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★Xboxゲームレビュー★

完全再現された「洋風お化け屋敷」にようこそ
「グーリーズ」



■英国のスタッフが贈る「本場の」お化け屋敷

主人公クーパー。モンスターにおどかされて、大げさに怯える姿が印象的だが、コミカルさと、かっこよさをあわせもつ、ヒーローである
 「グーリーズ」は、西洋風の「お化け屋敷」をゲーム上で完全再現した作品である。表現はコミカルなものとなっており、プレイをしたら夜トイレに行けない……というような心配はない。

 しかし、それでも、この作品はコワイ。なぜならば、いくら怖いとはいっても観客が絶対安全な「本物の」お化け屋敷とは違い、「グーリーズ」では、気を抜くと、主人公・クーパーは本当にお化け屋敷の中で倒されてしまう。本作のモンスター「グーリー」も完全に本気。コミカルな外見とは裏腹に、クーパーに容赦ない攻撃を浴びせかけてくる。この怖さ、ドキドキ感はゲームならではのものだろう。

 ゲームの開発はイギリスの開発スタジオ“Rare (レア)”。「スーパードンキーコング」や「スターフォックスアドベンチャー」、「ゴールデンアイ 007」など、丁寧なアクションゲームを制作することで定評のあるスタジオである。「グーリーズ」も屋敷の作り、グーリーの“らしさ”、BGM、演出、どれをとっても「お化け屋敷」に対しての深いこだわりが見てとれる。

 クーパーは嵐の日、道に迷ってしまったために、ガールフレンドのアンバーと怪しげな屋敷で雨宿りをする羽目に。それを見ていた館の主人がニヤリと笑うと、門の上のガーゴイルが突然動きだし、アンバーをさらってしまう。クーパーはガールフレンドを助けるために、館に飛び込んでいく……。

 蝋燭をはじめとした頼りない光源に照らされ、闇と光をはっきりさせたデザイン、ガイコツをはじめとした、ユーモラスながらも、絶対に追跡をやめない恐ろしい執念を持った怪物たち。館の中だけではなく、庭や馬小屋でもクーパーは戦っていくこととなる。

 「不条理感」にも注目したい。クーパーは「不思議の国のアリス」を思わせる、極めて強引な状況に、無理矢理従わされてしまう。本作ではステージ最初のHPさえ、館の主人の支配下になる。ステージによっては、体力が“1”ではじめさせられてしまうことすらある。慎重にアイテムを探し、びくびく探索せざるをえない。

 不条理感を強調させるものとして、ステージに課せられるさまざまな「ルール」がある。「素手で攻撃してはだめ」、「時間内に鍵を見つける」、「指定された敵を倒してはならない」といったルールを破れば死神そのものの「リーパー」が登場する。彼の白く輝く手に触れるだけで、クーパーはいくらHPがあっても一瞬で倒されてしまううえ、リーパーはいくら攻撃を加えても消すことができない。彼の存在が、ゲームを非常にスリリングなものにしている。

 館の中にはたくさんの「武器」が転がっている。椅子や大きな木箱のほか、壁に掛けられた絵や、大きな骨付き肉、ドリンクの瓶など、あらゆるものを使って攻撃が行なえる。しかし、個々の武器はあまり役に立たない。椅子でも、オンボロなのか3回敵に当てただけで、粉々になってしまう。クーパーはモンスターから逃げ回り、そこらにあるものを手当たり次第にモンスターにぶつけていくことになる。

 時には聖水の入った水鉄砲など、頼りになる武器を館の住人から貸してもらうこともあるが、2.3ステージ突破すると、「返してくれ」と、取り上げられてしまう。とことん不条理に振り回されるこの感覚は、日本のゲームにはないものだ。

 グーリーたちの描写にも日本人にはかなわないこだわりが見てとれる。前述のリーパーの「死の手」や、炎しか効果のないミイラ (倒すために、暖炉に押し込むといったシーンも)、眼光にとらわれるとクーパーを激しい恐怖で金縛りにするメデューサ。顔以外は攻撃ダメージを受けず、時々キレて大暴走するハンチバック(せむし男、背中のこぶは殴られても平気という設定がある)などなど、ひとつひとつのモンスターに、ニヤリとさせられる。

 ステージ各所にいる“脅かすだけ”が目的のグーリーも本格的だ。半透明の姿で、掃除をしている幽霊が、クーパーが近づくと形相を変え、恐ろしい叫びをあげる。他にも、ソファーでのんきに寝ころんでいたりと、「西洋の怪談」の王道をきちんと見せてくれる。当たり前の話だが、英国のスタッフが作ったゲームならではの、異国の感覚がとても楽しい。海外の常識は日本の非常識、異国の雰囲気を肌で感じることができる。外国の文化が体感できる作品である。

【スクリーンショット】
ガールフレンドのアンバー。典型的というか、お約束な“さらわれたお姫様”っぷりを見せてくれる フォン・グール男爵。にくめない悪役だが、実は少年少女をさらう、かなり悪い人である 執事のグリブンズ。クーパーにさまざまな助言をしてくれる味方。他にも館の住人はかなり好意的である
緻密に、こだわり抜いて作られたお化け屋敷。コミカルさと、怖さをきちんと感じさせるそのデザインは、すばらしい ストーリーが語られるシーンは、コミック風になっている。コマの中で、キャラクタが動くのが楽しい おどかされたときに発生するスーパーホラーショック。素早くボタンを押さないと、大ダメージを受けてしまう
「死の手」を輝かせながら迫ってくるリーパー。最も恐ろしいモンスターである。実はロックマニアらしい 窓の外からにゅっとのぞき込むグーリー。西洋の「幽霊観」を強く感じさせる演出がそこかしこにある ミイラは、通常攻撃ではダメージを与えることができない。彼を倒すには炎の力を借りなければならない
メデューサ。石化能力が有名だが、“恐怖のあまり石になる”という説もあるので、こういったアレンジもありかも ドアをふさぐ“?”マーク。条件を満たさなければ、このドアは開かない。どうすればいいのか? 館にはさまざまな部屋があるほか、庭園や温室、馬小屋などもある。じつに豪華で、男爵の財力を感じさせる



■腕っぷしだけじゃ生き残れない

 クーパーはどこで学んだかわからないが、かなりの格闘技のセンスを持っている。パンチ、キックはもちろん、エルボースタンプから華麗な回し蹴りまで、香港スター顔負けである。

 攻撃は右のアナログスティックを敵の方向に倒すことで行なう。移動中にクーパーの向きを考えずに攻撃を行なえるので、逃げながら敵に攻撃を与えるという方法に最も向いている。敵の方向に倒しっぱなしにしておくことで、パンチ、キックから、敵を吹っ飛ばすことのできる大技につながるコンボが炸裂する。簡単操作でスピーディーな戦いができ、大技は当たり判定が広く、多くの敵をまとめて吹っ飛ばせるので、とても爽快だ。

 ただ、本作も3Dゲーム特有の「視点の不具合」がある。ある場所で視点が自動的に変化をしてしまうため、レバーを倒しっぱなしでも、あらぬ方向に攻撃が続いてしまい、思うように攻撃が続かずいらだつ場合がある。本作はL、Rトリガーでスムースに視点が変えられるが、敵が死角にはいることも多く、特に一撃で倒されてしまうリーパーなどの場合、スムースに視界におさめられない時など、どうしても不満を感じざるを得ない。

 こういった問題は、3Dゲームが円熟していく昨今、開発者を常に悩ましている問題だろう。特に海外の制作スタジオには3Dゲームに対しての蓄積があるだけに、目を覚まさせるような解決策に期待したい。

 戦闘が楽しい本作ではあるが、アクションゲームの腕だけでは生き残れない。前述したように、ステージにはさまざまな制約が課せられることが非常に多く、また、強敵が多くいて、自分の体力は雀の涙ほど、といったかなり不利な状況に「強制的に」立たされてしまうことも少なくない。

 ここで生きてくるのが、「探索」要素である。ステージにはさまざまな壊せる物があり、そこには多彩なアイテムが隠されている。道具を一定時間壊せなくさせるアイテム、小さなクーパーが現われ敵を倒してくれるアイテム、体力を増やしてくれるアイテム、さらには取るだけでいきなり条件をクリアしてくれるアイテムまである。これらのアイテムは出現場所が決まっていて、うまく活用することで、ステージがかなり楽になる

 本作は難易度は比較的に高いゲームではあるが、部屋ごとに難題を出していくというステージ制になっている部分がかなりユーザーを助けてくれる。体力が、館の主人の支配下にあるのも同様で、次のステージへ戦略を引きずらない、1ステージごとに集中した形でゲームに取り込めるようになっている。

 条件と、モンスターと、アイテムの配置。1回目の探索ではこれらを調べ上げ、2回目、3回目でうまく越えていく。時には行き詰まって、コントローラを置いてちょっと考え込み、別のことを試してみる。「ロードランナー」などのゲームを思わせる、ステージごとに頭を振り絞る楽しさを持った作品なのである。偶然も手伝って強引に進むこともできるだろうが、出された「難問」に対し、さまざまなアプローチを行なって解いていく感覚には、独特の達成感がある。

 時にはわざと指定された条件をやぶり、リーパーを出現させるのが解法の早道という場合すらある。彼の「死の手」は、クーパーのみならず、モンスターすら即死させる。棺桶に入っているときは攻撃が当たらない「バンパイア」は、彼に倒してもらうという手段も有効だ。

【スクリーンショット】
パンチ、キック、そして大技。右スティックを倒し続けるだけで、爽快な攻撃が繰り出せる 椅子やデッキブラシなどさまざまな武器を使って攻撃できる。すぐ壊れてしまうのは、いかにも“らしい”しかけだ ビリヤード台を一回転させて、周囲の敵を一掃。このあと、台がまっぷたつに壊れてしまうのが大げさで楽しい
聖水の入った水鉄砲。聖水を浴びてゾンビが溶けていく。頼りになるが、借り物だけに、すぐ取り上げられてしまう 戸棚を壊すとアイテムがたくさん! ちょっと凝ったグラフィックだけに、壊せるものの見極めが少し難しい アイテムを取ると出現するミニクーパー。自動的に敵を攻撃してくれるが、ちょっと持続時間が短いかも
ゲーム中にいつでも部屋のクリア条件を確認することができる。“ちょっと無茶な”と思ってしまう条件も ミイラがDJをし、その音楽に合わせ踊るゾンビとガイコツ。邪魔をしないように、そーっと通り抜ける 棺桶から出たときしかダメージを与えられないバンパイア。使ってる武器は最適な「にんにく銃」である
映写室。ちゃんとムービーの中のガイコツが動いているのが芸が細かい。雰囲気たっぷりのステージだ 氷の弾を打ってくる魔法使い。近づくと笑い声とともにテレポートして逃げてしまう。憎たらしさはトップクラスだ 強力なモンスターがひしめく場所、体力は少しだけ。「スニークアクション」ぽい攻略が必要となるステージ



■やり込みが楽しいボーナスチャレンジ

 ゲームモードはストーリーを進めていくだけではなく、ゲーム中、ボーナスブックを取っていくことで「ボーナスチャレンジ」というミニゲームが楽しめるようになる。ひたすら群がるガイコツと戦うなど、テーマがはっきりしていて、「部屋から脱出する」のが目的の、通常のゲームとは違う感覚が楽しめる。優秀な成績を残すことでご褒美として設定資料が見れるようになる。やり込み要素を刺激してくれるだろう。

 オプションモードではクリアしたステージや、アメリカンコミックそのままのでもシーンを何度も楽しめる。おどろおどろしい雰囲気や演出をたっぷり楽しめる。

 非常に「お約束」を楽しめる作品である。お化け屋敷というテーマに祖って作られた作品としては、第一級の物であると断言できる作品だ。考証されたリアリティーのある各部屋、ダンスホールで骸骨達が集団で踊っていたり、壁に掛けられた衣服や絵が空を飛び、襲いかかってくるポルターガイストを思わせる攻撃、などなど、ありとあらゆる演出に、ニヤリとさせられる。

 こういった雰囲気が、ツボにはまる人にはたまらない作品となっているだろう。難易度がちょっと高いのもまた、いかにもこの作品らしく、悩んだり、ちょっと憤ったりする部分も含めて楽しんで欲しい。

 当然のごとく、ガールフレンドは後一歩のところでまたさらわれてしまったりする。しかも、何回も。ドラマ部分もユーモアに満ちたお約束の嵐。特に館の主人が引っ張り出してくる「自慢の兵器」は、これぞ英国ユーモアという感じで、作者は一番のお気に入りだ。

 とはいえ、手放しで誉められない部分もまたある。ステージごとの攻略が楽しいとは言っても、いきなり体力を減らされたり、視点の問題や、後半の意地悪な難易度など、日本とは違うゲーム観を感じる部分は確かにある。

 なによりも、壊せる物と壊せない物がはっきりしていないという、こういったゲームではもはやお約束になっている欠点をそのまま抱えている部分は、「やはり洋ゲーだなあ」と強く感じさせる部分である。どこか大味で、ユーザーフレンドリーではない、突き放した感覚なのだ。日本の丁寧なアクションゲームをあらためて見直させる作品ではある。

 本格的な、英国スタッフでしかなしえない、精緻なグラフィック、そして彼らならではのこだわり抜いたお化け屋敷。日本人から見た違和感を、楽しみに昇華できるかどうかは、ユーザー次第である。理不尽な扱いに、ちょっとむかっ腹をたてつつ、ビクビクしながら、この完成度の高いお化け屋敷を満喫して欲しい。

【スクリーンショット】
多彩なオプション。ゲームの設定だけではなく、プレイしたステージをおさらいすることも チャレンジステージは、様々な記録に挑戦できる。最高記録は保存される 優秀な成績を収めると、設定資料などを見ることができる
消火器を片手に、ファイアーインプと対決。何故か中華風のBGMと共に現れるニンジャインプなど、色々な種類がいる アンバーの他にも男爵は少年少女を誘拐している。中盤からは彼らを助けるために冒険をすることに 初心者救済策である執事のお茶。飲むことで体力が増え、攻撃力もアップする



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□Xboxのホームページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□「グーリーズ」のページ
http://www.GBG.jp/
□関連情報
【1月30日】マイクロソフト、Rare開発のホラーアクション
Xbox「グーリーズ」を4月29日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040130/ghoul.htm

(2004年4月28日)

[Reported by 勝田哲也]


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