変化を見せ始めた台湾のコンシューマゲーム業界
Microsoftブース、台湾So-netブース、XPECほか
2月6日~9日開催
会場:台北世界貿易中心
■たくさんのタイトルとイベントで大盛況のMicrosoftブース
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6日のメインイベントにはGeneral Manager,Microsoft Asia Pacific,Home and
Entertainment Divisionの「Alan Bowman」氏が来場。来場者とイベントのゲームを楽しんだほか、台湾ならではのグッズ配りも |
開場と同時に走る男の子たち。「台湾では日本のイベントのような風景は見られない」という話を聞いていた筆者は、その光景に驚いてしまった。あわてて追いかけると、その男の子たちはまだ設営準備中のMicrosoftブースで足を止め、スタッフの指示で列を作り始めた。
彼らは14:00までここで座り続けるという。朝9:00の開場から、ずっとである。彼らが求めているのは、先着100名にわたされるXbox Liveキット(一年間の会員料とヘッドホン、デモソフト)なのである。この後も整理券はないまま列はふくれ続けた。
Microsoftのブースは、他のメーカーを寄せ付けない数のタイトルをあつかった試遊台を設置。そのタイトル数は20タイトル以上。「CRIMSON SKIES」や「Counter-Strike」といった既発タイトルから、「NINJA GAIDEN」、「Prince of Persia : Sand of Time」、「GRABBED BY THE GHOULIES」といった最新のソフトまでジャンルも、発売メーカーも豊富だ。Xbox Live対応のソフトはオレンジ色のネームプレートが張られ、スタッフの誘導により、通信対戦を楽しんでいた。
個人的に目を引いたのが「Daemon Vecter」という3Dアクションゲーム。ダンジョンやフィールドに現れる敵をばったばったとなぎ倒す、ファンタジー的な世界観を持つゲームだが、他のタイトルと比べて、中国語の表示が「自然」なのである。他のタイトルは中国語版をうたっていても一部分がその表記なだけで、ほとんどが英語のまま。20のタイトルはどれもアメリカの、もしくは日本のメーカーが制作しているソフトだが、このソフトだけは台湾のソフトメーカー「XPEC」が制作しているのである。このソフトハウスについては後述したい。
会場のスタッフによれば、昨年一番人気を集めたソフトは、「PROJECT GOTHAM RACING 2」とのこと。この会場もその人気を強くアピール。ハンドルコントローラを設置したコクピット型筐体を5台設置して通信対戦を常に行なっていた。また、Xbox Liveを紹介するイベントとしてこのソフトを中心に置き、ステージの大画面でレースを展開させていた。
6日のイベントはこのXbox Liveの紹介が中心。Taipei Game Show 2004で行なわれるイベントは、基本的に「グッズプレゼント」の形が多い。コンパニオンが会場に集まった客に向かい、グッズを次々と投げ、ユーザーは手を伸ばしてそれを受け取る。かけ声は「イー、アル、サン、Xbox Live!」。中国語なまりの「Xbox Live」という言葉をさかんに連呼して、ぽんぽんとグッズを投げ込む。グッズの他に協賛している野菜ジュースを投げ込んだりと、日本とは違った形の、どこかほのぼのとした雰囲気だ。
また、このTaipei Game Showの特色として各社のブース内に販売コーナーがあるということが上げられる。Xboxというハードも売るMicrosoftはそのコーナーも大きく、多くのXboxソフトを展示、販売していた。旧正月があけた台湾はまだ正月ムードを残しているようで、「遊技大福袋」を数量限定で販売。ゲームソフトが4本入って999元(日本円で3,500円ほど)という値段設定のため非常に人気が高く、午後には売り切れてしまっていた。
各家庭にPCがあり、子供達が小さな頃からPCゲームにふれている台湾では、新規に参入してきたXboxや、PS2は「高価なおもちゃ」という雰囲気が強い。ゲーム専用のハードを購入するのはPCゲームにはないコンシューマゲームの楽しさを知る「ゲーム好き」なコアなファンが多いというのが現状だ。実際、「ソニックヒーローズ」は、そういったファンの「傾向」が顕著で、女の子や年齢が低いファンよりも、いかにもゲームが好きそうな若い男の子が、いままでのシリーズの雰囲気を楽しみ、ゲームを題材に話し込むといった雰囲気だった。
また、「高価なおもちゃ」という感覚をそのままあらわした場面も目撃してしまった。ハードとともに、20本以上のソフトをぽんと購入して、大きな荷物となったそれをゆうゆうと持っていくのである。その光景が、筆者が見ている間でも3回ほど、お金持ちがその資金にものをいわせて、子供に買い与えるという、非常に印象深い光景だった。
これはもちろん特殊な例で、マニアを思わせる若者達がソフトを眺めている間を縫って、子供達が渋る親を一生懸命説得しているという光景も多い。旧正月明けのお年玉で潤った子供達は、その限られた資金を有効に使うべく考えているため、迷いも多いようだ。
スタッフの話によれば、クリスマスに発売したソフト3本とコントローラ、本体をセットにしたパックの売れ行きが大変に好調で、ユーザーの数も多くなり、低い年齢層のユーザーも確実に増加傾向にあるという。
ちなみに、今回PCゲームタイトルは「Dungeon Siege」一本で、しかも映像出展のみだった。このイベントにおけるXbox、そしてXbox LiveへのMicrosoftの強い意気込みを感じさせられた。台湾メーカーによるオリジナルソフト、PCでは体験できない日本のゲーム、さらにいよいよ開始されるXbox Liveなど、台湾でのXboxの状況は、今後も大きな変化を続けそうだ。
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注目の高かった「NINJA GAIDEN」。Xbox Live対応ソフトはネームプレートがオレンジ色である |
台湾では、コアなゲームファンが知っているソニック。ソフトを前に、楽しそうに話をしていた |
一番人気の「PROJECT GOTHAM RACING 2」。Xbox Liveが開始されることで、ついに対戦が可能に |
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台湾ならではの、客へ向かってグッズを投げ込むイベント。会場のあちこちでグッズが空を舞っていた |
大事な資金を有効に使おうと、ぐっと思案のしどころ。ソフトの展示数が多いだけに悩みは深刻のようだ |
4本のソフトがセットになっているとてもお得な正月限定パック。あっという間に完売してしまっていた |
■台湾での「ソニーの窓口」を担う台湾So-net
設置されたPS2ブースには黒山の人だかり
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シャープなイメージで統一された台湾So-netブース。コンテンツだけではなく、様々なソニー製品も展示されている |
大きなブースで存在をアピールしているMicrosoftに比べ、それ以上に台湾でのコンシューマゲーム業界をリードしているSCE台湾は昨年に引き続き、今回も出展を見合わせた。さまざまな理由がありそうだが、SCE台湾はこのTaipei Game Show 2004期間の前後にも、「EYE TOY」を初めとした自社タイトルを台湾各地で体験できるイベントを積極的に開催しており、戦略的な意味合いも強いという見方もある。
こういった状況の中で、Taipei Game Show 2004に訪れた人たちが、PS2の試遊台に集まっている場所がある。それが台湾So-netの試遊台コーナーである。台湾So-netのブースはゲーム関係とはまったく違う、プロバイダコーナーにあり、その一角だけがゲーム関係の雰囲気を醸し出している。
台湾So-netはブースをシャープなイメージに統一。So-netの文字そのものよりも、「SONY」の文字を大きく表示し、VAIOを初めとしたソニー商品も大きくアピール、台湾So-netと言うよりも、ソニーグループが出展しているという雰囲気を持ったブースである。
スタッフの話によれば、これは台湾So-netの「EC(e-Commerce:電子商取引)」戦略そのものだという。台湾では、So-netのwebページでソニー製品が購入できることで、「台湾でのソニーへの窓口」という役割を担っているということなのだ。
台湾ではソニー製品の人気は非常に高く、世界でも有数の「ソニーファン」の国だという。台湾So-netはweb以外にも台湾全土に24の“直営店”を持ち、そこでもソニー製品、VAIOやPS2が購入できるとのこと。
このブースにPS2のコーナーがあるのは有力な商品のデモンストレーションの意味合いが強い。So-net会員ならば、PS2を初めとしたソニー製品を割引価格で購入できるのである。昨年人気を博した白いPS2と「GT4 プロローグ版」の中国語版セットは、通常価格7,280元のところ、So-net会員ならば7,000元で購入できる。So-net会員が優遇されるという、台湾ならではの戦略が、台湾So-netを「台湾でのソニーの窓口」というポジションにしているという。
筆者が取材した時点ではPS2の試遊台は2台のみ、稼働しているソフトは「武刃街」と、「TIME CRISIS 3」だった。しかし、ひっきりなしにユーザーが訪れ、試遊台ギャラリーとも耐えることがなく、その人気は非常に高い。スタッフの話によれば、この反応を見て、急遽さらに試遊台を増やすことが決まり、急いで設置作業にはいるという。コクピット型の「GT4 プロローグ」が楽しめる筐体も準備しているとのことだ。
台湾So-netブースでのユーザーの反応は、来場者にとって、PS2への期待、興味が非常に高いことをまざまざと見せつけられるものだった。また、So-net直営店によるゲーム機の販売という部分では、Xboxに比べ販売の機会が大きいという印象を受けた。前述の店頭体験イベントも、So-netが場所を提供する場合もあるという。この台湾So-netの存在はSCE台湾の戦略にとって、大きな意味を持つようだ。
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PS2のグッズも注目度は高い腕を組みながら眺めている人も多かった |
「GT4 プロローグ」はコクピット型筐体で出展。親子連れにも人気で、兄弟で取り合う姿も |
一番人気は「ドラゴンボールZ2」。原作の人気もあって、大きな人だかりが |
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最初は「武刃街」と、「TIME CRISIS 3」の試遊台のみだったが、急遽「GT4 プロローグ」、「ドラゴンボール Z 2」、「EYE TOY」の試遊台も設置されることになった。プロバイダーが集まる会場でこの一角だけ違う熱気に包まれている |
■ユニークなアピール方法をとった台湾のゲームメーカー「XPEC」
テンガロンハットにルーズソックスのブーツの女の子と、ピンクのヘアーに猫耳、大胆にオヘソを出した衣装の女の子が列を作りチラシを配布。その存在を大きくアピールしていたのがXPEC。前述したXboxのゲームソフト「Daemon Vecter」を制作したメーカーである。
「XPEC」自身のブースは非常に小さく、台湾最大の電話会社「中華電信」が提供しているコンテンツのひとつ、といった扱いで、同社の1コーナーのみである。女の子の集団に、自社がPCゲームのみならずコンシューマゲームも制作できるゲームメーカーであるというアピール方法も他社とは少し違うものだ。
Taipei Game Show 2004において、オリジナルのコンシューマゲームソフトを制作した台湾ゲームメーカーはこの「XPEC」ただ一社である。そのため、スタッフにもその意気込みと技術に関する自負が感じられる。
「XPEC」が発売するコンシューマゲームは「Daemon Vecter」で2作目、前作は日本ではアイデアファクトリーから発売された「エクスチェイサー」である。日本では高い評価を受け、雑誌での月刊売り上げNo.1になったという。今回の作品はキャラクタも完全オリジナル。「XPEC」が発売する真のオリジナルタイトルとなる。
「XPEC」はPCゲーム、オンラインゲームなども制作している実績のある会社で、また、日本で展開をしているオンラインゲームにも関わっている。日本とのパイプ、アイデアファクトリーを初めとした、日本の企業とのコラボレート経験も特徴のひとつとのことだ。
現在、「台湾のゲーム」というと、オンライン以外、あまりピンとこないのが現状だ。特にコンシューマゲームにおいては制作する技術を持った人員も少ないという。「Daemon Vecter」は世界に先駆けて台湾で中国語版が発売される。今までにない販売スケジュールを持ったゲームになるのだ。台湾のみならず、中国語圏全体でもまだオリジナルのコンシューマゲームはほとんど存在していない。「XPEC」というメーカーの存在は、今後他のメーカーの手本になる可能性もある。
今後この「Daemon Vecter」は日本語版、さらにPS2版が発売される予定だという。さらに同社が制作に関わるPCのオンラインゲーム、「Dawn of Time」、「QUARDA ONLINE」も日本でも展開する予定だ。台湾のメーカーとして現在注目を集めているこの会社は、日本でも認知度を上げていくだろう。
□Taipei Game Show 2004のホームページ
http://tgs.tca.org.tw/
(2004年2月7日)
[Reported by 勝田哲也]
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