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★PS2・GCゲームレビュー★
■ アーケードゲーム「ワイルドライダーズ」から継承されたトゥーンシェード技術 「ドカベン」や「野球狂の詩」など、数々の名作野球漫画を手掛けた巨匠水島新司先生。その水島キャラクタが参戦する野球ゲーム「激闘プロ野球 水島新司オールスターズ VS プロ野球(以下、激闘プロ野球)」が、プレイステーション 2とニンテンドーゲームキューブで発売された。リアルなグラフィックで描かれた実在選手のなかにアニメ調(トゥーンシェード技術)の水島キャラが投入された異色作。近年リリースされた野球ゲームラインナップのなかにおいても、見過ごすことのできない存在感を放っている。
開発は、野球ゲームの制作に定評のあるワウ・エンターテイメント(現セガワウ)。なお、水島キャラクタの描写には、同社がアーケードでリリースしたバイクアクションゲーム「ワイルドライダーズ」のトゥーンシェード技術が培われているという。「ワイルドライダーズ」のグラフィックから感じられた“リアル路線よりもパワーに満ちた力強さ”が激闘プロ野球水島新司オールスターズ VS プロ野球」にしっかりと継承されているのだ。
メインのゲームモードは、オープン戦、ペナント、ホームラン競争、オリジナル選手作成、チーム編成、選手名鑑、システムと、一般的な野球ゲームに必要とされるモードはほぼ網羅されている。選手、球場のデータはプロ野球12球団の2003年度最新データを採用し、現在活躍中の選手が実名で登場する。水島キャラは、デフォルトではスターティングメンバーに入っていないため、トレードせずにゲームを開始すればスタンダードなプロ野球ゲームとして楽しむことができる。
1ゲームの所要時間は30分程度。試合時間は長く感じるかもしれないが、水島キャラ同士の会話演出、打者がバッターボックスに入る際の動作演出などはBボタンでスキップできる。プレイのテンポアップも充分可能となっている。
■ 岩鬼VS.岩鬼も可能! 水島新司ファン感涙のオールスター戦
このゲームのウリであり、また最大の特徴といえるのが、原作を忠実に再現した水島キャラクタたちを操作できることだ。総勢35名の水島キャラクタは、フォームからカットイン演出の口調にいたるまで、開発者のこだわりが随所に見える。山田太郎や犬飼武蔵などの巨漢がドスドスと走塁する姿は、原作アニメーションに勝るとも劣らない大迫力。里中と山田の黄金バッテリー復活や、実在選手と水島キャラの夢の対決をセッティングできるのも本作の魅力だ。
水島キャラクタには「秘打」または「秘球」が割り当てられている。これらの特殊技は打撃前、投球前に選択が可能。これらは現実の野球ではあり得ない“漫画的な演出をともなう技”で、見た目のインパクト同様にその効果は高い。秘技ゲージを大量に消費するため、使用回数に制限はあるものの、要所で使えば絶大な戦果を発揮する。
これらの秘打・秘球は、実にバラエティ豊かで見た目にも楽しいのだが、実は性能にバラつきがある。筆者の場合、友人と繰り返し対戦しているうち、水原勇気のドリームボールにも、なんとかバットがかするようになってきた。CPUに投げた時はあっさり安打を打たれるように、秘打・秘球も完全無欠ではない。秘技ゲージの消費も馬鹿にならないため、秘打・秘球を使用するプランをきちんと組み立てる必要があるだろう。
水島キャラクタのアクションをチェックするうえで役に立つのが、リプレイ機能の存在。直前の一打席のみだが、投球から打撃終了までのリプレイ映像を繰り返し見ることができる。ズームイン、ズームアウト、巻き戻し、早送り、と機能が充実しており、長年の疑問であったドリームボールの投球モーションを、このリプレイで細部に至るまでチェックすることができた。
このように、水島キャラクタの再現度は非常に高いが、一部声優がアニメ版と異なっているのは、原作ファンにとって大きなマイナスポイント。また、表情のグラフィックにも、もう少し喜怒哀楽のパターンが欲しかった。これは岩鬼に限ってのことなのだが、ずっと口が開いたままなので、どこか着ぐるみを連想させてしまう。
■ 野球ゲームとして、ごくスタンダードな操作系統 野球ゲームとしての操作体系は、画面上の情報が直感的にわかりにくく、数試合をこなして始めてスムーズに操作できるといった印象を受けた。
打撃の手順は、球種予測 → バットカーソル位置の調整 → スイングとなっている。予測した球種に対応して、バットカーソルの形が変化し、読み通りならミートしやすくなる。たとえば、フォークが得意な投手には、フォークを予想してバットカーソルを縦長に変形させることで、落ちるボールを格段に当てやすくすることができる。
本作のバットカーソルは広め。ジャストミートしやすいが、やや判定があいまいで「バットの真芯で捉えて飛ばした」といった爽快感に欠けるのが残念。この問題を解消するには、Rトリガーボタンでバットカーソルを「強振」に切り替えるといい。バットカーソルは小さくなるものの、バットの芯で捉えたという実感が高まる。 デフォルトでは、このバットカーソルの移動タイプがBタイプに設定されている。Bタイプは、コントローラーのスティックを入力していない状態だと、バットカーソルが中央に戻ってしまい非常に操作しづらい。試合前にオプションで、バットカーソルの移動タイプをAタイプに変えておくことをお勧めする。
投球は、球種選択 → 投球動作開始 → 投球マーカーによるコース設定 → リリースといった動作から成り立っている。投球マーカーはリリース直前まで操作可能なので、ストライクゾーンの隅を突く投球が可能だ。
守備面では、リアル系野球ゲームの宿命というか、捕球から送球までの一連の動作が鈍くもどかしい。この辺りを踏まえ、こまめな守備シフトの変更、捕球直前にAボタンを押して素早く送球するテクニックなどを身につけていかないと、ゲッツーはおろか大量失点といった事態を招いてしまうだろう。
■ ペナント戦からオリジナル選手エディットまで、各種モードは充実 「激闘プロ野球水島新司オールスターズ VS プロ野球」には、野球ゲームで定番といえる各種モードが用意されている。目新しさには欠けるものの、そのぶん安心してプレイできる環境が整えられている。
【オープン戦】
・開幕戦から始まる全シーズンを戦うモード。一試合ごとにプレーヤーが手動でペナントレースを進められるほか、CPUが試合を代行して結果のみ報告される「シミュレーション」がある。これにより、わずか数分でペナントレースを終了させることも可能だ。選手のケガによる欠場・復帰など、実際のペナントレースに近い臨場感が楽しめる。不満点は、ペナントモードではオープン戦のような試合観戦モードが実装されていないこと。
・オールスターゲームでおなじみのホームラン競争。規定球数内でのホームラン数を競う「ノーマルルール」、規定のミス回数に達するまで挑戦可能な「アメリカンルール」、宙に浮いているターゲットを射抜くなどで得られるポイントでハイスコアを競う「ターゲット」の3種類がある。やり込み要素が少ない本作において「ターゲット」のハイスコアは挑戦しがいのあるモードといえる。
・女性選手を含め、オリジナル選手が作成できる。顔のパターンは、リアル系のほかに、いかにも水島キャラクタといった感じのトゥーンタイプも用意されている。オープン戦やペナントでオリジナル選手を使用すれば、基本能力がアップしたり、秘打や秘球を覚えて成長していく。ただし、年齢や年棒など野球人生を感じさせる詳細パラメーターは無い。作成そのものは面白いが、成長要素が乏しいため育て甲斐が無く、あと一歩という印象だ。
【チーム編成】
・ゲーム上に登場する実在プロ野球選手・水島キャラクタ・オリジナル選手のグラフィックや詳細データを確認できる。水島キャラクタには、原作の紹介コメントも付加されている。原作を知らないユーザーは、選手名鑑をチェックしたほうがいいだろう。
水島キャラクタが登場するため、リアリティの面で違和感があるのは否定できない。だが、水島キャラクタがトゥーンシェードというベストの手法で描かれ、無理なく野球ゲーム内に溶け込んでいるのは確か。ワウ・エンターテイメント(現セガワウ)の英断とセンスは、大きく評価されるべきだ。水島新司先生のファンだけでなく、リアルな野球ゲームに飽きたプレーヤーには一見の価値がある。ただ、PS2版、GC版ともに、10月末稼動予定のアーケード版と連動しないのは残念だが……。
なお、筆者はPS2版とGC版を両方プレイしてみたが、操作感覚や演出などが一部異なるように思われた。もし気になるようであれば、店頭でプレイするなどして実際に確認してみるといいだろう。
□セガのホームページ (2003年10月17日) [Reported by 福田柵太郎]
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