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★PS2ゲームレビュー★

危険と隣り合わせの“爽快感”!
世界でただひとつのFIA世界ラリー選手権
公認オリジナルソフト!!

「WRC3」

  • ジャンル:本格ラリーシミュレータ
  • 発売元:株式会社スパイク
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(5月27日)



 大自然を舞台に、人とマシンの限界にチャレンジするモータースポーツ。それが「ラリー選手権」である。わずかなスピードですら拒絶するような曲がりくねった道。雪、氷、砂利、泥、ありとあらゆる自然現象によってマシンを翻弄するワイルドな路面。最新マシンを操り、最も原始的なルートを駆け抜けるラリードライバーたちを、地上最速の誉れ高きF1ドライバーたちは尊敬の念を込めてこう表現する。「彼らはクレイジーだ!」と。

「世界ラリー選手権(WRC)」とは、1年間を通じて世界各地で開催される、想像を絶する規模のラリーの世界大会である。年間14戦が行なわれ、各マシン単位で競われる「ドライバーズタイトル」と、自動車メーカーごとの獲得点数で競われる「マニュファクチャラータイトル」を争うのである。ラリーには定められたルールに従って決められたタイムに準じて走る「ロードセクション」と、とにかく1秒でも速い者が勝つ「SS(タイムアタック)」がある。本作は「SS」にスポットをあて、WRCの過酷なコース環境と戦いつつ世界一の栄光を獲得すべく戦う「ラリーシミュレータ」なのである



■ ただのレースゲームではない……本格ラリーシミュレーターなのだ

 アクションゲームというものは、ある意味スポーツとよく似ている。ある程度の素質や相性こそあれ、そこで優れた成績をおさめるためには「練習」と「努力」と「学習」が不可欠なのだ。そういった点から判断すれば、この「WRC3」はとてもスポーツ的なソフトであると言えるのではないだろうか。

 筆者はこれまで、さまざまなレーシングゲームを遊んできた。そのいずれもをクリアし、優れたタイムを記録してきたことに自負があった。だが「WRC3」は他のレーシングゲームとは大きく異なっている。それはあたかも、同じ球技でありながらベースボールとソフトボールが異なる競技であるかのように、漠然と同じととらえていた不心得者に手厳しい歓迎をしてくれたのだ。そう。練習と努力無くして上達は無いスポーツのそれと同じく。ちょっとした敗北感を胸に、ファーストランでボロボロになった愛車のブザマな走りがリプレイとして再現されるのを眺める。ふと、ソフトパッケージを手に取り、そこに書かれた「本格ラリーシミュレータ」の文字に気付かされるのである。そう。これはただのレーシングゲームではない。世界ラリー選手権(※WRC)という現実(※リアル)のモータースポーツを再現するべく開発された、高度なラリーシミュレーターなのだ、と。

プレイのメインはWRCチャンピオンシップ。2003年大会のデータを元に、忠実に再現されたコースやチーム、そしてマシンがプレーヤーの手によって世界を走りぬける。チャンピオンシップをスタートすると、実際のWRCの映像とともにナレーションが流れ、思わずコントローラーを握る手にも力が入る。このソフトでは随所に実際のWRCの映像がもりこまれており、その映像価値だけでもラリーファンは感動してくれるのではないだろうか



■ 翻弄される挙動、そして打ち壊されるマシン。これはもう自然との戦いだ

 何やら難しそうなコトを書いたが、解りやすく言えば「ナメてかかってプレイしたら悲惨な目に遭わされました、ゴメンナサイ」というザンゲをしたい訳だ。WRC3には、実際のラリーの舞台となる公式コース14カ所が豪華に収められている。普通、ゲームという装丁を守ってパッケージングするのであれば、こういったコースは「最初のコースは簡単で、後に進むにつれて難しいコースにステップアップしていく」という、プレーヤーの上達に合わした難度アップがお約束ではなかろうか。だが、先にも論じたようにWRC3はラリーシミュレータである。初見のプレイから、思わず土下座して謝りたくなるようなコースが初心者プレーヤーに挑んで来る。

 まず最初のステージである「モンテカルロ」。スタートと同時に左右のシケインの後、きつい左ヘアピンが現われる。路面には雪が残り、それが凍結したカリカリのアイスバーンの様相を呈しており、タイヤのグリップもほとんど無い。気持ちよくスタートした初心者プレーヤーは、おそらくこのヘアピンでハデにコースアウトして「なんじゃこの難しさはっ!?」と唸ることとなるハズ。その時間、レースを開始してからわずか7秒後の出来事である。

張り切ってチャンピオンシップ(ノービス)を始める。ここでのチームは日本の雄「三菱」。色々と取りざたされているが、せめてゲームの中だけでも快走させてあげたいというファン心理(!?)のなせるワザだ。最近レースゲームのレビュー続きでテクニックには自信があったのだが……スタートして7秒後には大クラッシュ。鼻っ柱をヘシ折られる。モンテカルロの路面は予想以上にμが少なく、グリップを失った4WD車はなすすべも無い


 その後もモンテカルロは、プレーヤーに厳しい洗礼を叩きつける。グリップの確保すら難しい路面で、トラクションどころかマトモなコントロール感すらも得られず右へ左へと翻弄されるマシンを、ガードレールが、レンガの壁が、巨大な岩が、これでもかとばかりに打ち据える。フロントライトが割れ、テールライトが砕け、バンパーは落ち、ボンネットが吹き飛ぶ。ごめんなさい。もう許して。そう弱気になったドライバーのマシンを、奈落へと続く渓谷が無情にも呑み込んでいくのだ。ああ……空が青いなぁ……(※モンテカルロの谷底に落下中の車内より)。

その後もモンテカルロの厳しい洗礼はとどまるトコロを知らず、我がランエボ? もその狂牙のエジキにしていく。コントロールを失ったマシンは迷走し、曲がりくねったコースは突如その姿を消す。もはやドコをどう走っているのかすら解らない。ダメージを受けたマシンが黒煙を出し始めたら危険信号だ。もう実際の性能の半分も出せない事だろう。慌てるドライバーの意思など関係なく、無情にもマシンは谷底へと呑み込まれていく……



■ 軟弱者に用は無い! WRCはチャレンジャーを待っている!!

 ひとしきり反省し、姿勢を正して真剣に向かい合えば、難しさに覆われて見えにくかった「このソフトがいかに丹念に作られているのか」という点が見えてくる。登場マシン、ドライバー、コースはすべて実名。ゲーム中のさまざまなステップで、惜しげもなく振る舞われる資料映像の数々。ラリー世界選手権ファンならば思わず感動モノの演出が随所にちりばめられているのだ。

モンテカルロの次はこの「スウェディッシュラリー」雪に覆われたコースを、森林やアイスバーンなどのスリッピーな条件で駆け抜ける。コースが雪で覆われているのでコ・ドライバーの指示をよく聞いて走っていても気がつけばコースアウトしていたりする 2003年からコースに加わった「ラリー・オブ・ターキー」。コース全体がゴロゴロとした砂利のグラベルコースで、コーナーではたやすくグリップを奪われる。さらにコースは断崖絶壁の面しているコトが多く、ウカツなドライバーは即転落の憂き目を見る事となる グラベルがメインという点では「ラリー・ニュージーランド」も同じだが、オープンコースが多いわりにキビしい壁がドライバーを悩ませる。道幅が狭いイメージもあってトルコよりもはるかに難しく感じてしまうのは気のせいか? スピードがノリやすいのも要注意
「ラリー・アルゼンチン」と言えばウォータースプラッシュが有名。マシンの左右にさながら翼のように水しぶきをあげて駆け抜けるマシンの映像は誰もが一度は見たことがあるはず。ココもグラベルメインのコースだが、起伏が激しくマシンを上下に翻弄する とにかく起伏が激しい山岳コースの「アクロポリス・ラリー」。スピードののるロングストレートとキビしいヘアピンやジャンクションの連続という過酷なコースレイアウトのため、マシンが無傷で走り終える事は難しい。路肩の石にぶつかると大きなタイムロスだ グラベルコースが続くが、この「キプロス・ラリー」はさらに凶悪。荒れたグラベルだけでもマシンに負担をかけるのに、さらに曲がりくねったコースは断崖絶壁の沿って続いていたりする。ガードレールで止まればよし、さもなくば奈落の底へまっさかさまだ


 また、WRC3では前作と比べても倍以上という35,000ポリゴンを超える超高画質でマシンを描画。その精悍な外観から精密な内装までを忠実に再現している。そこまで気合いを入れて表現したマシンをプレーヤーの未熟な運転技術でボロボロにしてしまうのはとても気が引けるのだが「この美麗なマシンが派手に壊れるクラッシュシーンは必見。塗装の剥げ落ちたカケラが飛びちる細かなディテールまでも再現しています」と公式HPでも紹介されているのを見ると「クラッシュもまたラリーの魅力のひとつなのだな」と納得させられてしまうのだった。

プレーヤーが選べるチームは「プジョー・トータル」、「フォード・モーターカンパニー」、「三菱モータースポーツ」、「スバル・ワールドラリーチーム」、「シュコダモータースポーツ」、「ヒュンダイ・ワールドラリーチーム」、「シトロエントータル」。フォードは2チームから選べるので、全部で8種類あることになる。全てのチームで実在のドライバーを選べるだけでなく、チーム紹介ビデオまで見られてしまうオトクな機能もあるのが嬉しい


 加えて、2003年から開催されたトルコラリーも収録した14カ国のコース、総数にして126ステージを衛星画像を使って緻密に再現しているのだから凄い。さらに、路面状況もアスファルト、グラベル、氷雪を基本としてアイスバーンや石畳、泥道など50種類以上のバリエーションがある。しかもそれらの路面ごとに走りのスタイルを調節していかなければならないのだから、ドライバーとしてのプレーヤーが覚えるべきコトは山盛りと言えるだろう。そして、それら全てを学習し、反復し、身につけていくことにより、最初は思わず土下座したくなった難コースも恐くなくなり、満足した気分でリプレイを眺められるタイムを叩き出すことができるようになるのだ。この爽快感は、最初に触れた「スポーツ」の「上達感」にとてもよく似ている。


■ コ・ドライバーの戦術的アドバイスを聞き逃すな!

 プレーヤーは機械ではない。全ての情報を完璧に把握できる訳ではないし、ド忘れもすればウッカリミスもある。ましてや、1区画10km前後もあるコースが126コースもあるWRC3において、その全てを把握するのは神技に等しい難業であろう。

 そんなプレーヤーを力強くサポートしてくれるのが、コ・パイロット(※ナビゲーター)である。コ・パイロットはコース地図を元に緻密な「コマ図」と呼ばれるラリー専用の記号化された地図を作り、リアルタイムでドライバーにコース情報を伝える役割を担っている。通常のレースゲームなどで、カーブやヘアピンを矢印で警告してくれるアレに、もっと具体的な指示を加えてくれたものだと思ってもらえればよいだろう。その戦術的指示には「コーナー出口のRが小さい」や「アウト側の岩に注意」、「イン・カットは危険」などに加えて、「ボンネットが取れそうだ!」なんてあまり聞きたくない情報も与えてくれる。

コ・ドライバーの指示はとても重要。コース出口や、その次、はたまた3つ先のコーナーの情報までを的確に教えてくれる。試しに音声を消してプレイしたら結果はボロボロだった程ありがたい存在だ。中央の写真では画面左に注目。コースを5区画に分けて、トップのタイムと比べた結果が色で表示されている。緑ならトップタイム。赤なら遅いという事。キミのテクニックで優勝タイムを叩きだし、コ・ドライバーと喜びを分かち合おう


 これらの情報・指示を有効に活用してコースの様子を把握していくことができれば、プレーヤーのタイムもグングンと縮まっていく。蛇のように曲がりくねったコースをコ・パイロットの指示を参考にクリアしていけば、マシンはさながらリズムに乗ってステップするかのように軽やかに駆け抜ける。その技術を身につけた時、プレーヤーはゲーム中のドライバーと一体となり「ラリーの爽快感」にシビれるのである。おめでとう。これでキミも素晴らしき「クレイジー」の仲間入り、という訳だ。


■ マニアにはたまらない作りではあるが?

 話ははじめに戻るが、このソフトは「ラリーシミュレータ」と銘うっている。素直な評価として、WRC3は「レースゲーム」としてとても面白い。よくできている。純粋に「車を走らせる爽快感」を味わえる素晴らしいソフトである。では「ラリーシミュレータ」としてはどうなのだろう?

 チーム選択やコース選択など、様々なところで世界ラリー選手権の貴重な資料映像が見られたり、ラリーの歴史、コースの歴史、マシンの歴史まで丁寧に解説してくれるメニューもある。ドライバーも実在のドライバーを選べるし、シェイクダウン(※マシンのセッティング)を行なうシーンなどでは、実際にメカニックたちがせっせとセッティングを施すデモシーンも見られる。世界ラリー選手権の雰囲気がとてもよく再現さてれおり、少しでもリアルに選手権に参加している気分をプレーヤーに与えようとしてくれているのがよく解る。

 だが、ラリーの面白さは「走る」ことを中心とした部分や、「雰囲気」だけではないのではないか? 具体的に言えば、コ・ドライバーの「指示」。つまりナビゲーションという、ラリーならではの醍醐味をユーザーから奪ってしまっているのが残念でならないのである。例えばコースマップを参照し、どの位置でどんな指示を出すのかをプレーヤーがエディットできたらどうだろう? ラリー好きならば、きっとやりたいのではないだろうか? どうしてコ・パイロットの指示をゲームシステムに収めてプレーヤーから取り上げてしまったのだろう? ナビゲーションという要素がゲームとして成立しがたいとは到底思えないのだが、これはゼイタクな望みなのかもしれないのだが。

マシンのセッティングがかなり簡略化されている。3段階に調節できる「サスペンション」、「ブレーキ」、「ギアレシオ」を選択するだけだ。最初は物足りなく思ったが、過酷なラリーでは些細な調整など意味を成さないくらい激しい走行ダメージを受ける。調節段階はこのくらいで調度良いのではないか。また、セッティングがよく解らないという人のために、エンジニア推奨セッティングというものも利用できるので、おまかせでも良い



■ さらなるステージ! プロフェッショナル!!

 ともあれ、まずはノービスで14カ国、42のコースを戦いぬく頃には、プレーヤーはいっぱしのラリードライバーになっていることだろう。少しばかりの練習で、ノービスのシリーズチャンピオンも夢ではない。プレーヤーは自信という力を得て「よーし! 次も気持ちよく勝つぞ!!」と、プロフェッショナル難度に挑むこととなるのである。ノービスとプロフェッショナルの違いは以下のとおり。

 まず、1国のステージ数が3コース(※1日1ステージで3日)から6コース(※1日2ステージで3日)に増える。次に、ライバルとなる他チームのドライバーのタイムがグンと速くなる。そして最も大きな差は、同じ日のステージでは、前ステージの状態そのままのマシンで走らなければならないという点だ。

プロフェッショナルでは、ノービスなどとは比べ物にならない程のシビアなレースがプレーヤーを待っている。まず、ライバル達がイメージ的に30秒~1分くらい速いタイムを叩き出してくるのだ。全てのモードは最大4人までプレイできるので、皆でワイワイ言いながらラリーを楽しむのも良い。それにしても、ダメージを受けたままのマシンで次のレースを走らなくてはならないというのは想像以上にキビしい。くれくれもマシンは大切に


 ノービスでは、マシンのパーツが外れようが黒煙をあげようが、次のコースではキレイサッパリ修理されていた。だが、プロフェッショナルでは、壊れたマシンに引き続き乗り続けなくてはならない。これはツラい。1日のうちの前半でマシンを壊してしまうと、後半のレースでの苦戦は必至である。性能の著しくダウンしたマシンは見るも無残で、ヘアピンですら普通に曲がれてしまう程のスピードしか出せなくなるのだ。このロスを取り戻すのは並大抵のコトではないだろう。そして、ノービスで優勝してイイ気になっていたお調子者はプロフェッショナルを体験して反省するのである。「ナメてかかってプレイしたら悲惨な目に遭わされました、ゴメンナサイ」と。

プレイを続ける事で追加されていく要素ももりだくさん。怪物級のマシンで走る事のできる「エクストリーム」やモーターショウなどで発表されたコンセプトカーを使える「コンセプト」。プロフェッショナルの上をゆく「エキスパート」など。さらに、マシンの走行距離を増やすことでマシンがパワーアップされる「WRCエボリューション」もある。エボリューションされたマシンは基礎のマシンよりも大幅に性能アップしているのだ


 ゲームの難度はさらに「エキスパート」、「エクストリーム」と待ち構えている。プレイを続けていくことで追加される隠し要素もたくさんある。そして挑むは14カ国126コース。しばらくは、ラリードライバーとしての日々を楽しみ続けることができそうだ。

(C)2004 Spike All Rights Reserved.
(C) 2003 Sony Computer Entertainment Europe. All rights reserved. Published under licence from Sony Computer Entertainment Europe. Developed by Evolution Studios. An official product of the FIA World Rally Championship licensed by International Sportsworld Communicators Limited.

□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□「WRC3」公式ページ
http://www.wrc-j.com/

(2004年9月14日)

[Reported by 松野桂司(冒険企画局)]


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