|
★PS2ゲームレビュー★
可変形戦闘機バルキリーの3段変形が話題を呼んだTVアニメ「超時空要塞マクロス」の登場から20周年。このたび、株式会社バンダイから3Dアクションシューティング「超時空要塞マクロス」がプレイステーション 2で発売された。プレーヤーは、地球統合軍バルキリー隊に配属された新兵となり、ゼントラーディ人と交戦するという、テレビ版、劇場版のマクロスストーリーを最前線で追体験していくゲームだ。 原作に忠実なデモや、挿入歌の「小白竜」が流れるシーンに「あれから、もう20年か……」と不覚にも目頭が熱くなってしまった。ありきたりのうたい文句だが「ファンなら必携」のタイトルと断言できる。
作品自体は一見するとフライトものだが、複雑な操作は必要なく、本格シミュレーション的なおもむきは薄い。バルキリーの耐久値も高く、難易度はソフトに抑えられているため、初心者から上級者まで気軽にチャレンジできる。参考までに、筆者のプロメテウス編全12ステージのクリアタイムは1時間55分。デモをカットすれば、よりプレイタイムは短縮できるはずだ。
■ ヤック・デカルチャ! ファンも納得の劇的なカットイン演出 今作をプレイして心を打たれたのが“集中ロックオン(全弾発射)”と“ロール回避”のオートカメラ演出だ。このふたつのデモ演出は、非常に“マクロスらしい”戦闘を再現する、大迫力のカットイン映像である。 どちらも、入力に成功するとカメラが後方視点から外部視点に切り替わり、集中ロックオンでは束で発射したミサイルが敵機を追尾するシーンが、ロール回避では、敵機の発射したミサイルの雨をバルキリーがかいくぐるアクロバティックなシーンが映し出される。この演出を決めた時の気持ち良さたるや、ゼントラーディ人の受けたカルチャーショック級の衝撃といえるだろう(大げさ!?)。 そんなヤック・デカルチャ(ゼントラーディ語で驚嘆を表す言葉)なオートカメラ演出だが、なんと演出中は自機が無敵状態になる。そのため、空戦時の回避アクションの緊張感はやや乏しい。ミサイルが自機に接近した場合は、とりあえずロール回避を発動させれば、演出デモで完全に無効化できてしまうからだ。
このロール回避の絶大な効果に歴戦のパイロットはやや物足りなさを感じるかもしれない。だが、空戦フライトものの回避行動が一向に上達しない筆者としては、初心者にもありがたい救済措置として諸手を挙げて歓迎したい。
■ 劇場版、TV版のダイジェスト的なストーリー展開 今作のストーリーモード「STORIES」では、プレーヤーは地球連合軍バルキリー隊の新兵として参戦する。スタート直後に配属先を希望するイベントが発生し、それによりTV版「愛は流れる」編と、劇場版「愛・おぼえていますか」編といったふたつからルート選択が可能だ。
ステージの合間にストーリーデモが流れるため、原作を観ていなくても物語の大筋は把握できる。ただし、TV版「愛は流れる」編の場合、全36話のうち27話を12ステージに凝縮しているため、展開はかつてないほどの早足で進行する。登場人物の描写は、特にスピーディー。ロイ・フォッカーの戦死シーンは数秒で終了、マックスとミリアがいきなり結婚するなど(原作でもわりと唐突ではあったが……)、1枚絵とテキストベースでコンパクトにまとめられている。
各ステージはストーリの流れを反映しており、ミッション内容は多彩に変化する。ドッグファイト一辺倒ではなく、バトロイド形態のみでの戦闘、反応弾を使用するバトルなど、バリエーションに富みプレーヤーを飽きさせない。それでは、TV版「愛は流れる」編で特に印象に残ったステージをいくつか紹介しよう。
■ 原作の3段変形を完全再現したバルキリーの各形態 マクロスといえば可変戦闘機バルキリー。今作にとってもその存在は大きい。画面写真を見てもらえればわかると思うが、リアルに美しく再現されたバルキリーの作り込みは秀逸。そして、バルキリー最大の特徴である3段変形を使いこなすことは、ミッションを攻略するうえで重要な意味を持っている。
たとえば、時間制限のあるミッションでは、機動性に優れたファイター形態で敵戦艦に急速接近、ホバリングの可能なガウォーク形態で砲台を狙撃し、ファイター形態で離脱するといった具合。各形態ごとに、得意とする役割があるのだ。
バルキリー変形時のモーションは、自然かつ滑らか。アニメ通りのイメージで、パイロットの判断により瞬時に変形できる。変形中に無敵時間はなく、機体が急減速するため一瞬だけ隙が生じる。だが、バルキリー本来の耐久値が高く(マイクロミサイルを10発くらい被弾しても撃墜されない)周囲の状況に関わりなく変形しても、特に問題はない。
バルキリーは、ストーリーモードを進めていくと新機体が支給される。また、マクロス艦内で流行しているというバルキリーのトレーディングカードを収集することでも、新機体が使用可能になる。一般的な機体から、ロイ・フォッカー専用カラー、柿崎専用カラーのVFシリーズなど、さまざまなバルキリーがプレーヤー機体として登場する。
■ 豊富なカメラモードが搭載されているが、コックピットビューは無し プレイ中は、つねにバルキリーの後方視点から状況を把握するわけだが、別角度にカメラチェンジして戦うことも可能だ。「通常ビュー」のほかに、自機を狙うミサイルを常に画面内に捉える「ミサイルビュー」、機体を左(右)から捉えた「左・右ビュー」、一番近い敵機がつねに視界に表示される「アクションビュー」が搭載されている。 だが、マクロスらしいドッグファイトを確認するための“ステージリプレイ”が実装されていないのが、筆者は残念でならない。また、これだけのビューが用意されているにも関わらず、フライトものの定番である“コックピット視点”にカメラチェンジできない。とはいえ、変形の鑑賞が魅力のひとつであるマクロスに限っていえば、コックピットビューは無用の長物なのかもしれない。
基本画面内の情報も、レーダーサイト、ダメージゲージ、高度計、メッセージウインドウと必要最小限に抑えられている。それ以外では、ミッションによってマクロスのダメージゲージやカウントダウンの表示が追加される程度。ゲーム内では、マクロスの耐久値は感覚的にバルキリーより低いように感じる。それこそ、あっという間に撃墜されてしまうので、マクロスのダメージゲージが出現したら即座にクリアを目指したほうがいい。
開発者が公式サイトでコメントしているように、本作は「痛快娯楽シューティング」としては大成功なタイトルだと思う。燃料は無限、マイクロミサイルの弾数も数百発搭載されているなど、些細なことに捕らわれず爽快なバトルを堪能できるのは嬉しい限り。「ドッグ・ファイター」などのBGM、登場人物の会話デモといった演出の妙も、原作ファンのツボを突く出来ばえといえる。
ただ、今作がフライトものにカテゴライズされるのかと問われると、かなり異色なポジションにあると答えざるを得ない。購入者は「超時空要塞マクロス」が厳格なフライトシムではなく、アクションシューティングの要素が強いタイトルであることを知っておいたほうがいいだろう。
□バンダイのホームページ (2003年11月7日) [Reported by 福田柵太郎]
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved. |
|