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【E3開幕直前・SCEブリーフィング現地レポート】

SCEAがメディア向けブリーフィングを開催。「GT4」を公開
~ 北米のPS2はネットワークアダプタ同梱で価格据え置き

5月13日(現地時間)開催

Los Angeles Center Studio

ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ社長兼COOのKAZ HIRAI氏。例年どおり、自信にあふれた口調で一時間余りのブリーフィングを務めた

 13日(現地時間)、ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ(以下、SCEA)は、関係者およびメディア向けに、E3直前恒例のブリーフィングを開催した。既報のとおり、このブリーフィングでは最後に「PSP」の開発が発表されたわけだが、本稿ではそれ以外のSCEAの北米戦略やブランニュータイトルを中心に紹介する。

 ブリーフィングのホスト役は例年のとおりSCEA社長兼COOのKAZ HIRAI氏。昨年のこの席で宣言した「コンソール機の(覇権を決める)戦争は終結した」という言葉を振り返り、現状のシェアや今後の動向に関して分析を行なった。それによると、2003年3月末の時点でプレイステーション 2はワールドワイドで5,120万台を出荷。コンペティターとなるXboxは1,300万台、GameCubeは940万台と、それぞれPS2に比べて26%と20%にとどまるという調査結果を提示してみせた。さらに2004年末までには、PS2とPSとをあわせて2,250万台を出荷予定であることを明らかにしている。

 この先はPS2を音楽、映像などを含めたトータル・エンターテインメントプラットホームとしてさらに確立していくプランとして「Content(タイトル)」、「Hardware Evolution(ハードウェアの革新)」、「Community(コミュニティ)」、「Market Expantion(市場の拡大)」をあげ、それぞれのテーマに沿ったプレゼンテーションを展開した。ちなみにPSPは最後のMarket Expantionにあたり、PSPをもって携帯ゲーム機(携帯エンターテインメント・プラットホームと表現されているが)市場に参入することを表している。
 

北米、欧州、そして日本市場におけるプレイステーションとプレイステーション2の累計出荷台数。さらに2004年までには2,250万台を出荷するとしている

北米市場におけるプレイステーション2対応タイトルの伸び。2003年には250タイトルが追加されるという

「コンソール機の(覇権を決める)戦争は2002年で終結した」と再確認。Xbox、GameCubeといったコンペティターはPS2に比べていずれも20%台にとどまっている

■ 最新作「GRAN TURISOMO 4」を山内一典氏が初公開

 Contentと表現された豊富なPS2対応タイトルの紹介では、ワールドワイドのミリオンヒットタイトルを紹介するとともに、530万本を売り上げた「METAL GEAR SOLID 2」に続く「METAL GEAR SOLID 3:SNAKE EATER」が、PS2専用のタイトルとして2004年に発売されることを発表した。同様に欧米市場では爆発的な人気を誇るGTAこと「Grand Theft Auto」シリーズの最新作も、開発会社であるRockstarとのパートナーシップ延長によって、PS2から開発・販売がスタートするという。またアクションスター、ジェット・リーをフィーチャーした「RISE to HONER」は、本人がモーションアクターも務めたメイキングシーンを含めた映像が公開された。
 

ワールドワイドにおけるプレイステーション 2のミリオンヒットタイトルの数々

「METAL GEAR SOLID 3:SNAKE EATER」が、プレイステーション2専用のタイトルとして2004年に発売される

欧米市場では爆発的な人気を誇るGTAこと「Grand Theft Auto」シリーズの最新作も、開発会社であるRockstarとのパートナーシップを延長でPS2に

アクションスター、ジェット・リーみずからがモーションキャプチャのアクターも担当した「RISE TO HONER」

ゲーム映像とともに、モーションキャプチャシーンのメイキング映像が公開された

ビデオ映像として流された「RISE to HONER」のプレイ画面

【RISE to HONER】

ポリフォニーデジタルの山内一典社長。最新作となる「GRAN TURISMO 4」は、「クルマとは何か?」「クルマのある環境とは何か?」を考え続けてたどり着いた方向性だという

 そしてSCE傘下の開発スタジオのタイトルでは、「GRAN TURISMO」シリーズの最新作「GRAN TURISMO 4」(以下、GT4)の映像が初公開された。ポリフォニーデジタルの山内一典社長が登場して、今作の内容をゲーム映像と開発の進行状況を示すビデオ映像で紹介している。

 山内氏によれば、前作にあたるGT3ではPS2で提供される初の「GRAN TURISUMO」ということで、PS2の能力をいかに伝えるかということに集中していたという。そして「GT4」でなすべきことを改めて考えたとき「クルマとは何か?」、「クルマのある環境とは何か?」ということに2年間を経て、行き着いたのが今回のテーマだそうだ。

 この日公開されたビデオ映像は、同社が全世界で行なったという取材の模様と現時点で開発が進んでいるというテクノロジー関係の情報が混在。見応えのある内容となっていた。

 スペック面では、クルマのシミュレーションエンジン部分に、山内氏いわく「'97年のGT開闢以来……」というほど大がかりなメジャーアップグレードを施した。自動車産業のラピュタルシュミレーションに使えるほど高度なものとしたことで、挙動やハンドリングが非常にリアルかつシビアになる一方で、初心者には扱いやすくなるという。ライバル車のAIもメジャーアップグレードされ、挙動がよりスムーズに、そしてもっともっと人間らしくなるということだ。

 収録されるクルマの種類は、過去のどのGTシリーズよりも多くしたいという。むしろ、「クルマの歴史自体を『GT』でしかできない文脈で読み直してみる」というほど大規模にすることも検討しているようだ。走行するコースについても、クルマがその場所にあることこそが価値になるように、世界中のランドスケープをたくさん入れることを考えているという。公開されたスクリーンショットにもそのコンセプトに沿ったものが盛り込まれている。また、これまでは意識的に避けてきた実在するサーキットについても、今回は物理シミュレーションの精度が飛躍的にあがったため採用することにしたという。

 また、現時点では詳細について語ることはできないとしながらも、オンライン対応も正式に表明している。同氏がもっとも考えているのは、PS2でできることがまだまだあるということ。そして「『GT4』がPS2における新しいテクノロジのベンチマークになりたい。『GT』でしかできない方向で車のライフスタイルを追求したい」と述べ、プレゼンテーションを締めくくった。

 明日からオープンするE3展示会場のSCEAブースでは、開発途上の「GT4」の一部を実際にプレイすることが可能になっているので、より詳細なレポートを追ってお届けする。
 

公開されたビデオ映像は、ポリフォニーデジタルのスタッフが登場する取材を中心としたメイキングシーンと、実車の映像、そして「GT4」のゲーム画面が巧みに融合された構成となっていた

【GRAN TOURISMO 4】

■ ネットワークアダプタの標準バンドルで、
すべてのPS2がネットワーク対応に

 続くHardware Evolutionでは、日本市場では15日から出荷されるSCPH-50000相当の新型PS2が、北米市場でも6月より投入されることが明らかにされた。既報のとおりこのモデルは、IR受光部を搭載し新型リモコンに対応するほか、DVD±RWに対応する光学式ドライブを採用するなど機能向上が図られている。

 北米市場ではこれまで199ドルで販売されていたPS2だが、6月以降はネットワークアダプタを標準でバンドルしたうえで同価格の199ドルで販売が行われることになる。事実上の値下げということ以上に、移行時期に新旧モデルが混在することはありうるものの、6月以降はPS2でもネットワーク対応が標準化されることになることの意味は大きい。

 続いて紹介されたのは、弊誌でも何度か紹介してきたPS2対応のUSBカメラ「EYE・TOY」だ。SCEAのR&Dチームが2年あまり研究してきた成果と言うことだが、3月のGDCリポートでも紹介したとおり、ソニー・コンピュータエンタテインメント・ヨーロッパが開発するアプリケーションとともに正式発表された。北米市場では10月から39ドルで販売が開始される。

 ここでEYE・TOY技術の開発者であるRichard Marks博士ステージに登場して、実際にデモを披露して見せた。途中からはHIRAI社長もプレイに参加して、会場の笑いを誘っていた。プレイの様子などは、写真がわかりやすい。

 USBカメラは「SOCOM:U.S. NAVY SEALs」に付属しているUSBマイクデバイス同様に、今後の可能性を秘める周辺機器だが、リアルタイムの特殊効果やビデオカンファレンス、そしてバーチャルペットなど、HIRAI社長は今後の可能性を示唆してみせた。

北米市場では6月からネットワークアダプタが標準でバンドルされる。価格は据え置いたままの199ドル

US市場で展開されるPS2向けのふたつのUSBデバイス。ヘッドセットはSOCOMにバンドル、USBカメラは10月からEYE・TOYとともに出荷される

SCEAのR&D部門による二年余りにわたる研究開発、そしてSCEEのアプリケーションがバンドルされて出荷される「EYE・TOY」

弊誌では何度か紹介している「EYE・TOY」。USBカメラに向かって身振り手振りで、コマンドを入力する

EYE・TOY技術の開発者であるRichard Marks博士がデモしたカンフーゲーム。上下左右から襲ってくる敵をパンチで振り払う。入力には柔軟性があり、頭突きも可能

窓ふきゲームでは、HIRAI社長も参加。EYE・TOYにはこうしたミニゲームが12種類バンドルされて出荷される

■ オンラインゲームの次のステップは、コアユーザーからマスマーケットへ

 前述のとおり、北米市場で今後出荷されるPS2は事実上すべてがネットワーク対応モデルとなる。そこで重要視されるのが三番目のテーマ「Community(コミュニティ)」だ。もちろんその中心はオンラインゲームということになるが、2002年のこの席で提示したきわめて初期段階といえるオンライン戦略に、一定の成果が見られたことをHIRAI社長は強調した。

 その中心はミリオンヒットとなった「SOCOM:U.S. NAVY SEALs」だが、単体販売されていたネットワークアダプタは60万個を販売したという。「SOCOM:U.S. NAVY SEALs」のオンラインプレイヤーはインストールベースの30%ほどで、アクセス数は一日あたり約5~6万人。時間帯によっては1万3千人ほどの同時接続者数に達するという。

 興味深いデータとしては、オンラインユーザーの73%が18歳から34歳の年齢層に集中するが、この層はインストールベースでは47%にすぎない。またそのほとんどが男性と言うことで、現状のオンラインゲームプレイヤーに、コアゲーマー層の存在を容易に想像させる。また、接続方法としてはダイヤルアップ接続が42%、ブロードバンド接続が58%というデータも公開された。

 今後もっとも大切になるのは、こうしたコアユーザーからマスマーケットへの展開。当面は100万人のオンラインユーザーを確保することを目標とし、最終的にはPS2のインストールベースで5~10%がオンラインユーザーになることを予測している。こうしたマスマーケットがオンラインゲームへ参加する障壁を取り除くのが、前述したネットワークアダプタが標準で同梱されている新パッケージと言うわけだ。

 こうした次のステップに直結するオンラインタイトルとしては、「SOCOM II:U.S. NAVY SEALs」が11月に発売される。ブロードバンド接続では最大16名での対戦プレイが可能になるほか、ワールドワイドでのマッチメイク、新しいランキングシステムなど、ミリオンヒットの続編にふさわしい機能の拡張が図られる模様だ。

 ほかに、四人同時プレイのできる「Syphon Filter:The Omega Strain」が2004年2月に発売を予定。日本ではお馴染みの「Final Fantasy XI」も、北米市場では2004年第1四半期のサービスインを予定している。

およそ6カ月で、ネットワークアダプタは60万個を出荷した。「SOCOM:U.S. NAVY SEALs」のオンラインプレイヤーはインストールベースの30%ほど。

オンラインユーザーの73%が18歳から34歳の年齢層に集中するが、この層はインストールベースでは47%にすぎない。ほとんどが男性のいわゆるコアゲーマー層だ

「SOCOM:U.S. NAVY SEALs」ユーザーの58%がブロードバンド接続でオンラインゲームを楽しんでいる。残り42%はダイヤルアップによる接続

【SOCOM:U.S. NAVY SEALs】
【Syphon Filter:The Omega Strain】

 そして「EA Sports」ブランドで世界最大のスポーツゲームパブリッシャーであるElectronic Arts社から、7つのスポーツゲームタイトルにおけるオンライン対応を、PS2プラットホームに2003年から2004年にかけて独占供給することが発表された。ゲストとしてステージに登場したElectronic Arts社のJOHN RICCITIELLO社長兼COOは、ステージ上のスクリーンを使って各地のユーザーが実際にオンラインプレイをしている様子を実況してみせた。

 そうした実況の最後に、スペシャルゲストとしてプロゴルファーのタイガー・ウッズ氏が中継映像で登場。会場にやってきた著名なコメディタレントと、「Tiger Woods PGA TOUR 2004」を使った1ホールのマッチプレイが行われた。タレントさんの言葉責めと手よりも口が得意そうなゴルフには、ウッズ氏も苦笑することしきり。最後はなぜか短めのパットをウッズ氏がはずして決着がついていた。

Electronic Arts社のJOHN RICCITIELLO社長兼COOは、2003年から2004年まで同社のEA Sportsに含まれる7タイトルのオンライン対応をPS2に独占して供給すると発表

中継映像でゲスト出演したプロゴルファーのタイガー・ウッズ。自らの名を冠したゴルフゲーム「Tiger Woods PGA TOUR 2004」で、オンライン対戦

キャラメイキング機能で、登場したタレントそっくりに作り上げられていたプレーヤーキャラクタ。ナイスショットの際のアクションもステージと画面が同じ


 SCEA主催のブリーフィングのため、アナウンスされた内容のどれほどが日本市場で展開されたり影響を与えたりするかは今後の発表を待つしかないが、日本でも7月に発売となるSOCOMや、新デバイス「EYE・TOY」の投入時期など気になる部分は数多い。また、当日配布された資料には、本稿には記載しきれなかった新タイトルが数多く含まれているので、それらは本稿以降の展示会、ブースレポートとあわせて紹介する。



□E3のホームページ
http://www.e3expo.com/
□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□関連情報
【5月14日】E3開幕直前・SCEブリーフィング現地レポート
これは21世紀のウォークマンだ!
新携帯プラットホーム「PSP」の開発を久夛良木社長が発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030514/psp.htm

(2003年5月15日)

[Reported by 矢作晃/Photo by 平澤寿康/船津稔]


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