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発売日から日が経ってもまだまだ売れ続けるソフト、売れ続けてほしいソフト……そんなライターの思いを込めたレビューを「発掘レビュー」としてお届けします。掛け値なしでオススメするこのレビュー、買い忘れていた人はぜひチェックしてみてください。

 

敵は「地震災害」
見えない恐怖に立ち向かえ!

「絶体絶命都市」

横倒しになった電車の車内。じっくり見ると異質さが伝わってくる

 3Dアクションでサバイバル系のゲームといえば、カプコンの「バイオハザード」シリーズや、コナミの「メタルギア」シリーズを思い浮かべる人が多いだろう。しかし本作は、それらのシリーズとは決定的に異なる点がある。

 主人公は人工島で発生した大地震に巻き込まれ、崩壊した街で救助を求めてさまよう。その間にも余震が続くため、大きな揺れのときには転んでしまったり、足場が崩れたり、果ては高層ビルが倒れてきたりする。

 しかしどんな状況においても、「こいつが敵だ!」という明確なアピールはされない。強いて言えば、見えているもの全てが危険な罠となりうる存在なのだ。傾いた高層ビルからオフィスの小物に至るまで、全てが3D画面で描画されているため、何が崩れてきてもおかしくないように見える。

崩壊した大都会の街並み。ここからの脱出がゲームの目的

 「バイオハザード」ならば武器で敵を撃退できるし、「メタルギア」ならば敵の視線にかからないよう考えて動ける。だが本作の場合は、倒れてくるビルを迎撃する手段などはあるはずもなければ、相手が地震だけに、どこが安全かの判断もつけにくい。だが一瞬の判断の遅れが生死に直結する、というサバイバルアドベンチャーであることに変わりはない。

 本作の敵となるのは、「見えない恐怖」ともいうべき災害だ。自らの力ではどうやっても立ち向かえない相手と対峙したとき、3Dアクションに慣れたプレーヤーも、これまでにない新鮮な恐怖を感じられるだろう。


■ 地震にまつわるストーリー展開

 先に紹介したとおり、主人公は「首都島」という人工島で地震災害に遭う。スタート地点は横倒しになった電車の車内。電車自体は我々が実際に利用しているものとよく似ており、横倒しになった車内の様子などから、非現実的な状況がとてもリアルに感じられる。

 主人公は初期の救助の網からもれてしまったため、新たな救助ポイントに向かうことになる。しかしこの主人公、新聞記者という職業柄か、はたまた異様なまでの正義感のためか、とにかく余計なことにどんどん足を突っ込んでいく。気になるところに命がけで移動していく姿を見て、それを操作しているプレーヤー自身が、「いいから早く避難してくれ!」と言いたくなる場面が多々ある。

 島には主人公以外にも、主人公と同様に島に残された人たちがいる。主人公と同じく救助の網からもれた人はもちろん、弟を探すために島に残った少女や、特ダネを求めて自発的に残ったカメラマンもいる。彼らとともに行動し、ときには彼らに助けられ、ときには彼らのわがままを聞きながら、ともに生還するために奔走する。  

 ただ災害を避けて避難するだけのゲームかと思いきや、ストーリーはそう単純には進まない。島に残った人たちとあちこちを歩き回る主人公は、首都島の構造上の欠陥や、建設にかかる利権問題などを知り、次第にその事件の輪にも巻き込まれていく。ゲームも終盤に差し掛かった頃には、「これって違うゲームになってない?」と思えるような、意外なネタも隠されているのだ。

登場人物の中には、理由があって自ら島に残っている人もいる。彼らの頼みを聞いていると、脱出するという主目的を忘れそうになる



■ シビアなゲーム性と親切なシステムの絶妙なバランス

崩壊した橋に残った鉄骨を渡る。下には橋の残骸が見える

 舞台は現代で、主人公はただの新聞記者。簡単に空を飛べる小道具もなければ、服を着替えて超人的な能力を発揮するようなこともない。身体的能力は普通の人間なのだ。転んだら怪我をするし、大きな鉄骨の下敷きになったら死んでしまう。

 とにかくこのゲームは即死する状況が多い。ちょっとしたミスや判断の遅れが、すぐに死に繋がる。とはいえ、倒れてきた鉄骨の下敷きになったり、高層ビルから足を滑らせたりしても生きているのでは現実味に欠けるので、リアリティを高めるという効果があることも確かだ。とにかくこの点だけを取って見ると、ゲームとしては非常にシビアなつくりになっている。

先程まで立っていた足場があっさりと崩れていく

 ならばこのゲームは非常に敷居の高いものかというと、実はそうでもない。確かに死ぬときはあっさり死んでしまうのだが、代わりにすぐにリスタートできるようになっている。直前のセーブポイント、または場面切り替えの直後から復活するため、長くても数分程度の逆戻りで済む。しかもコンティニュー回数の制限などはなく、またペナルティを課されることもない。強いて言えば、クリア時の採点評価に響く程度で、それもゲーム内容そのものには影響を及ぼさない。かなり難しいアクションを要求される場面もあるが、何度か試すうちに危険な場所がわかり、突破口が見いだせるはずだ。

傾いているビルも単なる背景ではない。余震で崩れてくる場所も

 そうなると今度はぬるいゲームだと思われるかもしれないが、それはスリルを味わえないという答えには直結しない。いくら再スタートができるといっても、迫り来る様々な危険から逃げないプレーヤーはいないだろう。死んだときのストレスは最小限にしながらも、スリルは損なわれておらず、実に巧妙なバランス設計がなされている。アクションが苦手な人でも、純粋にスリルだけを味わって楽しめる点はまさに絶妙だ。

 操作は左のアナログスティックを基本としたオーソドックスなもの。「踏ん張る」や「呼ぶ」などの特殊な操作はあるものの、概ね直感的に操作できる。一部の狭いエリアで視点が固定されて周囲が確認しにくくなるが、それ以外の操作系はまず不満のないレベルに仕上がっている。


■ ゲームを盛り上げる様々なシステム

 主人公の危険がプレーヤーのスリルと直結するためには、プレーヤーがゲームに引き込まれていなくてはならない。そこを追求するため、本作にはいくつかの技術やシステムが組み込まれている。

 まずは「振動」だ。地震をテーマにしているだけあって、振動にはこだわりを持ったつくりがなされている。コントローラとなる「DUAL SHOCK2」の振動機能は、ゲーム内の振動とシンクロしている。小さな地震では小さく振動し、大きな地震や間近でビルの倒壊などが起こると大きく振動する。大きな揺れが発生すると主人公は転倒してダメージを受けてしまうが、コントローラの振動の大きさで、地震の揺れの大きさも判断できる。ただ臨場感を高めるだけではなく、次の行動を決めるための情報としても役に立つのだ。

 実は筆者は操作の邪魔になる振動機能が嫌いで、ほとんどのゲームで振動設定をOFFにする。しかし本作では振動に確かな重要性を感じたため、最後まで振動機能をOFFにしなかった。

 また振動機能に関しては、アスキー製の振動ユニット「トランスバイブレーター」にも対応している。よりリアルな振動を楽しみたい場合は、こちらも試してみてほしい。

 音響面では、ソニーが開発した3Dサウンドミドルウェア「S-FORCE」を採用している。これによって左右のステレオスピーカーだけでも立体的な音響再生が可能となり、臨場感を高める役割を果たしている。ゲーム中では正面の視界の中だけではなく、背後や上空からも危険が迫ってくる場面があるため、この音響システムが果たす役割は大きい。

 さらにゲームの補助的機能として、ハードディスクドライブの対応がある。データの読み込みが高速になるので、より快適にゲームを楽しめる。ただしデータの読み込みはマップの切り替えなどでしか発生せず、通常のDVDディスクからの読み込みでも気になることはないだろう。


■ 不満の残る「謎解き」要素

 島から脱出するためには、ただ危険から逃げ回るだけでなく、アイテムを拾って適切な場所で使用していく必要がある。しかし、アイテムを発見し、取得し、組み合わせ、使用する、という一連の流れのなかで、具体的なヒントはほとんど存在しない。崩壊した街には人もほとんどいないのだから、都合よくヒントが隠されているほうが不自然ではあるが、ゲームとしてはやはり辛い。

 アイテムの取得に関しては大抵の場合、これ見よがしに置いてあるので、探せば見つかるものが多い。しかし画面の全てが3Dで描画されているため、単なる背景と重要なアイテムの見分けがつきにくいこともある。そしてアイテムを拾ったからといっても、それを適切に使う場所と方法を思いつかないことには先に進めない。たとえ思いついたとしても、それが「ゲームでの答え」と合わなければ、やはり使用できない。答えを知っても、「そりゃないだろう」と納得のいかないことさえある。融通が利かない割にノーヒントとくれば、不親切さや理不尽さを感じてしまうことも、当然ありうることだ。

 上のアイテムの話と比べると些細なことだが、扉をあけるための鍵をまとめておく「キーホルダー」もやや不親切だ。鍵を取得すると自動的にキーホルダーに入るのだが、あくまでアイテムとして取得するのみで、自動的に扉の鍵を開けてくれることはない。どこでどの鍵を使用するかは明らかなのだから、鍵を持っている扉くらいは自動で開ける機能があってもいいのではないだろうか。

 他にも不要なアイテムの判断をしづらいため、使い道のないアイテムをいつまでも持っていて邪魔なこともある。またリュックサックのアイテムの詰め方が確認しづらいため、どれを捨てて場所を空けてよいかを決めづらい。アイテム周りのメニューもリアリティを追求したのだろうが、もう少しゲームらしい使いやすさがあってもよかったかもしれない。

脱出に必要なアイテムを拾って、適切な場所で使用することでストーリーが進む。重要なアイテムは、危険な場所に置いてあることが多い



■ 遊びごころたっぷりの「おまけ」

 命がけのシリアスな展開がベースの本作だが、実はお遊びの要素も多い。取得できるアイテムは全部が全部、脱出に必要なアイテム、という訳ではない。

 その代表的な存在が「コンパス」だ。これはいわゆる方位磁針で、プレイ中に画面右下に表示され、主人公の向きを示してくれる。最初はごく普通の方位磁針なのだが、島のあちこちに様々なデザインのコンパスが落ちている。方位磁針なのに風見鶏のデザインだったり、使用感を全く無視した頭蓋骨のデザインだったり、同社の他のゲームのキャラクタのものだったりと、とにかく遊びごころいっぱいのデザインだ。同時に複数のコンパスが使用できるわけでもないのに、その数は30種類を超える。かなり意外な場所に落ちていることが多いので、これらを全て発見して拾うことは至難の業。クリア後の目標としても面白いだろう。

 コンパス以外にも、身につける装備品にも妙なものがある。頭を守る効果があるのか疑わしい帽子などはまだしも、変装用のひげつきメガネなどはどう考えても実用性がない。だが装備して話を進めると、パートナーにツッコミを入れられたりと、ちゃんとネタが用意されている。しかもその1回で装備がなくなるわけではなく、またシリアスな場面でも格好は変わらないので、場面によってはなんとも奇妙な光景ができあがることもある。

 他にも脱出用のいかだを組み上げたあとに、見つけたペンキで花柄に色づけをするとパートナーから白い目で見られるなど、随所にお遊びが隠されている。看板やバス停などを調べると、ストーリーには関係のないものでも、大抵は主人公が何かリアクションをしてくれるので、気になったものは調べて反応を見てみたくなる。

必要以上にデザインの多いコンパス。同社の作品を知っているプレーヤーならばニヤリとしてしまうものもある



 地震災害をゲームにするという、意外な着眼点が注目を集めた本作。筆者がプレイ中に震度2の地震に襲われたとき、思わず机の下に隠れるか、外に飛び出すかと考えたくらいに臨場感たっぷり。現実世界での防災意識を刺激するという副産物まである、とてもお得? なゲームだ。1回のクリアにかかるプレイ時間はそれほど長くないが、世界観を楽しむつもりで、じっくりと遊んでみてほしい。

(c)2002 IREM SOFTWARE ENGINEERING INC.

□アイレムのホームページ
http://www.irem.co.jp/
□「絶体絶命都市」公式ページ
http://www.zettai-zetsumei.com/
□関連記事
【2002年4月18日】アイレム、大地震で崩壊した大都市を舞台にしたアクションアドベンチャー「絶体絶命都市」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020418/irem.htm

(2004年4月6日)

[Reported by 石田賀津男]


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