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★PS2 ゲームレビュー★

ジョッキーレースゲームという枠に納まりきらないスタイルを確立
「ギャロップレーサー ラッキー7」



 今回紹介する「ギャロップレーサー ラッキー7」は、ジョッキーレースゲームの「ギャロップレーサー」の7作目にあたる。'96年、「レースゲーム」=「カーレース」、「競馬ゲーム」=「育成シミュレーション」という時代に、プレーヤーがジョッキーとなり、競走馬を操作するという独自のスタイルを確立して話題を呼んだ「ギャロップレーサー」。その最進化系である今作をレビューしていこう。




■ 無機物ではないレースゲーム

レース前は、パドックで自分が騎乗する馬の能力をチェック。数値化されたパラメーターだけでなく、競走馬の個性である「アビリティ」も確認しておこう
 大抵の人が「レースゲーム」と聞いてまず思い浮かべるのは、カーレースではないだろうか? たしかに、あの大きな鉄の塊を自分の手足として操る快感は、たまらないものがある。しかしこのゲームは、それを上回る快感を与えてくれる。

 プレーヤーが操るのは、カーレースのような無機物ではない。自分の意思があり、機嫌も変わる「競走馬」という生物なのだ(車も同じだと主張する諸兄もいるとは思うが……)。

 「ギャロップレーサー ラッキー7」では、このことを上手に再現している。競走馬には、それぞれ生まれもっての「脚質」というものがあり、それにあったレース展開を考えなければならない。

スタート直前。左下にある丸いスピードメーターがスタートメーターとなる。赤と黄色の矢印がぴったり重なるほど、いいスタートを切ることができる
 例えば、脚質が「逃げ」である競走馬に騎乗した場合は、まず良いスタートを切って先頭にたつことが重要。左下のメーターを見てタイミングを合わせ、「人馬一体」にならないと好スタートを切れない。機械のように一定のリズムではなく、同じ競走馬でもレースによってメーターのテンポが違う。ジョッキーはそれに呼吸を合わせる必要がある。

道中、重要なのが馬との折り合い。馬を気持ち良く走らせれば、それだけ力を発揮してくれる。しかし、位置取りのために無理をさせることも必要となる
 ゲートが開き、前へ飛び出す。ほかにも逃げ馬がいた場合は、あきらめて後ろにつくか、逆に相手があきらめるまで意地をはるかだ。意地をはって前に出るならば、十字キーの上を押して手綱をしごいて加速させる。しかし、そう上手くはいかない。競走馬には「気性」や自身のペースというものがあり、むやみに手綱をしごけば競走馬の機嫌を損ねてしまう。生き物は、なかなか思い通りに動いてはくれない。

競走馬の脚質によって馬群に対する自分の位置取りが決まってくる。最終コーナーで自分が仕掛けるときのことまで考えて、位置取りを行おう
 脚質が「先行」や「差し」の競走馬に騎乗した場合は、馬群の中に位置を取ることが多い。内枠でスタートする場合などは、上手く騎乗しないと最終コーナーまで馬群に飲まれ、競走馬にあった位置取りができずに不本意な結果に終わるなんてことが多々ある。普段のレースでもそうなのに、「GIレース」で出走場が18頭だったりしたら、理想の位置取りなんてものはほとんど実現しない。それでも、そのレースにおけるベストの位置を見つけなければならないのだから、ジョッキーはつらい職だと言える。

さぁ、いよいよ最終コーナーを迎える。ここまで理想的な騎乗を行なってきていても、このあとの仕掛けに失敗すれば、それはすべて水の泡となってしまう
 とにかく慣れるまで、いや慣れてもなかなか思いのままに操作できない。それでも勝つために、騎乗している馬の様子を伺い、レース展開を読み位置を取り、そして勝負を仕掛けるタイミングを見計らう。我慢や忍耐という言葉が頭の中を駆け巡り、イライラしストレスが溜まっていく。やがて800mの表示が見えてくると、なぜか気持ちが高揚してくる。


■ 解放される瞬間「レボリューション」

 残り800mを切ると、すべての馬が徐々にスピードアップしていき、「仕掛け」のタイミングをうかがいだす。いわゆるラストスパート。これまでのスタート、道中の位置取りと折り合いが完璧で、左下にあるスロットが「77」とそろっていたら、今回の目玉「レボリューション」を発動させるチャンス。

 普通、最後の仕掛けでムチを入れると、「グンッ」とした手ごたえとともにトップスピードに上がっていく。しかしムチを叩き続けると画面左の「ムチゲージ」が下がっていき、このゲージがない状態でムチを入れると馬の機嫌を損ねて、一気に減速してしまう。

 だが「レボリューション」は違う。ベストのタイミングでムチを入れれば「スリーセブン」がそろい発動。完璧な騎乗をしてきた御褒美として馬の末脚を表す「手応えゲージ」にボーナスが加わり、ムチを叩いてもムチゲージが減らなくなる。至福の瞬間の到来だ。

 今までの鬱憤を晴らすかのようにムチのボタンを叩く、叩く、叩く。あっという間に周りの馬を抜き去り、単騎でゴールに飛び込む。その瞬間、折り合いによるストレスや他の競走馬の動向を気にしなければならないフラストレーションが一瞬にして快感に裏返り、爆発する!

 このレボリューションを発動させて初めてレースに勝利したときは、「やった!」と叫んで、小さくガッツポーズをつくっていた。なんとなくだが、本物のジョッキーが体験する「レースに勝つ喜び」の何割かを味わった気分だった。競走馬にペースに合わせ、他の馬の強引な位置取りを我慢し、勝負どころまで自分を押し殺すマイナスの感情が、解放されプラスの感情になる痛快さは、ぜひみなさんも味わってほしい。

終盤まで上手に騎乗していけば、左下のルーレットに「7」が揃っていく 最後に最高のタイミングで仕掛けのムチを入れると、画面が割れる演出が起こる あとは手応えゲージがなくなるまで、ひたすらムチを入れて走り抜けるのみ



■ 閑話休題(あるいはひとりよがり)

 さて、このレビューを書いていると、とても学生時代が懐かしくなった。記憶の中の学生時代は「サラブレッドブリーダー2(発売元:ヘクト)」を遊んだのをきっかけに、「ウイニングポスト2(発売元:光栄)」、「ダービースタリオン96(発売元:アスキー)」とプレイし、ゲームセンターでは「ファイナルハロン(メーカー:ナムコ)」の馬にまたがり、激しく体を揺らした。「競馬ゲーム」がマイブームであり、もちろん「ギャロップレーサー」にもコインをつぎ込んだ。つまらない授業の合間にゲームセンターに行き、筐体の前に座り、レバーをひたすら「カツカツカツカツ」と上に入れていたものだった。

 ゲーム天国だった学生時代から8年の月日が流れ、自分の中の「競馬ゲーム」は生活の中から消えていた。そこに「ギャロップレーサー ラッキー7」のレビューの仕事が舞い込んできた。そして、当時のさまざまな思い出がよみがえり、なんとなく心が若返った気がした。長く愛されているシリーズものには、そういった「ちから」があるのだろう。


■ プレーヤー=ジョッキー=ロールプレイングゲーム?

 さて、「ギャロップレーサー ラッキー7」には「エクストラモード」、「ネットワークモード」、「シーズンモード」と3つのゲームモードが存在する。

 「エクストラモード」は、実際に行なわれたレースの状況を再現した「メモリアルモード」や友達と対戦できる「バトルモード」、競走馬やコース、天候などレースの状況を自由に設定し、レースを楽しめる「フリーモード」、そしてゲームで必要な技術や知識を学べる「TRAスクール」とさらに4つのモードに分かれている。

 「ネットワークモード」は、もう「プレイステーション 2」ではおなじみとなっている別売り「Playstation BB Unit」を使用してネットワークに接続すれば、全国のプレーヤーとリアルタイムで対戦を行なうことができる。

 そしてまず最初に遊ぶであろう「シーズンモード」。このモードではプレーヤーがジョッキーとして、騎乗交渉したり騎乗依頼を受けてレースに出走して腕を磨き、将来は海外のGIに挑戦したり、最強馬の生産を目指すこととなる。プレーヤーキャラクタが、個性豊かなライバルや調教師と出会い、成長していく姿は、実際のジョッキーの生活を体験しているような感覚があって面白い。

 例えば、「シーズンモード」を遊んでいると、どのレースにどの馬で出走しようか決めなければならない。複数の騎乗依頼がきていると、プレーヤーキャラクタは昔からお世話になっている調教師の馬に乗るのか、それともレースに勝てそうな調教師の馬に乗るのかと悩んでしまう。このゲームは「ジョッキーレースゲーム」というジャンルだけれども、ジョッキーをアナログゲームなどにおける「ロールプレイングゲーム」的な要素を含んでいると感じた。

プレーヤーキャラクタは競馬学校を卒業したての新米騎手。彼らの視点から競馬の世界を体験する 最初に選べる調教師は3人。勝利を重ねていけば、選ばなかった調教師と再会することができる 序盤は騎乗依頼はすべて受けていくこと。新人ジョッキーはわずかなチャンスでもひろっていかなければならない
最初のうちは、強い馬には騎乗できない。騎乗依頼の目標をクリアして、徐々に信頼を勝ち得よう そしてついに初勝利。初めてプレイしたときは「かんたん」だったのに、約半年くらいかかってしまった 初勝利を飾ると、このゲームのマスコットキャラクタ「エンタ君」が登場。説明書を読むと、なにやら秘密があるらしいが……
初勝利をあげると登場する調教師もいる。知り合いの調教師が増えれば、それだけ騎乗するチャンスが増えていく。仲良くなればその厩舎ナンバーワンに騎乗できるかも 個性豊かなライバルたちが登場し、プレーヤーキャラクタのジョッキー人生に色をそえる。ライバルイベントをクリアーすると、強力なお手馬をもらえる レベルが上がれば、複数の騎乗依頼がやってくる。勝てそうな初騎乗の馬にするか、何度も乗っているが勝てそうもないお手馬にするか。キャラクタ性がでる瞬間だ


自分が騎乗してきた馬同士を繁殖させるので、強いオリジナルホースを生産するためにはジョッキーとしての腕を磨かないといけない。ちなみに最強馬を生産したいならば、ゲーム難易度は「むずかしい」が一番
 さらにゲームを進めていくと、自分の牧場を購入することができる。牧場ができると「お手馬」と呼ばれる競走馬が引退すると、繁殖入りさせて、「オリジナルホース」を生産することが可能となる。もうこの部分は育成ゲームといって良いだろう。

 完成しているジョッキーレースゲームという土台に、ロールプレイングゲームと育成ゲームの要素まで加わった今作を遊びつくすには、まだしばらく時間がかかりそうだ。



(C)TECMO,LTD. 2004

□テクモのホームページ
http://www.tecmo.co.jp/
□週刊ギャロップのホームページ
http://www.keiba.net/gallop/
□「ギャロップレーサー」シリーズの公式ページ
http://www.gallopracer.net/
□関連情報
【2月18日】テクモ、PS2「ギャロップレーサー ラッキー7」 ダウンロード第1弾はアイドルホース「ハルウララ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040218/gr.htm
【2003年8月29日】テクモ、PS2「ギャロップレーサー ラッキー7」 予約特典は「メモリアルレースブックレット」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040113/tecmo.htm

(2004年3月24日)

[Reported by 池上りき(冒険企画局)]


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