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東京大学で産学連携の教育プログラムを秋から実施 |
東京大学大学院情報学環と新領域創成科学研究科は、東京大学の理系、文系など多くの部局にわって協力した部局横断型の教育プログラムをこの秋からスタートさせる。対象となるのはゲーム、アニメ、映画などデジタルコンテンツ。受講できるのは同大学の学生に留まらず、社会人なども受講できる予定。
東京大学大学院情報学環長の原島博氏は「インフラは発達してきたが、どういった文化をそこに流すのかがこれまで論議されてきたし、求められてきた。このゲーム、アニメなどは海外においても日本が得意としてきた分野なのだが、韓国や中国を含めた海外から追い上げられている。急激に立ち上がった産業なので人材育成が曖昧な部分もあり、そういった意味でも同分野における人員の育成を行ないたい」と開設の経緯を説明。
さらに原氏は「ディレクターも大切だが、ビジネスだけでなく最新の技術動向のバックボーンを持ち、著作権などについても知っている“プロデューサー”を育てたい」という。今回の教育プログラムではCGやVR、アーカイブ技術、コンテンツ流通技術などのカリキュラムも用意されている。
こういった技術的な側面が強い教育プログラムなのだが、これについて出席した東京大学人工物工学センター教授でCGアートを手掛ける河口洋一郎氏は「なぜ東大なのかと考えたとき、東大の知の財産をコンテンツに活かさなければならないと思う。ロケットに関する技術など部局横断型にすることで、科学技術と芸術の融合となる。UCLAなどでやっていることが日本の東大でもできることとなるのではないかと考えている。技術を持っていることで、見せ方が変わるかもしれないし、開発型のプロデューサーを育成できるのではないだろうか」と語った。
現在公開できる講師陣としては、ゲーム業界からは鈴木裕氏、アニメでは鈴木敏夫氏、石川光久氏、押井守氏、映画界からは角川歴彦、漫画家として大友克彦氏、井上雄彦氏など。これ以外にも好感触を得ている講師陣はいるとしており、徐々に明らかになってくると思われる。角川歴彦氏は「“コンテンツ”という言葉は最近になって出てきた言葉で、それ以前は“ソフト”と言っていた。つまり“コンテンツ”はできたてのホヤホヤ。そこに政府も含めやっと光が当たりはじめた。フランスには映画省というのがあって、600人の職員がいて800億円もの予算を持つ。そんな国と渡り合わなくてはならないから大変だ」とコメント。
もちろん無制限に受講生を受け付けるわけではなく、開始当初は数十人の学生を受け入れる予定で、その数割が社会人などの外部からの生徒となることを想定しているという。入試などについては「決まっていない」としながらも、テストなどである程度間口を狭めた上で、面接などを行なうことを考えているようだ。原氏によると「興味を持っている人は多いと思うが、キチンとしたところまで講義を行なうので、片手間でやるといったことではなく、最後まで受講できる覚悟を持った人を選ぶことになる」という。ちなみに期間は約2年間。
東京大学では2003年度に「ゲームデザイン&エンジニアリング論」を開講し、前述の鈴木裕氏のほか、ナムコの岩谷徹氏、広井王子氏、山内一典氏、そして任天堂の宮本茂氏などによる講義が行なわれた。この講義については「有名クリエイターの講義とあって毎回教室に入りきれないほどの受講生が集まった。学生のウケもよく、東大内にこういった業界を目指している人がいるというのがわかったのがまず収穫だった。200人受講して約1/3はゲーム業界を目指しているようだ」という。この時のノウハウも活かした上で、今回の教育プログラムを居進めることになりそうだ。
東京大学大学院情報学環長の原島博氏。今回の経緯を説明した | 今回、講師のひとりとして招かれた角川歴彦氏 |
(2004年3月9日)
[Reported by 船津稔]
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