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【Electronic Entertainment Expo 2004現地レポート】

Valve、「Half-Life 2」エンジン版のカウンターストライクを公開!
「E3」2年生の「Half-Life 2」は新作映像をたっぷり公開

5月12日~14日(現地時間) 開催

会場:Los Angeles Convention Center

Vivendiブース内の「Half-Life 2」シアター
 世界が注目する「Half-Life 2」(以下HL2)は今年もシアターでのデモンストレーション形式での公開となった。

 5月4日にシアトルで開催されたWinHEC基調講演内のATI RADEON X800発表会でも、Valve代表のGabe Newell氏は去年のE3のデモ映像を流すだけで、最近では「開発がうまくいっていないのではないか」という声もささやかれるほどであった。こうした噂に対して、今回のE3でValveは「HL2は夏に発売する」と宣言することで対応する。

 去年のHL2のデモはテクノロジー紹介が中心だったが、今年のE3のデモはゲームの内容とストーリーの流れを紹介する、具体的なものとなった。Valveの協力により、映像の撮影と掲載の許可が得られたので、デモで使われた全シーンを解説と共にここに公開したいと思う。

 テクノロジーの先進性に関する話題ばかりが先行し、今ひとつ「どんなゲームなのか」わかりにくかったHL2のゲーム性がやっとおぼろげながら見えてきている。疑似体験感覚で楽しんで欲しいと思う。



■ 導入シーン:シティ17へ ~世界観の説明シーン

 最初のシーンは「HL2のゲームにおける導入部に相当する」という説明の後、始まった。

 映像は、主人公が「シティ17(セブンティーン)」に強制連行されて入植するシーン。シティ17では完全管制下の元、自由との引き替えに安全が保証されるという設定だ。主人公の周りでは「管理側」と「管理される側」のNPC達の様々なやりとりが見て取れて、HL2のゲーム世界の雰囲気がわかるようになっている。

 今まさにシティ17への入植手続きを行なおうとする主人公に「我々は記憶を操作されている」とささやき声で警告してくるNPC。壁の大画面テレビでは、シティ17の安全を訴える、統率者とおぼしき温厚そうな初老男性がスピーチをしているが、この町にはなにやらこの町には“裏”があるようだ。

 テクノロジーやグラフィックス的な見所としては、カートから崩れ落ちるトランクが直方体当たり判定付きっぽい衝突物理で崩れ落ちるところや、暗い廊下の先の床に、細かい凹凸付きで天井を映し込んでいる環境バンプマッピングが使われているあたりだろうか。

 逆に古くさく感じるのが影の表現で、机や椅子の影が床に落ちていないのに、椅子に座っているNPCの影が床に落ちている点など。去年発売されていたら許せたこういう点も、今となっては“粗”に見えてしまう。時間というのは残酷だ。このあたりは完成版では徹底したビジュアルクオリティを期待したいものだ。

ムービー01(MPEG-1 41.5MB LHA圧縮)
HL1はモノレールシャトルのようなものに乗った状態で始まり、ゲーム世界の説明がリアルタイム3Dグラフィックスによるムービーで行なわれたが、HL2の導入部もこれとよく似ている



■ NPCとの会話からゲーム世界が見えてくるアドベンチャーゲーム的なプレイ感覚

 プレーヤーとNPC達が住むアパートにシティ17のセキュリティ・エージェント達が踏み込んでくるシーン。

 アパート内のNPC達との会話を経るにつれて、シティ17の「うさんくささ」が徐々に露呈していくシーンになっている。HL2は、前作「Half-Life」以上に、戦闘の絡まないアドベンチャーゲーム的な雰囲気作りが行なわれているようだ。

 プレーヤーがゲーム世界に住んでいる疑似感覚を味わえるのが、窓から階下をNPC達と一緒に覗くシーンだ。屋内から見た屋外シーンがエピックスケールでリアル3D描画されているというのは技術的な側面から見ればエンジンの底力を感じさせる高度なものであるし、NPC達に促されて階下を見るというのは演出的な側面においてゲーム中のNPC達から干渉を受けたという自覚効果を与えるのに一役買っている。

ムービー02(MPEG-1 33.4MB LHA圧縮)
地味ながらプレーヤーがゲームに取り込まれたという印象を与えているシーン



■ NPC達の演技が光る、リアルタイム・ムービー・シーン

 HL2のヒロインAlyx Vanceとその家族が、プレーヤーを前にして、会話を繰り広げるドラマシーン。いわば、他のゲームでいうところのムービーシーンに相当するわけだが、HL2では、他のゲームのようにカメラ(視点)がシステム側に奪われない。移動操作および視点操作はあくまでプレーヤーに一任されたままでドラマが進行する。一連の固定された映像シーケンスを「見る」のではなく、繰り広げられるドラマの「現場にいる」感覚を演出しようとしている。

 前シーンのように、自分がゲーム世界にとけ込んでいる感覚を味わえる瞬間でもある。

ムービー03(MPEG-1 36.0MB LHA圧縮)
左右端にいるキャラクタが若干伸びて表示されるのは、画角を広くしたワイドモードでレンダリングされているため



■ HL2における車両 ~武器にも移動手段にもなる

 HL2には、4輪車両物理が実装されており、重火器の搭載されたバギーを操るシーンが昨年も公開されたが、今年はこの車両が、実際にゲーム世界に存在するその他の重量を持ったオブジェクトと同列に扱われる、また扱えるというシーンが示された。

 まず見せられたのは、プレーヤーの操る車両の車軸に、金属に吸い付く機雷のようなものが引っかかって操舵できなくなり、崖から片輪がはみ出してしまうというシーン。車両はただ単に「座標位置としてそこに配置されている」のではなく、手応えとしてタイヤ2輪だけで崖に引っかかっているという感じが、プレーヤーが車両に対して行なった干渉に対するレスポンスからよくわかる。

 続く、プレーヤー運転する暴走車両が敵兵を轢き飛ばすシーンも一瞬だが見所が多い。ここでは爆薬が爆発して断崖が崩れて電信柱が倒れて切れた電線が路面で跳ね、車両に衝突した敵兵が壁をぶちこわしながら跳ね飛んでいく様が見られる。

 反重力銃で車両やソファなどを跳ね飛ばして、そのオブジェクトの向こう側に潜んだ敵を押しつぶすというシーンは、このゲームにおいてこの武器が非常に重要であること、そしてゲーム内オブジェクトの重量物全てが武器になりうるというゲーム性を訴えている。こうした、ゲーム内シーンに存在するオブジェクトに干渉して敵を打ち倒す……というフィーチャーには、ただ銃弾を敵に撃ち込んで殺すだけの普通のFPSとは違ったカタルシスがある。

 もちろん、これらはそれらしい物理挙動があって実を結ぶものだ。昨年の物理エンジンデモシーケンスで見せられた「技術デモ」が、ちゃんとゲーム内シーンで活動している様が見られて「安心」する。

ムービー04(MPEG-1 14.3MB LHA圧縮)
反重力銃で、車両をはね飛ばして道路に復帰させるシーンでは、4輪の各サスペンションがパラレルなバネ弾性振動をしている様が一瞬だけだが、垣間見える

ムービー05(MPEG-1 34.8MB LHA圧縮)
敵を完全に消失させる強力な武器も登場する



■ 水上の乗り物も登場

 HL2には車両以外の乗り物としてプロペラ推進の双胴船があることが明かとなった。

 湿地帯河川地域を舞台に繰り広げられる、プレーヤー操る双胴船対敵戦闘ヘリの戦いは「見せ方」として格好がいい。この辺りのValveのセンスは未だ健在という感じか。このシーンには「アクション」ゲームとしての爽快感が凝縮されており、見応えがある。

 戦闘の影響で吹っ飛ぶ車両や木材などの一つ一つがそれぞれ異なった重量を持っていることが、その吹っ飛んだときの挙動から感じとられるのがいい。

ムービー06(MPEG-1 26.2MB LHA圧縮)
水面は、ただ周囲が鏡面反射しているだけでなく、視点からの角度の変移に比例して水底の情景がブレンドされている、簡易フレネル項の表現がなされている点に注目したい



■ モンスターを切断しまくれるバッサリ感

 異次元生物に寄生された死体がゾンビ化して襲ってくるシーン。昨年公開されたデモとは別のシーンでの映像になる。

 ここでもプレーヤーが駆使するのは反重力ガンと周囲のオブジェクト。反重力ガンで回転ノコギリの歯を持ち上げて、敵モンスターめがけてブーメランのように吹っ飛ばすと、その軌道にいる敵モンスターはバッサリと切断される。「何をどう活用すれば、どのように敵を倒せるのか」、そしてその敵は「どんなふうに死ぬのか」……これをいろいろと探るのもHL2の面白さになりそうだ。

ムービー07(MPEG-1 39.6MB LHA圧縮)
燃えてもだえるモンスターの姿はどことなく滑稽



■ 影の存在感の希薄さが感じられる夜のシーン

 月夜の晩が舞台のホラー風なシーン。キャラクタ形状の影を投射テクスチャマッピングで足下に置くだけの簡易的な影生成技法を採用したHL2では、こうした環境光の少ない、コントラストのはっきりしたシーンでは影の存在感がやや寂しい。

 冒頭に登場する中年男性にもセルフシャドウがないためか、なんとなくシーンにとけ込めず浮いてしまっている。

 これはHL2エンジンの弱点が垣間見えるシーンといってもいいのではないか。

ムービー08(MPEG-1 21.3MB LHA圧縮)
意外にもこうしたシーンはHL2は不得意だったりする?



■ 巨大昆虫ANTLIONが今年は敵として襲いくる

 序盤では、昨年、味方として操れた巨大昆虫型エイリアンのANTLIONが敵として立ち塞がってくる。

 中盤では、敵兵の投げてきたグレネードを、反重力ガンで投げ返す……といったユニークな戦法が見て取れる。

 後半は向こう岸に上がっている橋桁をこちらに倒すことが目的とおぼしきステージになる。

 おそらくクレーンでコンテナをつり上げて橋桁にぶつけることでこちらに倒すのだと思うが、映像では向こう岸にいる敵の上に、クレーンでつり上げたコンテナを落として大虐殺を行なっている。ゲームの中で取れる行動の自由度は結構高く、様々なプレイテクニックを生み出すことができそうだ。

ムービー09(MPEG-1 27.3MB LHA圧縮)
車両に乗った状態で轢き殺したり、積載されている銃器で撃ち殺したりと攻撃バリエーションは豊富

ムービー10(MPEG-1 29.1MB LHA圧縮)
アドベンチャーゲーム的な謎解きパズルシーンもある



■ 広がりつつある「Half-Life 2」に対する疑惑を払拭するために見せたシーン

 新GPUの発表イベント、東京ゲームショウやECTSなどの各種ゲームショー、いずれにおいてもHL2は、E3で公開したデモ映像を見せたのみであった。これまで公開された映像はゲーム中のシーンを映像として抽出したものではなく、初めからデモとして作られた映像シーケンスなのではないかという疑惑の声も上がるようになってきた。こうした噂をを払拭するためにValveが見せたのがこの2つのシーンだ。

 これは、プレーヤー含むNPCと、昨年のデモにも登場した高足(STRIDER)生物「ストライダー」との戦いを描いたものだ。2つのシーンは全く同じシーンだが、プレーヤーの行動が異なるために、結果として異なる映像となっている。ストライダーが蹴散らす車の軌道は明らかに2つの映像で異なっており、たとえば片方では味方兵がストライダーに串刺しにされるが、片方ではそうなっていない。

 実際に今夏に発売されることを切に祈るばかりだ。

ムービー11(MPEG-1 15.7MB LHA圧縮)
ムービー12(MPEG-1 29.1MB LHA圧縮)
2つのムービーを用意したのでは? といわれればそれまでだが、とりあえずValveとしては、HL2はゲームとしてここまで完成している……ということをこの2つの映像の相違点を示して訴えた



■ 「Half-Life 2」エンジン版カウンタストライクが公開

 Valveは、「Half-Life 2」以外に、隠し球として、「Half-Life 2」エンジン版「カウンターストライク」を公開した。

 映像を見た感じでは、ゲーム内容はほぼそのままで、グラフィックス表現を「Half-Life 2」レベル、プログラマブルシェーダ世代のGPUレベルに引き上げた内容となっていると見受けられる。プログラマブルシェーダを駆使した鏡面反射映り込み+フレネル項付きの水面さざ波表現やライトブリーディング系の疑似ハイダイナミックレンジレンダリング表現などが見られ、お馴染みのマップも新鮮に見える。

ムービー13(MPEG-1 21.7MB LHA圧縮)
ハードコアなカウンターストライクファンの中には「HL2よりも待ち遠しい」と感じる人もいるのではないだろうか



■ まとめ ~今年こそ本当に発売を期待したい

 これまで、ことあるごとに去年のE3時のデモしか流してこなかったValveだが、今回のE3では、汚名返上、名誉挽回をすべく全てのデモンストレーション映像を新作とした。プレイアブル展示がないので、「夏発売宣言」に今ひとつ真実実がないが、新世代3Dゲームと称されてもてはやされてきた「FarCry」(CRYTEK/Ubi Soft)が3月に発売され、あのE3常連の「DOOM III」(id software/Activision)までもが今年の夏発売の可能性が濃厚となれば(Xbox版がマイクロソフトブースでプレイアブル展示)、HL2も何らかの動きがなければファンも納得しない。今回の新作映像の公開で、なんとか世間の注目を繋げた格好となった。

 本当に公約通り夏に出るか……これについては今は何とも言えない。それでも既にゲームコンテンツ部分が完成の域に達している「カウンターストライク」の方は、「もしかしたら本当に出てくるかも」と思わせてくれる。もしかすると、HL2エンジン版カウンターストライクだけ出してHL2本体は延期……なんていう時間稼ぎ作戦もあるかもしれないが、いずれにせよ、今年もValveは3Dゲームファンの注目を集めることに成功したようだ。

 今年も人気ブースになっているとはいえ、若干、動員数が減った感のあるHL2シアター。ここが、来年はHL“3”シアターとなっていることを期待したい。

【スクリーンショット】


□Valveのホームページ
http://www.valvesoftware.com/
□関連情報
【2003年10月2日】ATI、新RADEONをアルカトラズ島で正式発表
両モデルに次世代FPS「Half-Life 2」フルバージョンをバンドル
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031002/ati_01.htm

(2004年5月14日)

[Reported by トライゼット西川善司]

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