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★PS2ゲームレビュー★

あなたのリーダーとしての資質が問われる
「フリーダム・ファイターズ」



■ 架空現代を舞台にした大人のエンターテイメント

 朝、目が覚めるとそこは戦場になっていた……。

 今の不安な世界情勢において、あながち「作り話」とは言い切れない設定に、まず魅了された。

 舞台はもうひとつの現代。そこでは、第2次世界大戦において、アメリカ合衆国よりも早く原子爆弾を開発したソビエトが戦後のイニシアチブを握っている。ソビエトは勢力を拡大し、その圧倒的な軍事力は今まさに合衆国本土をも呑み込もうとしているのだ。プレーヤーはアメリカの一市民となってゲリラ活動を行ない、やがて指導者としてソビエトの圧政から人々を開放へと導いていく。

 アメリカならではのブラックな世界観だが、ハリウッドの大作娯楽映画を思わせるストーリーによって良くも悪くも陰湿さを感じさせない。そこには、大人のエンターテイメントを提供しようという制作者のサービス精神がしっかり息づいているからだろう。「こんなご時勢に不謹慎な」と顔をしかめる人もいるかもしれないが、こんなご時勢だからこそ遊んで欲しい本作の魅力を紹介していきたい。

現実となっていたかもしれない、もうひとつの歴史が語られるオープニング 主人公とその弟トロイは自分たちの身に降りかかる運命をまだ知らない 配水管の修理に訪れたアパートの一室に突如、踏み込んでくるソビエト兵
章の合間に挿入されるニュース映像によって、現在の状況を知ることができる カリスマ的軍事指導者・タターリン将軍。アメリカにとって、恐るべき存在だ 主人公はやがてレジスタンスのリーダーとして国民を開放に導いていく



■ 部隊を率いて戦う「戦争ごっこ」の爽快感

 本作がただ銃をぶっ放しながら敵を倒していくだけのソフトだったなら、少し設定が変わっているだけの凡庸なアクションゲームに終わっていたかもしれない。

 この「フリーダム・ファイターズ」の特徴は、「ファイターズ」とわざわざ複数形にしていることからもわかるように、自分がゲリラのリーダーとなり、部隊を率いて敵に立ち向かっていくというところにあるのだ。仲間の人数は、怪我をした一般人の手当てをしたり、捕虜を開放するなど、主人公がヒーロー的な行動を取ることによって増えていく。最初は囮程度にしか使えないが、最大12人まで増やすことができるため、最終面近くでは心強い存在となる。

 彼らはリーダーであるプレーヤーの出す「攻撃」、「防御」、「集合」の3つの命令で動く。とてもシンプルなシステムだが、使い方次第では、偵察や後方支援、陽動といったさまざまな作戦行動を取らせることが可能だ。ダメージを受けすぎると、行動不能になるが、医療キットを使えば戦線に復帰してくれる。

 CPUが操作するので、多少の理不尽さはあるものの、ひとりひとりに命令を出すことができたり、行動目標を指定できるので、想像していたよりストレスを感じなかった。それよりも、「プライベート・ライアン」のように敵弾をかい潜って傷ついた仲間を助けに行ったり、スナイパーライフルで「スターリングラード」のように後方から味方を援護したりと、映画の主人公気分を満喫できる興奮のほうが大きい。

 外見や武装以外、名前も性格もない味方兵士たちだが、そこに余分な情報がないからこそ、プレーヤーが思い思いにドラマを紡ぎ出せる余地が残されている。安易なキャラクタ性に頼らないストイックさに好感が持てる。

主人公たちが立てこもるアジト。しかし、ここも絶対安全とは言い切れない 章ごとに活動のエリアが変わり、クリアすべきマップが提示されるのだ まず自分で同行してもらう仲間を募る。所持している武器の確認も重要だ
セレクトボタンでマップを呼び出し、自分の位置や味方の位置を把握しよう カリスマポイントを上げるためにも、副任務を攻略しておくことが望ましい フラッグ・ポールに星条旗を掲げることでマップをクリアすることができる



■ 初心者から上級者まで幅広いユーザー層が楽しめる奥の深さ

 基本的には一本道のストーリーだが、各章で複数のマップが用意されている場合があり、どの順番で攻略するかはプレーヤーに委ねられている。しかし、実際にはマップ同士が複雑に絡み合っているため、クリアする順番はかなり重要。

 たとえば、ヘリポートを破壊しておけば、他のマップで戦闘ヘリが登場しなくなるため、攻略が楽になる。しかし、破壊するための爆弾は別のマップで手に入れなくてはならなかったりするのだ。

 各マップには、必ず行なわなくてはならない「主任務」と行なわなくてもクリアできる「副任務」がある。主任務はマップ内に用意されたフラッグ・ポールでソビエトの旗を引き摺り下ろし、星条旗を掲げるというミッション。前述のヘリポートの破壊や人質の解放などは副任務にあたる。

 副任務のクリアは他マップでの攻略を容易にするだけでなく、仲間の人数を増やすために必要なカリスマポイントを高めるチャンスでもある。主任務のクリアだけでもカリスマポイントは上がるが、後半の厳しさを考えると、副任務もクリアしておきたい。

 フラッグ・ポールの場所や副任務クリアに関係する場所は、あらかじめマップに明記されているのが嬉しい。しかも、随所でサブ・キャラクタが副任務攻略のヒントを与えてくれるため、かなり親切な作りになっている。こういう心配りは、随所で見られる。

 たとえば、最初のミッションでは、チュートリアルを受けながら先に進むため、操作方法が自然に身につく。また、「ハード」から「ビギナー」まで4段階の細かな難易度設定がなされ、初心者でも安心して遊ぶことができるのだ。

スナイパーライフルは遠距離からの精密射撃に最適だが、隙も作りやすい ロケットランチャーを使えば、ヘリコプターや戦車などを破壊することが可能 設置型のマシンガンは弾丸無制限な上、強力なので上手く活用したい
L3ボタンによって照準が表示され、より精密な射撃や指示が可能になる 状況に応じた仲間への指示が勝敗を決める。いろいろ試してみるとよい 怪我をしている仲間を救助することができるが、医療キットの残量に注意



■ 頭を使った者しか生き残れない過酷な戦い

 だからといって、本作がユルいゲームかというと、けっしてそうではない。「ノーマル」でもかなり歯ごたえがあり、アクションゲームが苦手なユーザーは、まず「ビギナー」でプレイして、本作ならではの爽快感を味わうのがよいだろう。

 その上で、2周目はぜひ、それ以上の難易度でチャレンジしてほしい。すると、「イージー」や「ビギナー」では味わえなかった新たな楽しさを発見できるはずだ。なぜなら、目的地までのルートは複数用意され、建物の内部や地下道などを利用することによって、敵の多い場所を回避して進むことができる。最適なルートを見つけ出す楽しさは、本作の隠れた魅力と言ってもいいかもしれない。

 ただ、力押しするだけでは生き残れない。
 頭を使った者が戦いを制するのだ。

 他にも頭脳を要求される場面は多い。2つまでしか所持することのできない主武器の選択や傷ついた兵士を助けるか、新たに人員を補充するかの決断など、一見、大味に見える本作だが、実は緻密な作戦が攻略の鍵を握っている。それがリーダーとしての務めであり、同時に醍醐味でもあるのだ。

日常の中に戦争という非日常が侵略してくる恐怖感がうまく描かれている 学校や映画館といった普段、見慣れた場所も戦場と化してしまうのだ 季節は夏から秋、そして冬へ。それに応じて主人公の服装や風貌も変化する
後半には戦車や戦闘ヘリも登場し、戦いはより厳しさを増していくのだ 医療キットやグレネードなど、装備を方向キー一発で呼び出せるのが嬉しい マルチプレーヤーは旗をどれだけ長く掲げていられるかの勝負になっている



■ 今、ゲームだからできること

 マップをクリアするごとに高々と掲げられる星条旗を見て、筆者は複雑な想いに駆られた。おそらく、今後何十年経っても、占領国の国旗を引き摺り下ろし、日の丸を掲げるようなゲームが日本で発売されることはないだろう。それがアメリカという国の度量の深さなのかもしれない。と同時に、かの国の恐ろしさを感じるのは筆者だけだろうか。

 しかし、本作はけっして愛国心を全面に打ち出した作品ではない。むしろ、それを茶化しているのではないかと思うようなセリフや場面がいくつか見受けられた。弱者が強者に対し抵抗し、勝利を勝ち取っていくという構図は、アメリカという国に特別な思い入れがないユーザーでも胸を熱くさせるものがあるはずだ。

 まずはイデオロギー云々を忘れて、純粋にゲームを楽しんでほしい。コントローラを握っているうちに、子供の頃に遊んだ「陣取り」や「戦争ごっこ」の記憶が呼び覚まされるだろう。マルチプレーヤーモードでは、それをより強く実感できる。ただ、ネットワーク対応型のソフトが次々と発売される中、これほどネットゲームに最適な題材でありながら、非対応というのは残念に思われた。

 戦争は憎むべきものだが、男子なら誰でも胸の奥に秘めている戦闘本能まで否定することはできない。あくまでもフィクションの戦争を楽しみながら、ロードの合間にでもふと、世界平和について考えてみる……というのが本作の正しい大人の遊び方と言えるのではないだろうか。

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□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.japan.ea.com/
□「フリーダム・ファイターズ」の公式ページ
http://www.japan.ea.com/freedomfighters/

(2004年5月6日)

[Reported by 中川裕介(冒険企画局)]


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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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