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【2004 International CESレポート】

PCゲームをテレビ画面でプレイ
PCベースの家庭用ゲーム機ApeXtreme発表

PC用ゲームがプレイできる家庭用ゲーム機ApeXtreme。アメリカのDVDプレーヤーメーカーApex Digitalが発売する
会期:1月8日~11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Centerなど

 PC向けのパーツを利用して作られた家庭用ゲーム機といえば、XboxやPhantomを思い浮かべるだろう。ただ、それらはPC向けのパーツは使っているものの、基本的には独自仕様のゲーム機であり、PCとは全く異なるものとなっている。

 しかし、PC向けのパーツを利用して、PC用のゲームが楽しめる家庭用ゲーム機が登場することになった。それは、アメリカのDVDプレーヤーメーカーであるApex Digitalが発売する予定の「ApeXtreme」という製品だ。2004 International CESで突如登場したこのゲーム機、いったいどういったものなのか、詳しく紹介しよう。


● PCベースというより、ほとんどPCそのものである「ApeXtreme」

 ApeXtremeは、PC用のゲームを家庭の大画面テレビに表示させ、家庭用ゲーム機のゲーム同様に簡単にプレイできる、ということを目的として作られたゲーム機だ。PC用のゲームを走らせるという関係上、その仕様は限りなく(というよりも完全に)PCと同じになっている。

 ApeXtremeの基本ハードウェアスペックだが、CPUは、VIA TechnologiesのC3 1.4GHz。グラフィックチップはS3 GraphicsのDeltaChlome X9、チップセットはノースブリッジがVIAのCN400、サウスブリッジが同じくVIAのVT8237となっている。確かに、現在のPCのメインストリームパーツが採用されているわけではないが、x86互換のCPU、DirectX 9対応のグラフィックチップ、PC向けのチップセットなど、すべてPC向けのパーツがそのまま採用されている。メインメモリはPC3200 DDR SDRAMが256MB、ビデオメモリは64MBがそれぞれ搭載される。

 ストレージデバイスとしては、ハードディスクとDVD-ROMドライブが搭載されているが、ハードディスクは一般的な3.5インチドライブ、DVD-ROMも5インチのドライブが採用されている。ハードディスクの容量は20GBだ。

 映像出力端子は、コンポジット、Sビデオ、コンポーネントが用意され、フルハイビジョンの映像出力(1,920×1,080)もサポート。加えてDVI出力端子も備えているため、液晶ディスプレイを接続して利用することも可能だ。音声出力はアナログ5.1チャンネルをサポートし、コアキシャルおよび光デジタル音声出力端子も用意される。また、10BASE-T/100BASE-TX対応LAN機能、アナログモデム機能も標準搭載。さらにUSB 2.0コネクタも2ポート用意されている。

 このように見ていくと、まるでPCのスペックを紹介しているかのようだ。PCにあってApeXtremeにないものとすれば、PS/2端子やシリアル・パラレルコネクタぐらいといっていいだろう。ちなみに、ApeXtremeは家庭用ゲーム機として位置づけられているため、基本的にはゲームパッドなどのコントローラのみを接続して利用することになる。しかし、本体前面のUSBコネクタにはキーボードやマウスを接続しても問題なく利用できるそうだ。そのため、普通にWindows XPがインストールできれば、そのままPCとして利用できるのでは、と感じるほどである。

 ところで、ハードスペックを見るとピンとくる人もいるかもしれないが、ApeXtremeのベースとなる基板を製造しているのはVIAそのものである。しかも、VIA自身がCES会場そばのレストランでプライベートな発表会を開催し、ApeXtremeの詳細を発表したほどである。ちなみにVIAはApeXtremeのシステムを「XP86」アーキテクチャと呼んでおり、VIAは製造委託以上の深い関係があると考えていいだろう。

背面のコネクタ類。コンポーネントなどのビデオ出力端子があるが、DVI端子やUSB端子も用意され、まるでPCの背面を見ているかのような感じだ 他のゲーム機とのサイズ比較。これを見るまでもなく、ApeXtremeはバカでかい。Xboxが小さく見えるほどだ ApeXtremeの内部。CPU、グラフィックチップ、チップセット、ハードディスク、DVD-ROMドライブなど、ほぼ全てPC用のパーツで作られている



● DISCoverテクノロジーにより、ゲームの自動インストール、自動起動を実現

 ApeXtremeではWindows XPはインストールされていない。そのかわり、標準でWindows XP Embeddedがインストールされている。Windows XP Embeddedは、非常に多くの機能が削られた組み込み用途向けのOSであるが、ベースとなる部分はWindows XPそのものであり、Windows XP向けのアプリケーションならば基本的に問題なく動作する。もちろん、それはWindows XP上で動作するゲームについても同様だ。

 ただし、PCゲームには煩雑なインストール作業がつきものだ。インストールするフォルダの指定、シリアルナンバーの入力、ユーザーデータの入力など、様々な作業が必要だ。そのため、家庭用ゲーム機のゲームのように、光学式ドライブにゲームディスクをセットして起動すれば、自動的にゲームが起動して楽しめる、といった構造を実現しにくい。

 しかし、ApeXtremeでは、PCゲームの自動インストールと自動起動を実現しているのである。ApeXtremeは、Digital Interactive Systems Corporation(DISC)というメーカーが開発した「DISCover」というテクノロジーを採用している。DISCoverは、PCゲームを家庭のテレビで簡単に楽しむために開発されたテクノロジーで専用のBIOSとソフトウェアによって構成されており、ApeXtremeにもそのBIOSとソフトウェアが搭載されている。

 DISCoverには、「Drop & Play」エンジンというものが用意されている。あらかじめ用意されたプロファイルをもとに、光学式ドライブにセットされたゲームを自動認識し、そのゲームに応じて自動的にインストール作業を行い、インストール終了後に自動的にゲームが起動する。実際に自動インストールのデモも行なわれたが、一切入力作業を行なうことなくインストールが進み、ゲームが起動するのを確認した。

 ゲームの動作状況だが、「War Craft III」や「MADDEN 2004」などの動作デモを見る限り、描画上の問題も特に見られず、十分スムーズに動作していた。デモはHDTVに接続して行なわれており、VGA(640×480ドット)よりも明らかに高い解像度で描画されていた。正確な解像度は確認できなかったものの、XGA(1,024×768ドット)程度の解像度であれば十分快適にプレイできるだけのパフォーマンスは有していると考えていいだろう。ただし、「DOOM III」や「Half Life 2」といったDirectX 9ベースの最新ゲームも快適に動作するかどうかは不明だ(動作するとは言っていたが)。

 現在DISCoverでサポートされている自動インストール対応ゲームは2000種類を超えるそうだ。プロファイルが用意されていないゲームは自動インストールはできないが、今後登場してくる最新ゲームについても、順次DISCがプロファイルを提供し、そのプロファイルをダウンロードすることにより対応することになるそうだ。ちなみに、最新プロファイルのダウンロードは、インターネットに接続されていれば自動で行なわれることになる。

メイン基板。CPU、チップセット、グラフィックチップは全てVIA製。この基板の設計・製造自体もVIAが担当している グラフィックチップであるVIA(S3 Graphics)のDelta Chrome X9。ノートPC用のグラフィックチップだ。ビデオメモリは64MBがオンボードで搭載されている VIAはこのシステムを「XP86」アーキテクチャと呼んでおり、開発に深く関わっていることがわかる



● 成功するかどうかは未知数

 ApeXtremeは、ゲーム機としての機能以外に、DVDビデオの再生、MP3やWMAなどの音楽ファイルの再生、映像ファイルの表示などもできるようになっている。ちなみに、発表会でDVDビデオの再生のデモが行なわれたが、再生時にWindows XP用のDVDビデオ再生ソフト「WinDVD4」が起動していた。DVDビデオの再生に汎用の再生ソフトを利用しているということは、それ以外の機能についても同様と思われる。こういった点からも、ApeXtremeがほぼPCであるということがよくわかるだろう。ただ逆に考えると、将来のアップデートでいろいろと機能が追加される可能性も多分にあるわけで、これはある意味利点といえるかもしれない。

 とはいっても、Apex Digitalとしては、ApeXtremeを家庭用ゲーム機として売りたいようで、そうなるとかなり障害が多そうだ。PCゲームを楽しみたいと思っているプレーヤーは、すでにPCを持っているはずで、そういったPCゲームプレーヤーがテレビでPCゲームを遊びたいと思うかどうか非常に疑問だ。また、家庭用ゲーム機ユーザーは、ゲームの嗜好がPCゲームユーザーとは違うことが多く、そういった家庭用ゲーム機ユーザーを取り込むのも難しいだろう。そして、399ドルという価格もかなりネックになるはずだ。確かにPCとして考えると妥当な金額かもしれないが、家庭用ゲーム機として考えるとあまりにも高い。今やプレイステーション 2が179.99ドルで買えることを、ApeXtremeの価格は非常に高いと言わざるを得ない。

 さらに、PCゲームは進化の速度が速い、という問題もある。1年前のスペックのPCでは、最新ゲームが快適に動作しないということは日常茶飯事。しかし、ApeXtremeでは、CPUやグラフィックチップのアップグレードはもちろん不可能。つまり、あっという間にハードウェアスペックがゲームに追いつかなくなってしまう可能性もあるのだ。

 このように考えると、ApeXtremeは、なかなか成功する要素が見えてこないゲーム機であるが、PCゲームを簡単にプレイできるような仕組みを構築したという点については、十分賞賛に値するだろう。DISCoverテクノロジーを採用した同様のコンセプトのマシンが、他のメーカーからも登場する可能性が高いようなので、今後の展開にも注目しておきたいと思う。

Apex Digitalブースでのデモの様子。「War Craft III」だが、そこそこ高い解像度ながら、スムーズに動作していた こちらは、「MADDEN 2004」。こちらももたつきを感じることなくプレイできた DVDビデオ再生時にはこのようにWinDVD4が起動する。ソフトのアップグレードで機能向上が実現される可能性も考えられる


□2004 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□Digital Interactive Systems Corporationのホームページ(英文)
http://www.discoverconsole.com/
□Apex Digitalのホームページ(英文)
http://www.apexdigitalinc.com/
□関連情報
【1月10日】MicrosoftブースでWindows Embeddedベースのゲーム機を発見
幻だった「Phantom」の実機も確認
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040110/ces1.htm

(2004年1月11日)

[Reported by 平澤寿康]


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