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★ PCゲームレビュー ★
■ 「悪」の道をひた走る快感ふたたび!!
3Dグラフィックで街を丸ごと再現し、銀行やカフェ、警察署、怪しげなスラムや、高級住宅地など、実際の地図から起こしたような配置で、リアルな街並みを実現している。その街を、通行人や、トラック、タクシーなどの車が行き交う。スポーツカーには若い男が、高級車には金持ちらしいキャラクタが乗り込んでいる。繁華街では派手な格好をした女、スラムではぼろぼろのホームレス、港にはランニングにヘルメットの労働者風の男、場所によって街を行き交う群れの様相も如実に異なっている。「GTA III」は、そうした強い説得力を持った街の中で、力を求めるギャング達の手先となって、街中で暴れ回るゲームだった。 今作「バイスシティ」は、フロリダを思わせる椰子の木と砂浜、太陽と海の美しいリゾートタウンが舞台となる。大きなホテルが建ち並び、夜にはカラフルなネオンが輝く。天国に見えるこの街には、多くの野心家がひしめいていて、黒い陰謀が渦巻いている。時代設定は'80年代、前作より少し前となっている。 前作ではプレーヤーは名前のない1人の男として黙々とミッションをこなしていたが、今回はトミー・ベルセッティという男として、バイスシティを訪れることとなる。「GTA III」の舞台、リバティシティから送り込まれたという形だが、トミーはミッションを進めていくことで、多くの顔役から重宝されることとなり、さらに自身も権力者となっていく。「裏社会のサクセスストーリー」ともいうべき、特異なストーリーが体験できるのが今作のウリである。 前作同様、道行く車の前に立ちふさがり、リターンキーを押すだけでその車を奪ってしまう「お手軽なワル行為」は健在。ストーリー関連のミッションを進めるほか、タクシーの運転手になれたり、強力な武器で多くの人を攻撃できたりと、自由度の高さは前作譲り、さらにサブミッションも豊富に用意されている。 日本語版への移植にあたり、多少残酷描写が抑えられたそうだが、たとえば「人をチェーンソーで斬りつける」という行為自体はきちんとできるし、それで人を倒したときの、背徳感と、得も言われぬ爽快感はきちんと感じることができる。本作ならではの「ワルの快楽」はまったく損なわれていない。 本作で繰り広げられる、どこかネジの外れた過激な犯罪行為は「良識的な人々」にとって、眉をひそめるようなものかもしれない。しかし、映画やドラマに登場する悪役の描写というものは、監督も役者もノっている場合が多い。バイオレンス映画の悪役そのままの大暴れは非常に楽しいものだ。悲鳴を上げて逃げまどう一般市民、爆発炎上する車、物凄い勢いで集まってきて容赦ない攻撃を加えてくる警官ども、リアルとケレン味が程良くミックスされた街だからこそ感じることができる「感触」を体験して欲しい。 過激な表現にばかり目がいってしまいがちな本作だが、ドライブゲームとしても楽しめる作品になっている。朝から夜へと刻々と表情を変える空、小汚いスラムから高級ホテル街まで多彩な顔を持つ街並み。夜にはセクシーな美女やチンピラが、昼には水着姿の美女や小太りのおっさんが闊歩する、リバティーシティーとは一味違う風景。ランボルギーニやポルシェ風の車など、高級車も選り取りみどり。お気に入りのBGMと共に街を流しているだけでも楽しめることうけあいだ。 前作と比べると、バイスシティはちょっと道が狭く、込み入った印象を受ける。そこで活躍するのがバイクである。車の列をすり抜けたり建物の間に潜り込んだりと、逃走にもばっちりの乗り物だが、不安定さ、危なさも現実通り。気を許すと車にひかれたり、街灯にぶつかったりとちょっとスリリングな乗り物になっている。また、今作ではヘリに乗ることができるのも特徴。空から眺めるバイスシティーはまた違った表情を見せてくれる。 「GTA III」登場以来、海外ではさまざまな類似ゲームが登場したが、シリーズのもつ「カジュアルさ」は、他の作品の追随を許さないところがある。「本家」ならではの感触を体験してもらいたい。 ■ 南国に渦巻く陰謀に翻弄される主人公 本作の主人公トミー・ベルセッティは、リバティーシティから、ボスであるソニー・フォレッリの指示で、麻薬取引を成功させるためにバイスシティに送り込まれる。ところが、取引場所には謎のギャングが待ち受けていた。銃弾を受け、つぎつぎと倒れていく仲間と取引相手。トミーは命からがら脱出に成功する。 報告を受けたソニーは、金も、麻薬もすべて奪われたトミーをさんざんなじる。トミーは取引に協力したケチな弁護士ケンに協力させ、事件の真相と、金と麻薬の奪還を決意する。しかし、実は強奪されたはずの品はすでにソニーの手元にあったのだ。ソニーはトミーを送り込むことで、バイスシティに大きな騒ぎを起こさせ、その隙にバイスシティに食い込もうという魂胆があったのである。 プレーヤーには既にバレている陰謀劇も、トミー自身にはまだわからない。トミーはケンが呼ばれていた船上パーティーに出席することで、街の顔役達と知遇を得ることに成功する。「面倒な人間を始末する人間」を欲しがっていた顔役達と、彼らを利用して事件の真相を解明したいトミー。両者の思惑が合致していく。 試しに依頼した仕事を、「あたかもゲームのように」楽々とこなすトミーに顔役達の評価はうなぎのぼり。さらにバイスシティの怪しげな人物達もトミーに接触を求めてくる。やがてトミーは、これらのコネを足がかりに、事件の真相を知るとともに、バイスシティに自身の勢力をもたらす野望を持つことになっていく……。 「陪審員を説得しろ!」というミッションでは、彼らの目の前でがっつんがっつん彼らの愛車を破壊して、怯えて逃げる陪審員の背中に、「いいな、奴は無実だぞ!」と、叫ぶ。これでミッションが成功してしまうあたりが、「GTAイズム」といったところ。暗殺や強奪ミッションでも、犯罪の陰惨さからはちょっと離れた、奇妙な明るさがある。 ただし、今作では警官のチェックがずいぶん厳しくなっている。右を見て、左を見て警官の姿を確認してからスナイパーライフルを取り出す、ということも必要となる。警官にチェックされて捕まってしまうと、その時点でミッション失敗になってしまうし、邪魔だからと始末をすると、手配度が上がり、最悪の場合、軍隊まで出てくる騒ぎになる。もちろん、前作同様警官隊相手に大立ち回りを演じてから、「塗装屋」に逃げ込んで証拠を隠滅、悠々と姿をくらますという方法も可能だ。本作ではさらに「着替え」という要素があり、手配度2までなら、これで回避ができる。一度はやってみたい回避方法だ。 筆者のお気に入りは、「Sir,Yes Sir」というミッション。街中を走っている戦車を奪うというもので、近づくと訓練中らしく、兵員輸送車にはさまれて移動中である。まわりでは歩兵が走っていて、その姿は独特の迫力。単純に突っ込んでも、蜂の巣にされるのがオチ。ゲーム内でも、「スキをうかがえ」と指示が出る。どんなスキなのか? と思って尾行していると、軍隊は一旦停止。そして戦車から響く「ドーナツを買ってこい!」との声、「Sir,Yes Sir」とかけ出す兵隊。 ひょっとして、チャンスってこれ? 半信半疑のまま、ダッシュで戦車に近づき、乗り込むと、奪うことに成功した。強引に奪おうとしても、鍵がかかって乗り込めない扉が、ドーナツのおかげであっさり開いたのである。戦車に乗り込んだら、後はもう無敵状態。パトカーが突っ込んでこようが、警官隊が足止めしようが、お構いなしに突き進むことができる。 また、ゲームが進むと「物件」が購入できるようになる。このトリガーになるミッションもユニーク。大きなショッピングモールに行ってマシンガンを乱射、あたりの店の窓ガラスを割りまくって、「俺はトミーだ、街の支配者だ!」と、叫ぶという……もちろん警官に追いかけられることになるが、最後の一枚を割るとミッション終了と共に手配度もクリア。見回すと警官達がぼんやり立っているのは、非常にシュールな光景だ。この行動により、トミーは街に認められ、さまざまな建物のオーナーになれる。 建物の主人達もまた強烈な者ぞろい。キャラクタの描写は「GTA III」からさらに飛躍していて、「変わりもの」という範疇をあっさり超えている。アイスクリーム屋の店主ですらちょっと引いてしまうくらいのイカレぶり。こっちはオーナーになった挨拶をしているのに、店主であるおばさんは、ずっと子供の悪口を言い続けているのだ。この店の店主になるためにはアイスクリームカーを運転して50人に売らないといけないのだが、ギャングは目の色を変えて撃ってくるし、警官の手配度は上がるし、ホントに商品はアイスなのだろうか? おばさんもはっきりした正体は言わない、不気味な商品なのである。 他にも強烈なキャラクタが盛りだくさん。会いに行くと、いつも何かに怒っていて、ところかまわず銃をぶっ放す麻薬王ディアスや、破壊工作しか依頼しない不動産屋のエイブリー、怪しげな魔術と薬でトミーを操ろうとするリトルハイチのプレーなど、ミッションを引き受けるごとに、ブラックな笑いが浮かんでくること請け合い。こっちもタガが外れてきて、街を混乱に陥れるのも楽しいかな、という気分になってくる。この「空気」こそが、本作の魅力。日本語化された字幕があるおかげで、より一層のめり込みやすくなっているのだ。
■ バイスシティでの「ゴージャスな生活」を満喫 「バイスシティ」は、ストーリーの根幹をなすミッションは前作より少な目だ。しかし、「暮らす」楽しさは、前作以上にアップしている。タクシーや、消防車、救急車などを奪えば、その職業になりきって消火活動やケガ人の搬送ができるのは前作と同じ。さらに今作ではピザの配達までできる。 今作ではレース場まであり、自動車だけではなく、ヘリ、ボート、オフロードバイクまである。レースも非常に多彩でさまざまなコースがある。それぞれで優秀な成績を残せば、お金を入手できる。 前作にもあった「殺戮ミッション」は、ダークだけどちょっと楽しい要素。エリアの各所に置いてあるドクロマークを取れば宴の始まり、制限時間内に決められた人数のギャングを倒すこととなる。ただし、殺戮ミッションを行なうと、その地域のギャングとの関係は確実に悪化、ミッション中にも攻撃されかねない。大したリスクじゃない、と、突っぱねるのも可能だが、ちょっと注意しておこう。 バイクには「ユニークスタント」という遊びも用意されている。さまざまな場所で、大ジャンプが楽しめるのだ。ジャンプ中にはスローモーションになり、非常にカッコイイ。自慢のスクリーンショットを披露したくなる。 これらのミッションは、ストーリーミッションより難易度が高い。よりテクニカルな、ゲームを“極める”ための仕掛けだ。ミッションを進めれば、所持金が増えるだけでなく、たとえば消火ミッションを進めれば炎ダメージが無効になったりと特典もある。より「強い」キャラクタに育てることもできるのだ。 車のコレクションもまた楽しい要素だ。こだわれば、さまざまな車を収集できる。コアなファンが多い本作には、雑誌やネットに「攻略情報」があふれている。それらを参考にするも良し、自分で試行錯誤するも良し、アジトのガレージに自慢のコレクションを作り上げよう。 本作が心の底から気に入ったのならば、英語版に手を出すのも面白いかもしれない。姿が変えられるMODなどの他にも、海外ではユーザーがさまざまなツールも発表しており、それらを使うことで新しい世界が広がっている。逆に言うと、日本語版は海外で開発されたMODはサポート対象外となるのがネックといえる。
もっとも、英語がわからないとちょっとつらいということと、環境によって不具合が出るかもしれないといった心配はあるが、本作で「物足りない」とまで感じてしまった「真のバイスシティの住人」には、挑戦する価値があるかもしれない。 (C)2002-2004 Rockstar Games, Inc. Rockstar Games, Rockstar North and the logo, Grand Theft Auto: Vice City and the Grand Theft Auto: Vice City logo are trademarks and/or registered trademarks of Take-Two Interactive Software, Inc. Rockstar Games and Rockstar North are subsidiaries of Take-Two Interactive Software, Inc. All other marks and trademarks are properties of their respective owners. All rights reserved.
□カプコンのホームページ
(2004年6月8日) [Reported by 勝田哲也]
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