株式会社エーエムスリー (am3) は、ゲームボーイアドバンスで動画映像などのコンテンツを楽しめるサービス「アドバンスムービー」を11月20日から開始する。映像データを収録したスマートメディア (アドバンスムービーカード) を「アドバンスムービーアダプタ」に差し込み、GBAにセットするだけで楽しめる。

　「アドバンスムービーアダプタ」は3,200円で、コンテンツ入りスマートメディアが2,380円。第1弾として用意されるコンテンツはテレビアニメ「名探偵コナン」で第2話「社長令嬢誘拐事件」、第3話「アイドル密室殺人事件」、第4話「大都会暗号マップ殺人事件」がそれぞれ発売される。なお3万台限定でアダプタと「名探偵コナン 第1話 ジェットコースター殺人事件」を収録したアドバンスムービーカードをセットにした「スペシャルパック」が3,800円で発売される。また、ブランクスマートカードも1,800円で発売される。

　「アドバンスムービー」は、セキュリティシステムを強化したam3専用のスマートメディアにコンテンツを収録しゲームボーイアドバンスで楽しむシステム。楽しみ方は簡単で、アドバンスムービーカード を「アドバンスムービーアダプタ」に差し込みGBAにセットするだけ。

　「アドバンスムービーアダプタ」には特にデコードチップなどはセットされておらず、GBAのCPUであるARM7のパワーのみでソフトウェアでデコードしている。このエンコード/デコードの技術は仏ACTIMAGINEの技術を使用しており、am3の黒川氏によれば「GBAだけではMP3のデコードも不可能と言われるほど非力だが、この技術を使用することでMP3クオリティの音質を含む映像をデコードできる」とMPEG4等と比べての優位性をアピールした。

　このエンコード/デコード技術はゲーム制作に転用が可能ということで、すでにスクウェア・エニックスが任天堂を通じて技術供与を受けGBA「キングダムハーツ チェインオブメモリーズ」でこのシステムを使う予定があるという。先日行なわれた発表会でゲームボーイアドバンスとは思えないムービーが公開され、スクウェア・エニックスの「ゲームボーイアドバンスでこの映像が動く!」と説明を受けても信じられなかったが、このシステムを使用していたのであれば、あの美しいムービーにも納得がいく。
　また、単純にムービーを全画面で再生するだけではなく、静止画をバックに画面の一部にムービーを再生するなどの技術も、コストはかかるが実現可能だという。CGの世界では3Dポリゴンのテクスチャにムービーを使用するといった技術もあるが、これに近い技術も開発可能なのかもしれない。

　また、セキュリティシステムも万全を期しているという。アドバンスムービーカードにはROMの部分にすべてのカード固有のIDが割り当てられているという。この機能は従来のスマートメディアにはない機能で、そういった意味ではこれまでデジタルカメラなどで使用してきたスマートメディアを「アドバンスムービー」で使用することはできない。またコンテンツにも独自のIDが仕込まれていて、アドバンスムービーカードに書き込んだ時点で1ファイルに圧縮。自動的にカードのROMにあるIDとソフトウェアのIDを合成したコードが生成される (DES 共通鍵暗号方式)。このファイルをコピーし、他のスマートメディアカードにコピーしても、スマートメディアカードのIDが一致しないため再生されないと言う。

　ではアドバンスムービーカードのIDをコピーすればいいかといううと、RAM部分に書き込むことはできてもROM部分にコピーすることはできないため、複製は不可能だという。ちなみに同社によれば1千億円程度の設備投資を行なわなければ、カードの海賊版を生産することはできないのだという。

こちらがコンテンツを収録したアドバンスムービーカード。透明のカードにキャラクタが印刷されていて、美しい仕上がりとなっている	アドバンスムービーアダプタのパッケージ。ゲームボーイのソフト程度の大きさ。よって、GBAにセットすると少しはみ出します

　まずは「名探偵コナン」をキラーアプリに、カードとアダプタを販売していく。12月18日には第2弾コンテンツとして「タイムボカン」を収録したアドバンスムービーカードの販売もスタートする。今後の展開としては、PCでコンテンツのダウンロードを行ない、スマートメディアライタでアドバンスムービーカードのブランクカードにユーザーがコンテンツを書き込んで、独自に映像を楽しむといった方法を考えられている。この場合の金額設定については詳しく発表荒れなかったが、同社のコメントでは「100円、200円から500円」といった金額だった。

　これと並行して計画されているのが、街中で気軽に映像を書き込めるシステム「アドバンスガチャガチャ」だ。ガチャガチャに似た筐体で、アドバンスムービーカードを差し込むと映像を書き込んでくれる。PCによるダウンロード販売やアドバンスガチャガチャは2004年4月以降に登場する予定となっている。

　これらのサービスは、いかに魅力的なコンテンツを用意できるかが焦点となるが、すでに「機動警察パトレイバー 劇場版」や「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」などで知られるプロダクション・アイジーをはじめ、マッドハウス、スタジオぴえろ、手塚プロダクションなどが参入するという。あとは、ここでしか観ることができないコンテンツをどれだけ提供できるかが鍵となるだろう。

今後、街中に展開していきたいとしている「アドバンスムービー」の書き込み機「アドバンスガチャガチャ」	現状では起動するとそのままGBAが起動するのと同様の起動音が鳴り液晶部分に「GAME BOY」のロゴが表示された	店頭販売イメージ。ムービーとアダプタが並ぶ。流通はバンダイ系列のハピネットが行なう
操作が簡単であることを示したスライド。アダプタにスマートメディアを差し込みセットするだけ	「am3スマートメディア」が通常のスマートメディアの上位互換であることを示したスライド。デジタルカメラで「am3スマートメディア」を使用することはできるが、通常のスマートメディアをam3で使用することはできない	「am3スマートメディア」に使われているセキュリティシステム。スマートメディア自体のROMにコードが仕込まれており、基本的に海賊版を作ることはできないという
今後の発売スケジュール (左)。来年4月までにアダプタとam3スマートメディアを販売し、数を確保した段階でアドバンスガチャガチャやダウンロードサービスを行なうこととなる。右写真はコンテンツ配信方法のチャート図		タツノコの「カバトット」を無料配信する計画もあるようだ
挨拶した山下顕一氏	黒川文雄氏。「ぴあ」時代から映像コンテンツを取り扱ってきた	仏ACTIMAGINEのアンドレ氏。今回のエンコード技術はゲームにも転用されるという

(C)青山剛昌／小学館・読売テレビ・TMS・1996
(C)タツノコプロ

□エーエムスリーのホームページ
http://www.am3.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.am3.co.jp/pdf/press_0301024.pdf
□関連情報
【2月4日】エーエムスリー、スマートメディアに映像を収録し
ゲームボーイアドバンスでアニメなどの映像再生を可能に
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030204/am3.htm

(2003年10月24日)

[Reported by 船津稔]

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