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GT4プロデューサー、山内一典氏インタビュー |
ソニー・コンピュータエンタテインメントが開催した「グランツーリスモ4(以下、GT4)」の発表会の終了後、ポリフォニーデジタルのプレジデントで、「グランツーリスモ」シリーズのプロデューサーである山内一典氏に単独でインタビューする機会を得た。別記事にて掲載した同氏によるプレゼンテーションとあわせて読んでいただけると、今回GT4に加わったさまざまな新要素の理解が深まると思われる。
フォトモードで撮影された渋谷の町並み (掲載画像はフォトモード出力と同じ高解像度) |
山内一典プロデューサー(以下、山内氏):これは、実は3年ほど前から狙っていました。GT3(グランツーリスモ3)が完成する頃になります。もともとグランツーリスモのデータはオーバースペック気味に作られていたので、より高い解像度のレンダリングをすれば綺麗な画像がでることはわかっていたわけです。グランツーリスモは1/60秒ごとに描画(レンダリング)をするゲームですから、その1/60秒で必ずレンダリングが終わらないといけません。つまり、その1/60秒を1秒に延長すれば60倍綺麗な画像が作れるというわけです。もちろん、その原理はわかっていました。そして(グランツーリスモの)データにポテンシャルがあることもわかっていたので、いつかはやってやろうとずっと思っていたわけです。
以前からポリフォニーデジタルの(機材の)なかでは機能的には存在していて、たとえば皆さんに提供している(広報用や誌面掲載用の)ハイレゾ画像などは、フォトモードのひな形を使って作られていたことになります。それがようやく、あのPlayStatin 2という小さなハードウェアとGT4でも動くようにシステム面も洗練されて、ユーザーインターフェースもついて、という過程を経て搭載したモードということになります。
G:フォトモードでの撮影時に、光源や光源の位置の指定はできるのでしょうか?
山内氏:それはできるようにしたいと考えています。例えば(プレゼンテーションで)お見せしたニューヨークのブルックリンとかは(夜景ということもあり)暗いんですよね。そんなときは、ここでもう一灯、二灯のライトを焚きたいなと思うときがあるわけです。ですから、そういう設定もいずれできるようにしたいと考えています。
G:天候の変化などは、そうした構想のなかに含まれていますか?
山内氏:天候の変化はありません。それぞれのシーンに応じたベストな時間に設定しているということです。
G:GT4が“オンライン対応”であることはかなり以前から公式に発表されていました。しかしほとんど具体的なお話がなかったなかで、初めて明確に山内さんからオンラインで……という言葉が出たのが、このフォトモードにおけるデータのユーザー間での流通、共有ということになります。これはやはり、車好きなユーザーのコミュニティ作りということを意識したものと考えていいのでしょうか?
山内氏:僕がグランツーリスモで一番大事だと考えているのは、単なるレースだけではありません。車好きが集うコミュニティを作ることが一番大事であるということがはっきりしています。そのために、コミュニケーションの機能というものを大事にしていきたいというのは、すごくはっきりとした目標ですね。
G:オンライン対応の部分で、それ以外の機能は検討されているんでしょうか?
山内氏:ユーザーコミュニティを作るための機能というのはたくさんあります。僕らはそれを数多く実現しようと考えているわけですが、GT4がオンラインに対応しているということは、ユーザーの方にGT4を買っていただいてからわかるぐらいが丁度いいと考えています。僕がこれまでオンラインの話を極力しないようにしているのはそういう理由もあります。「買ってみたら、こういうこともできるんだ!」と気がついてもらえるぐらいでいいと僕は思っています。GT3からGT4への進化というのはオンラインという機能を抜きにしても、ものすごい進化をしているので、ホントのGT4の価値を明確に知ってもらうという意味でも、それぐらいが丁度いいのではないでしょうか。
フォトモードで撮影された数々の写真をバックにする山内一典プロデューサー | 展示ホールのPlayStaionブースでも、フォトモードのデモンストレーションが行われている | 試遊した来場者に次々とプレゼントされている記念の写真はフォトモードで作成 |
山内氏:「とりあえず取材しよう!」ということで1カ月ほど泊まりこんで、取材をしたわけです。そして(コースがメモリ内に)入るかどうかわからないけど、作り始めようということで作り始めました。そこでデータを作るデザイナーも頑張ったし、そのためのメモリを空けたプログラマも頑張りました。こうした努力の結果「もしかしたら入るかも……」と思っていたらなんとか入ることになったわけです。やればできるもんですね(笑)。
いままでのグランツーリスモの経験上、(コースの)全長6km以上はかなり厳しいという認識がありました。いままでのコースはすべて6km以内で、それでもメモリ的にはかなり厳しい状況で、常にメモリがあふれる危険と戦いながら作ってきました。ですからニュルブルクリンクの20.8kmなんて絶対無理だろうと思ってたんですが、かなりそこは頑張って……ほんとうに、やればできるもんですね(笑)。
それでも路面に関しては本当に手を抜いていないんですよ。路面については他のコース以上に細かく再現してあるので、そのあたりも僕らがニュルブルクリンク(のコース収録)に関して誇れることのひとつだと思っています。
G:ニュルブルクリンクの収録で“夢”が達成されたわけですが、その次の“夢”も用意されているんですよね?
山内氏:コースを入れる、入れないというレベルの夢であれば、ニュルブルクリンクが入ることはすごく嬉しいことなんだけど、ゲームを進化させる方法は他にもいくらでもあるでしょう。それはこれからですね(笑)。
G:PS2のドライブゲームとして、ドライバーがちゃんと再現されているというゲームも初めてだと思いますが?
山内氏:プレゼンテーションのなかでも申し上げたんですが、あれが必要だからやったということではないんです。僕らの興味の対象として、人の運動シミュレーションというのがあったわけです。この研究をはじめたのは3年ほど前なんですが、(さまざまなゲームに)モーションキャプチャがどんどん使われていた時期です。グランツーリスモについても、物理シミュレーションで車を動かすレースゲームがなかった時点でスタートしているのはご存じかと思います。人体に関しても同じアプローチなんです。今はものにならなくても、何年か続けていればちゃんとしたものになるだろうというのがあって、それは将来レースゲームを作るだけではない可能性も含めて、人体に関するフィジックスをちゃんとやっておこうということです。
モーションキャプチャを使わない、という縛りを僕らは自分らに課しているわけですが、GT4プロローグ以降「なんか、まともになってきた(笑)」と感じるところがあって、これは面白いから続けようということになっています。いまはレースゲームにおけるオープンカーの人の表現のように、非常に限定した形でしか皆さんにお見せできないんですが、将来もっともっと大きな可能性がある技術だと僕は思ってますから、そのへんを掘り下げるために敢えて明らかにしてみました。実は細かいところなんですが、今はルーフのある車のなかのドライバーも、実はこっそり動いています(笑)。これもプロローグ以降の進化のひとつなんです。見えないところでいろいろなことをやってるんですよ。
G:プロローグ版の購入者がGT4を購入した際、プラスアルファされるような部分はありますか?
山内氏:ひとつの例ですが、プロローグのライセンス試験のクリアデータを、GT4に持ち越せるようにしようと思っています。ある試験が免除されるといったことになります。
G:ありがとうございました。
【ニュルブルクリンクサーキット】 | ||
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□プレイステーションのホームページ
http://www.playstation.jp/
□「グランツーリスモ4」のページ
http://www.playstation.jp/scej/title/gt4/
(2004年5月14日)
[Reported by 矢作晃]
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