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「GT4」ドライバー必携「GT FORCE Pro」開発の秘密
米Logitechマーケティングディレクター Fred氏に聞く

GT FORCE Pro

12月 発売予定

標準価格:19,800円

  「グランツーリスモ」シリーズを十二分に楽しむために、ステアリングホイールタイプのコントローラは欠かすことのできない周辺機器。前作にあたる「Gran Turismo 3 A-spec(以下、GT3)」発売時にはロジクールから「GT FORCE」が発売され、国内だけで30万台を超える出荷を達成している。

 その「GT FORCE」が、「グランツーリスモ4(以下、GT4)」開発にあわせてさらに進化。「GT FORCE Pro」として発表されている。同製品は5月にロサンゼルスで開催されたE3以来、「GT4」がフィチャーされるさまざまな場面では必ず一緒に展示、デモンストレーションされてきた、まさに「GT4」と一体ともいえる機器。「GT FORCE」比で約2倍というハイパワー電動モーター搭載によるフォースフィードバック機能をはじめ、900度/2回転半するハンドルなど、より実車に近い感覚を目指して開発された「GT FORCE Pro」の開発の経緯について、米Logitechマーケティング・ディレクターのFred Swan氏にお話をうかがった。


GameWatch:「GT FORCE Pro」について、従来の「GT FORCE」との違いを中心に紹介していただけますか?

Fred Swan氏:「GT FORCE Pro」は、リアルなレーシング感覚を体験できる最新のステアリングホイールです。フォースフィードバックシステムは、従来製品の「GT FORCE」からプレイステーション向けに提供している機能ですが、今回はそのパワーアップに加えて900度、つまり2回転半回転するハンドル機能を採用しているのが目玉です。メカニズムとしてはシャフトとベアリング部分に関してリアル感を追求し、より実車にちかい製品作りをしています。また、ステアリングの精度を出すために、センサー部分をオプティカル方式にかえました。外観的には、ステアリング全体をラバーモールドでカバーすることにより、握ったときのグリップ感を活かすようにしています。

 さらに、いかにもおもちゃのようなチープさが出ないように、センター部分をメタル調にしてGTのロゴを付けました。「GT FORCE Pro」から採用したシフトギアも、実際のクルマのデザインを元にして開発しています。そしてアクセル、ブレーキペダルも大きくするなど、以前のものに比べて改良を加えています。踏み込んでいただくとよくわかりますが、特にブレーキのほうはスプリングを強化して踏み込み感がより伝わるようになっています。クランプの部分もより強度を増して、テーブル等にがっちりと固定できるようにしてあります。

 そのほか従来製品から変わった点ですが、フォーミュラ1など他のレーシングゲームへ対応するために、形状は変わりましたがパドルシフトは残してあります。また、いろいろなプレイステーションのゲームに対応するため、ボタンの設定などをプレイステーションのコントローラのレイアウトに近い形に配置しました。もちろん、従来の「GT FORCE」に対応する過去のゲームすべてをサポートしています。

米Logitechマーケティング・ディレクターのFred Swan氏
GameWatch:製品開発にあたっては、「GT4」の開発元であるポリフォニーデジタルとの共同作業があったと思います。開発の経緯やポイントとなった点を教えてください。

Fred Swan氏:前作の「GT3」が発売された段階で、ポリフォニーデジタルから“次の製品”の共同開発と言うことでお話をいただいていました。もちろん弊社からは、これまで開発してきたステアリングホイールに関してのノウハウとアイディア、そしてポリフォニーデジタルからは「GT4」のゲーム内容の説明を受ける形で開発が進行しました。特にポリフォニー側からは「900度/2回転半は絶対に採用してくれ」とリクエストがあって、これは難しい課題でしたが達成することができました。要望を聞くのは簡単なんですが、それを実現するのが難しいので(笑)、達成感もひとしおです。

GameWatch:確かに「グランツーリスモ」シリーズについては、ポリフォニーデジタルの、ひいては山内一典氏のこだわりの結晶というイメージが強くあります。特にリアル感を求めるという点でポリフォニー側からの要望は厳しかったと思いますが、リアルさを追求しながらコスト面も考えなければならない。その点はどのように解決されたのでしょう?

Fred Swan氏:なによりLogitech(ロジクール)のブランドが付いている以上、いかなる製品についても、高性能で高品質の製品を作らなければならないという考えは常に念頭にあります。そのうえでエンジニアに対し「こうしたクオリティの製品を、このぐらいのコストターゲットで作れないか?」と投げかけてみるわけです。

 細かい点では、特にユーザーが最初に触ったり、製品のどの部分がポイントになり、どこで(競合製品との)違いが判断されるのか、そうした点を見極めてそこの部分はカットすることなくちゃんとしたものを作ります。逆にいえば、見えない部分についてはエンジニアの努力でコストカットを実現しているわけです。例えば外観でポリフォニー側が譲れなかった部分が、ステアリングのスポーク表面部分にあたる曲面。これは平面ではダメで、実車のような曲面が欲しいわけです。ということで、その曲面を採用しながら、低コストでウラ側の基板配置ができるようエンジニアが努力しているというわけです。幸い、弊社は他の製品も数多く作っていますので、そうしたところからパーツを調達するようにして、トータルでのコストダウンも実現しています。

 通常、クルマ向けのボールベアリングはとてもコストが高いのですが、これは弊社のエンジニアが最初から設計したことで、コストに見合う性能を実現させました。

GameWatch:つまり実車のパーツをそのまま流用しているわけではないのですね?

Fred Swan氏:そのパーツをクルマでは使うことはありませんが、実車とほぼ同じ開発、製造のプロセスを経たパーツをこの製品のために投入しているということです。

GameWatch:前出のブレーキペダルなどに関しても同様ですか?

Fred Swan氏:はい。こちらもクルマのパーツをそのまま利用するわけではありません。同様の構成品をつくるということで、実車と同じ考えにたって開発を行なっています。実車同様に長く使う製品でもありますし、特にブレーキなどは強く踏み込みますので、強度なども考慮にいれ、こうした部分には特にコストを惜しまずやっています。

GameWatch:「GT FORCE Pro」の開発段階から、ポリフォニーデジタルはプロトタイプのテストにも参加されていたんでしょうか?

Fred Swan氏:もちろん何度もプロトタイプのテストをしました。こちらから日本におうかがいして試していただいたこともあります。試作レベルからテストを繰り返して、何度も改良を加えました。また、これは珍しいことだとは思いますが、かなり早い段階から開発中の「GT4」をお借りすることができたので、ハードウェアの開発が間に合ったとも言えます。

GameWatch:E3、ECTS、そして東京ゲームショウと、機会のあるたびに、「GT4」と「GT FORCE Pro」を試させていただきました。従来比2倍というフォースフィードバック機能は、特にグランドキャニオンコースのように未舗装な路面では、私のような大人のプレーヤーにとっても厳しい重さに感じることがあります。小さい子供がプレイするときなどはどうすればいいでしょう?

Fred Swan氏:実際、製品自体がある程度高価(標準価格:19,800円)なので、小学生のお子さんが気軽に買えるようなものでもないと思います。プレミア感のある製品と言うことで、メインターゲットは高校生以上と想定をしています。

 しかし、フォースフィードバックが強すぎると感じるユーザー層のために、フォースを弱くする機能をハード側で用意することにしました。実際、「GT4」は究極のリアル感を追求するため、車種固有にフォースの強さを調整するという考え方もあるようです。そうした点から、「GT4」でソフトウェア的にフォースを画一的に弱くするという可能性は低いでしょう。ただ、弊社としても、小さなお子さんが遊ばれるときに、あのフォースでは強すぎることを感じ取っていますので、いくつかのボタンを同時押しするマクロ機能を搭載して、フォースを約35%に減少させる機能をもたせています。

 実際、富士スピードウェイのフィナーレでデモンストレーションを行なった際、「GT4」と「GT FORCE Pro」を使ったお子様用の席もふたつ用意しました。でも、小さな子供はやはり苦しそうなんですね。ストレートでもハンドルが震える。コーナーは、両手でハンドルをひっぱってようやく曲がるという感じ。でも、前述のコマンドでフォースを弱くしたら、そんな子供達も、ちゃんとしたタイムを出せるようになっていました。

GameWatch:「GT4」本編については発売が延期され、年内はプロローグ版の出荷が行なわれることが決まりましたが、これで「GT FORCE Pro」の出荷予定が変わることはありませんか?

Fred Swan氏:「GT4プロローグ版」の出荷にあわせて「GT FORCE Pro」も出荷しますので、そういった意味で出荷予定が変わることはありません。また、現状「GT Force」で利用できるステライングホイール対応のゲームにも対応可能ですから、そうした他のお客様にとっても、よりリアルなハンドルが生まれたと思っていただけでしょう。

GameWatch:出荷予定数についてはいかがでしょう?

Fred Swan氏:年末商戦はゲーム関連製品がたくさん発売される時期ですので、その時期に予定通り出荷することによって、おおきな成果が見込めると思います。また、後日「GT4」本編も正式にリリースされるわけですから、私たちにとって大きな販売チャンスが2回生まれるという見方もできますね。

GameWatch:「GT4」との同梱パッケージなどの販売は計画されていますか?

Fred Swan氏:まずロジクールとしては単体での販売が決まっています。もちろん、同梱版の可能性もありますが、これはソニー・コンピュータエンタテインメントさん次第と言うことで、私どもから何らかのアナウンスを行なうことはできません。ただ同梱版も含め、各国でその国の事情にあったさまざまなプロモーションを考えているところです。

GameWatch:「GT FORCE Pro」に限った話ではないのですが、例えば家屋の狭い日本に対して十分にスペースがとれる欧米、こうした異なる住宅事情のなか、住環境の違いが製品設計に及ぼす影響はあるのでしょうか?

Fred Swan氏:もちろん考慮はしています。実際、「GT FORCE Pro」に関していえばコンソールの中心部分に関してはさほど大きくなっていないのです。特に今回は900度/2回転半、そして強くなったフォースフィードバックなど、大きくなる要素がたくさんありました。これについては、山内一典氏もある程度は仕方ないと考えられていたようですが、実際はかなりコンパクトに収まったのでビックリされていたくらいです。もちろん、シフトギアなどの追加スペースもありますが、それでもコンパクトにまとまったと思っています。従来の「GT FORCE」に満足された方なら、納得して購入いただけるでしょう。

 逆にペダル側は、従来コンパクトに作っていたものを大きくしました。これはユーザーから、よりしっかりしたものが欲しいという要望が強かったためです。強い踏み込みにも耐え、スプリングも強化してあります。その分、ベースはひとまわり大きくしました。

GameWatch:前モデルのワールドワイドでの出荷数を教えてください。

Fred Swan氏:製品単位での数はいまここでお話しできませんが、フォースフィードバックタイプのステアリングホイール全般では、130万台程出荷しています。

GameWatch:「GT FORCE Pro」の出荷目標数はいかがでしょう?

Fred Swan氏:よりハイエンドな製品となりましたが、数十万台は出荷したいと思っています。これはハードウェアとしてだけでなく、どんな対応ソフトが開発されるかということも重要です。いまは正式発表したばかりですので、今後各国でどのように販売していくか検討していくことで、さらに具体的な見通しが見えてくると思います。

GameWatch:御社のPC向け製品には、2.4GHz帯を使ったワイヤレス対応製品がいくつか用意されています。こうしたワイヤレス技術をステアリングホイールに採用されるプランはありますか?

Fred Swan氏:プレイステーション 2をはじめとするコンシューマ向け製品はリビングルームでの利用が前提ですので、コードレス化は常に念頭にあります。実際、技術的な問題はありません。コスト面、ニーズなどを考慮して、今後採用するかどうかを検討する段階とお話ししておきます。

かなりキツメだが、バケットシートに納まって「GT FORCE Pro」を手にしたFred Swan氏 「GT FORCE Pro」のこだわった部分。専用に開発したというシャフトとベアリング 従来の「GT FORCE」と比べた様子。従来比2倍というハイパワー電動モーターを搭載
【スクリーンショット】



GameWatch:今回、御社はEyeToy向けのプレイステーション 2対応USBカメラのOEM元としても注目されていますね。

Fred Swan氏:弊社はOEM元なので、詳細な製品仕様などについてはソニー・コンピュータエンタテインメントさんからでないとお話しできない部分もあります。その点はご容赦ください。

GameWatch:EyeToyで使われているテクノロジーについては、SIGGRAPHなどで公開されたソニー・コンピュータエンタテイメント アメリカ(SCEA)の基礎研究の段階から注目していました。特に今回、御社がUSBカメラの製造を受け持つことになった経緯についてお聞かせ下さい。

Fred Swan氏:おっしゃるとおり、当初はSCEAで行なっていた研究開発の際、SCEAと私どもでそうした場所でお互いに声をかけあっているような関係でした。その後、担当の方がソニー・コンピュータエンタテイメント ヨーロッパ(SCEE)のほうに異動されて、実際の製品展開はSCEEからということになったわけですが、早期からモノ作りとゲーム作りの融合点はないかと話を続けてきました。幸いなことに、弊社の製品にはPC向けのWebカメラがありましたので、最終的にもOEM製造のお話がきたというわけです。

GameWatch:先行して発売された欧州地域では、ハードとソフトの同梱パッケージにもかかわらず、かなり安い価格を実現していると思います。新しい技術も投入されているようですが、PC向けのWebカメラと比べて安価に提供できている理由はなんでしょうか。

Fred Swan氏:SCEEが話を持ってこられた時点で、とにかく皆に受け入れられるようなゲームにしたいということで、すでにターゲットとしている価格がありました。その代わり、数多くの出荷が見込めると言うことでローコストでハイボリュームに、プレイステーション 2に特化した機能だけを入れ、PC向けのWebカメラの汎用性を外すなど、いろいろ工夫をしたわけです。

GameWatch:すでにヨーロッパでは80万本以上の出荷を達成したようですが、これは予測の範囲ですか?

Fred Swan氏:最初にこうしたユニークな製品をだすということは、賭みたいなところもありましたね。もちろんSCEEとしては、それだけの台数を出荷するつもりだったのでしょうが、それがホントに鵜呑みにできるのか……というのは正直なところありました。結果としては、こちらとしてもホッとしているところです。

GameWatch:SCEとしては、今後日本とアメリカでの出荷で、それぞれにミリオンセールスも見込んでいるようですが、その出荷の準備は整えていらっしゃるんでしょうか。

Fred Swan氏:ある程度のリスクを持ってはいますが、すでに欧州での実績もあることですし、量産の体制を整えています。

GameWatch:「GT FORCE Pro」、「プレイステーション 2対応USBカメラ」、そして「SOCOM:U.S. Navy SEAL's」などに同梱されているUSBマイクなど、コラボレーション製品での実績と成功が続いていますが、今後コンシューマ向けの機器で何らかのコラボレーションは計画されていますか?

Fred Swan氏:いくつかお話が来ていますが、現時点では機密段階です。今後にご期待下さい(笑)。


□ロジクールのホームページ
http://www.logicool.co.jp/

(2003年10月15日)

[Reported by 矢作晃]


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