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CEDEC 2003 セッション講師インタビュー
ウェーブマスター、牧野幸文氏、磯田重晴氏

    牧野幸文氏 (写真右)
      株式会社ウェーブマスター 代表取締役社長
      サウンドクリエイターとしてMDのソニックシリーズ等、サウンドディレクターと してSSの「NiGHTS」等に参加。またDC、PS2でルーマニアシリーズのゲーム プロデュースも担当。

    磯田重晴氏 (写真左)
      株式会社ウェーブマスター 取締役 技術担当チーフ
      サウンドプログラマとして、各種ゲームコンソール、アーケード基板のサウンドドライバおよびツール類の研究開発。


 9月4日と5日の2日間にわたって開催される「CEDEC 2003 (CESA デベロッパーズカンファレンス)」。このカンファレンスでは、今後も日本のゲームを国内のみならず世界に向けて発信していくにあたり、最先端の技術動向だけに留まらず、「情報の共有化と開発環境の向上」を促進していくために企画、開催されるものである。

 今年5回目となる「CEDEC」ではこれまでで最も数が多い40セッションが開催されるほか、マイクロソフトのDirectX関連セッションを集めた「Meltdown」、NVIDIAの「開発の鉄人」、ソニー・コンピュータエンタテインメント「ゲーム機アーキテクチャの進化とソフトウエアの最適化」なども開催が予定されている。

 興味深いセッションが目白押しだが、今回はこのなかなか5つのセッションを行なう講師の方たちにインタビューを行ない、セッションでどのようなことが話されるのか、その一端を探ってみた。なお、セッションの申込みは8月22日までとなっている。


Q:今回、CEDECで講演を行なうことになった経緯を教えていただけますか?

牧野氏:CEDECさんの事務局の内部で「サウンド関係のセッションをあまりやっていないようなのでやってみたらどうだろうか」といった話があったらしく、そこで弊社に依頼がありまして、面白いしやってみようかなと思いお引き受けしました。

Q:では今回の講演のテーマとして「ゲーム開発におけるサウンドデザインについて」を選ばれたのですか?

牧野氏:CEDECさんからは、音楽関係やサウンドをテーマとしたセッションをこれまでほとんどやっていないので、特にこういうテーマでお願いしますといったお話はなかったんですよ。

磯田氏:今までCEDECさんのほうでサウンドのくくりがなかったので、わりと統括的なところからはじめるのがいいのかなと思っています。

牧野氏:皆さん「ゲームのサウンド」と一言で言うんですが、サウンドと言っても音楽があって、音声があって、SEがあって、全体をどう構成するか演出 (サウンドデザイン) があって、やることは非常に多岐にわたっているんです。そこらへんを勘違いされている方もいらっしゃるようなので、サウンドデザインという概念から話を進めていって、ゲームの音楽としては、最近ではアーティストの方たちとのコラボレーションも活発ですし、そういった内容についてのお話もしたいですね。

 そして、著作権などの管理に関しても、音楽業界ではずいぶん昔から整備されていますが、ゲームやインターネットという新しいメディアに対応する部分ではまだ不明瞭だったりしますので、そういった話を総論的にまずまとめて、後半に弊社の技術担当の磯田からゲームの技術的なアプローチについて話してもらおうと思ってます。

Q:こういったことが話したいとかございますか

磯田氏:“音”というのは目に見えないということで、音屋の存在の認知度自体が低いんじゃないかと常く思っていますので、技術的なところも含めて今のゲーム機の音の作り方がどうなっているかというところを話していきたいかなと考えてます。ただ、技術的なことを細かく解説しても仕方ないので、そういった作業の“流れ”的なところが話の中心になるかと思います。

牧野氏:私たちも普段仕事をしていて思うのですが、“サウンド”や“音楽”というものを非常に簡単に考えている方がまだ多いようです。ゲームプロデューサーでもそういった人はいます。ゲームの世界でサウンドクリエイターと呼ばれている現場のクリエイターと、著作権の処理や管理、バジェットの管理を行なっているサウンドプロデューサーと呼ばれる人と、本当の意味で言えば仕事は全然違うんですよ。でも昔からずっと仕事をしてきたゲームプロデューサーですと、「サウンド? サウンド担当者いるじゃない」とすべて任せてしまったりしてしまいがちなんです。今は、それではなかなか難しいんですよ。そういったところをみなさんに理解していただきたいと。

 私もそうでしたが、昔の8ビット機や16ビット機の頃はそれこそサウンド担当が一人いて、プログラム制作から音楽からSEまですべてやってたんです。でも、今はさすがにそれではすまなくなったんです。あまりに規模が大きくなりすぎているので。

磯田氏:実は制作側だけでなく、ゲーム業界を目指している学生さんは学生さんで勘違いされている方もいらっしゃるんです。「サウンド制作=アーティスト」といった具合ですね。

 サウンド関係はどうしても見えない部分ということで、企画上も予算上も後回しなんです。そういう状況はなんとかしていかないと。

Q:サウンドを知っているということでゲームへのアプローチが変わることはありますでしょうか。たとえば、ウェーブマスターさんは「ルーマニア」シリーズなど制作されていますが。

牧野氏:変わると思います。それは圧倒的に違うと思いますね。プロデューサーやプランナーの人たちの中にも音楽を好きな人はいるんです。でも、それは個人的に好きだという話で、実際にゲームにどうやって音を付けていくのかというのとは別次元の問題なんです。音楽を付けるときに冷静に判断できるかという点において、サウンドをずっとやってきた人間がゲームを作る場合とそうではない場合で、圧倒的に違うと思うんです。

 「ルーマニア」のサウンドデザインとか音楽制作まで含めて、音周りの全体のデザインなどは通常のゲームのプランナーではまず発想できないと思います。普通だったら「そこまで音にこだわることないじゃない」というとこで終わりますね。

Q:そういった話がサウンド周りから出て来るというのはずいぶんとつもりつもっているんですね。

磯田氏:出てこないとウソですからね。世界観だなんだと仰るわりにはサウンドデザインのこと考えてないことが良くあります。

牧野氏:ゲームのビジュアルも行きつくところまで行きついて、差別化が難しくなって来た。皆さん、次はどうしようかと模索なさっているんです。そういった意味でも、サウンド周りは昔に比べればきちんと見てくれるようになりましたね。昔は音が出てればいいやと言う人が本当に多かったんです。だいたいどう考えても、ゲーム中ずっと音楽が鳴っているというのは、私たちから言わせればおかしいと思うんですよね。それで、そういった人がサウンドスペック表を出してくると、ズラッと曲が並んだリストを出してくるんです。そうすると「いらない曲もあるし、違った演出が可能なところもあるじゃないか」と思うんですよ。「ゲームってこういうモノでしょ」というところで、なんの疑問もなくスペック表を作ってくるんですよ。

磯田氏:従来型のゲームがあることはぜんぜんOKなんですが、そればかりではないと言うことですよね。

牧野氏:そうは言いながらも、最近は面白い作品も出てきてると思うんです。私たちにとってはそれらは歓迎ですね。ただ、世の大半はまだそうではないと。

磯田氏:そろそろホームシアターが普及しつつありますが、皆さん映画観るためでしょう? でもそうしたユーザーがゲームするとき、従来型のゲームの中には音バランスがメチャメチャなものもあります。サウンドデザインがきちんとしているゲームならそういう所へ持って行ってもまったく問題ありません。音を気にするユーザーさんも増えてきましたから、今はサウンドに関してはチャンスなんですよ。

ありがとうございました。

□CEDECのホームページ
http://cedec.cesa.or.jp/
□受講申込みページ
http://cedec.cesa.or.jp/regist/
□ウェーブマスターのホームページ
http://www.wave-master.com/

(2003年8月15日)

[Reported by 船津稔]


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