|
東京ゲームショウ2003レポートATIブースレポート~「Half-Life2」シアターでHDRレンダリングデモを公開 |
会場:幕張メッセ
東京ゲームショーにおけるPC関連ハードウェアベンダーのブースとしては、久々の人気スポットとなっていたのがATIブース。ATIはPC新作ゲームを展示した通常の展示コーナーと、今年もっともホットなPCゲームタイトルである「Half-Life 2」の映像が150インチ大画面で楽しめる「Half-Life 2」シアターの2カ所でブース展開を行なっていた。
■ 3Dゲームファンのための「Half-Life 2」シアター?
屋内から外を見ると天窓や隙間から差す天空の光がグレア(ブルーミング)を起こしている |
屋外に行くと同じ天空の空でももうグレアを起こさない。目が外の明るさに慣れたため |
見せている内容はE3のものとほぼ同じ、実際のゲームシーケンスを抜粋したデモ映像だ。ただし、映像メニューに記載されている情報と、DVDメニューのようなリンクをクリックしてから映像が再生される様子から察するにRADEON9800PROによるリアルタイムレンダリングされた映像ではなく、一連の映像シーケンスを動画ファイルにまとめたもののようだ。この点についてATIスタッフに聞いてみたところ、機材調達に問題が生じたために初日はこのような展示になったとのこと。
2日目以降は、もしかするとこの問題が解決し、リアルタイムレンダリングされた映像が見られるようになるかもしれない。初日に見た人も2日目、3日目にもシアターに足を運んで展示内容が変わったかどうかチェックしてみるといいだろう。
前述したとおり、今回のシアターで公開された映像内容そのものはE3で公開された内容とほぼ同じだが、1シーンだけ東京ゲームショーで初公開のシーンがある(実際には一部Webサイト上で9月中旬頃から配布され始めている)。それは、DirectX 9プログラマブルシェーダー2.0モデルを活用したハイダイナミックレンジ(HDR)レンダリングのテクノロジー・デモ・シーケンスだ。
現実世界には、それこそPCディスプレイで表示できる何千倍以上の色(明るさ)があり、人間の目やカメラは、これらを、ある基準の明るさの範囲内に丸めて見ている。3Dグラフィックスにおいても、レンダリングを現実世界に近い形で行ない、最終的な出力映像は露出補正をかけて、あたかもシーンをカメラで撮影したかのようなフォトリアリスティックな映像を出そうというアプローチがある。これがHDRレンダリングという技術だ。
現時点では、色演算(色表現)を浮動小数点実数で行なえるDirectX 9ベースのPCグラフィックス特有のテクノロジーとなっている(Open GLでも可能)。最近の3Dゲームで見られるようになってきたDirectX 8ベースの疑似HDRレンダリングによる全シーンで一様に発生するグレア効果と違い、「Half-Life 2」では屋内と屋外で露出ポイントを切り換えており、屋内の窓から天空を見ると、窓枠がグレア(光があふれ出す現象)を起こすが、屋外に出るとシーンの明るさが屋外基準になり(目が慣れるようなイメージで)この天空の明るさがグレアを起こさなくなる。屋外と屋内の雰囲気が実に自然に描写されているのでそのあたりを意識して見てみるといい。
この他、バンプマッピングによる瓦やトタン板の凹凸感や、スペキュラハイライトによるエイリアンの表皮の湿った感じの表現とかに着目して頂きたい。シアターはほぼ30分ごとに開始されているが、30分前に列んだ程度では間に合わない。見たいと思った人は覚悟を決めて列ぶ必要がある。座席は20人程度までであとは立ち見となる。
【「Half-Life 2」シアター その1】 | ||
---|---|---|
(左、中央)屋根の瓦はつや消し(マット)カラーで塗られているように見えるが、光の差し込み具合によってはスペキュラ(光沢)が表れる。瓦がコーティングされていることが感覚的に伝わってくる。(右)左奥の屋根は天空の光を浴びてハレーションを起こしている。瓦の隙間に水が溜まっているように見える |
【「Half-Life 2」シアター その2】 | ||
---|---|---|
(左、中央)水面と金属面に対してHDR表現を行なった例。(中央、右)エイリアンの表皮も湿っぽい感じがよく出ている。なお、既に報じられているように「Half-Life 2」はセルフシャドウ表現に対応しない。ちょっと残念 |
■ ATI展示ブースに最新PCゲームタイトルが集結
ATI展示ブースには、各PCゲームベンダーの最新タイトルが展示されている。「最新PCゲームのみを集中的にチェックしたい」という来場者は、ATI展示ブースを訪れるといい。 ここではATI展示ブースで公開された注目のタイトルをピックアップして紹介する。
▼カプコン~「EMPIRES~近代の夜明け 日本語版」
史実をヒントにした独特な「EMPIRES」の文明進化システム |
グッドマン氏の前作といえば「Empire Earth」があったが、あれはゲーム世界設定を古代から未来世紀へと拡大して壮大にしすぎたために、従来の歴史リアルタイムストラテジー(RTS)ゲームファンがとっつきにくい作品となってしまっていた。これに反省点を見出したグッドマン氏率いるStainless Steel Studiosは、「歴史RTSの美味しいとこどり」作品として今作「EMPIRES」を打ち出してきた。
今作で描かれる時代は、戦乱の歴史としてもっとも興味深いとされる10世紀中盤から20世紀中盤までに限定。この1000年を「中世」、「ルネッサンス」、「帝国主義」、「第一次世界大戦」、「第二次世界大戦」といった5つの時代に区分し、ゲーム中に登場させている。
登場文明は全部で9種類。ただし、ユニークなのはその進化システム。史実をモチーフにしたことにより、時代が進むとその文明をプレーヤーの意志によって別の文明に進化させることができるのだ(系譜図参照)。
たとえば、ゲルマン人を主な構成民族とするヨーロッパでは、時代が進むにつれて様々な国を形成したという史実があるので、イングランド文明でゲームを開始すると第一次世界大戦の時代でイギリス、アメリカ、ドイツといった3つの現代国名と同名の文明のいずれかへ進化が可能になる。
また、ゲーム開始時、中国を選択しても第一次世界対戦時で消滅し、ロシア、イギリスのいずれかに進化しなければならない。これは、この時代、中国が列強国に蝕まれてしまった歴史をゲーム的にデフォルメ表現しているためだ。
各軍勢はそれぞれ別々のゲームからやってきたような個性を発揮しており、ビジュアル的にはインパクトを、戦略的には奥深いゲーム性を醸し出す。たとえば中世イギリスは腐った家畜の死体を撃ち出すバイオ兵器が使用可能だったり、他文明が地面に縛り付けられている帝国主義の時代に中国は“凧”の空中ユニットが使えたりする。パラメータの強弱だけの文明特性ではなく、兵器、兵員の使い方、ひいては戦いの進め方そのものが文明ごとに異なるというのが今作のデザインコンセプトになっているのだ。
陸海空のそれぞれのユニットが3Dでダイナミックにぶつかり合うビジュアル表現は、Stainless Steel Studiosフルスクラッチ・ビルドの3Dゲームエンジンによって行なわれる。水面はパーピクセル・バンプマッピングで、ユニット1つ1つの影はステンシルシャドウボリューム技法で生成され、なんとセルフシャドウまで出る。
もちろん、これらのフィーチャーをオフにしてしまえば旧世代GPUでも動作できるだろうが、3DPCゲームファンならばやはりフルスペックで楽しみたいところ。ちなみに、ATI担当者によれば「フル・フィーチャーオンにしてプレイしたいならばぜひRADEON9800PRO/256MBをどうぞ」とのことだ。うまい。
【EMPIRES】 | ||
---|---|---|
発売は今秋予定。日本語化は字幕方式で音声はオリジナルのままとなる |
▼スクウェア・エニックス~「JUNK METAL」
タルタル型パソコンも展示。鼻が電源スイッチで、ハードディスクにアクセスすると目が光る! |
ゲームの目的は惑星の領土を自軍勢の勢力下に置いていき、惑星アルター8の領土を自軍で席巻していくこと。プレーヤーはロボットタイプの機動兵器が与えられ、これに乗って敵と戦っていく。賞金首を撃破したり、クエストをクリアすることでクレジットを獲得。このクレジットを元手に自分の機動兵器をパワーアップしていくことができる。
ロボットを構成する腕、胴体、脚……などのハードウェアパーツが450種類以上、武器、兵器、オプションパーツが300種類以上、さらにそれらを制御するソフトウェアパーツが250種類以上、OSが3種類用意される。これらを順次購入していくことで、自分だけのオリジナルのロボットを作り上げていくことができるのだ。なお、「JUNK METAL」の世界ではこのロボット機動兵器こそがプレーヤーのアイデンティティとなる。
ゲームは、サーバーに接続してプレイすることになり、戦闘には複数プレーヤーとパーティを組んで臨むことも可能。戦闘はほぼ完全なリアルタイム処理を採用する。すなわち、あるプレーヤーが放った銃弾はサーバーで管理されるゲーム世界を飛来することになり、実際に衝突処理が行なわれる。要するにFPSのシステムと同じだ。
ただ相手を選択して連打すれば攻撃が当たる一般的なMMORPGとは違い、飛来する弾を避けることができるし、あるいは全く関係ない第三者に当たったりもするのだ。こうしたMMOシューティングとしてはSony Online Entertainmentの「PlanetSide」があるが、国産のMMOゲームでこうしたシステムを採用したのは本作が最初だろう。
担当者によれば、「このリアルタイムシステムの採用により、ゲームに参加したばかりのルーキープレーヤーであっても、戦略性にすぐれ反射神経にも優れていれば、上級ランクのプレーヤーを倒すことは十分可能」だという。総プレイ時間に左右されない、下克上システムこそが「JUNK METAL」の魅力と言うことになるだろうか。
ゲームエンジンは「No One Lives Forever」シリーズなどでもお馴染み、TOUCHDOWN ENTERTAINMENTのLithtech Jupiterエンジンを採用。ゲーム世界のデザイン設定には横山宏氏、杉浦善夫氏、藤岡建機氏、木下ともたけ氏を起用している。発売時期およびサービス開始時期は未定。βテスト時期も未定。動作プラットフォームは今のところPCのみの予定となっている。
なお、ATIブースで動作していたマシンはGPUにRADEON9800PROを使用していたが、スクエア・エニックスブースのマシンはGeForceFX5900Ultraを搭載していた。つまり、本作はどちらでも問題なく動作するということ。
なお、担当者は「ゲーム中のロボットの性能をどんなに上げても、MMOアクションと言うことで、PCのスペックの優劣がものを言う場合があります。現実世界のマシンのスペックもグレードアップすることを忘れないで」といっていた。ATIのマシンで戦うか、NVIDIAのマシンで戦うか、そんな視点でこのゲームをプレイするのも面白いかもしれない。
【JUNK METAL】 | ||
---|---|---|
一方の軍勢が惑星の領土の大半を占領してしまってもゲームの決着はつかないという。せっかくの陣取り合戦的戦争ゲームなので、勝者と敗者の結果付けが欲しいと思うのだが。 ゲームファンにはフロムソフトウェアの「アーマードコア」をMMOにしたといえばイメージしやすいかもしれない |
▼セガ~「サクラ大戦3~巴里は燃えているか」、「ソニックアドベンチャーDX」
あの「ソニックアドベンチャー」がついにPCでプレイ可能に。このようにグラフィックオプションで、動作環境に応じたグラフィック表現の調整が可能なのがPC版の特長 |
初公開初出展となる「ソニックアドベンチャーDX」。ドリームキャスト版の代表作/看板タイトルといえば「ソニックアドベンチャー」。その後、ゲームキューブ版に移植された際、「DX」の称号が付けられたが、今回発売されたPC版は、このゲームキューブ版がベースになっている。
画面解像度はPCスペックに合わせて640×480ドットから1、280×1、024ドットまで可変。ビデオカードがハイスペックな時は、描画境界を奥の方に移動させて、非常に広大な空間を画面に登場させることも可能。PCゲームならではのスケーラブル設計になっているのが家庭用ゲーム機版にない特徴だ。
【サクラ大戦3~巴里は燃えているか】 | ||
---|---|---|
9月18日発売済み。初回特典でオリジナルオルゴールが付属する |
【ソニックアドベンチャーDX】 | ||
---|---|---|
GeForce2MXシリーズの16MB程度のグラフィックスシステムでも動作可能で、多くの場合ノートPCでのプレイもOK。発売は今冬を予定 |
▼マイクロソフト~「Flight Simulator 2004 翼の創世紀」
1903年のライト兄弟の初飛行から100年を記念して制作されたマイクロソフトゲームの看板ソフト「Flight Simulator」シリーズ最新作。一般向けプレイアブル展示は今回の東京ゲームショーが初めてとなる。
フライトモデル、グラフィックエンジンを一新させた完全新作である今作において、最も遊び甲斐があるのは史実に基づいたキャンペーンモード。ライト兄弟が制作した人類最初の動力付き飛行機「ライトフライヤー」を使って、彼らの飛行記録を塗り替えるもよし、リンドバーグ号でニューヨークパリ間の大西洋横断無着陸飛行を実際に14時間の耐久飛行に挑戦するのも面白い。
大人向けのフライトゲームとしてはもちろん、「体験できる航空博物館ソフト」として、中高生にもお勧めできる。2003年10月発売予定。
【Flight Simulator 2004 翼の創世紀】 | ||
---|---|---|
今作は天候の再現に力が入っている。インターネットから気象情報を取得して、特定地域のリアルタイムの空の状況を再現しての飛行も楽しめる |
□ATIのホームページ
http://www.ati.com/jp/
(2003年9月27日)
/ [Reported by トライゼット西川善司]
GAME Watchホームページ |
|