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★PCゲームレビュー★
■鉄道による世界の変革を体験できる作品
本作にはさまざまなシナリオが用意されている。シリーズを通してお馴染みのシナリオである「アメリカ大陸横断鉄道」や「オリエント急行」といった大規模なものから、日本やイギリス、さらにはアフリカと、世界中を舞台にさまざまな条件をクリアすべく努力していくことになる。 3Dグラフィックで再現された世界を舞台に、プレーヤーは都市を線路で結び、人や貨物を流通させていく。ただ線路を引くだけではなく、収益や、株、さらには物流など、本作でプレーヤーが考慮しなくてはならない要素は多い。海外のゲームは現実世界を多彩な要素で描写する懐の深さが魅力だが、反面ちょっと取っつきにくい場合もある。本作はチュートリアルシナリオや、難易度設定などでフォローをしているが、最初は少しとまどってしまうかもしれない。 しかし、いくつかのシナリオをかいつまんでプレイして、コツがわかってくると、経営、運営の楽しさ、時代の変化がダイレクトに伝わってきて、俄然面白くなってくる。操作はほとんどがマウスのみで行なえる直感的なものにまとめられており、とっつきやすいのもいい。慣れたプレーヤーならばショートカットを駆使したプレイも可能だ。 高低差のあるリアルな地形を小さな列車が走る姿は、ミニチュア的な面白さもある。自分が設定した運行表に従って行き来する列車を見るのはそれだけで楽しい要素である。そこに実際の地名と地形、史実を元にしたシナリオ等が絡むことで、リアルな感触が生まれてくる。 本作をプレイすることで、世界地図を見て想像の翼を広げたり、歴史を勉強したいという欲求が生まれてくるはずだ。歴史を学ぶことで、綿花の需要や、軍隊輸送の背景などを知ることができ、より臨場感のあるプレイが可能になるだろう。
■鉄道が人々の生活へ影響を及ぼしていく実感 「鉄道創成期」のシナリオの場合、プレーヤーはまずどこの都市に最初の駅を建設するか決めることになる。シナリオの多くは、「駅の接続」という場合が多いので、スタート地点を迷うことは少ないだろう。また、自由に設定できる場合は、ロンドンやワシントンD.C、ベルリンといった有名な都市を起点にすれば間違いはない。 都市にはそれぞれ星の数で規模や繁栄度を表示している。できるだけ星の多いところと線路を結べば、交通量は確保できる。しかし、最初に長く引いてしまうのは得策ではない。列車は駅について荷物を下ろすことで初めて利益を生むので、近くの都市を結び、こまめに行き来する路線を造っておかなくてはたちまち運営費がなくなってしまう。 鉄道を往来させるのに必要な施設は駅と線路だけではない。列車にはオイル、水、砂というパラメーターがあり、「整備施設」と「給水塔」でこのパラメーターを回復させるのだ。消費は早く、駅の間にひとつ、場合によってはふたつ敷設しておかないと、列車がしょっちゅう故障してしまう。 これだけの施設を設置して、初めて鉄道は運営を開始することになる。貨物と人を運んだ資金だけでは、何とか運営はやっていけるが、新しい都市に線路を延ばすとなると膨大な資金がかかる。この費用は「社債」を発行して確保する。社債を発行するには会社の評価が一定以上高くなくてはならない。堅実な運営をして評価を上げ、社債を使って線路を延ばしていく、というのが序盤の基本となる。 駅が増えてくると一台の列車ではフォローしきれなくなる。数台の列車を使って、運営をしていく。快速や鈍行を組み合わせても良いし、地方線と中央線を自分なりに組み合わせても良い。初期の鉄道は貨物と乗客の混成だが、貨物と乗客で別々の列車を走らせれば効率的だし、何よりもスマートでカッコイイ。ある程度鉄道運営が軌道に乗ってきたら、よりスマートな運営を目指していけるのである。こういった組み合わせ、編成を考え、実行するのは「鉄道シミュレーションゲーム」ならではの楽しさだろう。 ある程度路線が広がってくると、それに従い、都市の繁栄に変化が訪れてくるのがわかるはずだ。鉄道の中心地は経済、流通の中心地となる。プレーヤーの立てたプランによって造られていく世界はひょっとしたら現実とはちょっと違ったものになるかもしれない。首都よりも隣の駅が繁栄してしまったりと、プレーヤー自身が「国」のあり方そのものを変えていくことになるのだ。国の歴史そのものに干渉している感覚は、「鉄道王」としての自覚をプレーヤーにもたらしてくれるだろう。 本作はさらに深く人々の生活や、政治に分け入ることができる。大規模な敷設を行なって得た資金を元手に、他の鉄道会社の株を購入、買収を行なうことでその地方唯一の鉄道会社となることを目指すこともある。周囲の企業を買収、鉱山や農地などの生産施設、金型やプラスチックなどの工場を自分のものにして、原料の流通もコントロールすることで産業をより活性化することもできる。さらに自分から生産工場を造り、より経済を発展させることすら可能なのである。 「鉄道が世界そのものを変革することができる」本作は、この感触を確かに感じられる作品である。ちょっと敷居が高そうに感じられるかもしれないが、プレイを始めたときは、ひたすら鉄道を敷設するだけで精一杯だったプレーヤーが、さまざまなシナリオに挑戦していくことで色々なことが「できる」ことに気がつくようになっている。さまざまな要素を内包していることで、プレイを重ね、経済の仕組みに精通していくにつれ、より自由度が広がっていくのである。最初のハードルはそれほど高くない。プレイを続けていくことで本作の魅力にプレーヤー自身が気付いていく作品となっているのである。
■世界各地の鉄道の歴史を体験 本作は16本のキャンペーン、17本のシナリオを収録していて、やりごたえたっぷりである。さらにマップエディタを使えば、収録されているシナリオの地域以外のマップも作成、プレイすることができる。 筆者のお気に入りは「日本激震」というキャンペーン。その名の通り、日本が舞台で、1964年、地震で大きな被害を受けた新潟に食料である肉や衣料品を運び込む、というシナリオになっている。鉄道は、東京、横浜、名古屋など大きな都市は結ばれているが、新潟だけではなく、大阪や京都といった都市にはまだ路線が引かれていない。 地方色豊かな建物が建てられるのが本作の特色のひとつだが、日本の駅は天守閣があるお城のような駅で「勘違い日本色」たっぷり。日本のシナリオが用意されているのはうれしいが、「やはり海外のゲームなんだなあ」と、ちょっとがっかりした部分であった。 しかし、プレイを重ねていくうちにそういう気持ちはすぐに消えていった。前橋や、静岡、宇都宮……筆者がかって乗ったことのある鉄道、訪れた場所、聞いたことのある場所、地形と地名が豊かなイメージを生むのだ。発電所や工場も、なるほどと頷くところに配置されており、収録されている日本のデータにはリアルな説得力がある(とはいっても、東京に原子力発電所があるのはおかしいが)。なによりも、他の国のマップとは違う「思い入れ」が、やはり一段上の楽しさをもたらしてくれる。 路線をつなぎ、運営をしていくのはそれほど難しくはないが、このシナリオのクリア条件は新潟への物資の輸送。この条件に筆者は大変な思いをすることになった。「肉」がとにかく集まらないのだ。 列車は運ぶ貨物を指定できるのだが、指定していない場合と違って、極端に運ぶ量が限られるため、安定した運営ができない。本作では利益のでない列車は自動的に運行を停止してしまうため、時間が無駄に過ぎるだけではなく、維持費だけがかさみ、膨大な赤字を生んでしまうのだ。 筆者の失敗は、生産と運用をまだ把握していないうちにこのシナリオに挑戦してしまったことにあった。生産地から何も考えずに運ぶ列車を作っても、原料がないため生産工場は動かず、焦ったために赤字列車を多用してしまい、ジリ貧になってしまったのだ。この失敗に気がついたのは、実は他のシナリオをいくつかプレイしてから。日本のシナリオは、本作の特徴をある程度把握しなければ難しいシナリオだったのである。 単純に輸送を覚えるならば「戦火」というキャンペーンが有効だった。ニューヨークにできるだけ多くの弾薬や食料を運ぶシナリオで、限られた鉄道を運用していかねばならない。「概要」というメニューでマップを眺め、どの場所に必要な物資が備蓄されているかを確認して、効率よく運ぶためのスケジュールを考える。筆者はこのシナリオをプレイしたことで、ようやく「輸送」の概念を理解することができた。 国産のゲームの場合、ゲームに関する知識はくどいほどチュートリアルで学習させる手順を踏む傾向があるが、本作のチュートリアルは基本的な概念を説明するのみ。好みの地形だけを選んでプレイしようとすれば、知識が不足しているため、難易度が跳ね上がってしまうようだ。筆者にとって、まだ効率のいい生産の仕方、大きな富を生む運営方法、他企業の買収、といったポイントを完全に把握しているとは言い難い。じっくりとプレイを重ね、自分の中に知識と鉄則を蓄積して攻略していくタイプの作品なのである。 前述したとおり、シナリオやキャンペーンは非常に多くのものが用意されており、史実を学ぶことで臨場感たっぷりのプレイが楽しめそうだ。アフリカ大陸に路線を通す「未完のロードス島」、イギリスに鉄道網を施設する「フライング スコットマン」など、ちょっとつまみ食いをした範囲でも、歴史のロマンを感じさせてくれた。その土地、その時代ならではの機関車や建物が並ぶ風景は、シナリオごとにちょっと違った感触をもたらしてくれる。 アメリカ大陸のシナリオも多い。筆者は特に、新世界であるアメリカに、人々が入り込み、開拓をしていく息吹が感じられるシナリオが好きだ。入植者がほとんどいない田舎町ばかりのアメリカが、鉄道という「血管」を張り巡らされることで強い力を持って活動していくその雰囲気は、独特の魅力を感じさせる。 シナリオをつぎつぎと楽しんでも良し。じっくりとひとつのシナリオに取り組み、より効率のいいクリアを目指しても良し。膨大な資料を自分なりに集めて、オリジナルシナリオで歴史に挑戦しても良い。どこまでも深く、濃く楽しめる作品である。軽い気持ちで楽しめる作品ではあるが、ぜひ、どっぷり入れ込んでプレイしていただきたい。 (C) 2003 PopTop Software, Inc. Railroad Tycoon 3, PopTop, and the PopTop logo are trademarks of PopTop Software Inc. Gathering, the Gathering logo, Take Two Interactive Software and the Take Two logo are all trademarks of Take Two Interactive Software. All other trademarks are properties of their respective owners. Developed by PopTop. Published by Gathering. All rights reserved. Uses Bink Video Copyright (C) 1997-2003 by RAD Game Tools,Inc. Uses Miles Sound System,Copyright (C) 1991-2003 by RAD Game Tools,Inc. Gamespy and the “Powered by Gamespy” design are trademarks of Gamespy Industries,Inc. Product of United Kingdom
□メディアクエストのホームページ (2004年8月18日) [Reported by 勝田哲也]
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