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★Xboxゲームレビュー★
■ 2年の歳月を経て「ラリスポ」シリーズ最新作が登場!
開発元は、「ラリースポーツ」などのモータースポーツゲームはもとより、キャラクタもののADV「Shrek」、FPS「Battlefield 1942」など、幅広いラインナップで多くのファンを獲得しているスウェーデンのDigital Illusions。
前作同様、海外で先行発売されているタイトルだけに、国内での正式発売を待ちきれず海外版を購入してしまったコアなマニア諸氏もいそうだが、まずは基本的な仕様から確認していこう。
■ グラフィックエンジンを一新。リアルな画面が臨場感を煽り立てる ゲームを立ち上げて最初に感じるのが、グラフィックのクオリティの高さ。2年の歳月をかけて一新されたグラフィックエンジンが、前作を上回る質の高い3Dモデルを生み出すことに成功している。室内まで細かく描きこまれたクルマはもとより、路面の質感、コース周辺の自然環境、遠近感にいたるまで、実に自然なかたちで画面内に収まっているのが印象的。走行中も、タイヤが巻き上げる砂埃、降りしきる雨や雪、絶えず変化する風景が、否が応でも臨場感を盛り上げる。このあたり、大自然を相手にする“ラリーならではの風景”が感じられる至福の瞬間といえる。 走行するにつれ、車体は風雨や砂埃で少しずつ汚れていく。障害物への接触などでダメージが生じれば、きちんと車体グラフィックに反映される。その表現は段階的で、ダメージの蓄積により順次ボロボロになっていき、高速で激突すればフロントフェンダーやボンネットなどが一発で吹き飛ぶなど、見た目にも判りやすいものになる。ダメージはライト、ノーマル、ヘビーの3段階のレベルがあり、深刻になればなるほど走行性能に影響するので、雑な乗り方をしていると後々タイヘンなことになる。前作はどれだけ破損しても走行性能に影響が出なかったため、この変更はシリーズのファンにとって賛否両論あるかもしれないが、個人的にはこっちのほうが“らしい”ので、十分アリだと思う。 筆者は“下手の横好き”でレースゲームをプレイしているため、悲しいかな、まず無傷で終わったためしがない。走行中にハズれかかったボンネットやフェンダーが風で吹き飛んだりするのはもちろん、酷いケースになると転倒しまくった挙句、ほぼフレーム同然になってしまったことさえある。普通なら、こんな下手っぴはクルマに近づくことさえ許されないのだろうが、ゲームにつきまったくお咎めがないので(まぁ当然といえば当然なのだが、それでも)こんなに有難いことはない。
ちなみに、あちこちぶつけまくっていると「……これ、どこまで壊れるんだろうか?」などとバチ当たりな発想さえ浮かんでしまうが、それもこれも真面目な作りこみとハイクオリティなグラフィック表現の為せる技といえよう。
■ “走りの楽しさ”を追求した操作感。誰でもラリーが楽しめる! 車体のコントロールは、左スティックまたは方向キーがハンドル、アクセルがRトリガ、ブレーキがLトリガ、サイドブレーキがAボタン、シフトアップがBボタン、シフトダウンがXボタン。システムコントロールは、後方視点がYボタン、視点切り替えが黒ボタン、コースアウトした際などに使用するマシンリセットが白ボタン。ボタン配置は、「オプションメニュー」内の「コントローラー」にある7種類のプリセットから選択できる。 クルマのチューニングは、レースごとに変更が可能。他のレースゲームと比較すると項目は決して多いほうではないが、それでもタイヤのタイプ、MT/ATのギア選択、ステアリング、ギアやパワーのレシオ、ブレーキの制動力やバランス、フロントとリアのトーイン/アウト、サスペンション設定など多岐にわたる。いちいち設定するのが面倒な人は、レース開始前に「デフォルトにリセット」を選べばいい。よほど偏った好みでもない限りは、デフォルトでまず問題ない。 クルマの走行性能は、シミュレーション系というよりは“走りの爽快感”を追求したものになっている。ただし、これは決していい加減という意味ではない。オンロードレースのようにコースが整備された環境と違い、ラリーはアスファルト、砂、土、アイスバーンなど、さまざまなコンディションの路面を走らなければならない。オフロードに平らな路面などほとんどないわけで、これをシミュレーター寄りのゲームで遊ぶなら、人によってはまともに走れないケースすら想定される。本作の走りを強いて表現するなら“シミュレーター系の美味しいところだけを抽出した爽やかテイスト”とでもいうべきだろうか。
なお、爽快に走れるとはいっても、デコボコの激しいオフロードだけに、ただカッ飛ばすだけでは暴れまわる車体を押さえつけることは難しい。高速走行時は、縁石に乗り上げただけで即転倒。ただでさえグリップのきかないジャリジャリの路面を、ハンドリング、アクセルやブレーキの調節で的確に捉えつつ、ドリフトする車体をうまくコントロールしてコーナーをクリアしていく必要がある。このあたりは、レースゲームに熟達している人ほど、速く確実に走ることができるはず。初心者でも十分楽しめるが、上級者はよりハイレベルな走りが追求できるといった具合だ。
■ 多彩なゲームモードと登場車種 本作品のゲームモードは、コースレコードを目指す「タイムアタック」、最大3台までのCPUと競う「シングルレース」、レースに参戦してライセンスを取得していく「キャリア」、1台のXboxで4人まで同時に遊べる「マルチプレーヤー」、最大16人でオンライン同時プレイが楽しめる「XboxLive」、ベストタイムなどの情報が確認できる「リーダーボード」などが用意されている。このうち、「キャリア」モードについては3段階の難易度が設定されており、上にいくほどライバル車が手強くなるほか、特定の条件をクリアすると「スーパーラリー」がプレイできるようになる。 レースタイプは、周回コースの「ラリークロス」、ふたてにわかれた8の字コースでライバル車と競う「クロスオーバー」、指定されたポイント間のベストタイムを競う「ラリー」、山岳地帯の急斜面コースを走る「ヒルクライム」、グリップがきかないスリッピーなアイスバーンを走る「アイスレーシング」の計5種類。このうちラリー以外は、今走っているコースの一部レイアウトが画面左端に表示される。 ラリーの場合は、コドライバーの音声とペースノートによる警告標識を頼りに、先々のコースや路面状況を把握していくことになる。ペースノートは「オフ」、「ベーシック」、「プロフェッショナル」の3タイプから選択できる。「オフ」は、警告標識の表示をすべて止めてしまうというもの。「ベーシック」は、障害物やカーブの存在を大雑把だが、わかりやすくシンプルに教えてくれる。「プロフェッショナル」は、コーナーのアール(曲がり具合)、障害物、路面のコンディションまで細かく情報を伝えてくれる。 3タイプから選べるが、ぶっちゃけ役に立つのは「プロフェッショナル」だけといっていい。「ベーシック」はコーナーや障害物の存在などが、本当に“大雑把”にわかるだけで、肝心の細かい部分がまったく伝わらないから困りモノ。実際にどう困るかといえば、たとえばコーナーであれば、その曲がり具合をイージー、ミディアム、ハードの3段階でしか教えてくれないのだ。 イージーなコーナーといっても、「ベーシック」では程度にかなりの差がある。アクセル全開で抜けられるものもあれば、きちんと減速しないと曲がりきれないものまで、すべて「イージーライト(orレフト)」のひとことで処理されてしまう。こんな大雑把なコドライバーに複雑なコースは任せられないため、そこで「プロフェッショナル」の出番となる。 「プロフェッショナル」は、コーナーのアールを1~9の数字で表現してくれる。数字が大きくなるほどアールがきつく、たとえばS字コーナーでは「1 ライト イントゥ 3レフト オープン(ゆるい右コーナーから、ややきつめの左コーナー。その先はゆるやかなコーナーに変化」といったふうに、先々のコース状況を説明してくれる。これが「ベーシック」だと「イージーライト イントゥ イージーレフト オープン」になってしまう。シンプルなコースなら「ベーシック」で十分だが、レイアウトが複雑なコースでこれをやられるとクラッシュやコースアウトの危険率が飛躍的に高まる。マッタリ走るならいいが、それなりのタイムを叩き出したいのなら、最初から「プロフェッショナル」を選んでおくといい。
登場車種は、前作の29台から40台以上とボリュームがアップしている。市街地やサーキットを走るクルマをモチーフにしたゲームに比べると少ないという印象を受けるかもしれないが、本作に登場するのは古今東西のラリーカーであり、いちジャンルにおけるラインナップの多彩さでは、決して引けをとるものではない。なお、クルマは最初からすべてが選べるわけではなく、キャリアモードをクリアしていくことで選べるクルマが少しずつ増えていく。最新車種からグループB、クラシックと、ツボを押さえたラリーカーが勢ぞろい。ちなみに、アンロック条件は「オプション」メニュー内の「アンロック」にすべて明記されている。好きなクルマが使えない! と嘆いている人は、まず「アンロック」条件を調べて、その条件までの最短クリアルートを選ぶといいだろう。
■ 最大16人でプレイできるオンライン対戦が熱い! オフラインの対戦は、1台のXboxで2~4人までプレイ可能。システムリンクでXbox本体を接続すれば、最大16人までプレイ可能。ただし、複数のXboxとディスプレイを持ち寄って16人対戦をするのは現実的に厳しく、16人対戦はほぼXboxLive用のモードと考えるべきだろう。 オンラインメニューは、遊びたいゲームをすぐに探せる「クイックマッチ」、条件検索で探す「オプティマッチ」、自分でホストを立ち上げる「クリエイトゲーム」、トーナメントやシーズン戦がプレイできるコンペティション「XSN SPORTS」のほか、フレンドリストの管理やコンテンツダウンロードなどが用意されている。 レース設定は、コース、XboxLiveルール、プレーヤー人数、周回数、マシンクラス、接触のオン・オフ、言語、ライセンスクラス、ダメージレベル、視点、ギアボックスが指定できる。なお、オンライン・オフラインに限らず、対戦モードの参加人数が5人(クルマ5台)台以上だと、クルマの接触判定が自動的にオフになる。これは、5台以上のクルマが同時に参加すると、状況によってはまともに走れなくなるからだ。この場合、対戦相手のクルマはワイヤーフレームで表示される。車体の上にはIDが表示され、フレームが色分け表示されるため1回覚えれば誰がどのポジションにいるか、すぐにわかる。 まだオールクリアはしていないけど、下手は下手なりに……と「クイックマッチ」で適当なレースを探し何回かプレイしてみたが、やはり約1カ月ほど先行で発売されているだけに、参加してくる外人さんはメチャメチャ上手い人ばかり。ホストを立ち上げる勇気のない筆者は、なるべく難易度の低いコースを選んで参戦してみる……が、まず第一にイージーなコースでホストを立てている人が少ないことに唖然とする。 「まずオールクリアを目指すべき。オンライン対戦はそれから」といいたいところだが、やはり対人戦の面白さは、何物にもかえがたい。もし筆者のように「まだ全部クリアしてないけど、XboxLiveで遊びたい」という人がいたら、シンプルなコースでホストを立ち上げるか、あるいはすでに立ち上がっているホストのなかで一番シンプルか、もしくは得意なコースを選ぶべきだろう。「あれ、このコースどんなだったっけ? まぁいいや」なんて調子で参加すると、夜のヒルクライムでスタート直後に呆然とする、なんてケースも珍しくない。
時間帯にもよるのだろうが、筆者がアクセスするときは、おおむね長くてキッツイコースが大半。たまにクロスオーバーなどを見かけて「ここなら」と思うのだが、1周設定の定員4人で3人埋まっていたりすると「こいつら3人グルで、きっと俺をハメてくるんだ……そうに違いない」とか、根拠のない被害妄想にとらわれる始末。「そんな軟弱モンがLiveにつなぐんじゃねーよ!」とか突っ込まれそうだが、以前「メックアサルト」で「F**k'n Jap! Go to hell! (その他、途切れることのない罵詈雑言)」を連呼された挙句、複数の外人メックから袋叩きにされた苦い思い出があるため「早く日本人プレーヤーが増えないかなぁ」と、かなり後ろ向きな心境で本原稿を執筆していたりする。
■ コアなラリーファンはもとより、興味がある人の入門にも最適
ここで、ひとつ気になることがある。たしかに「F1」はメジャーだが、まだファンとまでいえないけれど、中継していればとりあえず見るといった人たち(恐らくはマジョリティ)は、どこまで“F1の魅力”を理解できているのだろうか。ひとくちに魅力と言っても、観点は人それぞれという意見があることは、十分承知している。だが、それ以前の問題として、肝心の“媒体側”が、競技の持つ最大公約数的な魅力すら、きちんと伝えてないという現実がある。 その最たる例が、レース展開を解説するよりも、すきあらば日本人ドライバーの名前ばかり連呼するTV中継のスタイル。いかにもTV屋的な手法で、これには多くのモータースポーツファンが辟易としている。だが、T-スクエアのテーマソングをバックにF1が再び脚光を浴びて以来、ふざけた中継スタイルが今もってまったく改められないのは、先ほど説明した“一見さん”すなわち“TVでやってたら、とりあえず見る人たち”が、もっとも重要なターゲットに変わりがないからだ。 熱心なファンは、放っておいても観る。だが、チャンネルをザッピングしている人を捉えるには、特定の要素をフィーチャーしてフックにしたほうが効果的だし、なによりキャラクタをアイコン化してしまうのが、一番手っ取り早い。両方を満たす番組作りも不可能ではないだろうに、それが為されないのは、一分一秒でもマジョリティの数字を取りこむことに費やしたいTV屋の性根ゆえではないかとさえ勘ぐってしまいたくなる。 かなり独断と偏見が入り混じっているかもしれないが……こうした現状を紐解いてみると「常にマジョリティだけを対象にした中継スタイル=そうしないと数字が取れない=競技本来の魅力が伝わらない内容が続く=シーンを支えるファン層の底上げに寄与していない」という図式が成り立つのではないだろうか。TV局や代理店にしてみれば、モータースポーツは数ある集金コンテンツのひとつにすぎず、別段“振興”を目的としているわけではない。必然、その都度盛り上がればいいわけで、同じ方法論が通用するうちは、特に改める必要もないのだろう。このあたり、F1に限らず、バレーボールやサッカーなどの代表戦も、まったく同じ次元で取り扱われているように感じられる。 閑話休題。 さて、ここで改めて「RSC2」に注目してみたい。筆者は、本作が「ラリーの魅力を伝えることに成功している」と思っている。こう書くと「さっきから魅力、魅力って、お前はラリーの神様か? ラリーわかってんのか! 本物のラリーに参戦したことでもあんのか!?」といったお叱りを受けそうだが、神様でもなく本物のラリーに参戦したことがない筆者でも“漠然とTV中継やビデオを眺める”よりグッと身近に感じられるようになったことは、まぎれもない事実だ。ラリーのビデオを観ていたら「RSC2」がやりたくなり、終わればまたビデオが観たくなる。そんな循環さえ生まれている。 筆者は、コアなマニアからすれば典型的なニワカ野郎にすぎないが、それでも「RSC2」をプレイしたことで、同じラリーのビデオでも“視点”に変化が生じてきている。30kmで走れといわれても拒絶したくなるような難所を、恐ろしい勢いでパスしていく現実のラリーカー。現実のドライバーやコドライバーに関しては、もはや畏怖すべき存在以外の何者でもなくなってしまったほどで、あれだけの情報量を瞬時に判断して、驚異的な速度で疾走する車体をコントロールするなど、まさに“神業”としかいいようがない。乗り比べたことがないから、現実とゲームがどれだけ剥離しているかは定かではないが、これもゲームで疑似体験し、多少なりとも推測する材料ができたからこそ生まれた感覚や視点ではないだろうか。 「RSC2」は、細かいところまで丁寧かつ真面目に作りこまれている作品で、初心者からマニアまで、きちんとケアしようという姿勢があちこちから伝わってくる。この“初心者からマニアまで”というのが重要で、どちらかを切り捨てた作品は、全体的にパワーがないというか、冷淡あるいは淡白な作りになってしまいがちだ。その点「RSC2」からは“ラリーの面白さを、ボクらなりの手法でガッチリ詰め込んでみました”という、作り手のバランス感覚とセンスが生み出す“独特のボリューム”が感じられる。
今後、日本でどれだけラリーが盛り上がるかはわからない。もしかしたら、北海道ラリーを契機に、影響力のある媒体や広告代理店がバックについて、一気にブレイクする可能性もないとはいえない。そんなとき、たとえ媒体がラリーの面白さとは違うものに重きを置いたとしても、ラリーに興味を抱いた人が「あ、こんなゲームがあるんだ。ちょっとやってみるか」となれば、しめたものだと思う。どちらがラリーファンの獲得につながるか……などという仮定は、しょせんIFの世界でしかないが、筆者は「RSC2」のほうがはるかに良い結果につながるのではないか、と思っている。
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□Xboxのホームページ (2004年6月7日) [Reported by 豊臣和孝] また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved. |
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