「COSMOS」は、岐阜県各務原市にあるVRテクノジャパン・テクノプラザに設置されている、6面没入型立体映像システム。3m四方の立方体の部屋の中に、前後、左右、上下にそれぞれスクリーンが用意され、映像が映し出される。さらに位置センサーと連動するシャッター式ゴーグルを着用することで、体験者の位置に合わせて映像が変化。部屋の中であれば、近くに映し出されている物体に回り込んだり、下から覗き込んだりといったことも可能となっている。

「COSMOS」の部屋の中央に設置されるコックピット。これだけを見るとそれほど特殊なものではないが……

　「オーニソプターアドベンチャー」は、この「COSMOS」システム用に作られたゲームコンテンツ。突如として恐竜たちが覚醒を始めた島で、羽ばたく人力飛行機「オーニソプター」を操縦し、襲い掛かってくる恐竜たちと対峙する。各ステージにはミッションが用意されており、時間内に目的を達成すればクリアとなる。

　飛行機の操作は、部屋の中央に設置されたコックピットに座って行なう。シートの左右に用意されたジョイスティックを上下に動かすと翼が羽ばたき、浮力を得る。スティックを傾けると翼の向きが変わり、旋回や滑空といった動作が可能となる。

　ここまでは従来のアーケードゲーム機でも見られたものだが、「オーニソプターアドベンチャー」では、プレーヤーは実際に飛行機のコックピットから見える風景を、前後、左右、上下の全方位に、立体映像として見られる仕組みとなっている。これは「COSMOS」を使うことで初めて実現できたシステムで、ビーアクティブ代表の太田氏によれば、「おそらく世界唯一の完全な全天立体視野のゲームではないか」という。

「COSMOS」全景。中央に見える白いボックス状の部分が、3m四方のスクリーンが張られた部屋。いかに大掛かりなシステムであるかおわかりいただけるだろう

　これらの映像をリアルタイム処理するため、「COSMOS」には日本SGI株式会社のグラフィックワークステーション「Onyx2 InfiniteReality」を計6台、映像投射用のプロジェクタを計12台使用している。このような6面全てをカバーする映像システムは、全世界で2カ所しかなく、国内ではもちろんこの1台のみ。岐阜県科学技術振興センターが研究目的に用意している施設の一部にあり、通常は一般には公開されていないが、2003年9月に開催された「テクノメッセ2003」で一般公開されたことがある。しかし現時点では、今後一般公開される予定はないという。

　「COSMOS」は非常に高価で大掛かりなシステムのため、「オーニソプターアドベンチャー」がアミューズメント施設で遊べるようになる可能性は非常に低い。また、ビーアクティブも長期的な展望は計画しておらず、近日中の解散を予定しているという。しかし「COSMOS」は'99年に開発されたシステムで、現在では見劣りする部分も多いため、6台のワークステーションを最新のPCに置き換えるというプランも計画されているという。今後さらに映像処理技術が向上すれば、「オーニソプターアドベンチャー」で研究された技術が応用され、形を変えて世に出てくる可能性は十分にあるといえるだろう。

島の全景と、プレーヤーがまさに「乗り込む」飛行機、オーニソプター
ゲームのスクリーンショット。横や下に向いた視点の写真は、プレーヤーが実際に横や下を向いたときに見える風景ということになる
実際のプレイシーンを撮影した写真。部屋の角の部分でも映像がシームレスに繋がっていることや、床面にも映像が広がっているところに注目。プレーヤーの視点に映像を合わせてあるため、写真位置ではややずれて見える部分もある。また写真では画像がぶれているように見えるが、ゴーグルを着用するとこれが立体映像に見える仕組みになっている

□「オーニソプターアドベンチャー」のページ
http://bactive.vrtc.net/

(2004年5月18日)

[Reported by 石田賀津男]

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