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★PS2/GCゲームレビュー★
「実況パワフルプロ野球11」には、2004年シーズン開幕時のデータが搭載されている。史上最強打線を標榜する巨人にはローズと小久保が移籍。横浜には“大魔神”佐々木、北海道日本ハムにはSHINJOがメジャーリーグから復帰。このほかにも、千葉ロッテには“56ホーマー男”の李が、阪神には大物ルーキーの鳥谷といった新加入選手もバッチリ登場する。なお各選手のデータは、昨シーズンの数値をもとに構成されている(ルーキー選手は除く)。通常の対戦プレイ以外にも、実際の公式戦と同じ日程で試合を行なう「ペナント」や、最大6人のプレーヤーが参加して対戦する「リーグ」がある。対CPU戦の場合は、難易度を最低の「ぷぅ~」から最高の「パワフル」までの全5段階から選択ができる。 その他、自分だけのオリジナル選手を育成する「サクセス」、プロ野球選手の人生を体現する「マイライフ」など、豊富なゲームモードが用意されている。また、打撃や守備、投球など、各テーマごとに区分された「練習」モードもあるので、苦手なプレイの克服に努めたり、選手個々の特徴を把握したりすることも可能だ。野球、および野球ゲーム好きにはたまらない、魅力いっぱいの「実況パワフルプロ野球」(以下、「パワプロ」)を、今回はじっくりと検証していこう。
なお筆者は、スーパーファミコン用ソフトとして発売された初代「実況パワフルプロ野球」からプレイステーション版までのシリーズ作品をすべてプレイしているが、PS2版は本作品が初体験。よって、本レビューに目を通される人は、そのあたりを踏まえて判断していただければ幸いだ。
■ 球種の違いが明瞭になるなど、細かい部分もぬかりなくパワーアップ 「パワプロ」シリーズは、ピッチャーがボールをリリースする瞬間、ストレートと変化球とではボールの軌道が微妙に異なっているのが特徴だ(特殊能力により投球フォームだけでは区別のつかない投手も一部存在する)。 今回の「パワプロ11」は、その違いがこれまでのシリーズよりもハッキリと出るようになったという印象。言葉で表現するのは難しいが、変化球はストレートよりも微妙に山なりの軌道を描いて向かってくるように見えるため、これまでのシリーズよりも区別がつきやすくなったのではないだろうか。とりわけ、フォークやSFFといった打者の手元で落ちる球には、その傾向がより顕著に出ている。唯一の例外はカットボール。ストレートに近い球速のため、リリースの瞬間にストレートとほとんど見分けがつかない。これを見切ってミートするのは、非常に難しいといえる。
球種をじっくり見極めようとすると、ストレートに対してはどうしても振り遅れてしまいがちだ。ただし、振り遅れたとしても、パワーのあるバッターであれば流し打ちでもホームランが狙えるので、筆者としては右打者ならセンターから右方向を狙って打つことをおすすめしたい。逆に言えば、ピッチングの際はストレートと変化球との緩急差を利用したり、インコースを攻めて打球を詰まらせるような組み立てが有効になってくるはずだ。
守備面においては、ジャンプやスライディングなどを絡めたボールをキャッチする動作のバリエーションがさらに豊富になった。外野手であれば、フェンスによじ登ることだってできる(一部できない球場あり)。すべての操作を覚えるまでには少々時間を要するが、マスターすればより楽しさが増すことだろう。送球の際は、素早くボタンを押す(一瞬だけ押してすぐに離す)と速い球を投げられる。これは必ずマスターしなければいけないテクニックだ。さらにはL1ボタンを押すと、投げるふりだけでボールを放さない「フェイント」だってできる。このフェイントはランナーを塁間に挟んだときに有効だ。
古い話で恐縮だが、初代「パワプロ」では、ミートカーソルが大きい選手はごくわずかしか存在なかった。真芯でボールを打っても長打になりにくく、どちらかと言えば投手に有利な設定になっていたが、これが「パワプロ2」になると、ボールがより飛ぶようになり、ホームランが打ちやすくなった。ところが「パワプロ3」では、流し打ちのホームランが微妙に打ちにくくなるなど、シリーズを追うごとに少しずつ改良が加えられている。 以上の改良点は、あくまでも筆者がプレイして感じた印象にすぎないが、それでも必ず何らかの改良が施されていることには、いつも感心させられる。その他、三振したときのバッターの表情や、セカンドでのゲッツーを巡る野手とランナーの動き、内野フライが上がるとピッチャーがボールに向かって指を差すなど、細かい演出も実に豊富。ゲームバランス以外の部分でも、さまざまな工夫が施されている点はおおいに評価したい。これらのちょっとした工夫の積み重ねが、プレイするうえでの心地よさを大きく向上させているのは間違いない。写真だけではわからない、この極上の爽快感。ぜひとも実際にプレイして味わっていただきたい。
ゲームバランスとは別のところでちょっと気になったのは、実況の河路直樹アナウンサーの声がやや早口で聞き取りにくかったこと。これは局面が変化するごとに次々としゃべる場面が登場するため、早口にしないと次のセリフがつかえてしまうから意識してそうしたのか、もしくは収録後に再生速度を上げる修正をコンピュータ上で行なったためと推察される。セリフが豊富になるのはいいことだが、もうちょっと聞き取りやすいスピードに調整してほしかった。
■ お手軽に爽快感を味わうならコレ! 「ホームラン競争」 西武のカブレラや巨人のローズなど、パワーに長けたバッターを選んで、ピッチャーが投げるボールをガンガンスタンドへ打ち込むホームラン競争。その爽快感は格別だ。ピッチャーはスローボールしか投げてこないし、投げるコースはすべてド真ん中(多少ズレる場合あり)なので、タイミングさえ合えば比較的簡単にホームランが打てる。初心者は、まずこのモードでバッティングの練習をすることをおすすめしたい。 ゲーム終了後に一定数以上のホームランを打っていれば、おまけのミニゲームが遊べる。このゲームの結果次第で、本シリーズの「お約束」である往年の名選手(OB選手)が新たに追加される。登場したOB選手は、以後ホームラン競争ではもちろんのこと、「アレンジ」モードで作成するオリジナルチームのメンバーに加えることも可能だ。
古くは大杉、最近引退した選手であれば秋山、駒田などといった面々が登場する。マスターズリーグを球場やテレビで観てはむせび泣く(?)オジサン世代には、ぜひこの「OB選手探し」も楽しんでいただきたい。
■ 充実のシナリオ。毎度おなじみ「サクセス」モード 自分だけのオリジナル選手を育成する、「パワプロ」シリーズの定番ゲームモード。今回は大学の野球部が舞台となる「新世代大学野球編」が楽しめる。毎年2回、春と秋に行なわれる選手権で日本一を目指すという設定だ。新2年生からスタートし、4年生の秋の大会終了後にドラフトで指名されれば、晴れてオリジナル選手がデータに追加される。最初は弱小チームの「パワフル大学」1校しかないが、選手の育成に成功すると新たに帝王大学やイレブン工科大学といった別の学校が選択できるようになる。 今回の最大の特徴は、プレイの結果に応じて次回以降のストーリーが変化すること。例えば「パワフル大学」の場合、あるところまでストーリーを進めると監督が途中交代するイベントが新たに発生する。これは、1度クリアした弱小チームをプレーヤーがそれ以降敬遠しないようにという開発者側の意図であると思うが、その試みは見事にハマったと言っていい。筆者自身、過去の「パワプロ」シリーズにおいて、弱小チームは一度だけ遊べば十分と考えてずっとプレイしてきた。だが、今回ばかりはストーリーの全貌をあばこうと、夢中になって同じチームを繰り返しプレイしてしまった。 2度目以降のプレイで初めて登場するイベントに挑戦したり、キャラクタ同士の会話から「もしかして、次にプレイしたら展開が変わっているかも?」と推測したらその通りにストーリーが変化しているなど、すっかり熱中してしまった。また、繰り返しプレイする過程において良い選手がどんどん出来上がったため、2重、3重の喜びが得られた。最初のチームであるパワフル大学は選手層がかなり薄いため、初めのうちは試合になかなか勝てずに苦労するだろう。事実、筆者も2回続けて育成に失敗し、3回目のチャレンジでようやくドラフト6位に滑り込んだ。 だが、失敗したからと言ってリセットしたりデータセーブをやめてはいけない。セーブしておいてからまた始めると、なんと以前に作った選手がチームメイトして登場し、「お助けキャラ」となってくれるからだ。ドラフト指名には至らなくても、弱小チームであれば十分戦力になってくれる。こういう配慮は実にありがたい。 さらにゲームを進めていくと「全日本編」が登場する。地区予選2試合と世界大会2試合の合計4試合に勝ち、世界一を目指すというストーリーだ。こちらでは彼女とのデートやアルバイトなどのコマンドが省かれ、徹頭徹尾練習に没頭できるため、選手の成長は驚異的に速い。マニュアルで自分好みの選手を作りたいなら、このシナリオでプレイするのがいいだろう。 筆者の印象としては、ある程度の実力を持ったプレーヤーであれば、世界大会まで順調に勝ち残れるはずだ。世界大会の初戦で当たるキューバは、投手陣のコントロールが総じて悪いので、ボールをよく選んでいけば十分攻略できる。決勝のアメリカ戦はさすがに難易度が高いが、ここまでくれば選手の能力もかなり高くなっているはずなので、たとえ敗れても確実によい選手をデータに加えることができるはずだ。 また、「全日本編」ではスタメンや選手交代などもすべてプレーヤーが決められるので、初戦からオリジナル選手を起用することが可能。ただし、初戦を迎えた段階では能力があまり高くないため、リードを奪った後で途中出場させ、ポイントを稼ぐといいだろう。 過去の「パワプロ」シリーズのサクセスモードにおいて、たとえば「走り込み」をすると筋力は上がるが技術は下がるといったシステムが一部存在したため、必然的に同じような練習メニューを繰り返さざるをえないところに不満を感じることがあった。その点、「パワプロ11」に関しては、そのようなマイナス要素が一切ないので、安心して練習メニューを選択できるのが嬉しい。
究極の能力を持った選手を作ってみたり、さまざまなイベントまたは特殊能力を探し出すなど、いろいろな楽しみ方があるのが本ゲームモードの良いトコロだ。このモードだけで1本のゲームソフトに足るぐらいのボリュームがあるので、時間の許す限りじっくり挑戦していただきたい。
■ 大幅にパワーアップした「マイライフ」モードだが…… 「パワプロ10」から登場した、ひとりの選手がプロ入りしてから引退するまでの20年間をプレイするモード。入団するチームを選んだら、サクセスと同様に選手の各データを入力してゲームを開始する。 筆者は、アピールポイントとして「勝負強い打撃」と「天性のアーティスト」の2種類を選択。ウイークポイントは「盗塁がヘタ」、趣味は麻雀、難易度は「ごくふつう」にそれぞれ設定。チームは、レギュラー奪取が難しそうなジャイアンツをあえて選択した。さらに、ドラフト1位指名での入団としたところ、「スーパールーキー」という称号がつけられた。この称号は打席に入るたびにアナウンサーの声で紹介されるので、プレイしていて実に気分がいい。 3年目のシーズンまでプレイしてみたが、現時点での正直な感想としては“ちょっとしんどいな……”という点がいくつか見受けられた。1年目は2軍からのスタート。1カ月ほどで1軍に昇格するものの、なかなか出番が回ってこない。代打要員として2、3試合に1度の割合で起用される程度だった。結局、シーズンを通して打率は3割7分、ホームランを3本カッ飛ばしたものの、スタメンで出られたのはたった2試合。さらにガッカリさせられたのが、数試合ぶりに回ってきた出番になんと敬遠され、何もすることなく1塁へ歩かされてしまったこと。CPUが塁を埋めて守りやすくしようと判断したからとはいえ、正直ショックだった。 試合後、敬遠の四球でも監督の評価ポイントが上がったのは確認できたが、もう少し気持ちよくプレイできるように配慮してほしかった。1試合に1打席だけの操作は非常に集中力が必要であり、ただでさえ毎回違う投手と対戦するのは本当に難しいのだから……。 当初は新人王のタイトルを獲得しようと目論んでいたが、シーズン中2度の2軍落ちなどがたたって叶わなかった。球団から提示された初年度のノルマが「シーズン規定打席到達」だったが、代打ばかりの状態では到底不可能。よってシーズン終了後の契約更改でも年俸はほとんど現状維持のままとなってしまった。 また、ゲーム中にニュース番組がたまに挿入されるのだが、特に「オールスターファン投票の中間発表」という内容になると、全ポジションの上位3選手がズラっと並び、メッセージ送りもかなり面倒。ましてやルーキーで代打要員の自分にはまったく縁がないと言ってもいい情報だけに、別のコマンドを用意して必要な時だけ呼び出すといった使い方のほうが、より快適にゲームを進められるのではないかと感じられた。他にも、「タイトルの行方を展望する」という内容の番組でありながら、筆者が狙っていた新人王のことは一切触れなかったことも正直疑問だった。 レギュラーに定着できれば、毎回このようなニュースが楽しみになることは容易に想像がつく。だが、序盤のレギュラーを獲るまでの過程において、もっと快適に遊べる配慮があってもよかったのではないだろうか。
まだ3年目までしかプレイしていないため、早急な結論は出すことができないが、このモードは長い伝統を誇る「パワプロ」シリーズでもまだ2回目の登場という点を考慮すれば、サクセスなどと違ってまだ「完成形」には至っていないのだろう。とはいえ、短時間でオリジナル選手を作ってすぐに遊べるというメリットは大きい。試合数の多いペナントや、サクセスでゆっくり選手を作って遊ぶ時間がない、という人におすすめしたいゲームモードだ。
■ 今回も安泰! 完成度の高い国民的野球ゲーム タイトルに「11」と数字がついているように、長きにわたってユーザーに支持されてきた「パワプロ」シリーズ。テレビCMでも流されているように、野球ゲームで7年連続セールスナンバーワンの実績はダテではない。打って、投げて、走ってという野球本来の楽しさをとことん追求し、サクセスを筆頭とする多彩なゲームモードがよりソフトの付加価値を高めている。
ひいきのチームでひたすら遊ぶもよし、OBやオリジナル選手を集めてチームをアレンジしてもまたよし。野球好きにはぜひともおすすめしたい1本である。
(社)日本野球機構承認
□コナミのホームページ (2004年8月10日) [Reported by 鴫原盛之]
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