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CEDEC 2003 セッション講師インタビュー
ナムコ、岩谷 徹氏

    岩谷 徹氏
      株式会社ナムコ インキュベーションセンター コンダクター
      '78年ナムコオリジナルビデオゲーム第1号「ジービー」を制作。'80年「パックマン」を制作。'83年には「リブルラブル」を制作。その後も、「リッジレーサー」、「アルペンレーサー」、「タイムクライシス」等をプロデュース。


 9月4日と5日の2日間にわたって開催される「CEDEC 2003 (CESA デベロッパーズカンファレンス)」。このカンファレンスでは、今後も日本のゲームを国内のみならず世界に向けて発信していくにあたり、最先端の技術動向だけに留まらず、「情報の共有化と開発環境の向上」を促進していくために企画、開催されるものである。

 今年5回目となる「CEDEC」ではこれまでで最も数が多い40セッションが開催されるほか、マイクロソフトのDirectX関連セッションを集めた「Meltdown」、NVIDIAの「開発の鉄人」、ソニー・コンピュータエンタテインメント「ゲーム機アーキテクチャの進化とソフトウエアの最適化」なども開催が予定されている。

 興味深いセッションが目白押しだが、今回はこのなかなか5つのセッションを行なう講師の方たちにインタビューを行ない、セッションでどのようなことが話されるのか、その一端を探ってみた。なお、セッションの申込みは8月22日までとなっている。


Q:今回、CEDECで講演を行なうことになった経緯を教えていただけますか?

岩谷氏:CEDEC 2003の講演について公募があったんです。そこで、自分自身、最近のゲーム開発サイドの“迷い”が多くあるのを感じていたんです。そこで、これまでのキャリアを活かした発言ができればと思って応募してみました。

Q:開発者サイドの“迷い”とはどういったものですか?

岩谷氏:開発を担当している若い人達やプロデューサー達と話をしていると、『もうやることがない』、『鉱脈を堀つくしてしまった。どうしよう』というように悩んでいるんです。で、僕は『そうじゃないんだよ』という考えがありますので、ここでひとつ業界全体の中でコンシューマ関係が下降気味なところがあるので、本当に新しいゲーム、面白いゲームが色々と出て活性化して欲しいと思い、関係者の方に知ってもらいたいなというのがあるんです。

 例えば、石炭を掘っていた時代があって、無くなれば石油を掘って、石油も掘りつくしてもう何もないとなれば、代替エネルギーを考えると思うんです。石炭がなく、そこでお手上げというわけではなく代替エネルギーを考えればいいわけで、そういう発想をして欲しいんです。

Q:ゲームのハードウェアはどんどん進化してゲーム機でできることは広がっていっているはずなのに、アイディアが枯渇していっているというのはどうゆうことなのでしょうか?

岩谷氏:今、開発に携わっている若い人は、ゲームで育っていますので、ゲームの中での発想にどうしても限られてしまうんです。生まれたときからゲームをやってるという子達が会社に入ってきているわけですから、そういう人達がどういうゲームを考えるかというと、育った環境でプレイしてきたゲームの模倣になってしまうわけですよ。そうではない考え方や行動の仕方も伝えていきたいと、思うんです。

Q:よく言われることですが、“幅広い視野”が必要と言うことでしょうか

岩谷氏:“幅広い視野”というのは言葉で聞いてもなかなか行動に移せないんですよ。なんだかんだ言っても自宅と会社の往復になってしまいがちでしょ。そこで『映画を観ているの?』と聞いてみると観ていない人が多いみたいだし、『電車の中でどうやって人を観察しているの?』と聞くと、ゲームやってましたとか、メール打ってましたとか、それではぜんぜん情報が入ってこないじゃないかと思うんです。電車に乗ったら誰がどういう服装や髪型をしていて、なにか共通してぶら下げているものがあれば、それはなんでだろうと観察が必要だと思うんです。観察する力は普段のモチベーションがないと、ただ単に見逃してしまうので、そこが大事だと。

 それとコンシューマで言えるのは、ユーザーの顔を見ながら開発できないというのがひとつ大きな問題点としてあるんです。例えば業務用であればロケーションテストがあって開発の途中段階でアミューズメント施設に置くんですが、注目されるけどなぜか100円入れてやってくれないとか、ゲームをプレイしているときにどうも首を傾げているとか、なんか面白くなさそうだとか、ここで喜んでくれたとか、直にお客様の顔が見えるんです。そうすると作り直しをしていって、いいものに仕上がっていくんですが、コンシューマの場合はそういった段取りを取っていないので、どうしても独りよがりなゲームづくりになりがちなんです。そういった意味で、ユーザーと作り手にギャップがあるなと。

 ゲーム開発者は作っているうちにどうしてもゲームになれてしまって難しくなってしまうんです。ひとつのゲームに詰め込む要素がたくさんあるのはいいんですが、それを小出しにして欲しいんです。いっぺんに出されるとわからなくなってしまうんです。そうやってユーザーさんにとってちょっと敷居が高いゲームになっていくんです。ユーザーさんの頭の中をシミュレートして作らなくてはいけないと思う。

 また現状でゲームは、RPGとシミュレーションゲーム、パズルものとか結局5ジャンルぐらいから品揃えされているんです。で、RPGとかもう飽きちゃっていると思うんです。出てから10数年経っていて、いつもやってることは魔法をかけたりとか、よく続くなと思う。パズルゲームでも落ちゲーなど飽きてるし、もうちょっと別の角度の遊びを提供していかないと、お客さんはゲームは詰まらない遊びだなと思い始めているところがややあるんじゃないかなと。そこで『そうじゃないよ』と示していかないと、お客さんはどんどんどんどん離れて行ってしまう。

 でも、僕は『太鼓の達人』といった、新しいゲームが出てきてくれてよかったなと思うんです。あのゲームは小さな女の子とかやってくれるんです。それは女の子がゲームを見たとき、面白いかどうかではなく自分にとってできるかどうかを判断するんです。格闘系のゲームや複雑なルールが用意されたRPGなどはできそうもないと思ってしまう。でも『太鼓の達人』はドンドン叩くだけなので、プレイできると考えるようなんです。

Q:単純ながらも面白さに繋がっていくと言うことですね

 僕は迷ったら原点に戻れと思うんです。現在、ゲーム業界は迷っていると思うので、昔の単純なルールのゲームを再度遊んでみることで、シンプルなゲームルールで遊んでいたなぁということに気づけば、複雑なゲームルールを詰め込んだゲームじゃなくて、誰にでもわかりやすくてシンプルなゲームルールから入っていけば良いんじゃないかと思う。

 いま、キーワードとして変化が求められていると思うんです。変化があれば注目されますから。いつも同じことをやっていると飽きられてしまいますので、“変化”をみせることがこれからのゲーム業界にとって重要なことかと思う。最近のゲーム制作者は、ゲームも携帯電話もあるところから生まれてきた世代の人達で、そういった人達に道筋を示してあげればと思うんです。

ありがとうございました。

残念なことにこのセッションは定員のため申込受付を終了しました。

□CEDECのホームページ
http://cedec.cesa.or.jp/
□受講申込みページ
http://cedec.cesa.or.jp/regist/
□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/

(2003年8月15日)

[Reported by 船津稔]


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