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NCジャパン、「リネージュ」プレーヤーの実態調査結果を発表
~韓国ではゲーム内の恋愛経験は80%以上

7月31日 発表



東京大学大学院人文社会系研究科 池田健一教授
 エヌ・シー・ジャパン株式会社は、MMORPG「リネージュ」プレーヤーの実態調査を実施、その結果を発表した。同社は、日本国内でMMORPG(Massive Multiplay Online RPG)「リネージュ」の運営を手がけ、国内では現在10万8千人の現役ユーザーを抱えている。

 今回調査を担当したのは、東京大学大学院人文社会系研究科の池田健一教授。池田教授は、マスメディアや、インターネットを始めとする高度情報システムにおける、コミュニケーション行動の研究などを手がけており、今回、エヌ・シー・ジャパンの協力により、リネージュユーザーに対する実態調査を行なった。

 池田氏は冒頭で、「オンラインゲームというと、オタクというイメージが浮かぶが、実像はまったくちがう」と前置きし、その調査結果を発表した。

●お互いの信頼感は高いが“互酬性”はゲーム内だけのもの

 調査は、一般的なインターネットユーザーとリネージュユーザーの違いから、日本および韓国におけるプレイスタイルの違いなどについても触れられた。調査対象は、日本側で1,362人、韓国側では4,786人のリネージュプレーヤー。

 会場ではリネージュユーザーの実態調査結果に先立ち、2001年に総務省が実施した、リネージュ以外のオンラインゲームも含めたオンラインゲームユーザーの特性から紹介された。

 それによると、オンラインゲームユーザーは、極端に男性に偏っているわけではなく、年齢は大学生から20代前半くらいが中心。他者とのコミュニケーション能力も高く、友人も多数いるという結果で、インターネットを積極的に活用する、オンライン社会のイノベーター的な位置に居るユーザーが多いとされている。自宅に引きこもりがちで、コミュニケーション能力に問題があるという、一般的なイメージとは異なるという。

 この結果をふまえ、リネージュユーザーの実態と比較すると、やはり、ほぼ同じ特性をもち、活発なコミュニケーション活動を行なっているユーザーが多いことが実証されたという。

インターネット内で活発な活動をするオンラインゲーム利用者 リネージュプレーヤーはホームページ開設率も高い


 特にリネージュユーザーのホームページ所有率は、非オンラインゲームユーザーが40%前後なのに比べ、約80%前後と非常に高いことが特徴。リネージュに関するホームページを運営するケースが多く、掲示板などを設置して、仲間が集まる場を提供するユーザーが多いためと見られている。

 “他者への一般的信頼感”についての調査結果では、MMORPGをやらない、一般的なインターネット利用者では、「たいていの人は信頼できる」という問いに対して、過半数が肯定的な回答をしているものの、インターネット内に限った場合は「信頼できる」と回答するユーザーは皆無に近く、好意的な回答は全体の5%程度にとどまった。これに対し、リネージュユーザーを元にした結果では、インターネット内でも5%近くは「信頼できる」と回答し、好意的な回答は全体の20%程度を占める。

 人間同士の協力関係について調査した“互酬性感覚”の調査では、一般ユーザーのほとんどがインターネット上での互酬性はあまり期待していないという回答をした。しかし、リネージュユーザーを対象とした調査結果では、その過半数が互酬性感覚は存在すると明言しており、一般のユーザーよりも互酬性感覚が優れていることが示された。

リネージュプレーヤーと一般ユーザーの一般的信頼感 リネージュユーザーはインターネット内での互酬性が高い リネージュ内の互酬性と反し、日常生活では互酬性は低いと考えている


 リネージュはMMORPGとして多数のプレーヤーが同時に参加し、お互いに協力してゲームが進行する性質上、協調性は重要な要素。見ず知らずのユーザー同士でも気兼ねなく助け合うケースも多く、そのため、自分が誰かを助けることで、誰かが自分を助けてくれるという意識が自然に現れているのではないか、としている。

 ただし、日常生活においては若干異なる意識を持っている結果が示された。一般的信頼感については、日常生活でもリネージュ内でもほぼ同じで、過半数が「ある程度信頼できる」と回答しているのに対し、日常生活における互酬性についてはほとんど期待していないという結果が出ている。互酬性については、あくまでゲーム内に限った意識であるようだ。

●大きく異なる日韓でのプレイスタイル

 日韓のリネージュプレーヤーについても、調査結果が発表された。それによると、各国のプレーヤーの性別は日本国内が男性約80%、女性約20%なのに対し、韓国では約95%近くが男性で占められている。また年齢別では、日本が10代が約30%、20代が約50%なのに対して、韓国では10代が約60%を占めてもっとも多く、20代のプレーヤーは約30%。

 プレイ歴については、リネージュの日本国内での正式サービス開始が遅かったこともあり、約50%のプレーヤーが2002年からプレイを開始している。韓国ではブロードバンド回線の普及率が高かったこともあり、ベータテストが開始された'97年からコンスタントにユーザー数が増加している。

 リネージュを遊ぶ場所についても日韓では差がある。日本ではほとんどのユーザーが自宅でプレイしているのに対し、韓国では約30%のユーザーがネットカフェを利用してリネージュをプレイしているという。これは、韓国では友達グループと一緒に、同じネットカフェ内でプレイするスタイルが定着しているためという。

 そのため、日本では自分の部屋で「1人でプレイする」というユーザーが約60%、「友達と一緒にプレイする」が20%程度なのに比べ、韓国では友人と一緒にプレイするユーザーが70%近く、1人でプレイするユーザーは20%にも満たないという結果が出ている。池田氏は、日本のカラオケのように、仲間とともに同じ場所で遊ぶというスタイルが、リネージュの爆発的ブームのきっかけになったのではないかと見ている。

 定期的に遊ぶ仲間は、日韓ともに80%前後の数値を示しており、ほとんどのプレーヤーがゲーム内では決まった相手とともに遊んでいるようだ。

 リネージュの魅力についてのアンケートでは、「いろいろな人と会える」というのが日韓ともにもっとも高いが、割合としては、日本が約60%、韓国が約40%と、その内容には差がある。これは前述の通り、韓国ではすでに知り合った仲間と一緒に遊ぶというスタイルが確立されているため、ゲーム内で新しい仲間を見つける必要性が比較的薄いことからくるものと考えられる。

日韓のリネージュプレーヤー比較 日韓プレイスタイルの違い 日本では人に会うことが魅力と感じるプレーヤーが多い


リネージュ内での恋愛経験調査結果
 もう一点興味深いのは、リネージュ内での恋愛経験を調査したもの。「他人が操作するキャラクタを好きになったことがある」という項目では、韓国では約80%、国内では5%前後と圧倒的な差が浮き彫りになった。反対に、他人のキャラクタを好きになったことはまったく無い、と答えたプレーヤーは、日本が80%、韓国では5%前後となっている。

 前述のとおり、日本では約20%、韓国では約5%が女性プレーヤーであり、女性プレーヤーが少ない韓国のほうが恋愛率が高いという結果となった。これは、MMORPGにおいては、実際の性別にかかわらず男性プレーヤーが女性キャラクタでプレイするケースも一般的(?)なため、ゲーム内では女性キャラクタが多いことも一因とみられる。

 MMORPG先進国となる欧米では、ゲーム内と実生活を切り離して考え、他のプレーヤーの実性別などは考慮しないプレーヤーも多い。ゲーム内でキャラクタ同士の結婚式が行なわれるようなケースもあり、韓国のほうがよりRPG的な楽しみを理解していると言えるかもしれない。

 リネージュの重要な要素である“血盟”システムについても大きな差があり、日本人の約90%が何らかの血盟に所属しているのに対し、韓国で血盟に所属しているのは60%に満たないという。日本人は集団活動が中心となっているようだ。

 ゲーム内で助けられた経験については、狩場で魔法や力で助けられたというものが、日本では約50%、韓国でも40%近く、ともに重要な要素であることがわかる。ただし、韓国では20%近くのプレーヤーが「喧嘩のとき肩をもつこと」という要素をあげている。日本では5%に満たない。韓国ではほかのプレーヤーとのアクシデント発生時にも、仲間が重要な要素となっているようだ。

 他プレーヤーを評価する基準としては、日韓ともに、信頼できるプレーヤーであるかという項目が50%近くを占めるが、マナーの良さをあげたのは、日本が25%前後、韓国では40%以上と大きく差が出た。

 また、ゲーム内の秩序を維持するのは、誰の役目か、という問いでは、「一般のプレーヤー」というのが、韓国が約60%、日本が約50%で、韓国が上回るが、ゲーム会社やGMなど運営者が秩序を守るべきである、という意識は日本が合計約35%、韓国が合計約20%。韓国が若干“自治”という意識が強いようだ。

リアルマネートレードに対する、日韓の意識の違い
 ゲーム規約では禁止事項とされる、リアルマネー取り引きの経験調査では、「したことがない」と答えたのが、日本が90%以上を占めるが、韓国では60%前後。残りの40%については、何らかのかたちで、アイテムなどをリアルマネーでほかのプレーヤーに譲渡した経験があるという。

 リアルマネー取り引きに対する意見については、日本では50%以上が「禁止事項なのでしてはならない」と回答。韓国では25%未満のプレーヤーが同じ回答をしているが、「プレーヤーの努力の結果なのでプレーヤーが勝手にできる」という意見が約50%を占め、両国間での意識の違いが大きいことがわかる。日本では10%程度。

 PK(Player Killer)行為については、PKをしたことがあるプレーヤーは韓国では4%、日本では0.7%程度。PKをされたという経験でも、韓国は3%、日本では0.5%前後という。

 日本国内のプレーヤーの特徴については、約9割が血盟に所属。半数以上が毎日プレイしているとされ、平均的なプレイ時間は2~4時間がもっとも多いとされた。

 特に、可処分時間(余暇に割り当てられる時間)のほとんどをリネージュに割り当ててしまうプレーヤーが多く、本来2時間程度の可処分時間のプレーヤーでも、睡眠時間を削って3~4時間のプレイをしてしまうケースも見られるという。

日本人プレーヤーの利用時間・日数解析 可処分時間における、プレイ時間の推移


●「MMORPGは社会性が強く、オタクだけのものであると考えると実情を見誤る可能性がある」

 池田教授は、「MMORPGは、社会性が強く、いわゆる純粋なオタクには生きづらい世界かもしれない。オタクだけのものであると考えると実情を見誤る可能性がある」と警告。「ユーザー個人の友人数なども決して少ないわけではなく、むしろ対人関係に敏感な人が遊ぶ傾向にある。現時点で問題なのは、プレイに必要な時間が多すぎること。これが解消されれば、さらに一般に普及する可能性もある」などと語った。

 質疑応答では、「ネット内での信頼関係が強いのは理解できたが、プレイ時間が長いということは、外で活動する時間が減るということで、マイナス要因もあるのではないか?」という質問がされたが、「リアルマネートレードや可処分時間を取りすぎるという、中毒性の問題もあるが、ゲームの中でも悪いことをすれば罰せられるのは実社会と同じ」とし、ある程度は社会性を養う手助けとなることを強調した。

 また、「リネージュプレーヤーの社会性が高いことは理解できたが、一般社会がそれを理解するのは、まだ難しいのではないか」という意見もでたが、池田教授は「Niftyを始めとするパソコン通信も100万人を超えたあたりから、社会的な認知度も上がった」と述べ、今後の普及次第で徐々に認知度も上がっていく、という見解を示した。

□エヌ・シー・ジャパンのホームページ
http://www.ncjapan.co.jp/
□製品情報
http://www1.lineageonline.jp/index.html
□関連情報
【7月18日】NCジャパン、「リネージュ」の新シリーズ
「リネージュ クロスランカー」を正式発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030718/linexr.htm

(2003年7月31日)

[Reported by kiyomiya@impress.co.jp]


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