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European Computer Trade Show 2003現地レポートSony Online Entertainmentブースレポート |
会場:London Earls Court
Ubi Soft Entertainmentは、ECTSでは毎年常連の大手メーカーのひとつだ。今年も「Far Cry」や「Prince of Percia: The Sands of Time」など、アクションゲームを中心としたラインナップで多くの来場者を集めていたが、ひとつ例年とは変わった風景が見られた。Ubiが北米を除く全世界で販売を行なっているMMORPG「EverQuest」の発売元Sony Online Entertainment(SOE)が、Ubiの商談スペースにデモ機を置いていたのだ。
「EverQuest II」のタイトル画面。湖の中央には小さな島があり、周囲とは木の橋によって接続されている。奥には滝の瀑布が映っている |
余談が長くなったが、そういうガードの堅さで定評のあるSOEが、トレードショウとはいえ、ノーガードでごく普通に出展しているのを目の当たりにして驚きを禁じ得なかった。しかも、E3のように定型デモの繰り返しではなく、サンディエゴのゲームサーバーに接続し、チートコードを縦横に駆使した、より自由度の高いフリースタイルのデモだった。ヨーロッパのトレーダーは相当ラッキーといえるが、私もしっかり並んでたっぷりデモを受けてきたのでその一部始終を紹介しよう。
■ “史上最高”を目指して開発されているMMORPG「EverQuest II」
今回聞いた限りでも、時系列に並べると「2004年内に発売できるといい」、「発売を急ぐつもりはない」、「数年後には、PCの性能が追いつくはずだ」という具合に、どんどん先送りされてしまった。これは、デモが進むにつれて、少しずつグラフィックオプションを有効にさせて、素晴らしいグラフィックを見せつけると同時に、その動作パフォーマンスのむごさも見せつけてしまい、正直に告白せざるを得なくなったためだ。
おそらく現状で仕様をすべて詰め込み、急いでβテストを行えばE3でのオフィシャルアナウンスである今冬(ニュアンス的には2004年の3月末)のスケジュールを守ることは可能だろう。問題なのは、仮にリリースしたとしても、グラフィックオプションをすべてオンにした状態で、満足行くパフォーマンスで動作するPCは現時点で存在しないことだ。
そのグラフィックテクノロジーの凄さについては、後日詳しく紹介するつもりだが、「EverQuest II」のグラフィックの基本コンセプトは、現行の最先端のグラフィックテクノロジーを惜しみなく投入して、限りなく現実世界に近いビジュアルを実現することにある。
たとえば、セルフシャドウ、リアルタイムシャドウ処理は当然として、さらにそれらの陰に対して、複数の光源を設定し、ひとつのオブジェクトに投影された複数の影をリアルタイム生成する。それらの影は、動いたり、装備品を変えることによって形がかわり、さらに静止していても太陽の動きに従って少しずつ動いていく。 街のシーンで、実際にシャドウ表現をフルにしてもらったが、キャラクタのみならず、家屋や建物、ベンチ、街頭、橋の手すり、街路樹といったすべてのオブジェクトに対してシャドウ表現が施され、太陽の動きに従い、それらが徐々に動いていく光景が見られた。視点を太陽に向けると、現実世界と同様のまぶしくて周囲が光でぼやけるグレア処理が施される。その映像は、まさにプリレンダーのCGムービーに匹敵するほどだ。
もっとも、現状では、この状態だと毎秒1、2フレームしか出せず、ゲームとしてはまるでお話にならない。それでは動作環境はどのぐらいになるかというと、ひとつの指針として「DirectX 9にフル対応したビデオカード」を挙げてくれた。つまり、Ge Force 4 FX 5200、あるいはRADEON 9500よりグレードの低いビデオカードは、ハナからサポートしないというわけだ。いやはやとんでもないMMORPGだ。
キャラクタのモデリングサンプル。鎧には環境マッピングとグレア処理による照り輝きの表現が施されるが、これらの布も同社がダイナミッククロスシミュレーションと呼ぶリアルな表現が取り入れられている。具体的には、布製の衣服をキャラクタの動きに従って前後左右にひらひら動かすテクノロジーだ |
■ 無限のバリエーションを擁したキャラクターメイキング
まずはRaceを決める。選んだ瞬間にRaceの容姿が3Dモデルに反映される |
顔の形を決めているところ。上下左右に奥行きを加えた3方向に伸び縮みさせることができる。画面のRaceは女Kerran。なかなかかわいらしい感じ |
ヘアスタイルは複数の候補から選ぶ形式になるが、ファンタジー世界らしく妙なものを多く取りそろえ、現代風のものはあえて全カットしている |
と、その前に簡単に同作のシナリオについて紹介しておこう。「EverQuest II」の時代設定は、前作の500年後となっており、500年間の空白期間に、幾たびもの天変地異が発生し、ノーラス世界は大陸が細かく分割されてしまう。人々が住むエリアはフリーポートとキーノスのみとなり、極度に制限された状態でのスタートとなるようだ。衛星ラクリンもぼっかり空に浮かんでいるが、初期時点では行くことはできないという。
さて、キャラクターメイキングは、Raceの選択から始まる。Raceは、Barbarian、Dark Elf、Dwarf、Erudite、Froglok、Gnome、Half-Elf、Halfling、High Elf、Human、Iksar、Ogre、Ratonga、Troll、Wood Elfの16種類。新RaceのRatongaは、ネズミを二足歩行させたような亜人種だ。
続いて、顔を中心としたキャラクタのカスタマイズに入る。同作でカスタマイズ可能な項目は、Skull Shape(頭の形)、Eyes(目の形)、Ears(耳の形)、Eye Brow(眉毛)、Cheeks(ほお)、Chin(あご)、Lips(唇)、Nose(鼻)、Hair(髪型)、Beard(あごひげ)、Skin Color(肌の色)、Eye Color(目の色)、Hair Color(髪の色)と13も用意されている。形は3つのスライドを動かして形を定め、色はカラーパレットから好みのタイプを選んでいく。もちろん、オート機能を使えばすべてランダムで決めてくれる。
このような桁外れのキャラメイク機能を備えていることから、しっかり全項目をカスタマイズすれば、1サーバーでまったく同じキャラクタに出会う可能性は限りなくゼロに近い。これは「どうせそこまで見るユーザーはいないから、基本的に鼻の形など細かいカスタマイズはしない」としたOriginの「Ultima X: Odyssey」とはまったく逆の思想といえる。アクション性の高さからパフォーマンスを優先を優先させた「Ultima X」と、パフォーマンス云々は近未来に託して、これでもかとばかりに最先端のテクノロジーを詰め込んだ「EverQuest 2」。言うまでもなく、どちらも正しい考え方である。
■ 戦闘は6人ベースのリアルタイム制、ハウジングはサービス初期から実装
目の前にある建物はショップではない、ユーザーが住める家だ |
住宅エリアをひた走るトロール。街とフィールドの境界際に楕円を描くように配置されているため、ゆるやかなカーブができている |
会話が吹き出し式になっていたり、会話を発生させると、NPCの視線がプレーヤーのほうを向くようになっていたり、はたまたトレジャーボックスの開け方が、「Open(そのまま開ける)」、「Unlock(解錠)」、「Detect Trap(ワナを探知する)」、「Smash(ぶちこわす)」の4種類になっているなど、細かい違いは無数に見つけられたが、やはり一番目に止まるのはグラフィックだ。
MMORPGにおける空の表現は、単一のテクスチャで処理されることが多いが、同作は雲までしっかり3Dで描いており、風景としてのリアリティの向上に一役買っている。また、同作においても段階的LODが多用されており、遠くのオブジェクトはぼんやり描かれ、手前に来ると段階的にテクスチャが高解像度のものに差し替えられていく。このため、風景としての樹木と、木漏れ日を発生させる真上の樹木は、位置データ的に同じものでもビジュアルはまったく異なる。シャドウ表現なしでも実に見事なグラフィックを実現しているのだ。
戦闘は前作同様リアルタイム制で、6人パーティーをベースにするという。EQファンの期待を集めているハウジングも実際に見ることができたが、しっかりした石造りの2階建てで、街の中にあることに驚かされた。フリーポートやキーノスには、自由に家が建てられる住宅地エリアが設定されているということだ。重厚かつフォトリアルなゲームプレイはほぼ間違いない「EverQuest II」。MMOファンとして長い目で見守りたいところだ。
こちらは戦闘シーンのサンプルモデル。フォグやLODなどの表現を使っていないため、CGくさく見えるが実際はもっともっとリアルだ |
バイソンとトロールの死闘シーン。戦っているうちにリンクしてしまったが、レベルが高いため難なく撃破。戦利品としてバイソンの皮と血を入手する |
□ECTSのホームページ
http://www.ects.com/
□Sony Online Entertainmentのホームページ
http://www.sonyonline.com/
□「EverQuest II」のホームページ
http://everquest2.station.sony.com/
(2003年8月29日)
[Reported by 中村聖司]
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