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「第11回学生対抗手作りバーチャルリアリティコンテスト」開催
ちょっとしたアイディアで新しいバーチャル空間を創出

8月20日 開催

会場:日本科学未来館

 学生の手により作られたバーチャルリアリティのコンテスト「第11回学生対抗手作りバーチャルリアリティコンテスト (IVRC 2003)」の東京予選大会が20日、お台場の日本科学未来館において開催された。「IVRC 2003」は、日本バーチャルリアリティ学会、岐阜県、各務原市、財団法人イメージ情報科学研究所からなるIVRC実行委員会によって開催されるイベントで、東京予選大会などでの審査を経て、岐阜本大会でグランプリを決定。グランプリ作品は「SIGGRAPH 2004」への出展という名誉が与えられる。

 学生の皆さんが制作した作品ということで、これらのインターフェイスがすぐにコンシューマベースに落ちてきて、商品化されることはないが、「IVRC」の審査員にはセガの武田博直氏やNTTドコモ マルチメディア研究所の福本雅朗氏も参加しており、ゲーム関連企業などからも注目を集めていることは確かだ。企業がお金を掛けて利益追求を目的としたバーチャルリアリティ作品とは違い、見たことのないような新技術ではないが、ちょっとしたアイディアで、これまでにはない新しいバーチャルリアリティ作品を作り上げている点では、ほかでは見ることのできない面白さといえるかもしれない。

 今回の「IVRC 2003 東京予選大会」には日本全国の大学から10作品が出展された。会場は日本科学未来館の7階で開催されたこともあり、夏休みに家族連れで訪れた人達も展示物を楽しんでいた。また、アートユニットとしてテレビなどでも人気の「明和電機」の土佐信道氏が来場して各作品を体験していた。とにかく、会場が狭いこともあってかなりの混雑ぶりとなった。

 個人的に注目した出展作品は東京工芸大学、東京大学のチーム“Weather Operation”による「Sky-Image」。通常のスクリーンには、素っ気ない曇り空がCGで描かれている。ところが、手渡された傘からそのスクリーンを覗くと、そこには青空が! のんびりと覗いていると徐々に雲が発生するのだが、水滴を払うようにクルクルと傘をまわすとそれらの雲がすっと払われ、また青空になっていく。

 ネタを明かすと、この傘はこれまで立体視用のメガネなどが作られていた偏光グラスで制作されている。これを「Sky-Image」では見える対象を、単純に曇り空と青空に振り替えただけなのだが、このちょっとしたアイディアで、ファンタジックで、ほんわかした癒やし系のインターフェイスができあがったわけだ。

 会場で一番人気だった多摩大学のチーム“Tasmania”の作品「Dis-Tansu」も面白い。基本的には引き出しにディスプレイを入れただけなのだが、そこには水面がCGで描かれている。何度かこの引き出しを出したり引いたりすると、それに反応しこの水面が波立ちはじめる。それに伴い反動が手に感じられるという作品。単純ながらもバーチャルリアリティを体感できる作品と言える。

 一方、大がかりな装置を使った作品もある。「UoQ」はベッドに横たわり泳ぐ動作をすると、前方に設置されたディスプレイにまるでフワフワと空を飛んでいるかのような映像が流され、空を飛んでいるような気分にさせてくれる。ベッドの下にはトラック用のタイヤが置かれており、泳ぐ動作と連動。左手を漕ぐと左のタイヤが膨らむなどフワフワと空を飛んでいる感覚を演出してくれる。こちらは北陸先端科学技術大学院大学、多摩大学のチーム“BIT FLOW”による作品。

 呼吸に合わせイスが揺れる、波に浮かんでいる気分を演出するという、大阪工業大学のチーム“Mother”の作品「The Mind Wave」も人気が高かった。イスが連動するだけでなく、波の音なども連動するという本格派。ただし会場では電磁波の関係から呼吸の測定器が動作せず、残念ながらイスの動作は手動となっていた。

 このほかにも注目すべき作品はたくさんある。10作品いずれも力作だった。このアイディアがそのままではないにせよ、コンシューマの世界に利用される日が遠からず来るのだろう。また、逆を言えばほんのちょっとしたアイディアで、バーチャルリアリティの世界を表現することができるという点でも、このイベントは面白い。来場者もバーチャルリアリティの意味合いを知ることができたのではないだろうか。

【Sky-Image】
Weather Operation
東京工芸大学、東京大学

曇り空の中、小さい傘からスクリーンを覗くとそこには青空が広がる……という、大変ロマンチックなインターフェイス。クルクルとまわすと雲が取り払われるという点も面白い
【Dis-Tansu】
Tasmania
多摩大学

引き出しを出し入れすると、その動きに連動して、中に仕込んであるディスプレイに表示される内容が微妙にかわるという。さらに反動が手に伝わるところがバーチャルリアリティ的なところ
【The Mind Wave】
Mother
大阪工業大学

イスに座った人の呼吸に合わせてイスがゆらゆら。イスが動くことによって、さらに人間の呼吸に影響を与え、思いもよらない動きに……といった効果もあるとか
【フレグラ】
和田おろし
奈良先端科学技術大学院大学

マスクから匂ってくる臭いを嗅いで、ヘッドマウントディスプレイに表示されたものと匂いが一致しているかどうかを当てるインタラクティブ性が高い作品。ゲームとしても十分に成立している。ちなみに匂いはアロマオイルなどを使っているとか
【UoQ】
BIT FLOW
北陸先端科学技術大学院大学、多摩大学

まるで空を飛んでいる気分にさせてくれる作品。泳ぐ動作に映像だけでなくベッドの動きも連動する。ディスプレイには最初、体験者の顔が表示されるのだが段々と顔がアップになっていき、最後には体験者の視点になっていく導入部分も良くできていた
【電影遊戯】
Co-play
東京工業大学

体験者を後ろから撮影し、その影をリアルタイムで画像処理して体験者の前方のスクリーンに映し出す。人の動きに連動し影も動くわけだが、さらに画像処理を行なうことで、体験者の腕が急に伸びたり、体験者とは微妙に違った動作を行なうようになる。背後から撮影した映像を処理しているため、モーションキャプチャのように何かを手足に付ける必要はない
【第3.5次産業革命】
metaphy
電気通信大学

自分の影がある意味ブロック崩しのパドルになっており、画面内のボールをはじき返して壁にあるブロックを崩すと色々なグラフィックが表示されたり、画像効果が得られるというインタラクティブ性の高い作品
【ジャグる?】
ΩJAM
電気通信大学

手に付けたセンサーによって位置情報を認識。画面上にCGで描かれたボールをうまくジャグリングすることができるか……という作品。さらに手にあるボールをタイミング良くにぎると、画面のボールをつかんだことになる。また、うまくボールをつかむことができればその反動がモーターを通じて手に返って来るという優れもの。この手に取り付けるセンサー類はワイヤレスになっているという点も素晴らしいところ (有線だとジャグリングではなくなってしまうと言う理由らしい)
【六十六寸堂】
色即是空
電気通信大学

基本は空気銃なのだが、空気銃から煙が放出されており、そこに光が当たることで“光の矢が飛んでいっているように見える”という作品
【たまや】
舞威阿琉
電気通信大学

手の動きに合わせて花火が上がっているとする作品。残念ながら未完成。本来ならば自分の周りに自由に花火をあげているように見えるようにしたかったとか
会場に訪れていた明和電機の土佐信道代表取締役社長。興味深げに各種展示物を体験していた


□IVRC2003のホームページ
http://ivrc.net/

(2003年8月20日)

[Reported by 船津稔]


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