とするだろう。可能性としては大規模Raidもあるが、少なくともそれは、サーバー内におけるキャラクタレベルの成熟度と見比べながらになる。
「EQ II」の最初の拡張版が出る頃には、レベルキャップに到達するキャラクタも出てくるだろうし、彼等に向けた冒険の舞台も随時追加していく予定だ。Raidの人数を意図的に減らそうとしているのではないので、誤解しないで欲しい。
編 ちなみに現在のレベルキャップは幾つですか?
John Smedley氏 「EQ II」の初期バージョンでは最大でレベル50。将来的には、拡張版の導入でキャップが上がることになるだろう。
編 (隣で動いているデモ機を指差し)ここまで緻密なグラフィックが動いているのを見ると、たとえ20人といえども、大人数が集まって本当に冒険できるのか、処理速度の面において不安です。「EQ II」の最終的な推奨スペックは決まりましたか?
John Smedley氏 では実際にPCで説明しよう(ここで席を移動)。画面描画に関する環境設定項目が、数画面分もあるだろう。これらを調整すれば、そこそこのマシンでも満足のいくパフォーマンスでプレイできる。
編 そこそこ、というのは具体的にどの程度のスペックですか?
John Smedley氏 描画の手間を押さえ速度重視に設定すれば、CPUはPentium 4 2.6GHz程度で問題ない。これで20人程度が集まっても、ストレスは感じないだろう。
編 実際に自分のマシンで、本当に「EQ II」が動くのかどうか不安な人もいると思います。何か指針となるような情報があると助かるのですが。
Sage Sundi氏 ゲームショウで配布した「スターターキット」に、PCのスキャン機能がついています。それでPCのハードを調査し、足りない箇所があったら具体的にアドバイスを与えてくれます。
編 MMORPGの競合タイトルについて教えてください。「WoW」は既に“Stress Test”(サーバーに負荷を掛けることが目的のOpenβ最終段階)が終わり、その気になればいつでも発売できる状態にあります。一方、「EQ II」は現在Closedβ段階です。「EQ II」が「WoW」に対して、先を越されてしまったような印象は感じていますか?
John Smedley氏 Blizzard Entertainmentにとって「WoW」は、初のMMORPGタイトルだ。確かに「EQ II」に関してはテスト期間が短いように見えるかもしれないが、内部的なものを含めると7月から行なっている。さらに我々には、MMORPGを長期間運営してきた実績とノウハウがある。これらを総合的に見ると、決して「WoW」に対して引けは感じていない。
完全な日付はまだ公表できないが、北米版「EQ II」は11月には発売させる。「WoW」から発売が大幅に遅れることはない。
編 「WoW」にはない、「EQ II」ならではの要素としてどの部分をアピールしていきたいですか?
John Smedley氏 「EQ II」の面白さのエッセンスは、グループを組んで楽しむ冒険にある。一方「WoW」は誰でも簡単にプレイでき、グループを組まずにソロでもどんどん先へ行ける設計だ。
編 言い換えると「WoW」はソロを行なえるが、「EQ II」では難しいということなのでしょうか?
John Smedley氏 「EQ II」でソロプレイができない、というわけではないし、当然できる。しかしMMOというのは、仲間と一緒に遊ぶことで楽しい経験を共有するのが、もっとも大きな醍醐味だと我々は思っている。しかし「WoW」では、別段グループを組む必要がない。同じMMOタイトルといえども、この点で両者は大きく違っているだろう。
繰り返すが、「EQ II」でもソロプレイは可能だ。ただし私は仲間を共に冒険したいから、あまり興味ないがね。
編 John Smedley氏は、個人的に「WoW」というタイトルをどのように評価していますか?
John Smedley氏 非常にいいゲームだ。また強力なライバルだと思っている。
編 今年の北米ホリデーシーズンでトップを飾るのは、「WoW」と「EQ II」どちらだと思いますか?
John Smedley氏 それは、アメリカの大統領選と同じくらいの接戦になるだろう(笑)。
編 かなり高い評価ですね。競合タイトルの存在についてですが、「EverQuest」の発売当初はある意味一人勝ち状態でした。ですが今は、「Final Fantasy XI」等のライバルが世界中に多数存在しています。このような状況の中で新作MMOタイトルをリリースすることについて、どのようにお考えですか?
John Smedley氏 彼等と張り合うことも重要だが、それよりも我々としては、「EQ II」を次世代のMMORPGに引き上げることを目指した。より具体的に言うと、それは「新しい体験」にあると思っている。単純なゲーム内の新機能ではなく、それを経て得られる体験を重視したい。
その新しい体験の一つが、「EQ II」の重厚なバックグラウンドストーリー関連にある。例えばEvil系のキャラクタがGood系への転向を考えたとしよう。これを「EverQuest」形式で考えると、膨大な数のモンスターを倒しFaction(各NPC勢力の評判)を上下させればよい。だが「EQ II」はそれだけでは不可能で、もの凄いタイプの必須クエストをこなさないと転向できないのだ。(インタビュー中では“Fedex Quest”と表現。Fedex=国際郵便会社の社名、つまり壮大なお使いクエストの造語?)
チュートリアルを終えたすぐの段階で、「EQ II」のゲーム設計が様々なクエストをベースにしていることが分かるだろう。例えばキャラクタ作成後に、島に降りてアーキタイプを選択する。この際にファイターを選んだ場合はモンスターを倒してこいというごくオーソドックスなクエストを受けられる。だがスカウトを選んだ場合に受けられるクエストは、ゴブリンに見つからないように隠れながら、NPCが何人いるか数えてこい、という内容なのだ。これは一切戦闘を行なわず、とてもユニークだと思う。ちなみに私はここで50回は死んでいる(笑)。
編 その他に「EQ II」に関してアピールしたい事はありますか。
John Smedley氏 一般的に「EQ II」はグラフィックが凄い、凄いという前評判が多い。だが、実は音声についても同じくらい注目してほしい。一例を挙げると、「EQ II」ではモンスターが積極的に喋るのだ。
例えば、グループで戦闘している際にクレリックが仲間をヒールする。すると戦っているモンスターが「Get Caster!」(その詠唱者を襲え!)と叫ぶ。次の瞬間、他のモンスターが一斉にクレリックへと襲いかかるわけだ。これらは吹き出しによる表示も可能で、ローカライズ面でも問題はない。
もう一つ、モンスターのAIが周囲の環境によって変化する所も注目してほしい。例えばダンジョン内の通路のような狭い場所で戦闘を行なうと、モンスターはプレーヤーを奥の壁へじわりじわりと追いつめてくるのだ。また別のタイプのモンスターは、キャラクタを恐れて襲ってこないものもいる。逆に、死ぬまで延々と襲ってくるタイプもある。モンスターが複数パターンのAIを持っていて、周囲の環境を利用して戦ってくるのだ。
編 既存のMMOタイトルだと、多くても攻撃または逃走の2択でしたね。素晴らしく臨場感のあるシステムだと思います。
John Smedley氏 これらはβテストでもすぐに体験できるだろう。期待してほしい。
スクウェア・エニックスの「EQ II」ブースでは、チュートリアル部分の解説が好評だった。EQの未経験者に対する今後のアプローチにも注目しよう |
Sage Sundi氏 今回の東京ゲームショウに出展した「EQ II」日本語バージョンを作るため、ずっと頑張ってきました。その間本編のローカライズ作業は小休止しましたが、これから年末にかけて一気に加速をつけます。全体的な進捗に関してはそれほど変わっていないですね。
編 さきほどカルチャライズの範囲について、John Smedley氏から逆に質問を受けました。これは、つまり翻訳の仕様がまだ固まっていないことを意味するのですか?
Sage Sundi氏 いや、内部的には翻訳の仕様は固まっています(笑)。基本的に英語音声+日本語字幕で決まりです。ただしチュートリアルの基本操作説明のナレーションに関してのみ、吹き替えを行なっています。これは声優の銀河万丈氏(「機動戦士ガンダム」のギレン・ザビ役等で有名)に担当してもらいました。
ナレーションを吹き替えするに至った経緯ですが、この部分はNPCの感情が絡まないため、仮に行なってもイメージが損なわれないと判断しました。その代わり、NPCの感情が絡む通常会話は、“今は”英語音声のままがいいと思っています。
編 ナレーションの入るチュートリアルの範囲は、実際にはどのくらいまでなのでしょうか?
Sage Sundi氏 キャラクタを作成後に島へと移りアーキタイプを選択しますが、これはまだチュートリアルの一部です。人によって慣れの部分もありますが、平均すると30分くらいでしょう。この範囲内は、ほぼフルで吹き替えが入ります。
編 前回のインタビューではぐらかされた点についてはどうでしょう。日本語版の「EQ II」から英語版にログイン、またその逆は可能ですか?
Sage Sundi氏 まだ言えません(笑)
編 決まってて言えないのですか、それともまだ決まってすらいないのですか?
Sage Sundi氏 それもダメ(笑)
編 日本語版「EQ II」の公式サイト構成を見て思ったのですが、結局のところ「EQ II」日本語版は、PlayOnline傘下になるのでしょうか?
Sage Sundi氏 あれに深い意味はないです。東京ゲームショウ用にとりあえずwebsiteを設置する必要があったので、スペースを借りただけですね。今回配布したスターターキット等の資料を見て頂ければわかりますが、PlayOnlineのロゴは入れていません。
編 公開された「EQ II」日本語版公式サイトを見て、EQの情報がオフィシャルから、しかも日本語で見られることに感動する人は多いと思います。あれならば、恐らく元「EverQuest」プレーヤーの大半は引き込まれるでしょう。公式サイトの反響はどうですか?
Sage Sundi氏 思った以上のいい反応です。当初は、英語部分を翻訳しただけじゃないか、という声も予測していたのですが、実際にはほとんどない。日本語で見ると案外ガチガチの洋ゲーってわけじゃないんだね、と思ってもらえるのは嬉しいですね。WEBサイトのカウント数の面でも、とても好調です。
編 はっきり言って日本で「EQ II」の発売を待ち望むファンは、情報に非常に飢えています。この点についてはどう考えていますか?
Sage Sundi氏 私も彼等と同じ気持ちで、もっと情報を出したい。だけど、出すにも順序というものがあります。それを間違えてしまうと、最初に情報を出しすぎて、後になって間延びしてしまう。それでは逆効果になってしまうので、今まで我慢していました。
ですが今回の東京ゲームショウを機に、積極的に情報を出していきますよ。だいぶお待たせしましたが、今後の展開に注目してください。
編 「EverQuest」のファンは凄く熱心なので、それを聞いて心から喜ぶ人は多いと思いますよ。最後にJohn Smedley氏へ質問です。今年のE3でMicrosoftから「Vanguard」が発表され、MMORPGが次世代へと移ったことを実感しました。将来のMMOに対するビジョンは持っていますか?
John Smedley氏 私の思う次世代のMMOとは、「感情を感じるゲーム」だ。恐怖や誇り、そして楽しさを、肌で感じ取られるものを次世代と呼びたい。
編 素晴らしい答えです。今日はありがとうございました。
日本語版でのプレイアブル環境に触れられるという意味で、今回のTGSは実に大きな価値があった。βテストの開始が今から楽しみでならない |
【スクリーンショット】 | ||
---|---|---|
□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.co.jp/
□Sony Online Entertainmentのホームページ
http://www.station.sony.com/
□「EverQuest II」のページ
http://www.playonline.com/eq2/(日本語版)
http://everquest2.station.sony.com/(英語版)
□関連情報
【6月21日】「EverQuest II」日本語版プロデューサーSage Sundi氏特別インタビュー
「単なるローカライズではなく、日本のユーザーに合わせたカルチャライズを目指す」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040621/eq2int.htm
【5月11日】スクウェア・エニックス、「Ever Quest II」の日本での取り扱いを正式発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040511/eq2.htm
(2004年9月27日)
[Reported by 川崎政一郎]
GAME Watchホームページ |
|