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SCEJ、「新作ソフト発表会」開催
「ワンダと巨像」、「GENJI」を初公開

左より、SCEJ 上田氏、海道氏、リッチ氏、ゲームリパブリックの岡本氏、醤野氏、クラウドの雨宮氏、東映剣会の清家氏
9月10日 開催

会場:ラフォーレミュージアム六本木

 株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEJ)は、六本木のラフォーレミュージアム六本木において、「新作ソフト発表会」を開催した。かねてより同社HP上でティザー広告が打たれていた2タイトルのソフト「ワンダと巨像」と「GENJI」がお披露目となった。

 両作とも会場で初披露となったが、いずれも発売日は2005年、価格は未定、映像のみが出展されていた。だが、「東京ゲームショウ2004」の会場には「GENJI」のプレイアブルでの出展が予定されているという(『ワンダと巨像』に関しては出展形態は明言されなかった)。


■ スケール感あふれるアクションゲーム「ワンダと巨像」

音楽を手がけた大谷 幸氏とスペシャルユニットによる演奏がプレゼンテーションの前後に行なわれた。幻想的なイメージのサウンド
 「ワンダと巨像」は、SCEJが'01年にプレイステーション 2用で発売したアクションアドベンチャー「ICO」のチームによる新作タイトル。開発コードは「NICO」と呼ばれていたものだ。ディレクター/ゲームデザイナー/アートディレクターの上田文人氏、プロデューサーの海道賢仁氏、そしてプロダクトマーケティング部の玉置聡氏が登壇し、プレゼンテーションが行なわれたが、「ICO」とビジュアルテイストが淡いトーンで似てはいるものの、巨大な像たちと主人公が戦うという、「ICO」とは違う新たなチャレンジが伺える作品だ。音楽は大谷 幸氏が手がけ、スペシャルユニットによる生演奏も行なわれた。

巨像と主人公のスケール感に驚きを覚えるグラフィック。主人公の手には弓が

・“自分が主役として楽しむことができるか”を突き詰めた作品

映像を見ながら行なわれたプレゼンテーション
 「ICO」はモニターの中に世界が実在するかのような感覚を味わえるようにというコンセプトで制作され、その一貫したポリシーがビジュアルやシステムなど、随所に現われたことで、とくに海外で評価を受けた作品だ。

 海道氏によれば、「ワンダと巨像」は、「(日本版)『ICO』の制作が終わったころ、当然次回作を考えなければならない。一般的には続編という話が出てくるが、『ICO』はストーリー的にもゲーム的にも奇麗にまとまりすぎていて、続編を作るのはすごく難しいというか、ユーザーが本当に求めているのだろうか、といった葛藤があった。いろいろ考えた結果、新しいゲームにチャレンジしようということになった。上田氏にいくつかアイデアを求めたところ、2002年の1月には基本的なもの、“巨大な敵と戦う”といったものが出てきた」という経緯で生まれてきたようだ。

 上田氏は「『ICO』は4年間という長い期間をかけて作ったもので、閉ざされた空間の中で少女とコミュニケーションしながら主人公が冒険するというとても静かなゲームだったと思うのだが、その反動というわけではないが、もう少し活劇要素があるものが作りたかった。また、自分がゲームに求める“自分が主役として楽しむことができるか”という要素を突き詰めた形のものを作りたかった」と本作のコンセプトを語った。

 「ワンダと巨像」の制作は日本版「ICO」が発売された直後からスタート。まず、パイロットムービーを制作したという。「ゲームを作る最初の作業として、『ICO』と同じ手法で、これから作るゲームはどういったものか、どういった世界観やどういった見せ方をするのか、というものをムービーという形で作った。これはチームの中でイメージを共有するということを目的にしているが、極めて最終的な形に近いものを目指して、映像としても完成度の高いものを作ることで、これからゲームを作っていく上で、それを着地点として定めることのできるものを作った。今作の場合は、『ICO』のゲームエンジンを使って、PS2上でリアルタイムムービーの形で作りこむことで、“PS2上ではこれぐらいのことができるんじゃないか”と確認しながら制作した。制作が進むとビジュアルなど変更することが多いが、今作の場合は、“巨大な敵と戦う”、“巨大なフィールド”といった核の部分はまったく変えないで、そのままで制作している(海道氏)」。

・「ICO」と通じる“みなまでは語らない”独特の世界

 「ワンダと巨像」の世界は、いにしえの地で主人公の若者は魂を失ったという謎の少女を甦らせるために巨像と戦う、という設定になっている。

 上田氏によれば“愛馬は『ICO』のヨルダのような存在”だという。主人公の相棒であるということに加え、戦闘をサポートするという役目を担っているそうだ。「なぜ馬を選択したのかというと、単純に“絵になる”ということもある。例えば、主人公が1人でポツンと立っているよりも、馬に乗って立たせているほうが圧倒的に絵になる。あとは、馬というのは自分で知能を持っているので、プレーヤーがムリして走り出したとしても、(自分から)崖から落ちることはないし、木を避けたり、狭い通路であれば自分で通路に沿って移動する。そういった意味でセミオートないい乗り物である。主人公は戦闘に注力できる(上田氏)」ということらしい。

 「魂を失った少女」は、「主人公にとっては大切な人。お話の中で細かい設定はあるが、ゲームの中では語らないんじゃないかなと思います。『ICO』の時と同じように、ユーザーの方々の想像で補っていただきたい」とのこと。ユーザーの想像の余地があるというのは、たしかに「ICO」と通じるものがあるようだ。

・アクションゲームとしても充実した「巨像との戦い」

 「巨像」はいにしえの地に封印されている生き物。主人公の接触によって動き出す。飛行型のものや人間型のものがいて、速度が速いとか、賢いとか、プレーヤーは巨像に合わせて戦い方を考えていく、という。技術的に最も注目されるのは開発スタッフが「変形コリジョン」と呼ぶ巨像を再現するための独自な手法だろう。主人公は巨像と戦うために、R1ボタンで「つかまる(いや、しがみつくといったほうが正しいだろう)」ことができる。巨像にしがみついて、よじ登ったり、歩いてみたり。そうして弱点を攻撃することで倒すことができるようになっている。

 上映された映像によれば、剣を振り下ろす巨像に対し、主人公は走り回ってスキを見つけ、地面に叩きつけられた剣をつたってうまくよじのぼり、振り落とされないように頭部まで登って攻撃ボタンを押すことで倒す、といった動きが見られた。コリジョンとは衝突判定のことだが、配布資料の上田氏の弁によれば、「ビデオゲーム、とくに3Dゲームとは、“コリジョンとの戯れ”ともいえるのではないか? というのが発想の原点」だという。

 巨像にしがみついている際の主人公のリアクションは巨像のスケール感をうまく演出しており、巨像が体をよじると振り落とされないように突起に捕まったり、足元がゆれると主人公も「おっとっと」といった風のリアクションを起こす。「プリンス オブ ペルシャ」を初めて見たときのような動きに対する新鮮味が、3Dだからこそできる「巨像につかまる」という動作で昇華されていると感じられた。

 また、若者には愛馬がいる。愛馬に乗り、広大なフィールドを駆け回ることができるほか、飛行タイプなど、動きの早い巨像にはこの愛馬に乗って追いつき、攻撃したり、地形を利用して飛びつくなどできるという。巨像にはいろんな種類が用意されており、登れる場所と登れない場所が迷路のように設定されており、特定の場所を攻撃することで姿勢が変わり、それを利用して体から体へと移動するなど、アクションゲームとしての攻略バリエーションも豊富にあるらしい。

 ダメージを受けると主人公が肩で息をしたりとか、足取りがおぼつかなくなった様子が見られ、「ICO」との共通点はまだまだありそうだが、画面に巨像のライフと主人公のライフと思われるゲージが表示されるなど、アクションゲームとしての情報表示が行なわれているあたりは、本作の性格が現われているといえるのではないだろうか。

 最後に、「ゲームを作るうえでの根本的な手法は『ICO』とまったく変わらずにやっている。巨大な敵と戦うという恐怖感を臨場感たっぷりに味わえるものを目指してしっかりと作りこんで、いい形で皆さんにお届けしたい(海道)」、「完成に向けて佳境を迎えている状況だが、まだまだ品質を上げてがんばっていきますので応援をよろしくお願いします(上田)」とプレゼンテーションは締めくくられた。「ICO」では「ゲームではないもの」を目指した制作チームが、「ワンダと巨像」ではそれを超えた「ゲーム」を生み出そうとしている。

(C)Sony Computer Entertainment Inc.


■ 「雅」をテーマにしたアクション・アドベンチャー「GENJI」

全員が着流しでそろって登場した「GENJI」の開発陣
 株式会社カプコンを退社し、新たに株式会社ゲームリパブリックを興した岡本吉起氏。そのゲームリパブリックとSCEJのコラボレーション第1作となるのがアクション・アドベンチャー「GENJI」。プレゼンテーションには、SCEJのエクゼクティブプロデューサー ビル・リッチ氏、ゲームリパブリックからエクゼクティブディレクターとして岡本氏、名古屋スタジオのディレクター醤野貴至氏、そして美術監修・キャラクタデザインを手がけた有限会社クラウドの雨宮慶太氏、そして殺陣、モーション監修を担当した東映剣会の清家三彦氏が着流し姿で登壇した。

 「クオリティの高い作品をユーザーに提供するのがSCEJのミッション。『ワンダと巨像』のように社内で作っている作品もあれば、優秀なディベロッパさんと作る作品もある。それが『GENJI』」とまずリッチ氏が口火を切ると、それを受けた岡本氏は「優秀かどうかは後々ゲームができあがってからユーザーさんに決めてもらうこと」と苦笑しながら、「ゲームリパブリックは“ユーザー第一主義”を掲げている。その中で、ユーザーが本当に喜んでくれるものを作れば、最終的に自分たちの評価も上がってくるだろうと思っている。今、中途半端な状況でお見せすることになったが、その状況でこれぐらいで、完成すればかなり自信のあるものとして世に出していけるのではないか」と挨拶した。

あでやかなイメージのグラフィックが印象的な「GENJI」

・「雅」を表現した作品

 本作は、源平合戦をメインとした平安時代が舞台。ファンタジー表現を融合した「雅」をテーマに、色鮮やかなグラフィックが目立つところ。ディレクターの醤野氏はちょっと緊張しているといいながらも、「義経と弁慶のダブルキャスト。2人は日本でも最初のヒーローと言われている。その魅力だけでなく、自分たちは平安時代にも魅力を感じている。日本人がわかる、“雅な世界”。今、こんな奇麗な赤や紫はあまり使われていないが、かっこいい、奇麗だとわかってもらえると思う。今ゲームはある程度リアルに見せようとすると少し暗い。悪く言うとそれでごまかせる。このゲームでは平安時代の奇麗な色をがんばって出していこうと。明るく。その世界で戦えたら楽しいじゃないかと」とコンセプトを語ってくれた。

 また、「雅」というテーマの本作だが、この「雅」の定義にはスタッフ一同苦労したようだ。「皆さんの想像する“雅”は少しずつ違うのではないかと思う。日本は四季が奇麗な国だと思うので、そこをゲームとして出していきたい。当然その中には暗いステージがあってもいいが、全体的に皆が“雅”と感じる奇麗な色を出していくのではいいんじゃないか」とこのゲームの「雅」について解説した。

 美術監修の雨宮氏は「デザインが上がる前に、“雅”を具現化するにはどうしたらいいんだろうというミーティングを5時間ぐらい行なった。色なのか、動きなのか、音なのか……自分は和物が結構好きで手がけているが、“雅”というテーマは意外となかった。打ち合わせしてみると結構ズレがあったりした。自分が通常デザインするものは渋いイメージだが、今回は普段使わない色味を使っている」と語った。

 この作品のテーマは、リッチ氏いわく「日本でも海外でも売れるようなタイトルを作っていきたい」というタイトルを作っていきたいということで決まった。そのためのスタッフの陣容ということらしい。

・全員がクリアできることが目標

 醤野氏は「義経と弁慶が1セットでそれぞれ違う特性を持っている。義経は時代によって違うが、牛若丸のイメージで作っている。華麗で流れるように動く義経を目指した。弁慶は一撃必殺。周りを取り囲まれても一撃で吹き飛ばしてしまうようなパワーを持ったキャラクタ。この2人を使い分けて進むゲーム。高い地形は高い跳躍力を持つ義経しか行けない。弁慶は物を壊して進んで行ける。メインのルートは好きなキャラクタで強引に進むこともできる。それぞれしかいけないステージも用意している」と主人公2人を紹介した。

 さらに「通常のアクションゲームはキャラクタが1体だけで、アクションをうまくこなせないとクリアできなかったりするが、ジャンケンのように有利、不利があるので、『本当は義経で行きたかったんだけれどもな』という気持ちを押し殺していただければ、エンディングまで行ける。買っていただいたお客様は神様なので、全員がエンディングを見られるという目標を設定している」と岡本氏が続けた。そのための「アドベンチャー」ということらしく「隠し武器を入手して強くしていったりとか、経験値を設定している。アクションが苦手な人でも、強い武器を手に入れたり、経験値を溜めていくことである程度進むことができる(醤野氏)」という。

・本物志向の「殺陣」

義経役の竹内氏(左)と弁慶役の坂本氏(右)
 もう1つのこのゲームのウリとして、スタッフは「殺陣」を挙げた。醤野氏は「このゲームは殺陣の立ち回りの魅力を重視した。ゲーム中に登場する敵は何らかの意思を持っている感じを出したい。プレーヤーが1つアクションを起こしたときにひるんだり、固まって集団で襲ってきたり……。『相手が弱いから全員でかかっていこう』といった思考を感じさせて、プレーヤーがそれに対して対応する楽しさを入れていきたい。殺陣の魅力は“静と動”。敵とプレーヤーの呼吸のようなものが出るような内容を盛り込んでいる。自分はこのゲームにおいて、“敵はかっこよく斬られるためにいる”と考えている」と殺陣へのこだわりを語った。上映された映像では、義経対鵺(ぬえ)戦などのボスキャラ戦も披露。鵺は激しく動いたかとおもうと、レーザー攻撃を行なったりなど、多彩な動きを見せていた。

 「殺陣の魅力はいくつかあるが、義経の流れるような動きはその1つ。敵を斬るときも、1人を斬ったら返す刀で次の敵を斬ってというような……今までのゲームではあまりやっていない、攻撃の間のつなぎもちゃんと流れるようにしている。足の位置も変わらず……」と醤野氏は続けた。モーションキャプチャを担当した清家氏は、「水戸黄門」など多数の殺陣を手がける、日本を代表する殺陣師。「初めてゲームのキャプチャに携わらせていただいたが、実際に人と人が戦う殺陣は、斬る側と斬られる側がいて成立するもの。これをキャプチャしてどんなデータが取れるのか最初は不安だった。最初モーションリストを見たとき、めまいがするほどの数だった。ちょっとしたことでも全部違う動きにしていき、データに残していくという、細かいものがゲームの中でリアルに表現されていると思う」と初めてゲームに関わった感想を述べた。

 「1日に録る量が多くて、10時間ほどキャプチャしていたが、だんだん体がついてこなくなったり大変だった。(義経役の竹内氏)」、「アクションシーンだけでもかなりパターンを入れているので、いいものになると思います(弁慶役の坂本氏)」と、4回も取り直しているというモーションキャプチャに関しては、量はもちろん質もなかなかのものになっているようだ。2人のコメントに対して「現場で苦労をかけました。分量もそうなんですけれども、スタッフサイドの要望を1つ1つこなしながらやっていただいて、大変感謝している」と清家氏が語っていたことからうかがい知れよう。

・和楽器満載のサウンドも魅力

左より高梨氏、Ajo氏、茂戸藤氏、き乃はち氏
 本作は、和風を意識した和楽器を中心にしたサウンドも特徴といえる。作曲を担当した高梨康治氏は「曲を作る段階で、醤野さんをはじめみなさんが、私がやりやすいような環境を作っていただいたことに感謝している」と語った。オープニングの殺陣のバックで演奏を行なった和太鼓奏者のAjo氏は、「本編には参加していないが、オープニングを聞いていいな、と思われましたら、次回はぜひよろしく」と語っていた。本編のサウンドにも参加している茂戸藤浩司氏は「楽しい仕事でした。実際に画面を見ながら演奏したわけではないですが、場面場面の絵をイメージしながらひらめいたインスピレーションを大事にして、ひらめきで叩きました。曲によっては人数感を出したかったので、複数の太鼓を重ねたり……やりがいのある仕事でした」と続けた。尺八奏者のき乃はち氏は「楽しい仕事でした。呼吸感とか間の世界を、『GENJI』の映像を通して楽しんでいただけるようがんばりました」とコメントした。

 「鬼武者」、「戦国無双」をはじめとした剣術アクションは多数あるが、平安時代というビデオゲームでは久しぶりとも言える題材、そして、義経の華麗な動き、パワフルな弁慶の迫力は会場でも確認できた。ゲームショウではプレイアブル出展するということで、気になる方はTGS2004に足を運んでもらいたい。

(C)Sony Computer Entertainment Inc.

□プレイステーションのページ
http://www.playstation.jp/
□製品情報(「ワンダと巨像」)
http://www.playstation.jp/scej/title/wanda/
□製品情報(「GENJI」)
http://www.playstation.jp/scej/title/genji/

(2004年9月10日)

[Reported by 佐伯憲司]


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