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CEDEC 2003 セッション講師インタビュー |
情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 助教授 '95年大阪大学工学部情報システム工学科講師、'96年大阪大学工学部情報システム工学科助教授、2002年大阪大学大学院情報科学研究科マルチメディア工学専攻助教授へ。ウェアラブルコンピューティング、ユビキタスコンピューティングのエンタテインメント・ファッション応用に関する研究開発を行なっている。工学博士。 |
●塚本氏:IGDA東京の新清士さんから依頼されまして、セッションをやることになりました。
私自身はもうずっと前から、モバイルとかウェアラブルとかユビキタスといったシステム、ネットワークやアプリケーションをやっているのですが、やっぱりモバイルのキラーアプリはエンタテインメントだと思うんです。そういった状況の中でゲーム関係の人達とのコミュニケーションや接点を求めて活動していく中で、新清士さんと知り合ったんです。
これまでアカデミックな方面にゲーム関連の人を呼ぶというのを新さんにお願いしてきたんですが、逆にゲーム業界の方にもコンピュータ業界のアカデミックの人との接点をもっと持ったらいいのではないかと話していたところ、今回こういった機会があるということでお話しさせていただくことになりました。
-Q:では、なぜ今回の講演のテーマとして「ゲームプロデュースのための基礎知識」を選ばれたのですか?
●塚本氏:色々な話を聞いたり、本を読んだりして思ったのは、新しい表現や新しい何かを求めて今までにないデザインをゲームのプロデューサーさん達はされるのだと思うのですが、最初に描く絵が明らかに“悪い”という場合があるのではないかと。特に一番悪い例というのはAI系の本当に難しい問題ですね。そういうのを入れちゃいがちなんです。
我々は学者ですから、ゲームが面白い、面白くないといったあたりのセンスというのは何ともわからない部分があるんですが、そうではなくて、「それは実現不可能ですよ」ということがあるんです。音声認識とか、言語解析や常識推論とか、人間とある程度対等に世間話をするエージェントがキャラクタにいて……といったことは明らかに無理なんです。それはゲームの一プロジェクトでやるのが無理ということで、むしろやるんだったら5年計画の国家プロジェクトでやるとか、そういった規模の話なんです。そういった難しい問題としてわかっていることは、「これは難しいですよ」と。研究レベルの話ですので、すぐにゲームデザインに落としこむのは難しいですよと、いくつかご紹介できればなと思います。
逆に音声関係や画像処理の難しい技術を使いたいと思うのであれば、それはシーズオリエンテッドにならざるをえない。ですから研究動向のレベルをみてもらって、どこかの企業や団体がその技術を持っているというのを理解した上で、その技術を使ってゲームに組み込むのならば、うまくいくと思います。一般にこんな音声合成できたらいいなぁと思っておられるところで、そう簡単にできるものではないということを認識していただきたい。お話の前半ではそう言った話をしていくつもりです。
-Q:後半はどういった話になるのでしょうか?
●塚本氏:前半では、人工知能や音声解析とかそういった技術は30年スパンで少しずつ研究が進む分野で、ゲームに取り込める部分もあるけれども、難しい面もあるといった話ですが、後半では逆にすごい勢いで進んでいる技術があると言うことを紹介したい。
それはモバイル、マルチメディアだと思うんです。これらの技術は、この5年、10年の間にぜんぜん違っていて、これから5年、10年先も全く変わっていくと思います。もちろんそこで話をもっていきたいのがウェアラブル、ユビキタスなんですが、これらの技術はこれまでと根本的に違っていて、いままでテレビやディスプレイの前で座ってじっとして使っていたスタイルではなく、普通の生活の中でもっと普通にコンピュータを使っていけるということなんです。コンピュータのあり方そのものがかわっていくという技術なんです。
そのなかでコンピュータを使うというのは、今のiモードなどがその走りだと思うんですが、本格的な時間のかかるRPGより、むしろ合間合間にちょこっと使う着メロのような超ライトウェイトなエンタテインメントから始まって、暇つぶしにやるパズルのような手軽に楽しめるものが、ユビキタスやウェアラブルの時代が来たときに大きなビジネスチャンスとしてあるのではないかと思うんです。そこはすごく変化する部分で、短い期間で実現していく話なので、そこで新しい絵を描けるんじゃないかと。今クリエイターの人が考えている範囲とはまったく違う土俵で絵が描けるのではないかと思うので、そういった点をたとえばの話も含めてご紹介していきたいとと思います。
-Q:例えばどういったことが考えられるのでしょうか?
●塚本氏:例えば「鬼ごっこ」ですね。子供達が外で鬼ごっこをするときにですね、腕時計型でもいいんですが、そういった装着型のゲーム機を身につけて遊ぶんです。それはどこかの企業が出そうと思えば1年後には出せる話で、鬼ごっこで追いかけ回しながら、画面に色々な指示ですとか表示されるわけです。我々が作ってもあまり面白くないかもしれないけど、クリエイターの人達が面白く仕上げるということはすごくチャレンジングなことですよね。そしてそういったゲームが、今現在のゲームを10年後、20年後になくしてしまう可能性があるくらいのポテンシャルを秘めているのではないかと。コンピュータのディスプレイと外でのゲームの融合で面白いものができるのではないかと思うんです。
一時期、ワンダースワンとGPSを連携させてゴルフやパックマンを出展されていたときがあったでしょ。あれがパッと出てきたときの斬新さはあったわけで、ゲームとしてのビジネスとしてはまだまだ足りてないモノがあるのかもしれませんが、方向性としてはあの方向で山のようにバリエーションが考えられて、新しいマーケットというのがあるんじゃないかといった、今の私の研究テーマと絡めた問いかけをしてみたいなというのがありますね。
ほかにも「たまごっち」なんかもある意味似ていると思うんです。“ペットゲーム”なんてみんな考えていたと思うんですよ。でも、当時ある技術であのレベルで商品化するという方法論が上手かったと思うんですね。今もね、外でパックマンとか上手い切り出し方があると思うんです。リッチな方向だけでなく、新しいアイディアで、従来のゲームの分野をまるっきり飛び越えたパターンを作れそうな気がするんですよ。その方向でもっともっと考えて欲しいというのがありますね。
-Q:この講義において波及効果として何か期待するものはございますか?
私として望んでいることはですね、ゲーム業界、コンテンツ業界の人とコンピュータのアカデミック分野の人間との交流で、色々なコラボレートを通じて新しいエンタテインメントを産学官で作っていきたいなというのが一番思っているところですね。ゲームを含めたコンピュータ産業や通信産業は日本の中心産業じゃないですか。ゲーム業界は大きくなっていますが、さらに産業の中心にもっていくために何か貢献できないかなというのが目標なんですがね。
-ありがとうございました。
□CEDECのホームページ
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(2003年8月19日)
[Reported by 船津稔 / Photo by PC Watch]
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