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「第11回学生対抗手作りバーチャルリアリティコンテスト」開催 |
会場:日本科学未来館
学生の手により作られたバーチャルリアリティのコンテスト「第11回学生対抗手作りバーチャルリアリティコンテスト (IVRC 2003)」の東京予選大会が20日、お台場の日本科学未来館において開催された。「IVRC 2003」は、日本バーチャルリアリティ学会、岐阜県、各務原市、財団法人イメージ情報科学研究所からなるIVRC実行委員会によって開催されるイベントで、東京予選大会などでの審査を経て、岐阜本大会でグランプリを決定。グランプリ作品は「SIGGRAPH 2004」への出展という名誉が与えられる。
学生の皆さんが制作した作品ということで、これらのインターフェイスがすぐにコンシューマベースに落ちてきて、商品化されることはないが、「IVRC」の審査員にはセガの武田博直氏やNTTドコモ マルチメディア研究所の福本雅朗氏も参加しており、ゲーム関連企業などからも注目を集めていることは確かだ。企業がお金を掛けて利益追求を目的としたバーチャルリアリティ作品とは違い、見たことのないような新技術ではないが、ちょっとしたアイディアで、これまでにはない新しいバーチャルリアリティ作品を作り上げている点では、ほかでは見ることのできない面白さといえるかもしれない。
今回の「IVRC 2003 東京予選大会」には日本全国の大学から10作品が出展された。会場は日本科学未来館の7階で開催されたこともあり、夏休みに家族連れで訪れた人達も展示物を楽しんでいた。また、アートユニットとしてテレビなどでも人気の「明和電機」の土佐信道氏が来場して各作品を体験していた。とにかく、会場が狭いこともあってかなりの混雑ぶりとなった。
個人的に注目した出展作品は東京工芸大学、東京大学のチーム“Weather Operation”による「Sky-Image」。通常のスクリーンには、素っ気ない曇り空がCGで描かれている。ところが、手渡された傘からそのスクリーンを覗くと、そこには青空が! のんびりと覗いていると徐々に雲が発生するのだが、水滴を払うようにクルクルと傘をまわすとそれらの雲がすっと払われ、また青空になっていく。
ネタを明かすと、この傘はこれまで立体視用のメガネなどが作られていた偏光グラスで制作されている。これを「Sky-Image」では見える対象を、単純に曇り空と青空に振り替えただけなのだが、このちょっとしたアイディアで、ファンタジックで、ほんわかした癒やし系のインターフェイスができあがったわけだ。
会場で一番人気だった多摩大学のチーム“Tasmania”の作品「Dis-Tansu」も面白い。基本的には引き出しにディスプレイを入れただけなのだが、そこには水面がCGで描かれている。何度かこの引き出しを出したり引いたりすると、それに反応しこの水面が波立ちはじめる。それに伴い反動が手に感じられるという作品。単純ながらもバーチャルリアリティを体感できる作品と言える。
一方、大がかりな装置を使った作品もある。「UoQ」はベッドに横たわり泳ぐ動作をすると、前方に設置されたディスプレイにまるでフワフワと空を飛んでいるかのような映像が流され、空を飛んでいるような気分にさせてくれる。ベッドの下にはトラック用のタイヤが置かれており、泳ぐ動作と連動。左手を漕ぐと左のタイヤが膨らむなどフワフワと空を飛んでいる感覚を演出してくれる。こちらは北陸先端科学技術大学院大学、多摩大学のチーム“BIT FLOW”による作品。
呼吸に合わせイスが揺れる、波に浮かんでいる気分を演出するという、大阪工業大学のチーム“Mother”の作品「The Mind Wave」も人気が高かった。イスが連動するだけでなく、波の音なども連動するという本格派。ただし会場では電磁波の関係から呼吸の測定器が動作せず、残念ながらイスの動作は手動となっていた。
このほかにも注目すべき作品はたくさんある。10作品いずれも力作だった。このアイディアがそのままではないにせよ、コンシューマの世界に利用される日が遠からず来るのだろう。また、逆を言えばほんのちょっとしたアイディアで、バーチャルリアリティの世界を表現することができるという点でも、このイベントは面白い。来場者もバーチャルリアリティの意味合いを知ることができたのではないだろうか。
(2003年8月20日)
[Reported by 船津稔]
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