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★PS2ゲームレビュー★
あの近藤勇、土方歳三と共に戦うことができる! 新撰組ファンにとって夢のようなソフトが発売された。その名も「風雲 新撰組」。NHK大河ドラマ「新撰組!」の影響で一大ムーブメントとなりそうな新撰組商戦に、ゲーム業界から斬り込みをかける本作品。新撰組ファンを自認する筆者が、ファンから見た「風雲 新撰組」の楽しみ方を紹介していきたい。
■ 「引き」の強い導入部分 初回プレイでは、新人隊士として新撰組に入隊し、“8月18日の政変”や“池田屋事変”などを経験しながら、歴史の渦の中で死闘を繰り広げることになる。 まずは豊富な顔グラフィックの中から主人公を作成。名前も自由に付けることができる。イベント中には、土方ら幹部隊士に名前を呼ばれることもあり、感情移入度はグッと高まるだろう。 キャラクタ作成が終わると、いきなり任務がスタート。近藤や土方といった有名どころが同行し、気分が引き締まる。同行者が強力で、敵もそれほど強くないため、戦闘は短時間で決着がついた。といっても、自分はほとんど活躍することができず、近藤や土方ら、“天然理心流”の強さを見せつけられる。
このあたりの演出はファン心理を突いていて見事。もちろん、アクションゲームが得意なユーザーなら、自ら不逞浪士に正義の鉄槌を下すことも可能だ。
■ キャラクタ紹介を兼ねたチュートリアル ……と、ここまではプロローグ。屯所に戻った主人公は幹部隊士たちから、戦い方や休養、セーブの仕方など、ゲームの進め方の説明を受ける。最初に名前の知られた人物を登場させ、戦闘に放り込んでからチュートリアルに入ることで、「新撰組」というテーマだけでソフトを手に取ったユーザーにも楽しみながらシステムを理解してもらおうという心遣いに好感が持てる。逆に、普段からゲームをしている人間には多少、煩わしく感じる部分でもあり、適度に省略できる配慮も欲しかった。 しかし、このチュートリアルにはもう1つ意味がある。それはこの後、新撰組の仲間として運命を共にする主要キャラクタたちの紹介である。ここで藤堂平助や永倉新八、原田左之助といった物語の中核を成す人物たちが顔を揃え、ユーザーに印象づける。新撰組ファンにとっては、馴染み深い隊士たちの登場で俄然盛り上がる部分だと言える。
近藤や土方、沖田は割と平均的なイメージで描かれ、脇を固める人物には大胆なデフォルメが施されている。やんちゃな藤堂やシブい永倉のキャラクタはファンにとって賛否両論あると思うが、作品に華やかさを与えているのは間違いない。
■ ユーザーを飽きさせない豊富な任務 一通り説明を受け、いよいよ任務に出ることにする。「新撰組」の役割は、幕府に弓を引く不逞浪士を取り締まり、京の平和を維持すること。街中には、幕府や新撰組を敵視する輩がウロウロしている。その中には、重要人物と呼ばれる、ボスクラスの不逞浪士が存在。彼らを見つけ出し、倒すことが隊士たちの主な仕事。 重要人物は条件を達成することで出現する。ほとんどの場合、一定のザコを倒すことで出てくるが、中には物音を立てずに潜入したり、要人を特定の場所まで護衛するといった条件がついていることもあり、飽きさせない。任務は複数用意され、自分で選択が可能。どの任務が提示されるかは、日によって替わる。重要人物はいつも現れるとは限らないが、選択画面に「誠」マークがついている任務には必ず出現する。
また、進行によって、「特殊任務」や「勅命任務」といったイベントに絡んだ任務が発生することもある。ストーリーは章立てになっており、史実に合わせて進行。章の最後には重要な任務が用意されている。それを達成するとムービーが発生し、次の章へ進むという仕組み。
■ 新撰組ファンを熱くさせる同行隊士選択 新撰組ファンを最も熱くさせるのが同行隊士の選択だろう。中には1人で行なわなくてはならない任務や同行隊士が強制的に決定されてしまう任務もあるが、ほとんどの場合、同行する隊士を自分で選択することができる。 最初は大石鍬次郎や島田魁といった平隊士しか選択できないが、信頼度が上がることによって、近藤ら幹部隊士にも同行してもらうことが可能になる。同行してもらうには、敵を倒すことによって得られる「名声」を消費しなくてはならない。隊士の強さによって必要な「名声」が異なる。主人公と同じように同行隊士も強くなっていくため、同じ隊士でも必要な「名声」が変化するのだ。
強さや必要な「名声」の値で同行隊士を決めてもいいが、新撰組ファンとしては思いっきり自分の好み発揮できるところでもある。好きな人物と肩を並べて戦う快感を味わいたい。
■ アクション初心者にも取っつきやすい戦闘システム 戦闘システムは同社の「剣豪」シリーズで使われていたものをリファイン。これまで通り、「攻撃」、「防御」、「仕掛/崩し」の3アクションの駆け引きによって、白兵戦の緊張感が楽しめる。 アクションゲームに馴染みの薄いユーザーにとって、多少、複雑に見えるかもしれないが、最初のうちはただひたすら「攻撃」ボタンを連打しているだけでも勝てるのが嬉しい。慣れてきたら「防御」で敵の攻撃を受け止めたり、「崩し」で敵の防御を破ったりして、少しずつステップアップしていけばいい。直感的に理解できる操作感覚のため、実際に動かしてみればそれほど難しくないことに気づくだろう。
さらに剣だけでなく、槍を使うこともでき、戦術の幅が広がった。プレーヤーは好みの型を3種類(そのうち1つは抜刀術)をセット。型は使えば使うほど熟練度が上がっていき、より高度な技を使うことができるようになる。
■ 新撰組ならではの集団戦闘の爽快感 「剣豪」シリーズとのいちばん大きな違いは、「多VS多」の集団戦闘だろう。それを再現するために新たに加わったのが「陣形」というシステム。フォーメーションは全部で4つ用意され、状況によって使い分けることにより、強力な敵を囲んで倒したり、危機的状況を打破することができる。 また、連携ゲージが溜まれば「連携技」を発動させることが可能。同行隊士によっては特別な技が発動することもある。「連携技」が決まると派手なアクションが発生し、爽快感を演出している。 その他、鍔迫り合い時や転倒時に仲間に指示を出して助けてもらう「緊急回避」も存在。セリフの演出も入り、他の隊士との絆を疑似体験できる。
一方、トドメを刺さなくては熟練度や技が手に入らないため、同行隊士ばかり頼っていると成長しない。つまり、同行隊士は仲間であると同時にライバルでもある。そのあたりのクールな人間関係がいかにも新撰組らしく、制作者のこだわりを感じた。
■ 遊びをカスタマイズさせる奥の深さ 歴史を扱った作品には、史実とどう折り合いをつけていくかという問題が常に付いて回る。ユーザーの中には史実に準じていない部分が気になる人もいるだろう。 しかし、リアリティーとゲームの面白さは必ずしも比例するとは限らない。むしろ、現実を再現しようとするあまり、爽快感や娯楽性が失われてしまった例はいくらでもある。この「風雲 新撰組」はそのあたりのバランスが絶妙だと思う。しっかりと題材を研究した上で、荒唐無稽にならない程度にゲーム的な味付けを施してある。そのため、新撰組が好きな人もそうでない人も楽しめる良作に仕上がっている。 本作をプレイしていると、「基本的なパーツは用意しました。あとは皆さん自身の新撰組ストーリーを作り上げてください」という製作者の声が聞こえてくるような気がする。人を斬ることでしか自分を表現できない血に飢えた剣士を演じてもいいし、重要人物をすべて討ち取り、歴史に名を刻む志士を目指してもいい。どのように楽しむかはプレーヤーに委ねられている。
本作は遊ぶ人間に高い想像力を要求する。そこがこのソフトの評価が分かれるところだと思うが、新撰組に愛着のあるユーザーなら、自分だけの生きざまをコントローラで表現することはそれほど難しくないはずだ。そういう意味で、新撰組という題材にマッチしたアグレッシヴな作品と言える。
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□元気のホームページ (2004年5月31日) [Reported by 中川裕介 (冒険企画局)]
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