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European Computer Trade Show 2003現地レポートATARIから「NWN」に続く強力なD&Dプロダクトが登場!! |
会場:London Earls Court
「Neverwinter Nights」の成功で、一躍D&Dデジタルプロダクトのパブリッシャーとしての地位を確たるものにしたATARI。E3では「Dungeon & Dragons Online」を電撃発表し、D&Dファンを沸かせてくれたが、ECTSでも新たにD&Dオフィシャルプロダクトを2タイトル出展。ハイファンタジー志向の強い英国のバイヤーから高い注目を集めていた。
特に「Greyhawk: The Temple of Elemental Evil」は、発売されるやいなやゲーム関連の賞を総なめにし、コンピュータRPGに新風を巻き起こした「Baldur's Gate」の再来を予感させる大作だ。発売時期は北米で今秋を予定。開発元は、いぶし銀のSFRPG「Arcanum」を開発したTroika Games。シングルプレイRPGでは今年最大の期待作といっても過言ではないだろう。
■ D&Dの古典的名作グレイホークを題材にした異色のRPG
「Greyhawk: The Temple of Elemental Evil」
デモのメインイベントだったVrock Guardianとの死闘。手前にいる赤い光はDruidが召喚したFire Elemental。画面には見えないが、Air Elementalも2体いる |
グレイホークらしさのひとつである神の選択。これはアライメントやクラスによって選択できる神が異なる |
池のほとりを歩いていると、池の中から派手な水しぶきとともに3体の大ガエルが出現 |
これら過去のタイトルは、キャンペーンセッティング(世界設定)にD&Dでもっとも人気の高いForgotten Realmsを選択にしているのに対して、ToEEは、D&Dの数あるキャンペーンセッティングの中でももっとも古い歴史を持つGreyhawkキャンペーンを題材にしている。直接関係ないので詳述は省くが、ToEEは、「Baldur's Gate」、「Icewind Dale」、「Neverwinter Nights」と同じコアルールを採用しているが、世界設定はまったく別のものというわけだ。
コアルールは、北米で7月31日に発売されたばかりの最新ルールセット3.5 Editionを採用。デジタルプロダクトで3.5の採用はもちろんこれが初めてだ。モジュール(シナリオ)は、D&Dモジュールの傑作として名高い同名のサプリメントをモチーフにしている。直接の題材となっているのは3rd Edition用に書き直された復刻版「Return to the Temple of Elemental Evil」だ。
さて、ToEEの基礎情報はこれぐらいにしてさっそくゲームの中身の説明に入ろう。ToEEが目指しているのは、D&Dの底知れない魅力になっている膨大なデータ群をもれなくゲーム内要素として取り込むという、いわゆる「Baldur's Gate」と同じ重厚長大路線だ。近作の「Neverwinter Nights」は、グラフィックとマルチプレイ、そしてキャンペーンエディット機能に重きが置かれ、シングルプレイキャンペーンはライトな作りだったが、ToEEは、マルチプレイはカットして、シングルプレイキャンペーンに開発の全力が注がれている。
とはいっても「Baldur's Gate」シリーズのように普通にプレイして50時間、細かいクエストをクリアしていくと1クリアに100時間はかかるようなタイプではなく、異なるパーティー編成、異なるパーティアライメントで何度もプレイして、その都度新しい展開を楽しめるものを目指しているという。
【Greyhawk: The Temple of Elemental Evil】 | ||
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溶岩の吹き上げるダンジョンでの邪悪な存在との戦い。これこそがグレイホークワールドの魅力のひとつ。美しい3Dエフェクトにも要注目だ |
■ パーティアライメントの指定から始める完全D&Dスタイルのパーティーメイキング
パーティー編成画面。赤地のキャラクタはパーティーアライメントに合致していないことを示している |
楽しいキャラクタメイキング。上級職としてのPrestige Classの実装も検討しているようだ |
最後にアイテムを調達する。500Goldは結構使いでがある |
具体的にはNeutral Goodを選択すると、Lawful Good、Neutral Good、Chaotic Good、True Neutralの4種類いずれかのアライメントを持ったキャラクタしかパーティーに入れることはできない。これによりパーティーアライメントに即した冒険が楽しめることになる。「Baldur's Gate」のように、相反するアライメントのNPCキャラクタ同士が突如戦闘を始めたりするのもそれはそれで楽しかったが、シチュエーションとしてはやや無理があり、ToEEのシステムのほうがより自然といえる。
パーティーはスタート時に最大5人まで編成でき、残り1人分は常にNPC用に割り当てられている。1人で始めて5人のNPCと旅をともにすることも可能だが、前述のようにアライメントの関係から仲間にするのは簡単ではない。既成のキャラクタを使えばすぐに旅を始めることができるが、新しくキャラクタを5人分作ることも可能だ。
キャラクターメイキングは、まず種族(全8種類)を決め、性別、背丈、髪型、クラス、アライメント、信仰する神、ステータス、フィート、スキル、スペル、ポートレート、ボイス、名前と順番に決めていく。信仰する神を定めるところ以外はだいたい「Neverwinter Nights」と同じだ。ちなみに最初に定めたパーティアライメントに適したキャラクタにしないと、せっかく作成してもパーティーに入れることはできない。
5人パーティーを作ったら、最後に初期資金内で装備品を調達する。ToEEの貨幣はPlatinum、Gold、Silver、Copperの4段階になっており、デモで見た限りでは5人PTで500Goldが初期資金として与えられた。ひとりずつクラス別にアイテムを選んでいくのは楽しい時間だが、武器は予備装備も含めて5スロットもあり、装備品は盾を含めて13カ所、それからポーションや矢玉といった消耗品も含まれるため、5人分となるとそれだけで数時間はかかる。このあたり、D&Dに免疫のない人にはつらいかもしれない。そういう場合は既成キャラクタで始める方法も用意されている。
■ 磨き上げられたグラフィック、インターフェイス、ゲームシステム
これがプロローグシーンの様子 |
酒場の様子。例によっていやというほど情報を集められる |
これが右クリックメニュー。長くのびすぎて画面からはみ出してしまうことも |
グラフィックは、2Dと3Dのコンパチエンジンが採用されている。フィールドはプリレンダリングしたデータを使用し、キャラクタ、木などの常動オブジェクトに対しては3Dモデルが使われている。スタイルとしては「Pool of Radiance」に近いが、全体としてのクオリティはD&Dシリーズ初のフル3Dで話題を呼んだ「Neverwinter Nights」を凌駕している。フィールドは2Dなので、視点の回転やズームイン・アウト操作はできないが、 プリレンダリングされたフィールドには、時間や天候に伴い、影や明かりのライトマップが施され、非常に美しい。
インターフェイスは、マウスオペレーションが主体で、右クリックメニューを使うことで、魔法やフィートの指定など細かい操作が行なえる。もちろん、ショートカットキーも指定可能だ。
バトルシステムは、ターンベースを採用。敵味方平等にキャラの能力によって設定された優先順位に従って順番に行動を採っていく。「Pool of Radiance」と同様、移動後のアクション、アクション後の攻撃のいずれにも対応しており、敵の向きの変化に伴い、ブレスの範囲外に出て魔法を撃つ、移動して回復魔法を唱えるなど、テーブルトークライクな操作が自然に行なえる。
バトルでの最大の印象は、キャラクタの移動およびアクションが常にクイックだったことで、ターンベースながらテンポよく進められる。炎の燃えさかる斧で攻撃すると、ヒットした敵に火がついたり、派手な魔法エフェクトで範囲攻撃したりなど、演出も抜群にうまく、敵味方のアニメーションも実になめらかでよく動く。D&DファンのみならずすべてのRPGファンにプレイする価値のある大作RPGだ。
メリハリの効いた美しいグラフィック。フィールドを割り切って2Dにしたことが、シーンとしてのフォトリアルな美しさに繋がっている。とにかくスペルキャスターの格好いいゲームだ |
□ECTSのホームページ
http://www.ects.com/
□ATARIのホームページ
http://www.atari.com/
□「Greyhawk: The Temple of Elemental Evil」のホームページ
http://www.greyhawkgame.com/
□「Dungeon & Dragons Heroes」のホームページ
http://dungeonsanddragonsheroes.com/
(2003年8月30日)
[Reported by 中村聖司]
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