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★PS2ゲームレビュー★
地形や道具をうまく利用しながら、敵に悟られずに一撃でしとめる「天誅」シリーズの最新作「天誅 紅」。前作でシステム面は完成したと言っていいが、そこはフロム・ソフトウェア。「紅」ならではのシステムを導入し、完成度を高めている。それではどのようなゲームになっているかを、ファンとしては見逃せないポイントを中心に解説していこう。
■ 忍殺のシステムが大きく変化。タイミングがより重要に!! 敵に気づかれずに接近して必殺の一撃を決める「忍殺」は、天誅シリーズの核となるシステム。前作の「天誅 参」では、忍殺に「九字の印」というシステムを採用し、忍殺技で敵を倒して九字を完成させることで奥義を覚えることができた。今回の「紅」では、九字の印ではなく、新たなシステムを採用している。
忍殺を実行すると巻物が出現し、これを集めて一定量ためると奥義が修得できるようになった。前作ではステージごとに九字の印を完成させない限り奥義を修得できなかったが、「紅」ではステージに関係なく巻物を集めていくだけなので、明らかに楽になった。なお、巻物を出すには、敵を忍殺技で倒すのが一番。敵に気づかれていない状態で通常攻撃で倒した場合は、低確率でしか出現しないのでより忍殺技の重要度が増したと言っていいだろう。
さらに忍殺技のモーション中にも細工が施されたのも、今作の特徴。実際にプレイをして確認してみると、忍殺技のモーション中に、画面左下の気配メーターの右上が一瞬だけ光る。これがポイントで、光る瞬間にボタン入力をするとモーション終了時にカットインが入り、出現する巻物の量が増える。忍殺技は相手と自分の位置によって数種類用意されていて、それぞれ違ったタイミングで追加入力のポイントが設定されている。まずはこのタイミングを覚えていくといいだろう。ちなみに、忍殺技を仕掛けるときにも気配メーターの隅が光る瞬間があり、このときに忍殺技を実行すると、追加入力の成功時と同じ効果を持つ。忍殺技を仕掛けるとき、または仕掛けた後のどちらもタイミングが非常に重要となり、忍殺技のモーション中でもプレーヤーの手が加えられる点は非常によい要素だと思う。
そして、今作では2人の敵に忍殺技を仕掛ける「忍殺乱舞」なるものも追加された。これは、2人の敵の中央で忍殺技を仕掛けると自動的に発動するもの。敵同士の距離が近く、敵と敵の中間で忍殺技を仕掛けなければならず、発生条件はやや難しい。そのため、ゲーム中でも忍殺乱舞をする機会は、各ステージで2~3回程度。一度に2人の敵を忍殺技で始末できるのはうれしいが、状況が限定されているので、成功させるにはコツがいる。敵同士が近づいている状態で片方に忍殺技を仕掛けるだけでもいいようにして欲しかった。
より忍殺の重要度を上げつつ、奥義の修得をしやすくするなど、難易度の調節はかなりよくできていると思う。だが、忍殺技のモーション中に敵に発見されてしまうことがあるなど、致命的なデメリットが残っているのは個人的にいただけない。目立つ場所で忍殺をするのは忍者らしくないと思うが、このあたりはゲームと割り切って、モーション中は敵の動きが止まっていてもいいと思うのだが……。
■ 忍具や奥義の豊富さは申し分なし
新規の忍具以外にもシリーズでお馴染みの忍具も健在。特にシリーズを通して、使える忍具No.1の「痺れ団子」も以前と変わらない使い勝手で利用頻度は高い。他にも遠くから忍殺が可能な吹き矢もあるので、ステージの難易度によって使用する忍具を厳選していくことになるだろう。ちなみに、使用した忍具は次のステージには持ち越せず、消費されてしまう。補充はステージクリア後の結果によって、補充される(または新規で追加される)。忍具を活用し、高い評価でクリアをして忍具を多く補充していくことも、重要となってくる。
忍具以外に「奥義」も注目したい。これは前述したように、忍殺技で得た巻物によって覚えていく技で、戦闘や潜入などに有効なものが多い。特に連係攻撃の奥義は、雑魚との戦闘で有効なダメージ源となるので覚えておこう。ちなみに奥義を修得した際に、技の解説がナレーションされるのだが、作品上での取り扱う理由などちょっとしたコメントもあり、一見の価値がある。
■ 時代劇らしい演出は本作でも全開 本作をプレイして「TV時代劇の色がさらに強くなった」と、個人的に強く思う。特にステージ開始時の導入部分のナレーション、そして、ステージクリア後の「次回予告」シーン。まさに「TV時代劇」というテイストをふんだんに盛り込んだ演出となっている。ここまでベタにこられると、個人的には躊躇するところはあるが、割り切ってしまえば、ゲームへのモチベーションがより増してくる。特にこれらのルーツを知っていれば、なおのこと盛り上がるだろう。 また、イントロ部分だけら限らず、ゲーム中にも様々な「時代劇らしさ」が盛り込まれている。今作では好色按摩(あんま)師が登場して、いたいけな町娘が危機に瀕す。前作の悪代官と悪徳商人の強力タッグでなかったのは残念だが、今作の按摩師もなかなかのキャラクタで、その上、強いときているから強く印象に残る。王道ではなく、多少マニアックな部分でのノリが色濃くなった気はするが、それでも十分に面白い。ベースとなっている作品が理解できていれば、さらに面白さはますと言っていい。
このアクの強さ(よい意味で)は天誅シリーズを楽しめるひとつのファクターといえるのだ。
基本的なシステムは「参」のままなので、前作をプレイしていれば忍殺技のシステムを理解するだけですむために取っつきやすい。ステージは敵の配置がいやらしくは感じたが、死体をおとりに使ったり、忍具を使用すればそれほど難しくはないだろう。やはりファーストプレイで、敵の配置や動きをしっかり覚え、さらにベストなルートを見つけていくといった、地道な攻略作業も必要になってくるので、遊び込む要素は十分にある。 今作は外伝的な扱いなので力丸が登場せず、ストーリーもやや迫力不足の感がある。ただし、全体的に落ち着いた感じのストーリー展開なので、個人的には「忍者らしいのでは?」と正直思った。これは好みにもよるだろうが、盛り上がりといった点では、ナレーションや次回予告といった部分でかなり満足できると思う。 そして、面白いのがムービーの一覧や衣装の変更など、ステージやゲームクリア後のおまけ要素。イントロや予告などのムービーがみられたりするので、ゲームプレイ以外でのファンサービスが本作では目立つ気がする。これはこれでうれしく思う人がいるので、そのあたりのフォローをしてきたのには好感が持てる。また、チュートリアルも親切で、順を追ってそうさや忍殺技のノウハウなどを教えてくれ、実際にプレイもできて初心者への配慮も申し分ない。
しっかりと作り込まれているので、安心してプレイできる作品。ファンならずとも、遊んで欲しい作品である。 (C)2004 FromSoftware, Inc
□フロム・ソフトウェアのホームページ (2004年9月13日) [Reported by 渡辺洋二]
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