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★PS2 ゲームレビュー★
PS2で登場してから本作で5作目を数え、フロム・ソフトウェアの看板ゲームとして確固たる地位を築いた作品。シリーズを重ねる度にグラフィックの向上やパーツの追加など、様々な要素が加味されてきた。そして今作では、すでに完成したと思われたゲームシステム部分にメスを入れてきた。特に注目するのは操作の変更で、シリーズをプレイしてきた人にとっては、どのような感じなのか気になるところだ。その他にも実際にプレイしてみないとわからない変更点などを紹介していこう。
■ スティックに移動と視点操作をまとめてよりわかりやすく 前作までプレイしている方はご存じだろうが、前作までは右スティックはR3ボタンだけを使用していた。しかし本作ではここに視点操作が割り当てられ、上下左右の視点移動が右スティックのみで行なうことが可能になった。これに伴い、左スティックの左、右が平行移動に変更され、移動と視点の操作が左右のスティックにまとめられたことになる。 「右スティックで視点移動ができれば操作が楽になるのになぁ」と思っていた著者としては、この変更は心待ちにしていた部分だ。これであれば、両手の親指をスティックから離すことなく、移動しながらの視点移動がスムーズに行なえる。特に斜め方向への視点移動が楽なので、上空を移動する敵をかなり捕捉しやすくなった(左右への視点移動は、機体の性能によってスピードが変わるので感じ方は違ってくる)。 また、攻撃ボタンやブーストボタンはL、Rボタンにまとめられ、スティックで塞がっている親指をできるだけ移動させないように配慮されている。これは特にボタンを押し続ける必要のあるマシンガンを両手で使いたい時に重宝する。もちろん、左右の撃ち分けも直感的にできるという利点もある。 この操作系の変更は、前作に比べ、使うボタンがわかりやすくなったのもポイントで「操作が複雑そう」という理由で敬遠していた人でも十分に対応できるだろう。 なお、著者を含め、シリーズを通してプレイしている方には、前作の操作を身体が覚えてしまっているため、最初は戸惑ってしまうと思う。どうしても前作の操作形態がいいと思うなら、コンフィグで設定できる。もちろん、各種ボタンの設定も可能なので、より自分にあったキーコンフィグを設定してもいいだろう。
しかし、これだけの変更があったにも関わらず、操作説明はゲーム中には行なわれない。チュートリアル的なものは、オフィシャルサイトのほうで解説されているので、一読してみるといいだろう。
■ アリーナが消滅!? ミッションを進めていくことで真相が明らかに
実は今作ではミッションをこなしていくと、ミッションに紛れてアリーナが登場する仕組みになっているのだ。ミッションの流れに応じてアリーナが登場するため、いつでも対戦できるわけではない(ただし、ゲームをクリア後のデータであればいつでも対戦できるようになる)。このアリーナが少々曲者で、対戦で負けると大抵の場合、プレーヤーのランキングが落ちる。かといって勝ったからといって必ずランキングが上がるわけではない。これは「レイヴンポイント」に関係しているためだ。 レイヴンポイントは、ミッションをクリアした時に加算される評価点で、ランキングはこれを基準に決められている。ポイントが高いほど、プレーヤーのランキングが上がり、ミッションもより高度なものが出現し、アリーナの相手も高ランクのレイヴンが登場。それに伴って、報酬やレイヴンポイントも増していく仕組みとなっている。 加えて、ミッションの成否によって出現するミッションにも変化が現れてくる。例えば、あるミッションを失敗すると次のミッションで登場する敵の数が減り、さらには敵として登場したレイヴンが味方になっているなど、ストーリーと難易度がストレートに変化する。同じミッションであっても、事前の結果次第(キーとなるミッションがあるので、それを見つけ出すのも楽しみのひとつ)で状況が変化するのは面白い。 無理にミッションを成功させなくともゲームオーバーにならず、さらにストーリーの視点も変化するのは楽しい。言葉は悪いが「下手は下手なりにストーリー進行を楽しめる」のだ。 登場するすべてのミッションをクリアしていくだけでは、絶対にお目にかかれないミッションも多数存在する。ミッション成功率100%で通したい場合は、セーブデータをコピーし、コピーしたデータで様々なミッションを「失敗」していくといいだろう。 なお、ミッション自体は今までのシリーズを踏襲しており、使用した弾薬の代金、機体修理などの経費は、報酬から差し引かれる。報酬に関しても、前作に比べると増加している感がある。よって、高価な弾薬を大量に使い、さらに頑丈な機体を破壊寸前まで痛めつけない限り、赤字に転落することはない(ミッションに失敗した場合は、赤字になってしまうが)。アリーナで手っ取り早く稼げなくなった分は、ミッションでフォローしているので、収支に関してはそれほど心配することはない。
ミッションやアリーナの選択は狭まってしまったが、プレイ次第によって内容が変化していくのは、今までのシリーズとは違った視点で楽しめるのでよいと思う。ミッションの内容も、護衛や奇襲、探索などなどシリーズで培ったノウハウを上手く生かしているので前作と同じく、またそれ以上に遊べるだろう。
■ 制限が少々シビアに!? パーツの性能に目を光らせろ
特に気になったのが、機体温度。機体が一定以上の熱を帯びると、ダメージを受けてしまう。機体が熱を帯びる原因として、前作までなら敵からの攻撃を受けるか、高速で移動が可能なオーバードブーストを発動することの2つが挙げられる。しかし、今作ではそれ以外にも、機体のエンジンともいうべきジェネレータと、ブースタの発熱量が機体に影響を与えやすくなっている。どちらのパーツも高出力になればなるほど発熱量が増すので、機体の放熱性能を考えずに高機動&高出力な機体を作ると、2~3秒ほどブースタを起動するだけで機体にかなりの熱が溜まる。最悪の場合、ブースタで移動するだけで、溜まった熱によって機体にダメージを与えてしまう。 このため、パーツが発する熱量と機体の放熱性能のバランスをしっかり考えなければならない。これに機体を冷やすラジエータの性能も考慮して、自分にとって(機体にとっても)ベストな組み合わせを探していくしかない。素早く移動する高機動の機体を作るなら高出力のブースタを迷わず選択していたが、これからは機体を軽量化し、低出力のブースタでも移動がしやすいように工夫する必要がある。 機体を軽くするというポイントが出てくると同時に、気になってくるのが各パーツの重量。前作に比べて各種パーツの重量が増した感があって、これもカスタマイズで悩むポイントになる。もちろん、軽量なパーツもたくさんあるので組み合わせ次第なのだが、前作以上にシビアになっている感がある。 特に軽量級~中量級の機体をカスタマイズする際、重量の問題で泣く泣くパーツや武器を変更することも多くなる。デザインを重視した機体で、破壊力の高い武器を色々と持つなどという、贅沢はかなり厳しい。万能な機体ではなく、機動性を犠牲にして重装甲と高ダメージの武器でいく。耐久性を犠牲にして素早く動ける機体にするなど、切り捨てる部分がより目立つ調整がされている。本作で追加されたパーツも色々とあるので、パーツの組み合わせを考えるという楽しみは増したが、少々敷居が高くなってしまったのは確かだ。
なお、パーツの各種性能が日本語表記になったので、文字を読むだけでどのようなものなのかを理解しやすくなった。些細な変更ではあるが、マニュアルを見ながら各性能をチェックするという手間は大きく省かれた。画面に表示される情報もすっきりして見やすく、細やかな心遣いには感心する。
■ チューンナップの効果はずばり“微調整” さて、今作で初登場となるシステムに、パーツのチューンナップがある。文字通り、パーツの性能を向上させる改造であり、パーツごとにチューンナップできる項目が数種ほど用意されている(ただし、FCS[ロックオンCPU]、INSIDE、EXTENSION、武器はチューンできない)。 チューンナップ項目はそれぞれ10段階までチューンナップできるが、これには限度がある。1段階のチューンナップに10%増加し、トータルで100%になるとそれ以上チューンできなくなる。また、チューンナップによって得られる性能は僅か。ひとつの項目にすべてをつぎ込んでも、元の性能の1割増しにもならない場合がある。また、チューンナップにもお金が必要となるので、資金に余裕がある時に行なうようにしたい。 チューンナップは欠点を補うことよりも、その機体を生かすために必要な部分へ絞った方が効果を体感しやすくなる。また、使いたいパーツや武器を装備したら、僅かにエネルギーの出力が足りなかったり、重量オーバーだった場合などに、チューンナップで装備可能にするという微調整に利用するのがいい。 もう少し高い効果を期待していたので、正直物足りない気もするが、パーツの欠点を完全に補えるチューンナップが可能になっては、万能な機体ができてしまい面白みに欠けるのは自明の理。デメリットがあってこそ、戦術を考える楽しみもできるのでこのくらいの効果で丁度いいのではないだろうか。 ちなみに、一度チューンナップしたパーツは、元に戻すことはできない。もし、最初からチューンナップしたいならパーツを売って、再びショップでパーツを購入する必要がある。ただし、一度でもミッションで使ったパーツは「USED」のマークが付いて購入時よりも安く買い叩かれてしまう。新パーツを購入したら、装備させたあとにミッションで確かめるのではなく、ACテストで挙動や性能を確認。これで気に入らないなら売ってしまえば、買った時の値段で引き取ってくれる。後半になると高額のパーツが登場し、資金が追いつかなくなるので、無駄な買い物はできるだけ避けてお目当てのパーツを購入し、効率よくチューンナップしていこう。
他人と同じパーツであっても、ひと味違うパーツに仕上げて個性を出していくのも本作の醍醐味のひとつなのだ。
■ PS2が2台あるなら一度は通信対戦!
というわけで、実際に2台のPS2(ネットワークアダプタ付)とモニタを用意し、対戦をしてみた。双方のPS2には、HUBからケーブルを接続。そして、一方にはREVOLUTIONディスクを、もう一方のPS2にはEVOLUTIONディスクを入れて起動。両方で「VERSUS」→「NETWORK」→「AUTO CONNECTION」の順で選んでいくと、DHCPサーバーからアドレスを取得して何の問題もなく接続された。別々のディスクで対戦が可能なので、いちいちディスクを持ち寄る必要がない(オリジナルACを使用する場合は必要に応じて自分のデータが入ったメモリーカードのデータをロードすればいい)。 通信対戦は最高で4人まで参加できる。ただし、2台の通信対戦の場合、プレーヤーが3人以上だと双方とも分割画面になってしまう(3人で遊ぶ場合はPLAYER 4のスペースにLIVE映像が流れる)。フルスクリーンで遊びたいため、今回はプレーヤーは2人とした。そのあとは、ステージや時間、対戦形式の設定を済ませ、使用する機体の設定となる。ここでメモリーカードから自分のデータをロードして、対戦用のカスタマイズをしていく。ショップがないだけで、ほかは1人でプレイする時と同じなので戸惑うこともない。 対戦を始めてみると、やはり1画面使いきれると遊びやすい。通信によるラグなどもなく、スムーズに対戦を楽しめた。ただ、試合終了後、別の機体を使おうと再戦せずに戻ると、ステージやタイム設定のところまで戻されるのはつらかった。せめて1段階前の画面に戻るボタンも欲しかった。
この不満を除けば、快適に対戦を楽しめた。もし、環境に余裕があるなら、対戦仲間とPS2を持ち寄って通信対戦をしてほしいところだ。
■ 初心者に優しい操作系とカスタマイズの難しさのコントラスト シリーズも、はや8作を数えた本作だが、操作系に初めて大幅なメスを入れ、初心者には受け入れやすくなっていることは間違いなさそうだ。だが、不満がないわけでもない。 まずストーリー部分。企業間の紛争を描く本作は各企業の思惑と、主人公を含むレイヴン達を巻き込んで展開する。ミッションの内容によって、展開に若干の変化が出てくるが話の流れがメールやニュース情報などを読むしかなく、淡々とした感じを受ける。ミッションにもデモがあるのだが、こちらも少々淡泊な感じだ。このような世界観がこのゲームの特徴だといえばその通りだが、盛り上がりに欠ける部分があるのは否めない。メールやニュースをしっかりと見ていけば、把握できるのだが、切迫した通信がもう少し多いと盛り上がったと思う。 次に高ダメージの武器と重装甲の機体だと、後半のミッションでも楽にクリアでき、逆に軽量級だとかなり辛くなるバランス。著者のテクニックが追いつかないのもあるのだろうが、軽量級の機体であればミッションの途中で機体修理があるなどの救済措置が欲しかった(難しい注文なのは充分承知している)。 また、カスタマイズが少々シビアになったところがあるので、カスタマイズのノウハウをある程度培っているプレーヤーでないと、思った機体が作れない。これは、初心者には少々敷居が高い気がする。シリーズファンのことを考えると仕方ないことだが、チューニングやパーツ設定のノウハウをレクチャーするようなモードがあると良かったかもしれない。 不満を挙げはしたが、チューンナップの導入によりパーツごとに個性を出せるので、カスタマイズは前作以上に楽しめる。ボリュームに関しても、メインの「EVOLUTION」ディスクに加え、過去の作品で人気のあったミッションを本作のシステムで再現した「REVOLUTION」ディスクがあって、十分すぎるほどだ。今作をプレイしてみて、シリーズを通して遊んでいる著者としては、前作以上に面白いと感じた。
これに対人戦により、機体の欠点や戦術の変更と言った要素が加わり、またいい意味で悩まされることになりそうだ。 (C)1997-2004 FromSoftware,Inc. All rights reserved.
□フロム・ソフトウェアのホームページ (2004年4月8日) [Reported by 渡辺洋二]
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