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★ PS2ゲームレビュー ★
麻雀ゲームをプレイした人からよく耳にするのが「こんな状況は、本当の麻雀ではあり得ない」といった感想だ。たしかに麻雀ゲーム(特にアーケードゲーム)のCPUは、思考ルーチンやアルゴリズムに癖があり“インチキくさい配牌”や“奇跡に近い和了役”といった状況が頻発してしまう。 だが、ここで紹介する「兎 -野性の闘牌- THE ARCADE」は、麻雀ゲームが持つイカサマくささを逆手に取り、キャラクタの特殊能力と結び付けることで“ひとつのシステム”に昇華させている。 「兎 -野性の闘牌- THE ARCADE」は、アーケードゲーム「兎-野性の闘牌-」のプレイステーション 2版である。原作は、近代麻雀で連載中の人気麻雀劇画「兎 -野性の闘牌- 」。野性(特殊能力)に目醒めたキャラクタのなかから、プレーヤーキャラとタッグパートナーを選択し、2対2の4人打ち麻雀で対局を行なう。 面構成は5ステージ。ストーリーは、原作コミックスの1巻から3巻までの内容がベースになっている。中・高校生の男女で構成される代打ち集団ZOO。その内部でのトップ争い、そしてZOOと敵対する仙道真澄の代打ちグループとの抗争を、麻雀で勝ち抜いていくのが目的だ。残念なことに、アーケード版を忠実に移植しているため、説明不足気味なストーリーデモなどはそのまま。原作を読んだことのないプレーヤーは、やや感情移入しにくいかもしれない。 アーケード版からコンシューマ版への移植に当たり、追加実装されたモードはほとんどない。唯一、クリア回数によってメーターが上昇する達成度システムが付いたぐらいだ。ただし、グラフィック、ボイス、SEなどは、ほぼアーケードを完全再現しているといっていい。アーケード版をやり込んだファンなら、迷わず購入するべきだろう。ただし、ほかのプレーヤーとの通信対戦機能は無い。
■ 野性の解放 ――特殊能力システム 「兎 -野性の闘牌- THE ARCADE」がほかの麻雀ゲームと一線を画す特徴、それが動物の名をコードネームに持つ登場人物達の“特殊能力”だ。これらの能力は、麻雀ゲームにありがちなイカサマではなく、各キャラクタに備わった“感性の力”である。そのため、任意で特殊能力を使うことはできず、一定の条件下で自動的に発動する仕組みになっている。
登場人物の特殊能力は「異常にツイている配牌を呼び込む」、「アガリの完成形をイメージする」など、麻雀の常識を覆す物ばかり。この特殊能力は、システム設定画面で無しにすることができない。正統な麻雀を打ちたいプレーヤーには、この「兎 -野性の闘牌- THE ARCADE」は相性の悪いゲームといえるだろう。 だが、これは原作の持つ緊張感、そしてキャラクタたちの交錯する感情を独自の演出方法で表現したドラマティック・タッグ麻雀ゲームである。強烈な威力とともに、各キャラクタの個性を引き出す必要不可欠なエッセンスでもあるのだ。 これら特殊能力の中でも、一際輝くのがジャッカルの“爆ドラ獲得能力”だ。何も考えずにリーチをかけるだけで、ドラをゲットできる脅威の破壊力は初心者にもお薦め。あまりにも強すぎるため、とあるゲームセンターの大会では“ジャッカル使用禁止”というルールができたほどだ。
■ 暴虐の嵐 ……麻雀ゲーム史上最強クラスのボスキャラクタたち! ボス的存在としてプレーヤーキャラの前に立ち塞がる、園長、新庄、仙道。この3人は、それぞれの特殊能力がズバ抜けて高く、ゲームセンターでも挑戦者たちを次々に返り討ちにしていた。彼らの特殊能力への対処方法は無いに等しく、はっきりいって己の運と才気に賭けるのみだ。開発メーカーの「童」でもワンコインクリアは数人というから、その凄まじさは並大抵ではない。 園長――豪運豪撃能力。つまり強運の持ち主で、配牌時にテンパイしている可能性が高い。もちろんヒキも良く、2、3巡目でツモることもしばしば。ちなみに「豪運」という単語は、原作者である伊藤誠先生の造語である。
新庄直樹――終局爆連荘能力。新庄が親でラストの時、全能力が飛躍的に向上して連荘し続ける(勝ち続ける)。原作では7連荘を達成したこともある男だ。新庄に親が渡る前に、決着を付けたいところである。
仙道真澄――先行爆運能力。園長の能力に酷似する強運の持ち主。事実上のラストボスとなる仙道だが、園長の豪運に比べると、やや格下の感がある。それでも理不尽な強さを誇っていることに変わりはない。
■ 「兎 -野性の闘牌- THE ARCADE」と「兎 - 野性の闘牌 -(PS2)」 「兎 -野性の闘牌- 」関連商品では、デジキューブから2002年6月に発売された「兎- 野性の闘牌 -(PS2)」がある。「兎- 野性の闘牌 -(PS2)」は、原作劇画をダイレクトスキャンしたカットで話が進行するストーリーモードやフリー対局モードなど、アーケード版をベースにしつつオリジナル要素が大量に追加されているのが特徴だ。 アーケード版には出演しなかった、タンチョウやアライグマが使用可能など「兎- 野性の闘牌 -(PS2)」は原作ファンのツボをグイグイと押してくれる。だが、筆者は個人的に致命的な欠点があると感じた。それは、アーケード版と比べて特殊能力発動時のSEがチープになっている点だ。 特殊能力発動時、アーケード版ではスピーカーが割れるかと思うほどの重低音がSEとして採用されている。このSEは、原画の持ち味と相まって特殊能力の大迫力を上手く演出していたのだ。だが、「兎- 野性の闘牌 -(PS2)」では特殊能力発動SEが軽く、迫力の欠片も感じられない。SEの変更だけは我慢できず、プレイするモチベーションが激しく低下したのを覚えている。それが、今回の「兎 -野性の闘牌- THE ARCADE」発売で、非常に救われた気持ちだ。
※上記3点の画面写真は「兎 - 野性の闘牌 -(PS2)」のものです ■ 原作を読み、ゲームセンターで続編をプレイすべし 「兎-野性の闘牌-」の単行本は、現在7巻まで発売されている。登場人物たちの特殊能力が、原作ではどのように発揮されているかを比較してみるのも面白い。麻雀をしている場面ばかりではなく、凝った構図の扉絵なども鑑賞して感情移入度を高めるのもいい。 なお、ゲームセンターでは第2弾の「兎 -野性の闘牌- 山城麻雀編」がロケテスト中で、正式発売を目前に控えている。前作の続編に当たるこのタイトルは、ストーリーの鍵を握る存在「柏木成駿」と「新庄香那」が参戦している。原作通りにいけば、園長と仙道もプレーヤーキャラとなるはずだが……。
麻雀ゲーム全般に言えることだが、現実の麻雀と麻雀ゲームは相対している。通信対戦麻雀にしても、その場に居ない相手と打つのと、卓を囲んで打つ場合とでは感じる重圧も場の流れの読み方もまるで違うのだ。麻雀ゲームに対人戦の奥深さを求めるのではなく、麻雀ゲームは麻雀に似て非なるパズルと割り切って遊んだほうが断然楽しい……そう筆者は考える。その麻雀ゲームならではの魅力を持つタイトルが「兎-野性の闘牌-」だ。特殊能力という麻雀ゲームでしか体感できない斬新なルールで、野性を爆発させてみてはいかがだろうか。
□デジキューブのホームページ (2003年4月2日) [Reported by 福田柵太郎]
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